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東日本大震災後、日本では、すべての原子力発電所(原発)が停止しました。2017年12月現在では、5基の原発が再稼動をしています。

国内でエネルギーをまかなうことができない日本は、安全性の確保を大前提に、経済性(コスト)や気候変動の問題に配慮しながら、安定的なエネルギー供給を確保する必要があります。

日本とは異なるエネルギー事情を抱える世界各国では、原発についてどのような政策がとられているのでしょうか。今回は、世界の原発と政策に関する状況を見ていきましょう。

1.世界の原発の歴史

1950年代~1970年代:原発の黎明期から積極的導入期

まずは、世界の原発利用の歴史を見ていきましょう。

世界ではじめて人工的に原子炉が臨界に達する(核分裂を起こす)ことができたのは、1942年、米国シカゴ大学でのことです。1951年には、世界初の原子力エネルギーを使った発電が米国で行われました。1953年の国連総会におけるアイゼンハワー米国大統領による『Atoms for Peace』と呼ばれる演説後は、世界的に原子力平和利用への注目が高まり、1957年には軍事利用への転用を防止するための国際機関としてIAEA(国際原子力機関)が設立されます。こうして、原子力の平和利用が推進され始めました。

1973年に、世界中が大混乱に陥った「第一次オイルショック」が発生(「石油がとまると何が起こるのか? ~歴史から学ぶ、日本のエネルギー供給のリスク?」参照)。世界各国は、国際政治の動向に左右されやすく不安定である石油資源に頼り過ぎることのリスクを考えるようになり、原発の設置が進みました。

1980年代:原子力利用の低迷期

そんな中、1979年、米国ペンシルバニアのスリーマイル島で、原発事故が起こりました。さらに1986年、旧・ソビエト連邦(現・ウクライナ)のチェルノブイリで原発事故が起こります。

こうした事故の発生、また一方で石油を始めとするエネルギーの資源価格が安定していたこともあり、それまで原子力を利用していたものの脱原発を表明する国が現れ、米国で新規建設のプロジェクトがなくなるなど、世界各国の原発利用は停滞することとなりました。

1990年代~2000年代:原発への回帰

アジア地域の急速な経済成長などを背景に、世界のエネルギー需要が急増する一方、原油資源の供給は伸び悩み、エネルギーの需給はひっ迫し始めます。さらに、この頃から地球温暖化に対する問題意識が高まり、各国がCO2などの温室効果ガス排出抑制に取り組むこととなります。こうした背景から、先進国および新興国で原発の建設が進められました。

2010年代~:ポスト福島

2011年、福島第一原発事故が起こりました。世界では、この事故を受け、あらためて複数の国・地域が脱原発の方針を表明しました。一方で、温暖化対策やエネルギー安全保障のために原発を選択し、引き続き利用する国が多く存在しているのも事実です。

2017年における主要各国の原発利用状況
現在の原発に対する各国のスタンスを、「現在利用しているかしていないか」「将来的に利用か非利用か」の軸で分類した図。

(出典)World Nuclear Association ホームページ(2017/8/1)より資源エネルギー庁作成  ※主な国を記載

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2.世界の原発の見通し

原発事故と原発政策の変遷

将来の見通しについて触れる前に、ここで、各国の政策の変遷を振り返ってみましょう。
例として、第1章でご紹介した原発事故を取り上げ、これらの事故によって政策が変更されてきたケースを見てみます。

1979年のスリーマイル島原発事故を受けて、まっさきに脱原発を表明したのは、北欧・スウェーデンでした。国民投票を実施し、1980年に脱原発の方針を決定。ただし、電気料金の上昇やCO2の排出量の増加を受け、2010年には法律を改正し新たな原発の建設を容認するほうへ転じました。現在も、水力と原子力で総発電量のおおむね9割をまかなっています。

1986年のチェルノブイリ事故は、欧州の広い範囲に、直接的に影響を与えました。エネルギー資源に乏しいイタリアは、それまで原発を活用していましたが、国民投票を実施し、1988年に一定期間の建設凍結を決定。1990年に全基が閉鎖されて現在に至っています。また、ベルギーも、1988年に建設計画を撤回し、その後2003年には建設禁止を法制化しました。

他方で、事故が起きたウクライナ自身は、1990年に建設を凍結しましたが、電力不足に陥ったために3年後にそれを撤回。エネルギー安全保障などの観点から、チェルノブイリ原発1~3号機(事故を起こしたのは4号機)を含めて運転を続け、長期的にも原発を活用する方針を掲げています。 

2011年の福島第一原発事故後にあらためて脱原発を表明したのは、ドイツ、スイス、台湾、韓国です。この中でスイスは、チェルノブイリ原発事故を受けて一時期凍結していた建設を2000年代に入って容認していましたが、あらためて脱原発の方針を決定しました。

このように、事故と各国の政策との関係だけを見ても、各々の置かれた状況に応じて政策が進められており、さまざまな変遷があったことがわかります。

IAEAは、長期的には原発の重要性は続くと予測

世界全体を俯瞰すると、現時点では、31ヶ国・地域で447基の原発が稼働し、IAEAやOECDといった国際機関などを通じて、安全性や核不拡散の分野で国際協力が進められています。

