はじめに

パリ協定は、2015年12月に開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択され、世界全体の温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下、「GHG」という。)の総排出量のうち推計で少なくとも55%を占めるGHGを排出する55か国以上の国による締結という発行条件を満たして、採択から1年に満たない2016年11月に発効しました。同協定は、気候変動の脅威に対する世界全体での対応として、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2℃高い水準を十分に下回るものに抑えるとともに、1.5℃高い水準まで制限するための努力を継続すること、そのために、今世紀後半にGHGの人為的な発生源による排出と吸収源による除去量との間の均衡を達成することを掲げています。

その目的を達成するため、各締約国は、緩和に関する国内措置をとることが求められています。具体的には、各締約国はGHG削減に関する「自国が決定する貢献」(Nationally Determined Contribution、以下、「NDC」という。)を策定し、5年ごとに国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)に提出・更新することとされています。また、2020年以降の削減目標については、2013年のCOP19において、2015年12月のCOP21に十分先立って作成することが各国に招請されていました。これに基づきパリ協定採択前に作成されていた貢献案(Intended Nationally Determined Contribution(以下、「INDC」という。))がそのままNDCとなりました。これに基づき、各国においてGHG排出削減に向けた様々な施策が進められているところです。

また、緩和に関する具体的な国内措置を定めるNDCとは別途、長期的目標を念頭に、パリ協定では、GHGの低排出型の発展のための長期的な戦略を立案・通報するよう努力することを求めています。2016年5月の伊勢志摩サミットの首脳宣言では、G7諸国は当該戦略(以下「長期戦略」という。)の提出期限である2020年(COP21決定)より十分先立って提出することが確認されました。

本章では、こうしたGHG削減に向けたパリ協定の各種枠組みへの日本の対処の状況をまず確認し、その後、すでに提出されているNDCの達成に向けた先進主要国の取組とその進捗を確認し、最後に先進主要国のエネルギー事情をデータから見ていきたいと思います。