はじめに
日本のエネルギー政策全体の転換点となった東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から6年が経過しました。
福島の復興・再生は一歩一歩着実な進展を見せていますが、いまだに続く風評被害をはじめとして、新たな課題も顕在化してきています。2016年12月に政府は、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速していくため、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」を閣議決定しました。政府としては、基本指針に基づき帰還困難区域における特定復興拠点の整備等、これまでの取組を充実・深化させていくことを盛り込むとともに、廃炉等に要する費用見通しの変化等を踏まえ、国と東京電力の分担を改めて明確化しました。
基本指針に基づいて、被災地の実態を十分に踏まえ、地元としっかり対話しつつ、施策の具体化を進め、復興に向けた道筋をこれまで以上に明確にしていきます。
本章でははじめに、①東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関する取組等として、予防的かつ重層的な汚染水対策の取組の状況や、調査ロボットの投入など徐々に進展しつつある炉内調査をはじめとする廃止措置に向けた取組等について記載します。
次に、②原子力被災者への支援について、避難指示解除の状況や、帰還困難区域の再生に向けた取組、除染の実施状況や福島イノベーション・コースト構想の推進にむけた施策、被災事業者の事業・生業再建支援の取組等についてまとめます。
加えて、③福島イノベーション・コースト構想の取組を加速し、その成果も活用しながら、福島を再生可能エネルギーや未来の水素社会を切り拓く「先駆けの地」として、新たなエネルギー社会を先取りするモデルの創出拠点とする「福島新エネ社会構想」を紹介します。
また、④原子力損害賠償について、この6年間での実績・進展等を確認します。
そして、本章の最後では、2016年に設置した⑤東京電力改革・1F問題委員会の設立背景や東電改革提言を概観します。