第4節 二次エネルギーの動向
1.電力
(1)消費の動向
電力消費は、石油ショックの1973年度以降も着実に増加し、1973年度から2007年度の間に2.6倍に拡大しました26(第214-1-1)。ただし、2008年度から、世界的金融危機の影響で生産が低迷し、企業向けを中心に電力消費が減少に転じました。景気の回復とともに2010年度は前年度より3.8%の増加とやや回復しました。しかしながら、東京電力福島第一原子力発電所事故を発端に、電力需給がひっ迫する中で電力使用制限令の発令や節電目標の設定で、2011年度は前年度より5.1%、2012年度は同1.0%減少しました。2013年度は東日本大震災後に初めて増加に転じたものの、節電マインドの浸透と省エネ家電の普及により、0.1%の微増にとどまりました。2014年度は、冷夏、消費増税後の景気低迷により2.4%の減少となりました。
- (注)
- 電気事業用計。電力には特定規模需要、特定供給、自家消費を含む。
- 出典:
- 経済産業省「電力調査統計月報」を基に作成
電力消費の増加は、長期的に見ると民生用消費によってより強くけん引されてきました。使用種別で見ると、電灯の使用電力量は、1973年度から2014年度の間に3.8倍に増加した一方、電力の使用電力量は2.0倍への増加にとどまりました。2014年度には、民生部門の需要が自家発分を含む電力最終消費の65%を占めるに至りました(第214-1-2)。これは、家庭部門では生活水準の向上などにより、エアコンや電気カーペットなど冷暖房用途や他の家電機器が急速に普及したことなどによるものです。業務他部門の電力消費の増加は、事務所ビルの増加や、経済の情報化・サービス化の進展を反映したオフィスビルにおけるOA機器の急速な普及などによるものです。最終エネルギー消費における電力化率は、1970年度には12.7%でしたが、2014年度には25.3%に達しました。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」では、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- (注2)
- 民生は家庭部門及び業務他(第三次産業)。産業は農林水産鉱建設業及び製造業。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成成
また、自家用発電自家消費電力(以下「自家発自家消費」という。)はエネルギー消費におけるコスト削減の観点から増加し続け、2004年度時点で1,310億kWhとピークに達しました。その後、燃料コストの上昇により、大口需要(産業用)全体の自家発自家消費は年々減少を続け、2009年度には景気の低迷も重なり1,047億kWhまで下がりましたが、2014年度は1,132億kWhまで上昇しました。2014年度の自家発自家消費の比率を業種別に見ますと、製造業で最も自家発の比率が高かったのは、石油・石炭製品製造で77%、以下、紙・パルプ66%、化学51%、鉄鋼50%、繊維41%、窯業・土石25%と続きました。 電気の使われ方には季節や昼夜間で大きな差があります。特に近年では、冷暖房などによる「夏季需要」、「冬季需要」の割合が高いため、電気の使われ方の差が大きくなりました(第214-1-3、第214-1-4)。
【第214-1-3】夏季1日の電気使用量の推移(年間最大電力を記録した日)(10電力27計)
- (注)
- 1975年度は沖縄電力を除く。
- 出典:
- 電気事業連合会「原子力・エネルギー図面集2015」
電気は貯蔵しておくことができないため、需要のピークに見合った発電設備が必要となります。したがって、このように需要の格差が拡大するほど発電設備の利用効率などが悪化し、電力供給コストを上昇させることになります。こうしたことを緩和するための電力の負荷平準化対策は、電力需要の急激な増加に伴う電力供給上のリスクを軽減し、電力供給システムの安定化、信頼性向上にも寄与することになります。発電設備の利用効率を表す年負荷率(年間の最大電力に対する年間の平均電力の比率)を見ますと、1970年代にはおおむね60%を上回る水準で推移していましたが、1990年代は50%台にその水準が低下しました。2000年代半ば以降、負荷平準化対策により、我が国の年負荷率は改善されつつあり、60%台で推移しています。ただし、年負荷率は夏季の気温の影響も大きく、2009年度は、66.7%と高い値でした。逆に、記録的な猛暑となった2010年度には、62.5%まで下がりました。東日本大震災以降は、省エネ機器の導入とピークカットの推進により2011年度には67.8%と高い値を記録しました。その後、2012年度は66.9%、2013年度は65.4%と2年連続で低下しましたが、2014年度は冷夏により再び上昇し、67.2%となりました(第214-1-5)。他の主要国との比較では、2013年時点では、英国に次いで2番目となり、高水準となっています(第214-1-6)。
