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『地球温暖化・省エネ』 第3回

省エネ大国・ニッポン ~省エネ政策はなぜ始まった?そして、今求められている取り組みとは?~

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化石資源に乏しい日本は、貴重なエネルギーを大切に使うため、エネルギー消費効率の向上に努めてきました。その結果、経済成長と同時に、世界でトップクラスの省エネを達成してきました。

今回は、省エネ先進国である日本において、これまで取り組まれてきた省エネ政策と現状の課題、未来に向けてさらに省エネを促進するため検討されている課題について紹介します。

1.省エネの歴史と省エネ法

オイルショックを受けて成立した省エネ法

日本は、経済成長と同時に、世界最高水準のエネルギー消費効率を追求してきました。

実質GDPとエネルギー消費効率の推移
1973年から2015年までのエネルギー消費効率と実質GDPを示したグラフです。

(出典)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、内閣府「国民経済計算年報」を基に作成 ※1994年まで2005年価格、 1995年以降は2011年価格

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エネルギー消費効率の各国比較(2013年)
各国のエネルギー消費効率を比較した棒グラフです。

(出典)IEA「Energy Balances of OECD Countries 2014 Edition」、「Energy Balances of Non-OECD Countries 2014 Edition」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成 ※一次エネルギー供給/実質GDPを日本=1として換算

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そんな日本の省エネ政策の根幹をなすのが、「省エネ法」です。省エネ法とは、正確には「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」といい、1979年に制定されました。

契機となったのは、1973年と1979年に起こったオイルショックです。この時、石油の供給が止まるのではないかという恐れから、日本中が大混乱に陥りました(「石油がとまると何が起こるのか? ~歴史から学ぶ、日本のエネルギー供給のリスク?」参照)。その教訓から、エネルギーの効率的な利用を促進する省エネ法が設けられたのです。省エネ法はその後、その時々の状況に応じて改正され、現在に続いています。

省エネ法の歴史
省エネ法について、1979年の法制定からどのように改正されてきたかの歴史を示した表です。

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省エネ法の対象となる事業者とは

省エネ法では、工場や事業場、輸送事業者、荷主、機械器具などを製造・輸入している事業者、エネルギー小売事業者を対象に省エネへの取り組みの規範を示し、努力を求めています。また、一定規模以上のエネルギーを使用している事業者は、年に一度エネルギーの使用状況などを国に定期報告することになっています。

省エネ法の対象とは
省エネ法の対象となる事業者や機器を示した表です。

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目標は「年平均1%以上」の省エネ

事業者の省エネの取り組み状況を評価する際、評価基準のひとつとなるのが「エネルギー消費原単位」を年平均1%以上低減しているかという点です。

「エネルギー消費原単位」とは、ある一定の生産活動に対するエネルギーの使用量を表す単位です。たとえば、工場にエネルギー効率の高い機器を導入すれば、製品の製造に必要となるエネルギーは少なくなり、「エネルギー消費原単位」を低減することができます。

省エネ法では、この評価基準を含め、省エネ取り組みの規範である「判断基準」に照らして、定期報告の内容を評価し、必要に応じて立入検査や指導などの対応が行われます。

トップランナー制度

機械器具などについては、「トップランナー制度」が設けられています。これは、1997年に開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)を受けて、1998年に行われた省エネ法改正で導入されたものです。

「トップランナー制度」では、エアコンやテレビのような家電製品、自動車などのエネルギーを消費する機械器具について、目標年度における省エネ基準を達成するよう事業者に求めています。目標年度は、3~10年程度先の年度が設定されます。2013年の法改正で、断熱材などの建材にも新たに「トップランナー制度」が適用されることとなり、現在、32品目が対象となっています。

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2.長期エネルギー需給見通しと最近の取り組み

2030年度までに原油換算5030万kl相当のエネルギー消費を削減

2030年度のエネルギー需給構造の見通しを示した「長期エネルギー需給見通し」では、年1.7%の経済成長を前提として、最終エネルギー需要を2030年度までに原油換算で5030万klほど削減することとなっています。

これにはオイルショック後に実現された徹底的な省エネと同じ程度の、35%ものエネルギー消費効率(最終エネルギー消費量/実質GDP)の改善が必要となります。

この「原油換算で5030万kl」の省エネは、「産業」、「業務」、「家庭」、「運輸」の4つの部門において、以下のような対策を積み上げた結果実現されるもので、今後、これらの対策を着実に進めていく必要があります。

