第1節 エネルギー需給の概要等
1.エネルギー需給の概要
世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)は経済成長とともに増加を続けており、石油換算で1965年の37億トンから年平均2.6%で増加し続け、2014年には129億トンに達しました。特に2000年代以降アジア大洋州地域の消費伸び率が高くなっています。しかし先進国(OECD諸国)では伸び率は鈍化しました。経済成長率、人口増加率ともに開発途上国と比較し低くとどまっていることや産業構造が変化し省エネルギー化が進んだことが影響しています。世界のエネルギー消費量に占めるOECD諸国のエネルギー消費の割合は、1965年の70.8%から2014年には42.5%へと約28ポイント低下しました(第221-1-1)。
一般的に経済成長とともにエネルギー消費が増加するため、今後途上国の経済が成長することでエネルギー消費も増えていきます。ここで1人当たりのGDPとエネルギー消費量の関係を見てみましょう。例えば日本、豪州、カナダは1人当たりのGDPはほぼ同じですが、1人当たりのエネルギー消費量は国によって大きく異なることが分かります。国によって気候や産業の構造が違うので一概には言えませんが、エネルギー効率の違いがこの差を生みだしています。現在主流の化石エネルギーは無尽蔵ではなく、また化石エネルギーを大量に消費すると二酸化炭素の排出量も増えてしまいます。そのため、特に今後エネルギー消費量が大きく増えることが予測されている途上国では、エネルギー効率を高めていくことがとても重要であり、また日本を含む先進国がそれを手助けしていくことが求められています(第221-1-2)。
- (注1)
- 1984年までのロシアには、その他旧ソ連邦諸国を含む。
- (注2)
- toeはtonne of oil equivalentの略であり石油換算トンを示す。
- 出典:
- BP「Statistical review of world energy 2015」を基に作成
- 出典:
- IEA「Energy Balance 2015」を基に作成
次に、世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)の動向をエネルギー源別に見てみます。石油は今日までエネルギー消費(一次エネルギー)の中心となってきました。発電用等では他のエネルギー源への転換も進みましたが、堅調な輸送用燃料消費に支えられ1971年から2013年にかけて年平均1.3%で増加し、依然としてエネルギー消費全体で最も大きなシェア(2013年時点で31.4%)を占めました。この同じ期間に、石油以上に消費量が伸びたのが天然ガスと石炭です。天然ガスは、特に気候変動への対応が強く求められる先進国を中心に、発電用はもちろん、都市ガス用の消費が伸びました。石炭は発電用の消費が堅調に増加し、特に近年は、経済成長著しい中国等、安価な発電用燃料を求めるアジア地域において、消費量が拡大しました。しかし、2015年12月に開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、2020年以降の全ての国が参加する公平で実効的な国際枠組みであるパリ協定が採択され、同協定には主要排出国を含む全ての国が削減目標を提出・更新し、レビューを受けることや温室効果ガス排出量の削減によって産業革命前と比べた気温上昇を2度より十分下方に抑えること、さらに1.5度までに抑えるよう努力することが盛り込まれました。今後、同協定の実施により、各国の排出削減に向けた取組が進み、石炭を始めとした化石燃料の消費に変化が起こる可能性があります。一方、同じ期間で伸び率が最も大きかったのは原子力(年平均7.5%)と新エネルギー(同8.8%)でしたが、2013年時点のシェアはそれぞれ4.8%及び1.2%と、エネルギー消費全体に占める比率は未だに大きくありません。近年は太陽光発電を中心に発電コストが低下しており、今後新エネルギー比率は拡大すると予想されます(第221-1-3)。
【第221-1-3】世界のエネルギー消費量の推移(エネルギー源別、一次エネルギー)
- (注)
- 「可燃性再生可能エネルギー他」は、主にバイオマス燃料。
- 出典:
- IEA「Energy Balance 2015」を基に作成
世界の最終エネルギー消費は、1971年から2013年までの42年間で約2倍に増加しました。部門別では、鉄鋼・機械・化学等の産業用エネルギー消費が1.9倍、家庭や業務等の民生用エネルギー消費が1.9倍であるのに対して、輸送用エネルギー消費は2.7倍も増加しました。輸送用が大きく増えた理由は、この間に世界中でモータリゼーションが進展し、自動車用燃料の需要が急増したことによると考えられます。この結果、輸送用のエネルギー需要が占める割合は1971年の22.7%から2013年には27.8%へと約5ポイント増加しました(第221-1-4)。
- (注)
- 前表の消費量合計より少ないのは、本表には発電用及びエネルギー産業の自家使用等が含まれて いないためである。
- 出典:
- IEA「Energy Balance 2015」を基に作成