- (注)
- 1965、1975、1985年度は沖縄電力を除く。
- 出典:
- 電気事業連合会調べ
- 出典:
- 電気事業連合会「電気事業便覧」を基に作成
【第214-1-6】2013年の各国の年負荷率比較
- (注)
- 日本は2013年度数値。
- 出典:
- 海外電力調査会「海外電気事業統計2015年版」を基に作成
(2)供給の動向
発電設備容量の推移を見ると、1963年度に初めて火力発電設備出力が水力発電設備出力を上回り、いわゆる「火主水従」の発電形態に移行しました。その後の電源開発は、石炭火力から石油火力への転換により、大容量・高効率の石油火力発電所を中心に進められました。
しかし、1973年の第一次石油ショックを契機として、原子力発電、石炭火力発電、LNG火力発電などの石油代替電源の開発が積極的に進められ、電源の多様化が図られてきました。ただし、原子力については、東日本大震災の影響により、2013年9月以降原子力発電所停止が続いたため、2014年度はゼロとなっています。2014年度末の発電設備容量(10電力計(受電を含む))の電源構成は、LNG火力28.5%(7,170万kW)、石炭火力15.9%(3,996万kW)、石油等火力17.3%(4,359万kW)、水力19.0%(4,799万kW)、原子力17.5 %(4,409万kW)、新エネ等1.9%(468万kW)となりました(第214-1-7)。
また、発受電電力量(一般電気事業用)で見た場合、2014年度末の発電設備容量(10電力計(受電を含む))の電源構成は、LNG火力46.1%(4,200億kWh)、石炭火力31.0%(2,824億kWh)、石油等火力10.6 %(963億kWh)、水力9.0 %(819億kWh)、新エネ等3.2%(295億kWh)、原子力0.0%(0 kWh)となりました(第214-1-8)。
- (注)
- 1971年度までは沖縄電力を除く。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「電源開発の概要」、「電力供給計画の概要」を基に作成
- (注)
- 1971年度までは沖縄電力を除く。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「電源開発の概要」、「電力供給計画の概要」を基に作成
我が国の原子力開発は、1955年に原子力基本法が制定されて以来、61年が経過しました。1966年には初の商業用原子力発電所である日本原子力発電(株)東海発電所(16.6万kW)が営業運転を開始し、2010年度には発電量が2,882億kWhとなりました。しかしながら、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故後、検査などで停止中の原子力発電所が徐々に増加し、2012年度の発電量は159億kWh、2013年度は93億kWhまで、2014年度は東日本大震災の影響で、0kWhとなりました。
石炭は、確認可採埋蔵量が豊富で、比較的政情が安定している国々に広く存在しているため供給安定性に優れ、石油・LNGなどより相対的に安価なエネルギー源です。二度の石油ショックを機に、石油中心のエネルギー政策からの転換の一環として、石炭火力発電の導入が図られてきました。2014年度の石炭火力の発受電電力量(一般電気事業用)は、東日本大震災による原子力発電所停止の影響もあり、2013年度並みの2,824億kWh、1973年度との比較では約16倍の水準となりました。
LNGは、1969年にアラスカから購入が開始されて以来、安定的かつクリーンなエネルギーとしての特性を生かし、環境規制の厳しい都市圏での大気汚染防止対策上、極めて有効な発電用燃料として導入されてきました。二度の石油ショックを経て、石油代替エネルギーの重要な柱となり、その導入が促進されてきました。2011年度以降は原子力発電の代替としての利用が進み、2014年度のLNG火力の発受電電力量(一般電気事業用)は4,200億kWh、1973年度との比較では約47倍の水準となりました28。
火力発電所の熱効率は年々上昇して、1951年の9電力発足当時の約19%(9電力平均)から2014年度は約42.8%(HHV29、発電端、10電力平均)となっており、最新鋭の1,600℃級コンバインドサイクル発電では約54%(HHV)の熱効率を達成しました。
