はじめに

経済産業省は、2014年4月に閣議決定したエネルギー基本計画を踏まえ、2015年7月に長期エネルギー需給見通し(以下「エネルギーミックス」という。)を策定しました。エネルギーミックスでは、安全性の確保を大前提に、安定供給、経済効率性、環境適合に関する具体的な政策目標を同時に達成するよう検討を行い、2030年度のエネルギー需給構造の見通しであり、あるべき姿を示しました。

エネルギー基本計画やエネルギーミックスを踏まえ、徹底した省エネルギーや、再生可能エネルギーの最大限の導入などを進め、化石燃料や原子力の依存度を下げるという方向性を示しました。他方、2030年度までにそのような様々な努力をした上でも、一次エネルギーに占める化石燃料依存度は77%、電源構成比に占める火力発電のシェアは56%であり、海外から安定的かつ安価にエネルギー資源を調達する体制の構築が必要です。

原油価格は100ドル(1バレル当たり米ドル。以下同じ。)前後であった2014年から、一時は30ドルを下回る水準にまで急落し、その後、40ドル前後まで回復しています(2016年3月時点)。このような価格下落の要因は何か、今後どのように変化していくのか。本章第1節では、足下の原油価格下落の要因分析と今後の展望を取り扱います。その上で、将来の原油の需給や価格の変動を巡る様々なリスクに対応するため、上流開発への投資を促進し、将来の安定的な供給構造を作る(第2節)、油価高騰リスクに対応するために柔軟かつ透明なLNG市場の構築等に取り組む(第3節)、そして、増大する新興国・産油国のエネルギー需要を抑制するために、エネルギー源の多様化投資や省エネルギー制度の輸出等において日本が貢献していく(第4節)といった方策を講じていくことを紹介します。

今年、我が国はG7議長国であり、5月1日、2日にはG7エネルギー大臣会議を開催しました。また、5月26日、27日にはG7首脳会議を開催します。このような機会を通じて、国際協調をリードするとともに、国内においても関連施策を強化していきます。

【第110-1-1】原油安局面におけるエネルギー安全保障

【第110-1-2】直近の原油価格(WTI)推移