第2節 エネルギー供給の効率化を推進するディマンドリスポンスの活用
エネルギーの効率的な利用に当たっては、供給サイドの対応とともに、需要サイドの取組が重要です。このため、様々な需要家が参加する一定規模のコミュニティの中で、再生可能エネルギーやコージェネレーション等の分散型エネルギーを用いつつ、ITや蓄電池等の技術を活用したエネルギーマネジメントシステムを通じて、エネルギー需給を総合的に管理し、エネルギーの利活用の最適化を図る「スマートコミュニティ」の取組や、エネルギーの供給状況に応じてスマートに消費パターンを変化させることで需給バランスを一致させる「ディマンドリスポンス」の取組を推進しています。
従来、ピーク時間帯には調整電源によって供給量を確保することで需給バランスの確保に対応してきましたが、スマートコミュニティの導入が進めば、ディマンドリスポンス等の活用により、供給者側ではなく需要家側で需要量を抑制することで需給バランスを確保することが可能となり、エネルギー供給の効率化が図れます。
また、需要に応じて多様なエネルギー源を組み合わせて供給することによって、コミュニティ内全体では、平常時には、大幅な省エネルギーを実現するとともに、非常時には、エネルギーの供給を確保することが可能となり、生活インフラを支え、企業等の事業継続性も強化する効果が期待されます。
【第322-1-1】 スマートコミュニティ4地域実証
【第322-1-2】 ディマンドリスポンスとは
経済産業省では、2011年度からスマートコミュニティ4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)で、幅広い事業者や住民等の参画を得て大規模なスマートコミュニティやディマンドリスポンスの実証を行ってきました。例えば、北九州市で実施したディマンドリスポンスの実証事業( 180世帯、50事業所が対象)においては、一般家庭において通常料金(23円/kWh)を15円/kWh、夜間料金を6円/kWhにする代わりに、夏のピーク時間帯に、翌日の需要予測に応じて、電気料金を最大150円/kWhまで変動させる料金体系で実際に電力供給した結果、実証結果として、2割ものピークカットが継続的に実現可能であることを確認しました。これまでの実証実験で消費者のピーク需要を無理なく、技術やシステムでコントロールすることが可能であり、かつ、消費者にメリットがあることを実証しています。
さらに、ディマンドリスポンスにおける次の段階として、電力会社との間であらかじめピーク時などに節電する契約を結んだ上で、電力会社からの依頼に応じて節電した場合に対価を得る「ネガワット取引」が検討されています。経済産業省では、ネガワット取引の実現に向けて、実証を行うとともに、2015年3月には、ネガワット取引における需要削減量の測定方法に関する標準的な手法の確立に向けてネガワット取引に関するガイドラインを策定しました。
【第322-1-3】ネガワット取引に関するガイドラインとは
<具体的な主要施策>
1. 次世代エネルギー・社会システム実証事業【2014年度当初:60.0億円】
国内4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)において、電気料金型のディマンドリスポンスの実証や自動制御による効果等を検証するとともに、需要家による需要削減量を供給量と見立てて取引するネガワット取引等の実証を行いました。
2. 次世代エネルギー技術実証事業【2014年度当初:12.5億円、2014年度 補正:30.0億円】
当初予算では、地域のエネルギー事情等に応じた先進的なスマートコミュニティの確立を目指して、建物間の電力融通や車両・船舶を活用した給電システム構築等の技術的・制度的課題を解決するため、地域の特性に応じた実証事業を複数の地域で行いました。
また、補正予算では、電力のピーク需要を効果的に削減するため、複数の工場、業務用ビル等の需要削減量を管理し、取引する「ネガワット取引」の制度構築に向けた実証を行い、地域における安定的かつ効率的なエネルギーネットワーク構築に向けた環境を整備しました。
3. スマートコミュニティ構想普及支援事業【2014年度当初:2.7億円】
スマートコミュニティの全国各地への普及を目指し、地域の状況に根ざしたスマートコミュニティの構築 に向けた事業化可能性調査を実施し、事業計画を策定しました。
4. スマートコミュニティ導入促進等事業【2011年度3次補正:80.6億円】
東日本大震災の被害を受けた東北被災3県(福島、宮城、岩手)において、スマートコミュニティの構築に向けて策定されたマスタープランに基づき導入される再生可能エネルギー設備やエネルギーマネジメントシステム等に対して支援を行いました。
5. スマートエネルギーシステム導入促進事業【2011年度3次補正:43.5億円】
東日本大震災の被害を受けた東北被災3県(福島、宮城、岩手)において、災害時に地域の防災拠点となり得る避難所、病院等の重要施設に対して自立・分散型電源である再生可能エネルギーや蓄電池等を導入する場合に支援を行いました。
6. 地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金【2014年度補正:78.0億円】
地域内での再生可能エネルギー等の最大活用やエネルギー需要の最適化を図り、エネルギーコストを最小化するため、再生可能エネルギー等の分散型エネルギーを面的に利用する先導的な地産地消型システムを構築する取組を支援しました。
7. スマートメーターの導入に向けた取組【制度】
スマートメーターは、電力使用量の見える化や、より柔軟な電気料金メニューの導入・多様化を可能とするための基盤となるものです。2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」においても、「2020年代早期に全世帯・全事業所にスマートメーターを導入する」とされており、導入の加速化に向けて官民挙げて取り組んでいるところです。
経済産業省においては、2010年5月より「スマートメーター制度検討会」を開催し、スマートメーターの基本要件、導入に向けた課題及び今後の取組等について議論を行っています。2014年度においては、電力各社からスマートメーターの導入計画の詳細(東京:20年度末、関西・中部:22年度末、北海道・東北・北陸・中国・四国・九州:23年度末、沖縄:24年度末までに全数導入)が表明されるとともに、スマートメーター本体の一般競争入札の実施状況やシステムの調達における提案公募の実施状況、提案公募を経て電力会社が選定した通信方式等について確認を行いました。
スマートメーターの導入・活用に関する環境整備の観点からは、スマートメーターから利用者のHEMSに直接データを送る「Bルート」から提供される情報について、官民による「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会」において接続に関するルール作りなどを行っています。2014年度は電力会社等の取組状況を踏まえ、低圧部門における運用ガイドラインの改定を行うとともに、高圧部門について運用ガイドラインの策定を行いました。さらに、スマートメーターの導入コスト低減に資するため、経済産業省において、メーターの検定手数料の更なる見直し等を行いました。