石油による発電は第一次石油ショック以降、1980年代前半は、石油代替エネルギーの開発・導入などにより減少基調で推移しました。1987年以降、一時的に増加傾向に転じましたが、原子力発電所の新規運転開始・高稼働などにより、ベース電源、ミドル電源からピーク対応電源へと移行しており、その発電電力量は著しく減少しました。2014年度の石油等火力の発受電電力量(一般電気事業用)は963億kWhと、1973年度との比較では約3割の水準となりました。2011年度以降、原子力発電所の稼働率の低下などを補うため発電量が上昇していましたが、2014年度は、石炭やLNGなどのほかの火力発電が増えたことで、石油等は前年度比31.1%減少しました。水力は、戦前から開発が始まり、1960年代には大規模な水力発電所はほぼ開発されました。発電電力量は横ばいの状態が続き、2014年度の水力の発電電力量は819億kWh、1973年度に比べ1.3倍の水準となりました(第214-1-8)。
(3)価格の動向
電気料金は、石油ショック後には当時石油火力が主流だったこともあり急上昇しましたが、その後は低下傾向となりました。1994年度から2007年度の間において、単純比較では約2割低下しました。2008年度では、上半期までの歴史的な原油価格の高騰などにより、電気料金が比較的大きい幅で上昇しました。2010年度は原油などの燃料価格の低下で、電気料金は2007年度水準まで戻りましたが、2011年度以降は原子力発電所の稼働率低下、燃料価格の高騰などに伴う火力発電費の増大、再生可能エネルギー発電促進賦課金の上乗せ影響などにより、再び電気料金が上昇しました(第214-1-9)。
- (注1)
- 一般電気事業者10社を対象。
- (注2)
- 電灯料金は、主に一般家庭部門における電気料金の平均単価で、電力料金は、各時点における自由化対象需要分を含み、主に工場、オフィスなどに対する電気料金の平均単価。平均単価は、電灯料収入、電力料収入をそれぞれ電灯、電力の販売電力量(kWh)で除したもの。
- 出典:
- 電気事業連合会「電力需要実績」、「電気事業便覧」を基に作成
2.ガス
(1)全体
我が国のガス供給の主な形態には、ガス事業法で規制されている〔1〕一般ガス事業、〔2〕ガス導管事業、〔3〕大口ガス事業(以上、「都市ガス事業」と呼びます。)と、〔4〕簡易ガス事業及び「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」で規制されている〔5〕液化石油ガス販売事業(以下「LPガス販売事業」という。)などの形態が存在します(第214-2-1)
【第214-2-1】ガス事業の主な形態(2007年以降)
(2)都市ガス事業(一般ガス事業、ガス導管事業、大口ガス事業)
①消費の動向
都市ガス事業における消費は、2000年代後半まで、家庭用・工業用・商業用消費のいずれも着実に増加してきました。その構成の推移を見ると、かつて、消費の中心であった家庭用消費のシェアは、1990年代以降、5割を下回る一方、工業用・商業用消費のシェアが急速に増大し、工業用消費のシェアは2006年度には5割を上回りました。しかし、2010年度以降、家庭用、商業用の消費は横ばい傾向にあり、工業用の消費の増加傾向も減速しているため、総量で消費の伸びが鈍化しています(第214-2-2)
- (注1)
- 全都市ガス事業者を含む。
- (注2)
- 1996年度から2006年度の用途別販売量は日本エネルギー経済研究所推計。
- 出典:
- 経済産業省「ガス事業統計」などを基に作成
それでも、2004年度から2014年度までの10年間で工業用は1.6倍に、商業用・その他用は1.1倍に拡大しました。
消費増加の要因を見ると、都市ガス需要家件数の9割強を占める家庭用では、近年、需要家当たりの消費量の減少を、供給区域の拡大による需要家件数の増加でカバーしてきました。一方、工業用では、LNGを導入した大手都市ガス事業者による産業用の大規模・高負荷需要(季節間の使用量変動が少ないなど)を顕在化させる料金制度の導入などにより、1980年以降、大規模需要家への天然ガス導入が急速に進んだことに加えて、近年のガス利用設備に係る技術革新の進展や地球環境問題への対応の要請などにより、需要家当たりの消費量が急激に伸びたことが大幅な消費の増加につながりました。
②供給の動向
