再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策

2017年10月5日

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再生可能エネルギー(再エネ)を利用してつくった電気には、CO2排出ゼロなどさまざまなメリットがあります。前回は、「再エネのコストを考える」として、再エネの導入促進について紹介しました。

しかし、その導入を増やすためには、クリアすべきいくつかの課題があります。(1)コストの低減、(2)系統制約の緩和や解消、(3)規制や立地環境という、3つの課題です。

コストの問題や、発電所の設置場所など環境の問題は想像がつくけれど、「系統制約」についてよく知っているという人は少ないのではないでしょうか。この系統制約という問題、実は、電気のしくみ全体にかかわる大切な問題なのです。今回は、系統制約を掘り下げて考えてみましょう。

詳しく知りたい
再エネのコストを考える

1.日本の電力系統の「制約」とは

「需給のバランス」とは何か?

発電や送電、あるいは変電や配電のために使う電力設備がつながって構成するシステム全体のことを、「電力系統」と呼びます。この系統のなかで重要な問題のひとつが、需要=電力利用量と供給=発電量のバランスをとるということです。

電気は、需給のバランスがくずれてしまうと、周波数に乱れが生じ、発電所の発電機や工場の機器に悪い影響を与え、最悪の場合は大規模停電につながってしまいます。

需給バランスの維持
需給バランスのイメージを天秤にたとえて示しています。

そこで、常に需要と供給の量がバランスするようコントロールすることが求められます。電気の需要は季節によって、また1日のなかでも変化するため、需給バランスを取るにはさまざまな工夫が必要です。

しかし、発電量が天候によって左右されてしまう太陽光や風力などの再エネ由来の電気は、そのコントロールがとても難しいという特徴を持っています。そこで現在は、再エネ由来の電気を電力系統に導入する際には、火力発電などで発電量を調整して、需給バランスが崩れることを防いでいます。

「串だんご状」日本と「メッシュ状」ヨーロッパ

電気が余るのであれば、ヨーロッパのように不足している国や地域へ融通すればいいのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、南北に細長く、海に囲まれた日本では、他国へ融通することはできません。また、需給バランスの管理は基本的にエリアごとで行われています。それぞれのエリアは隣のエリアとつながってはいるものの、流せる電気の量は限られており、北から南まで、まるで1本の串でさした「串だんご」のような状態です。

このようにエリアごとに管理する方法では、電気の流れを管理しやすく、あるエリアで停電が発生した場合でも他のエリアは影響を受けにくいというメリットがあります。一方、離れたエリア間で大容量の電気を融通することが難しいというデメリットを合わせ持っているのです。

日本の系統構成
日本のそれぞれのエリアが串だんごのようがっている状態を示しています。

ちなみに、国同士が陸つづきのヨーロッパでは、まるで網の目のように電力網が張りめぐらされた「メッシュ状」になっており、他の国やエリアとの電気の融通が簡単にできます。ただし、停電が発生したときには広い範囲に影響がおよぶリスクがあります。

再エネ由来の電源が急速に拡大していくにつれて、系統制約は大きな課題となっており、さまざまな取り組みを通じて緩和・解消しなくてはなりません。太陽光や風力といった再エネ由来の電源が、日本の電力系統に大量に入っていくことで生じる系統制約は、「容量面での系統制約」と、「変動面での系統制約」に大きく分けられます。そのうち容量面での系統制約には、「①エリア全体の需給バランスの制約」と、「②送電容量の制約」があります。

系統制約が、「容量面での系統制約」と、「変動面での系統制約」に大きく分けられ、そのうち容量面での系統制約には、「①エリア全体の需給バランスの制約」と、「②送電容量の制約」があることを示しています。

これらの問題に対してどのような対策が進められているのか、具体的に見ていきましょう。

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2.再エネで電気をつくりすぎた時のために

抑制の優先順位を決める~容量面での制約対策(1)

前章で見たように、電力は需給のバランスをとることが必要です。「①エリア全体の需給バランス」をとるため、需要以上に電気が発電され余る場合には、制約が発生します。

そこで、もし需要以上に発電され電気が余る場合には、あらかじめ決められた順に、電源を確実に制御するというルールを設けることで、この制約を緩和しています。これは「優先給電ルール」と呼ばれます。

電気が需要以上に発電され余る場合には、まず火力発電(LNG・石炭・石油など)の発電量を減らします。また、ダムを使って発電する揚水発電の動力として電気を使用して、電気の需要を増やします。それでも電気が余る場合には、「地域間連系線」を使って、他のエリアに電気を融通します。さらにはバイオマス発電の出力を制御して、それでも対応できない場合には、太陽光発電、風力発電の出力を制御するという順番になっています。

ベースロードをベースに、朝・昼・夜の需要の変化や太陽光の変動等に応じて、火力発電の制御など需給を調節するイメージを示しています。

特に、太陽光発電を中心に再エネの導入が急速に進んでいる九州では、今後、再エネの出力制御が見込まれており、こうした対応が確実に実施できるように、出力制御の訓練も行っています。また、再エネの出力制御量を減らすために、地域間連系線のさらなる利用の拡大や、電気が余る時間帯に需要の創出を促すための取り組みなども進めています。

あらかじめ制御に協力を求める~容量面での制約対策(2)

エリア内で需給バランスをとるためには、再エネ事業者にも出力制御に協力してもらうことが必要です。そこで、事業者が事業を始める際にはあらかじめ制御の可能性があることを知らせ、理解してもらったうえで、事業を開始してもらっています。

