第2節 リードタイムの長い電源の導入加速に向けた取組の強化

固定価格買取制度の運用開始後、太陽光発電の導入が急速に拡大してきた一方で、リードタイムの長い電源の導入は進んでいません。

特に、開発規模によって経済性を確保できる可能性のある風力・地熱については、地元との調整や、環境アセスメントのほか、立地のための各種規制・制約への対応等の課題が多く、それらを解決する取組を進めました。

【第332-0-1】リードタイムの長い電源(地熱・風力等)の導入促進

リードタイムの長い電源(地熱・風力等)の導入促進

<具体的な主要施策>

1.風力・地熱発電に係る環境影響評価の国による審査期間の短縮目標の設定

風力・地熱発電建設時の環境影響評価の国の審査期間については、2012年11月の「発電所設置の際の環境アセスメントの迅速化等に関する連絡会議 中間報告」(環境省・経済産業省)において、火力発電所リプレースに係る国の審査期間の短縮に向けた取組を、風力・地熱発電の環境影響評価の審査についても適用することとされています。

この結果、2015年度においては、方法書(実績21件)については14日程度、準備書(実績14件)については69日程度、評価書(実績11件)については20日程度の審査期間の短縮を実現しました。

2.風力発電設備の工事計画審査の一本化

従来、風力発電設備の工事前の安全確認については、建築基準法及び電気事業法の二法で審査することとしていましたが、「エネルギー分野における規制・制度改革に係る規制方針」(2012年4月閣議決定)において、電気事業法上の審査への一本化を検討することとされたことを踏まえ、経済産業省では、産業構造審議会保安分科会電力安全小委員会における検討等を経て、2014年4月から、審査を電気事業法へ一本化しました。

3.風力発電設備の安全の取組の強化

相次ぐ風車の落下や落雷によるブレード(翼)の破損等の重大事故を踏まえ、経済産業省では、産業構造審議会保安分科会電力安全小委員会において対策を検討し、風力発電設備の設計の際に想定すべき風の乱れや雷の強さを明確化するなどの安全への取組を強化しました。また、風力発電設備への定期的な検査の導入を盛り込んだ電気事業法等の一部を改正する等の法律案が2015年6月に成立しました。

4.環境アセスメント調査早期実施実証事業【2015年度当初:20.0億円】

風力発電や地熱発電の設置に係る環境アセスメントの迅速化に向け、従来3 ~ 4年程度かかる環境アセスメント手続における環境影響調査を前倒し、他の手続と同時並行で進める場合の課題の特定・解決を図るための実証事業等を実施しました。

5.港湾法の一部を改正する法律(案)の閣議決定【制度】

港湾における洋上風力発電施設の導入の円滑化に向け、港湾区域等の占用の許可の申請を行うことができる者を公募により決定する制度を創設するための港湾法の一部を改正する法律案が2016年2月に閣議決定されました。

6.風力発電等に係る地域主導型の戦略的適地抽出手法の構築事業【2015年度当初:1.6億円】

風力発電の立地に当たり、自治体が主導して、先行利用者との調整や各種規制手続の事前調整等を図りつつ、それらと一体的に環境影響評価手続を進めることで、その後の事業者の事業計画が円滑に進むような適地抽出の手法を検討しました。

7.風力発電のための送電網整備実証事業費補助金【2015年度当初:105.0億円】

北海道及び東北地方の風力発電の適地において、送電網の整備及び技術的課題の解決を目的とした実証事業を行いました。

8.洋上風力発電等技術研究開発【2015年度当初:79.3億円】

浮体式洋上風力発電の更なるコスト低減を目指し軽量浮体・風車、係留等の実証に向けたFS調査を行いました。また、我が国の地形・気象条件に適した洋上風力発電技術を確立すべく千葉県銚子沖及び福岡県北九州市沖で着床式洋上風力発電の実証を行ったほか、着床式洋上ウィンドファームの開発支援等を行いました。

9.風力発電高度実用化研究開発事業【2015年度当初:5.8億円】

風力発電の発電コストを低減させるため、軽量のブレード(翼部分)など風力発電機に用いる新たな部材・部品の開発を行うとともに、スマートメンテナンス技術の確立に向けた検討を行いました。また、小形風車部品の標準化に向けた検討を行いました。

10.風力発電施設における希少猛禽類に対する効果的なバードストライク防止策の検討【2015年度当初:0.4億円】

希少な海ワシ類が風車のブレードに衝突し死亡する事故(バードストライク)の防止対策の策定に向けて、これまでの事業で効果が示唆された防止対策案について引き続き検証を行い、防止策の取りまとめに向けた検討を行いました。

11.洋上風力発電実証事業【2015年度当初:17.7億円】

浮体式洋上風力発電早期実用化に向け、2012年度に設置したパイロットスケール(100kW)の小規模試験機の運転を行い、台風への耐性や効率的な発電などの成果を得ました。また、2013年度より国内初の商用スケール(2MW)の実証機の運転を開始し、環境影響、気象・海象への対応、安全性等に関する情報収集等を行いました。

12.浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業【2013年度補正:280.0億円】

福島県を「再生可能エネルギー先駆けの地」とするためのシンボルとして、世界をリードする浮体式洋上風力発電技術の実用化を目指すため、2013年度に設置した浮体式洋上風力発電施設(2MW)及び浮体式洋上変電施設の実証機を運用し、運転及び気象・海象・風速データ等を取得しました。また、浮体式洋上風力発電施設(7MW及び5MW )の設置、設計、製作等を行い、2015年度に世界最大となる浮体式洋上風力発電施設(7MW)の実証機を設置し、運転を開始しました。

13.地熱資源開発調査事業費補助金【2015年度当初:80.0億円】

地熱発電は、自然条件によらず安定的に発電が可能なベースロード電源の一つであり、我が国は世界第3位の資源量(2,347万kW)を有する一方で、地質情報が限られており事業リスクが高いことから、資源量のポテンシャル調査や掘削調査等の初期調査に対する支援を行いました。

14.地熱開発理解促進関連事業支援補助金【2015年度当初:28.0億円】

地熱の有効利用等を通じて、地域住民への開発に対する理解を促進することを目的として行う事業(例えば、熱水を利用したハウス栽培事業の実施やセミナーの開催等)に対し補助を行うことで、地熱資源開発を促進しました。

15.地熱資源探査出資等事業 【 2015年度当初:80.0億円】

地熱資源の探査や発電に必要な井戸の掘削、発電設備の設置等に対して出資・債務保証を行い、地熱資源開発を推進しました。

16.中小水力・地熱発電開発費等補助金(地熱発電開発費補助金)【2015年度当初:11.9億円の内数】

地熱開発は、運転開始後も追加井の掘削が必要となるなど、メンテナンスコストが大きいこと等の課題を抱えているため、追加井の掘削等に対して補助を行いました。

17.地熱発電技術研究開発事業【2015年度当初:29.8億円】

地熱発電における高い開発コストやリスク等の課題を解決するため、地下の地熱資源のより正確な把握、安定的な電力供給に必要となる地熱資源の管理・評価、生産井や還元井等を短期間かつ低コストに掘削するための技術開発や、環境配慮型の高効率発電システムや低温域向けの小型バイナリー発電システム等に関する技術開発を行いました。