都市ガス事業における原料は、その主体を石炭系ガスから石油系ガスに、石油系ガスから天然ガスへと変遷を遂げてきました。天然ガスは、一部の国産天然ガスを除き、その大部分が大手一般ガス事業者を中心としたLNG輸入プロジェクト(海外の産出先との長期契約)により調達されてきました。原料に占める天然ガスの割合は年々高まってきており、1980年代に入って50%を超え、2014年度には、97%を占めるに至りました(第214-2-3)。
- (注)
- 2005年度までは一般ガス事業者のみ。2006年度以降は全都市ガス事業者。
- 出典:
- 日本ガス協会「ガス事業便覧」、経済産業省「ガス事業統計」を基に作成
このように天然ガスの導入は、大手一般ガス事業者を中心に拡大しました。2016年1月時点で206事業者中205事業者が天然ガスを中心とした高カロリー化を実施しました。
また、一般ガス事業者の供給ガスの調達方法としては、大手事業者などでは上記のように海外からLNGを調達していますが、石油系のガスを主な原料としている事業者では石油元売りからLPガスを調達しています。他の一般ガス事業者や国産天然ガス事業者などから卸供給を受ける場合もあります。
一方、ガス供給インフラであるパイプライン網については、我が国の場合、これまで消費地近傍に建設したLNG基地などのガス製造施設を起点としたパイプライン網となっており、一部の地域において、国産天然ガス事業者による長距離輸送導管や大規模消費地における大手一般ガス事業者の輸送導管はある程度発達していますが、基本的には、消費地ごとに独立したパイプライン網となっています。
③価格の動向
都市ガスの小売価格は、石油ショック後に急上昇しましたが、1983年度以降、低下傾向にありました。規制料金である都市ガス小口料金部門においても、1995年の部分自由化の開始後、大手事業者を中心として数度の料金改定が実施され、価格が引き下げられました。また、都市ガスの平均販売単価(㎥当たりの販売価格)は、1995年度から2004年度まで、LNG輸入価格の上昇傾向などを受けて原料費が上昇したものの、労務費などのコスト削減努力や大口需要家の増加などを背景に低下傾向をたどりました。その後、2005年度以降、LNG輸入価格の大幅な上昇の影響を吸収できず、都市ガス価格は上昇傾向に転じました。2009年度には、世界的な景気後退によるLNG輸入価格の下落があり、都市ガス価格も低下に転じましたが、2010年度以降のLNG輸入価格の再上昇に伴い、都市ガス価格も再び上昇し、2014年度の都市ガス価格は1987年度以来の最高値となりました(第214-2-4)。
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成
ガス料金を国際比較すると、部分自由化後は内外価格差が縮小していましたが、近年のシェールガス第1章【第214-2-3】原料別都市ガス生産・購入量の推移(注)2005年度までは一般ガス事業者のみ。2006年度以降は全都市ガス事業者。出典:日本ガス協会「ガス事業便覧」、経済産業省「ガス事業統計」を基に作成【第214-2-4】都市ガス価格及びLNG価格の推移出典:日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成第1章 国内エネルギー動向第2部 エネルギー動向190の生産増加により北米との価格差が拡大しており、我が国のガス料金は欧米先進国と比べ、家庭用は約1.6 ~ 4.0倍、産業用は約1.5 ~ 3.9倍となりました(「第2部第2章第4節5.ガス料金の国際比較」参照。)これは、天然ガスの輸送形態が複雑なこと(LNGで輸入後、再気化)、需要家1件当たりの使用規模が欧米の2.3分の1から7.7分の1と小さいこと及び導管埋設の施工環境(特に市街地における工事帯延長の確保の問題、他埋設物との輻輳による導管の浅層埋設の困難など)が厳しいことなどの理由によります(第214-2-5)
【第214-2-5】主要国の需要家1件当たり都市ガス消費量(2013年)
- 出典:
- 日本ガス協会「ガス事業便覧」を基に作成
④ガス導管事業・大口ガス事業
2003年のガス事業法改正により、一般ガス事業者以外で一定規模以上の導管を維持・運用してガス供給(大口供給・卸供給・託送供給)を行う電気事業者あるいは国産天然ガス事業者などが「ガス導管事業者」として位置付けられ、新たに託送などの役割を担うこととなりました。また、ガス導管事業者のように一定規模以上の導管を維持及び運用していない主体で大口供給を行っている事業者を「大口ガス事業者」と言います。
ガス導管事業者は、2015年4月1日現在、事業者数で25事業者であり、ガス導管事業者及び大口ガス事業者による大口供給は、38事業者371件(許可、届出ベース)となりました。
(2)簡易ガス事業