(参考)エネルギーミックスの主な省エネ対策
各部門で必要な省エネ対策の参考例を示した表です。

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業界共通の指標で取り組みを測る「ベンチマーク制度」

2008年度から、「ベンチマーク制度」がスタートしました。これは、業種・分野ごとにエネルギー消費原単位の目標(ベンチマーク指標)を設定し、省エネの取り組みに関する自社のポジションを確認してもらい、更なる省エネ取り組みを促すことを目的に導入されました。

ベンチマーク指標は、各業種・分野において一定規模以上のエネルギーを使用している事業者のエネルギー消費原単位を分析し、上位1~2割の水準に設定されます。これまでに、9業種13分野でベンチマーク指標が設定されています。

2016年度からは、定期報告の対象となる工場などを省エネ状況に応じてクラス分けする評価制度も始まりましたが、ここでも評価基準の1つとしてベンチマーク指標が活用されています。

省エネの取り組みを進めてきたがゆえに「エネルギー消費原単位」を年平均1%以上低減することが難しくなった事業者についても、この指標によって適正な評価が可能となります。

省エネの取り組みを補助金で促進

工場などにおける設備の省エネ設備への入れ替えや、断熱効果などに優れた「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」( 「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~新しい省エネの家「ZEH」」 参照)の建設に必要な費用を支援し、普及を促進しています。

また、中小企業などに対する省エネルギー診断事業や運輸部門における省エネルギー対策事業、革新的な省エネルギー技術の開発を促進するための補助事業も実施しています。

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3.省エネの今後の課題

企業の枠を超えた連携による省エネを

総合資源エネルギー調査会の省エネルギー小委員会は、2017年、さらに省エネの取り組みを加速させるための課題について審議を行い、報告書 (PDF形式:2.09 MB)を公表しています。

キーワードは「連携」です。事業者の枠を超えた連携や、荷主と貨物輸送事業者の連携、機器間の連携、さらにはエネルギーを使用している当事者に省エネを働きかけることができる者(サードパーティー)を活用した省エネ取り組みが重要であるという方向性が示されています。

たとえば、現在の省エネ法は事業者単位の省エネを評価していますが、今後は事業者間連携による省エネも促進していくことも重要との指摘がありました。

また運輸部門では、荷主と貨物輸送事業者の連携を強化するとともに、荷主以外の輸送に関与する事業者にも幅広く省エネへの協力を求めるべきとの指摘もあり、今後これらを含め、具体的な施策を検討していきます。

サードパーティーを活用して更なる省エネを

中小企業や家庭などの省エネ取り組みを促進するためには、省エネノウハウを持っている事業者(サードパーティー)による、省エネビジネスの活用も有効になると考えられます。

たとえば、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)については、ZEHの建築を消費者に働きかけるハウスメーカーや工務店、設計事務所などが「サードパーティー」と捉えられます。そこで、ZEHの販売目標や販売実績を公表して積極的に取り組むハウスメーカーなどを「ZEHビルダー」と位置付け、「ZEHビルダー」による建築をZEH補助金交付の要件とすることで、ハウスメーカーなどのサードパーティーの取り組みを促しています。

また、全国44箇所に設置されている「省エネルギー相談地域プラットフォーム」では、今年度、中小企業などの省エネを支援する事業者が、地域の専門家(商工会議所や自治体、コンサル及び金融機関など)と協力して、省エネ診断から診断後のフォローアップまで、中小企業などの省エネ取り組みを総合的に支援しています。これも、重要なサードパーティーの活動のひとつです。

省エネの取り組みは、パリ協定などで今話題となっている温室効果ガス削減の点でも、とても重要なものです。省エネ先進国として、省エネを次の段階へと推し進めるべく、今後とも各部門の省エネ取り組みを促進していきます。

お問合せ先

記事内容について

省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室

※本文中、数値に間違いがありました。
(誤)「これまでに、11業種13分野でベンチマーク指標が設定されています。」
(正)「これまでに、9業種13分野でベンチマーク指標が設定されています。」
お詫びして訂正いたします。本文は修正しております。(2018/1/12 18:30)