第1節 固定価格買取制度の在り方

1.固定価格買取制度の見直しに向けて

再生可能エネルギーの固定価格買取制度(いわゆる「FIT制度」)は、補助金による導入支援、RPS制度(2003年~)、太陽光の余剰電力買取制度(2009年~2012年)の後を受けて、2012年7月に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下「FIT法」という。)」に基づいて創設されました。固定価格買取制度は、①再生可能エネルギーの発電事業者に対して固定価格での長期買取を保証することによって事業収益の予見可能性を高め、参入リスクを低減させることで新たな再生可能エネルギー市場を創出し、さらに、②市場拡大に伴うコスト低減(スケールメリット、習熟効果)を図り、再生可能エネルギーの中期的な自立を促すことを目的とした制度であり、我が国においても、制度創設以来3年間で対象となる再生可能エネルギーの導入量が概ね倍増するといった成果を挙げてきている。昨年7月に策定された「長期エネルギー需給見通し」(「エネルギーミックス」)では、2030年度において再生可能エネルギーが電源構成の22-24%を占めるとの見通しを示しており、この達成に向け、固定価格買取制度には引き続き重要な役割が期待されています。

一方で、制度創設以来、事業用太陽光への参入が急拡大しており、電源間でのバランスの取れた導入が求められるとともに、買取費用総額が本年度(2015年度)に年間約1.8兆円(賦課金総額は約1.3兆円)に達するなど国民負担の増大への懸念が高まっている。このため、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図るための制度見直しを行う必要があり、導入が急速に進んだ太陽光発電については、早期の自立化に軸足を置きつつ、コスト効率的な形での導入を進める仕組みを作る一方で、リードタイムが長く導入の進んでいない電源については、導入拡大を更に強力に推進するための制度改革を行う必要がありました。また、自然変動電源が急増する中で電力系統面での制約も顕在化しており、電力システム改革の成果も活かしつつ、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた新たなルール作りを進めていく必要があり、2016年2月に、再生可能エネルギー特別措置法の一部を改正する法律案を国会に提出しました。

<法律案の概要>

(1)太陽光の未稼働案件への対応

→ 発電事業の実施可能性を確認した上で認定する新たな制度を創設。

(2)適切な事業実施を確保する仕組みの導入

→ 事業実施中の点検・保守や、事業終了後の設備撤去・処理等の遵守を求め、違反時の改善命令・認定取消を可能とする。

(3)コスト効率的な導入

→ 中長期的な買取価格の目標を設定し、予見可能性を高める。

→ 事業用太陽光には、入札制度を導入(大規模案件から実施)。

(4)地熱等のリードタイムの長い電源の導入拡大

→ リードタイムの長い電源(地熱・中小水力等)は数年先の認定案件の買取価格まであらかじめ示し、参入を促す。

(5)電力システム改革を活かした導入拡大

→ FIT電気の買取義務者を小売事業者から送配電事業に変更することで、より多くの再生可能エネルギーの導入を可能とする。

【第331-1-1】固定価格買取制度(FIT)見直しのポイント

固定価格買取制度(FIT)見直しのポイント

2.固定価格買取制度の適切な運用のための2015年度の取組

2015年度においては、4月から11月末までに660.8万kWの再生可能エネルギー発電設備が運転を開始し、固定価格買取制度開始(2012年7月)以降の累積で2,536.5kWとなりました。これは固定価格買取制度の開始前と比較して約125%増加しており、固定価格買取制度は再生可能エネルギーの推進の原動力となっています。

【第331-2-1】2015年度における再生可能エネルギー発電設備の導入状況(2015年11月末時点)

2015年度における再生可能エネルギー発電設備の導入状況

一方で、固定価格買取制度では、電気事業者が再生可能エネルギー由来の電気の買取に要した費用について、賦課金として電気料金に上乗せする形で国民が負担することになっています。2015年度においては、賦課金の単価は1kWh当たり1.58円、合計約1兆3,200億円となり、標準家庭(一か月300kWh程度の電力使用量を想定)では、月額約474円の負担となります。このため、国民負担抑制の観点から、法律の規定に従い、コスト低減実績を踏まえた調達価格の見直しを行うなど、常に適切な配慮を行うことが欠かせません。2016年度の調達価格については、2016年2月22日に調達価格等算定委員会で取りまとまった「平成28年度調達価格及び調達期間に関する意見」を尊重する形で、以下の内容で決定されました。

【第331-2-2】告示された調達価格等(2016年度)

告示された調達価格等

また、2016年度の調達価格等を踏まえ、2016年度の賦課金の単価は1kWh当たり2.25円と決定され、合計で約1兆8,028億円、標準家庭(一か月300kWh程度の電力使用量を想定)では月額約675円の負担となりました。

今般の固定価格買取制度の見直しにおいては、国民負担を抑制しつつ、再生可能エネルギーの最大限の導入を進めるため、太陽光に偏らず、電源間でバランスの取れた形での再生可能エネルギーの導入や、コスト効率的な導入を促すための価格決定方式を検討しているところです。