第3部 第1章 はじめに

我が国では、2017年現在においても、一次エネルギー供給の約9割を石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料が占めています。国内のエネルギー安定供給を確保するためには、不確実性を増す国際情勢を踏まえるとともに、温暖化問題などによる長期的な需給構造の変化も視野に入れつつ、これらエネルギー資源の確保に取り組むことが重要です。エネルギーを巡る国際情勢は、大きな変革期にあります。

シェール革命以降、米国における石油・ガスの供給量は順調に増加を続け、2020年代の前半には、米国がエネルギーの純輸出国に転じることが予想されています。また、エネルギー需要の中心が、中国やインドをはじめとするアジア地域に移行したことに伴い、ロシアや中東といったエネルギー供給国が、販売先の中心をアジアにシフトさせてきています。さらに、2014年後半以降の供給過剰に対応するため、OPECやロシア等の非OPEC産油国が協調減産を進めています。その一方で、米国によるイランやベネズエラといった産油国への制裁が相次いで発表され、両国からの供給量が大きく低下したため世界全体の需給バランスへの懸念が高まることで、原油価格が上昇しました。このように、エネルギー資源の供給能力が、各国の政策により変化する情勢が続いています。

また、2015年のパリ協定採択以降、各国では地球温暖化問題への対応が進められています。欧州など先進国の一部においては、再エネの導入を大いに進めたり、将来的に内燃機関車の販売を制限することを政策目標に設定したりするなど、化石燃料への依存度を低下するための施策が講じられており、今後、需要面に影響が生じてくることが予想されます。

このように大きく変動する国際的なエネルギー需給環境の中で、国内需要の減少に伴い、国際市場におけるバーゲニングパワーが低下していく我が国が、今後も将来にわたりエネルギーの安定供給を確保していくためには、米国やロシア、中東諸国を含む資源供給国との関係をこれまで以上に強化・進化していくとともに、我が国と同じく輸入への依存が高まるアジアを中心とする需要国との連携を強め、透明性が高く、安定的な国際市場を構築していくことが重要です。

政府としては、資源外交の積極的な展開や独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じたリスクマネー供給、石油・天然ガス、メタンハイドレート、海底熱水鉱床等の本邦周辺海域での開発促進、さらには合理的かつ安定的なLNG調達に向けた取組等、引き続き資源の安定供給確保に向けた総合的な政策を推進していきます。