簡易ガス事業における消費は、1970年の制度創設以来、家庭用を中心に着実に増加してきましたが、近年は大手事業者への事業売却などにより減少傾向にあります。簡易ガス事業は、2015年3月末現在、事業者数で1,397事業者であり、その供給地点群数は7,497地点群(計約185万地点)となっています。2014年の年間生産量(販売量)は、16,333万㎥で、調定数メーター当たりの全国平均販売量は11.51㎥/月でした。簡易ガス事業は、LPガスバルクによる供給設備やLPガスボンベを集中するなど簡易なガス発生設備によるガス供給であるという特性から、その用途別販売量として家庭用が94%を占め(2014年)、残りが商業用などの用途となりました。簡易ガスの料金は石油ショック後に急上昇し(1980年419円/㎥)、1987年に低下に転じた以降(1987年372円/㎥)、2004年までほぼ横ばいで推移してきましたが(2004年382円/㎥)、2005年以降上昇してきました(2014年480円/㎥)(第214-2-6)。
- 出典:
- 日本ガス協会「ガス事業便覧」を基に作成
(3)LPガス販売事業①需給の動向
①需給の動向
LPガスは全国世帯の半数で使用されているほか、大部分のタクシーなどの自動車用、工業用、化学原料用、都市ガス用、電力用など幅広い用途に使われるなど、国民生活に密着したエネルギーです。
LPガスは、プロパンガスとブタンガスの2種類があり、プロパンガスは主として家庭用・業務用、ブタンガスは主として産業用、自動車用に使用されてきました。
②価格の動向
家庭用LPガスの料金は、電気・都市ガスの規制料金とは異なり、販売事業者がそれぞれの料金計算方法によって料金を設定する方式になっていますが、近年のLPガス輸入価格上昇に伴い上昇傾向となりました(第214-2-7)。
家庭用LPガス価格の構成を見ると小売段階での配送費、人件費、保安費などが約6割30を占めているため、小売価格低減のためには、各流通段階、とりわけ小売段階での合理化・効率化努力が求められます。
- (注)
- 家庭用小売価格は10㎥当たり
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成
3.熱供給
熱供給事業とは、一般的には地域冷暖房などと呼ばれ、一定地域の建物群に対し、蒸気・温水・冷水などの熱媒を熱源プラントから導管を通じて供給する事業です(第214-3-1)。
熱供給事業は、それぞれの施設・建物が個別に冷温水発生機などの熱源設備を設置する自己熱源方式とは異なり、供給地区内に設置された熱源プラントで熱供給を集約して行うことにより省エネルギー、環境負荷の低減といった効果が得られます。さらに、都市エネルギー供給システムとして複数の施設・建物への効率的なエネルギー供給、施設・建物間でのエネルギー融通、未利用エネルギーの活用など、エネルギーの面的利用は地域における大きなCO2削減効果があると期待されています。そのほか、各建築物内に熱源設備や屋上へ冷却塔を設置する必要がなくなるため、震災時などの二次災害防止や屋上ヘリポートの設置を行うことができます。さらに、熱源プラントの蓄熱槽や受水槽の水を火災や震災発生時に利用できるなど災害に強いまちづくりに資する事業です。
熱供給事業は「熱供給事業法」に基づき、21GJ/h以上の加熱能力をもって一般の需要に応じて熱供給を行う事業を指し、我が国の熱供給事業は2015年3月末現在で、事業許可区域数は139区域(77事業者)となりました(第214-3-2)。
2014年度の販売熱量(2,161万GJ)を熱媒体別に見ると、冷熱需要が大半を占め(57%)、以下、温熱(40%)、給湯・直接蒸気(3%)となりました。使用燃料は、都市ガスが大半を占め(69%)、以下、電力(17%)、排熱利用(7%)などがありました。近年、海水、河川水、下水、清掃工場排熱などの「未利用エネルギー」を利用する形態やコージェネレーションシステムの活用などの形態も出てきました。こうした未利用エネルギーやコージェネレーションシステムを活用することにより、エネルギーの総合的な有効利用や熱源システムの効率化が進んできました。
【第214-3-1】熱供給事業の概要
- 出典:
- 日本熱供給事業協会ホームページ
- 出典:
- 日本熱供給事業協会「熱供給事業便覧」を基に作成
4.石油製品
(1)消費の動向