FIT法を導入した際に、再エネ事業者は年間30日を上限として無補償で出力制御に応じることが義務付けられました。その後の再エネ導入量の増加にともなって、現在は30日以上の制御を可能とする「指定電気事業者制度」が取り入れられ、さらなる再エネの受入れを行っています。

再エネの導入が拡大している北海道や九州などでは、すでに30日以上の制御を前提に、再エネ事業者が電力系統へ接続しています。

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3.再エネでつくった電気を送るために

日本版コネクト&マネージ~送電容量の制約対策(1)

こうした取り組みにより、再エネの発電量が増えても、現在の送電設備では、送電できる容量には限界があります。発電事業者から系統への接続契約の申込みがあれば、その送電容量の中で、申込み受付順に送電できる容量を確保していますが、空きがなくなった場合には、希望に応じて新しい送電設備を作り、増えた容量の中で接続を行います。とはいえ、新しく送電設備をつくるには、たくさんのコストや時間がかかります。これが「②送電容量の制約」です。

この制約を緩和・解消する方法として、まず既存の系統を最大限活用することが検討されています。「日本版コネクト&マネージ」という方法です。

通常、発電事業者が系統への接続契約の申込みを行って送電線の容量を確保するのは、発電所の計画段階です。このため、送電線の空きがないとされる系統でも、送電線の容量を確保した発電所が、運転開始前であったり、運転開始後でも時期によって稼働していない場合などは、送電線に電気が流れていない時間帯が発生することもあります。こうした場所には、別の発電所の接続を新たに契約すると、先に接続契約をしていた発電所が運転する時間帯には送電線の容量が超過となるため、後から接続を申し込んだ発電所が運転の制限を受け事業予見性に影響が出ることになります。

しかしながら、イギリスなどでは、「コネクト&マネージ」という制度のもと、こうした送電上の制約をあらかじめ受け入れる事業者に対して、系統への接続を認めているという例もあります。日本でも、海外のしくみをよく調べながら、限られた既存の電線をうまく活用して、電源を最大限接続していくことが検討されています。

このしくみが導入されれば、これまでと比べて、増強工事を減らしつつ、より多くの電気を送れることが期待できます。

間接オークションの導入~送電容量の制約対策(2)

また、既存の電線の利用をさらに効率化しようという対策もとられています。たとえば、エリアとエリアの間で送電するための「連系線」の利用者は、先着順で決められています。その結果、もしコストの安い電源が後からあらわれた場合であっても、空き容量が十分でなければ連系線を利用できないことになってしまいます。

こうした状況を見直そうと導入が検討されているのが、コストの安い電源順に連系線を利用できる「間接オークション」というルールです。これにより、再エネを始めとした、より安い電源を送電しようという事業者間の競争も活性化できると考えられています。

このほかにも、各エリアの電力会社などのホームページで、電力系統の空き容量を具体的な数値で随時公表したり、電力広域的運営推進機関のホームページで、地域間連系線については5分、地内基幹送電線については30分の周期で利用状況をリアルタイムで公表したりするなど、より効率的な電力系統の運用を目指しています。

連系線の増強もやはり必要~送電容量の制約対策(3)

このように既存の系統の最大活用が進められると同時に、連系線の増強も検討されています。具体的には、東京エリアと、東北エリアおよび中部エリアとの増強計画です。また風力など再エネ由来電力の量が多い北海道エリアと、電力需要の多い本州間での増強工事は、2019年3月に完了が予定されています。

地域間連係線の増強計画
全国の連系線の増強状況を示しています。具体的には、東京エリア、東北エリア、および中部エリアとの増強計画があります。また、北海道エリアと本州間での増強工事は、2019年3月に完了が予定されています。

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系統の増強につきまとう工事費の問題についても、対策を講じてきています。これまで発電事業者による要望があるたびに、個別に検討を行っていた系統増強の工事について、希望する事業者を地域ごとにまとめて、費用を複数の事業者で負担する共同工事を行うことを可能にしました。この方法であれば、工事をより効率的に行うことができます。一部、入札後に辞退者が出ることでプロセスが長期化している案件については、入札時点で負担可能な上限額を申告してもらうことなどにより、プロセスの早期成立に向けて取り組んでいます。

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4.再エネの変動を調整するために

蓄電池の活用~変動面での制約対策

再エネ由来の電力が持つ出力変動の大きさも、制約が必要となる要因のひとつとなっていました。再エネ由来の電力を活用していくためには、その変動を調整できる何らかのしくみが必要です。

そのような調整力のひとつとして期待されているのが蓄電池です。たとえば北海道は、風力発電に適した地域であり、これからも大量の風力の導入が見込まれています。ところが、需給バランスの調整力となる火力発電が少なく、このままでは風力発電の出力変動に対応できなくなり、電気の需給バランスが維持できなくなる可能性が出てきました。

そこで北海道電力は、風力発電事業者には、発電所ごとに蓄電池を設置することなどにより、出力変動を一定の範囲内にしてもらうよう要件を定めました。また、発電所ごとに蓄電池を置くだけでなく、系統側に蓄電池を設置することで、蓄電池の容量を大幅に減らすことが期待できることから、複数の風力発電事業者が系統側蓄電池を共同で設置することで、さらなる導入拡大につなげるための取り組みも始まっています。さらに、蓄電池の活用だけでなく、新設されるLNG火力発電所の調整力としての活用や、連系線を活用して他エリアから調整力を調達する取り組みも行っています。

再エネの導入を進めるためには、系統制約の問題を解決することが欠かせません。今後も、制約をできるだけ緩和し解消するための、さまざまな取組みが行われていく予定です。

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