はじめに 我が国のエネルギー政策
我が国は、エネルギー源の中心となっている化石燃料に乏しく、その大宗を海外からの輸入に頼っているという根本的な脆弱性を抱えており、エネルギーを巡る国内外の状況の変化に大きな影響を受けやすい構造となっています。国民生活と産業活動の血脈であるエネルギーの安定的な確保は、国の安全保障にとって不可欠なものであり、我が国にとって常に大きな課題であり続けています。さらに、国際的な地政学的構造の大きな変化に直面する中で、我が国のエネルギー安全保障を巡る環境は、厳しさを増してきています。
2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画は、東日本大震災の発生及び東京電力福島第一原子力発電所の事故後、我が国の全ての原子力発電所が停止し、化石燃料への海外依存度の増加、エネルギーコストの上昇、二酸化炭素排出量の増大等、我が国のエネルギーを取り巻く環境が厳しい中で、こうした問題に適切に対応しつつ、中長期的に我が国の需給構造に関する脆弱性の解決を図っていくための、エネルギー政策の方向性を示したものです。
エネルギー基本計画では、我が国が抱える構造的課題と東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題を抽出した上で、エネルギー政策の基本方針として、これまでの「3E(Energy Security、 Economic Efficiency、Environment)」という基本的視点に、安全性の確保「S(Safety)」の重要性、国際的な視点の重要性、経済成長の視点の重要性について加味しています。
また、各エネルギー源の強みが活き、弱みが補完される、現実的かつ多層的な供給構造の実現が必要であり、制度改革を通じ、多様な主体が参加し、多様な選択肢が用意される、より柔軟かつ効率的なエネルギー需給構造を創出することをうたっています。
本エネルギー基本計画を踏まえ、2015年7月、経済産業省として、長期エネルギー需給見通しを決定しました。長期エネルギー需給見通しは、安全性、安定供給、経済効率性、環境適合(3E+S)について達成すべき政策目標を想定した上で、施策を講じたときに実現されるであろう将来のエネルギー需給構造の見通しであり、あるべき姿を示すものです。エネルギーミックスの実現に向けて、徹底した省エネルギー、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担抑制の両立、火力発電の高効率化、安全性の確認された原発の再稼働などを進めてまいります。
第3部では、2017(平成29)年度においてエネルギーの需給に関して講じた施策の概況について、エネルギー基本計画の章立てを参考にまとめることとします。