我が国の石油製品消費の推移を見ると、第一次石油ショックまでは急激な右肩上がりで伸びてきましたが、二度にわたる石油ショックにより原油価格が高騰し、燃料油販売量は減少に転じました。その後、1986年度以降は、原油価格が下落したことと円高方向で為替の変動が続いたことによって石油製品価格が低下したため、堅調な消費の伸びを見せました。1990年代半ば以降はほぼ横ばいとなり、2003年度以降は2009年度までは減少しました。東日本大震災後は発電用C重油が増加しましたが、2014年度はジェット燃料を除く全ての油種で減少し、28年ぶりに1億8千万kl台まで減少しました。
油種別構成を概観すると、自動車の保有台数が伸びたことによりガソリン・軽油の販売量が相対的に増加したこと、石油化学産業の消費の伸びに応じてナフサの販売量が増加したこと、ジェット燃料の消費が増えたことなどから、いわゆる白油化31が進んできました。
B重油及びC重油の販売量の比率は、石油ショック前は50%以上でしたが、1980年代以降、製造業の省エネルギー化による需要減少や石炭、天然ガスなど石油以外の燃料への転換、電力部門における石油火力の縮小などにより販売量は減少し、石油製品全体に占める割合は、2009年度には8%となりました。東日本大震災以降は、原子力発電量減少による石油火力の稼働率上昇の結果、2012年度は14%まで再び上昇しましたが、燃料コストの高い石油火力から他電源への転換により、2014年度は10%まで低下しました(第214-4-1)。
石油製品の用途は、2013年度は自動車など運輸関係が多く、次いで化学原料となりました。家庭・業務のシェアは電力のシェアを上回り、第3位となりました(第214-4-2)。
- (注)
- 2002年1月よりB重油はC重油に含まれる。
- 出典:
- 経済産業省「資源・エネルギー統計年報」を基に作成
- 出典:
- 石油連盟「今日の石油産業データ集」を基に作成
(2)価格の動向
特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)廃止の検討が開始された1994年初頭以降、日本の石油製品価格はガソリンを中心に大幅に下落しました。しかし、2003年後半以降は、中国の石油消費・輸入が拡大するなど世界の需要が拡大したこと、これに対する原油供給が伸び悩んだこと、イラクやイランなど一部の産油国の情勢混乱による原油供給に対する不安が存在することや、こうした将来的な需給懸念や世界的な過剰流動性を背景に資金が原油先物市場に流出入していることなどから世界的に原油価格が乱高下しました。2008年7月には、ニューヨーク市場の原油(WTI)が一時史上最高値である1バレル当たり147ドルを記録しましたが、その後、米国発の金融危機による悪影響の世界的な実体経済への波及などを背景に原油価格は大きく下落しました。その後、中東情勢の不安定化や世界的な原油需要の回復により、再び上昇しました。このような状況から日本の原油輸入価格も大きく乱高下しており、それに伴って石油製品価格も大きく変動してきました。2014年は下期以降に原油輸入価格が下落したことにより、石油製品価格も大きく低下しました。2015年は上期にやや上昇したものの、下期以降は下落傾向が続いています(第214-4-3)。
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所石油情報センター、財務省「日本貿易統計」を基に作成
- 26
- 我が国の電力需要は、現行制度において、〔1〕電灯(一般家庭など向け)、〔2〕低圧電力(商店や小規模工場などけ)、〔3〕その他電力(〔1〕~〔2〕のカテゴリーに入らない契約電力50kW未満のもの)、〔4〕特定規模需要(全ての高圧需要家(原則50kW以上))、〔5〕自家発電などに分けられます。
- 27
- 北海道電力(株)、東北電力(株)、東京電力(株)、中部電力(株)、北陸電力(株)、関西電力(株)、中国電力(株)、四国電力(株)、九州電力(株)、沖縄電力(株)。
- 28
- 2009年8月にエネルギー供給構造高度化法が施行されました。この法律は、電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対して、太陽光、風力などの再生可能エネルギー源、原子力などの非化石エネルギー源の利用や化石エネルギー原料の有効な利用を促進するために必要な措置を講じることを目的としています。
- 29
- HHVとは高位発熱量(Higher Heating Value)の略。高位発熱量とは蒸発するときに奪われる熱量(蒸発潜熱)を含む熱量のことを言います。
- 30
- LPガス振興センター「LPガスガイド」(2015年3月)の小売価格の構成より算出しています。
- 31
- 燃料油は白油と黒油に大別されます。白油とは、ガソリン、灯油、軽油など、無色透明あるいはそれに近い色相のものをいい、黒油とは、重油など、黒い色相のものを言います。