第1節 固定価格買取制度

1.固定価格買取制度の適切な見直し

2012年7月に創設された、FITは、制度創設以来約4年間で対象となる再エネの導入量が概ね2.5倍となるといった成果を挙げるなど、再エネの導入の原動力となっています。他方で、事業用太陽光に偏った導入の拡大や、賦課金負担の急増の懸念の高まりが課題となっています(詳細は第1部第2章参照)。このため、再エネの最大限の導入と国民負担の抑制の両立に向けた制度見直しが不可欠です。具体的には、導入が急速に進んだ太陽光発電については、早期の自立化に軸足を置きつつ、コスト効率的な形での導入を進める仕組みを作る一方で、リードタイムが長く導入の進んでいない電源については、導入拡大を強力に推進する必要がありました。さらに、自然変動電源が急増する中で電力系統面での制約も顕在化しており、電力システム改革の成果も活かしつつ、再エネの導入拡大に向けた新たなルール作りを進めていく必要がありました。こうした足下の課題に対応しつつ、2030年度のエネルギーミックスの実現を図るべく、2016年2月に、再生可能エネルギー特別措置法の一部を改正する法律(以下「改正FIT法」という。)案を国会に提出し、2016年5月に成立致しました。

2.固定価格買取制度(FIT)の適切な見直しと運用に向けた2016年度の取組

第1節に示した現行制度の課題に対応するため、再エネの最大限導入と国民負担抑制の両立を目指し、FITの見直しを行いました。

以下にその詳細を記します。

【第331-2-1】2016年度における再生可能エネルギー発電設備の導入状況(2016年11月末時点)

出典:
資源エネルギー庁データより作成

【第331-2-2】固定価格買取制度(FIT)見直しのポイント

出典:
資源エネルギー庁作成

(1)太陽光の未稼働案件への対応

(2)適切な事業実施を確保する仕組みの導入

(第1部第2章第2節 再掲)

(3)コスト効率的な導入

(第1部第2章第2節 再掲)

(4)地熱等のリードタイムの長い電源の導入拡大

リードタイムの長い電源については、事業化判断のあと、発電施設等の詳細が最終的に確定し、FIT認定を得られるまでに長期間を要するため、適用される買取価格が決定していないリスクを負いながら、事業の具体化(環境アセスメントや地元調整等)を進めざるを得ないことが課題でした。このため改正FIT法では必要に応じ、事業者の予見可能性を高めるため、予め複数年度の調達価格等の設定を行うことが可能とされています。

複数年度の年数の設定に当たっては、事業者が事業化の決定を行ってから、FIT上の設備認定を取得し、調達価格が決定されるまでの期間を基準としました。

具体的に、地熱発電、20kW以上の風力発電については、発電規模によって環境影響評価法の対象となる案件が多い点や、地元調整・関係法令の手続き等を勘案し、複数年度の調達価格を設定する期間については3年間とすることとしました。中小水力、バイオマス発電については、事業者による事業化判断から約2年で価格の決定(FIT上の設備認定)に至りますが、地元調整や関係法令の手続きに時間が掛かるおそれがあるため、複数年度の調達価格を設定する期間は3年間と設定しました。

(5)電力システム改革を活かした導入拡大

FIT電気の買取義務者については、現行制度においては需要家に電気を供給する小売事業者を前提としていますが、今後、揚水発電の活用や連系線を活用した広域的な系統運用(広域融通)等を通じた再エネのさらなる導入拡大を促す仕組みとするため、系統運用及び需給調整に責任を負う送配電事業者を買取義務者としています。

その際の送配電事業者が買い取った電気の引き渡し方法については、① 卸電力取引所経由の引き渡しを基本とした上で、② 発電事業者と小売事業者との間で合意が成立している場合には当該小売事業者に引き渡す、③ 沖縄や離島等、卸電力取引所が活用できない場合等には小売電気事業者へ割付けにより引き渡すことを可能とする、という3つの方法を用意しています。

なお、調達価格等算定委員会での意見を踏まえ、2017年度の調達価格等については、2016年12月に調達価格等算定委員会で取りとまった「平成29年度以降の調達価格等に関する意見」を尊重する形で、経済産業大臣が2017月3月に買取価格を決定致しました。太陽光以外の風力、地熱、水力、バイオマスについては複数年度として3年間の買取価格を設定をしています。

【第331-2-5】買取価格の見直し(調達価格等算定委員会意見)(2017年度)

出典:
資源エネルギー庁作成