はじめに 日本のエネルギー政策

日本は、化石燃料に乏しく、また、国際的なパイプラインや国際連系線もありません。原油の中東依存度は、主要国の中で突出して高い状況です。長期のエネルギー需要は、人口減少により増大し続けるとは見込まれない中においても、電力の品質への要求水準は維持していかなければなりません。成熟経済であるが故に、エネルギーインフラ(送電線、ガス導管、ガソリンスタンド等)が既に全国に張り巡らされ、エネルギー多消費産業を中心にエネルギー効率は極めて高くなっています。この結果生み出されたのが、高いレベルで信頼できるエネルギー技術であり、それに基づくサプライチェーンを構成しています。

他方、東日本大震災後の計画停電や燃料供給の停滞、北海道胆振東部地震や令和元年台風第15号等に伴う大規模停電は、それまでのエネルギーインフラにも国民生活・経済活動へのリスクとなる脆弱性がある点を改めて再認識させました。また、国際的な地政学的構造の大きな変化に直面する中で、我が国のエネルギー安全保障を巡る環境は、厳しさを増してきています。さらに、パリ協定の発効以降、世界的にも地球温暖化対策への関心が高まっており、我が国としても、エネルギーの低炭素化・脱炭素化に向けて取り組むことが重要となります。

こうしたエネルギーを巡る制約要因や諸課題を踏まえれば、日本のエネルギー政策は3E+S(3E(Energy Security、Economic Efficiency、Environment)+S(Safety))の方針が基本であり、これは2050年という長期を見通したとしても変わりません。この3E+Sの原則の下、2030年に向けてはエネルギーミックスの確実な実現に向けてさらなる施策の深掘を行い、2050年に向けては、再生可能エネルギー、原子力、水素や蓄電池などのあらゆる選択肢を追求し、エネルギー転換・脱炭素化に挑戦していくことが重要となります。本稿では、2019(令和元)年度に講じたエネルギー需給に関する施策の概況をまとめます。