はじめに 日本のエネルギー政策
日本は、化石燃料に乏しく、また、国際的なパイプラインや国際連系線もありません。原油の中東依存度は、主要国の中で突出して高い状況です。長期のエネルギー需要は、人口減少により増大し続けるとは見込まれない中においても、電力の品質への要求水準は維持していかなければなりません。成熟経済であるが故に、エネルギーインフラ(送電線、ガス導管、ガソリンスタンド等)が既に全国に張りめぐらされ、エネルギー多消費産業を中心にエネルギー効率は極めて高くなっています。この結果生み出されたのが、高いレベルで信頼できるエネルギー技術であり、それに基づくサプライチェーンを構成しています。
近年、世界的にも地球温暖化対策への関心が高まっており、2050年カーボンニュートラルの旗を掲げる動きが世界中で相次いでいます。我が国も、2020年10月に、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しました。カーボンニュートラルへの挑戦は簡単なことではなく、あらゆるリソースを最大限投入し、経済と環境の好循環を生み出していくことが重要です。
2050年カーボンニュートラルへの挑戦と、それと整合的で野心的な2030年の温室効果ガス排出量削減目標の表明を始めとした最近のエネルギー情勢の変化を踏まえてもなお、エネルギー政策を進める上では、3E+S(3E(Energy Security、 EconomicEfficiency、Environment)+S(Safety))のバランスを取り続けていくことが何より重要です。本稿では、2020(令和2)年度に講じたエネルギー需給に関する施策の概況をまとめます。