IAEAは、原発の将来について、短期と長期に分けて分析しています。短期的には、天然ガス価格の低下や再生可能エネルギーの拡大により電力価格が下がっている地域や金融市場が不安定な地域において、原発への投資は先送りされるとしています。一方、長期的には、以下の要因によって、低位のケースでも微減、高位のケースでは大幅に増加すると予測しています。

リストアイコン 発展途上地域における人口の増加・電力需要の増加
リストアイコン 気候変動や大気汚染への対策の必要性
リストアイコン エネルギー安全保障
リストアイコン 他のエネルギー資源価格の変動

特に近年、発展途上の地域においては、原発を新規に導入しようとする国を中心に、中国やロシアなどが積極的に展開を図っています。

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3.主要国の原発政策の今

世界の主要各国の原発政策は、今どのようになっているのでしょうか。具体的な動向を見てみましょう。

米国

米国では、現在世界で最も多い99基の原発が稼働していますが、多くは1980年代までに稼動したものであり、そのうち86基は寿命を60年に延長しています。

かつて、スリーマイル島原発事故の後は、原子力に対する不信が高まり、稼働率が低下すると共に、新規建設が途絶えた時期もありました。強い危機感を抱いた事業者自らが自主規制機関を設立し、良好な取組や改善点を互いに指摘しあう活動などを開始しました。その結果、20年以上の長い歳月をかけて、より高い安全性を確保し、事故以前よりも稼働率を向上させることに成功しました。近年は、卸電力価格の下落により、経済性の観点から老朽化した原発が閉鎖されるケースもあります。一方で、各州において、原発の低炭素電源としての価値に着目し、政策支援を行う動きも見られます。

トランプ大統領は、2017年6月の演説において、「エネルギーの優越(Energy Dominance)を確立する6つのイニシアチブ」の第一に原子力を取り上げ、「クリーンで再生可能な排出のないエネルギーである原子力の再興と拡大(revive and expand)」を表明しています。

なお、複数の原発プロジェクトが現在進行中ですが、30年間新規の建設案件がなかったこと等により、建設費が増加するといった課題も生じています。

英国

2050年までに温室効果ガスを1990年比で80%削減する目標を法律で定めており、温室効果ガスを排出しない電源の確保が重要となっています。

こうした中で、英国政府は、原発を、電力安定供給と地球温暖化対策に貢献できる重要な電源と位置けています。現在は、15基が稼働し、総発電量の約2割を占めていますが、施設老朽化のため、これらは1基をのぞいて遅くとも2030年までに閉鎖される予定であり、大幅な電源不足に陥ることも懸念されています。

そこで、2013年12月、原発や再エネなどの低炭素電源を対象として「差額決済契約制度」と呼ばれる制度の導入を決定しました。これは売電収入を安定化させることで、低炭素電源の事業の予見性を高めるための仕組みです。また、政府による重要インフラプロジェクトに対する債務保証制度や、新規で原発を立地する自治体への支援策も創設しています。

現在、政府は8つのサイトで原発の新設を進めていますが、国内では原子力関連技術が衰退しているため、主に海外の事業者によって開発計画が進められています。

フランス

現在、原発58基が稼動しており、総発電量に占める原発の割合は約76%です。

オランド前大統領の時に成立した「エネルギー転換法」では、原発の割合を2025年までに50%に縮減する方針を掲げていました。しかし、マクロン大統領就任後の2017年11月、フランス政府はこの目標達成時期を5~10年程度延期する方針を発表しました。

見直しの背景として、政府は、原発の閉鎖を進めれば、代替エネルギーとして石炭火力発電所を稼動させて電力を確保することが必要となり、CO2の排出量の増加が避けられない点を指摘しています。

ドイツ

ドイツは、2002年に原発の段階的廃止を法制化しました。その後、法律改正によって運転期間を延長する措置がとられたこともありましたが、福島第一原発事故を受けて、あらためて脱原発の方針を決定し、2022年までにすべての原発を閉鎖することにしました。

原発の代替エネルギーとなる電源の確保のため、再生可能エネルギーの利用を拡大しています。その上で、陸続きであるEU各国と電力の融通を相互に行っています。ただ、安定的な電力供給を行うために、温室効果ガスの排出量の高い石炭火力発電への依存度が高くなっており、温暖化対策との両立をはかる必要も生じています。

中国

中国は、急激に増大している電力需要に対応するため、1994年に国内発の原発が運転開始して以降、積極的に原発導入を進めています。福島第一原発事故を受けて、事故時の影響に対する懸念から内陸部での建設が凍結されましたが、沿岸部では積極的に建設を継続し、2011年以降に新たに24基が運転開始しました。現在は、米仏日に次ぐ37基の原発を保有し、2020年には現状の80%増の規模にまで拡大する計画です。

さらに、パキスタンやアルゼンチンなどの新興国に対して原発の輸出を積極的に行っています。

韓国

2017年6月、文在寅大統領が脱原発に向かうと宣言しました。

10月には政府として「エネルギー転換(脱原発)ロードマップ」を決定。新規建設の計画は全面白紙化され、運転期間の延長も禁止されました。原発が段階的に廃止される分は、太陽光発電や風力発電を大幅に拡大し代替するとしています。

国内には、脱原発に伴う電力不足や電気料金の高騰を懸念する声もあり、こうした声に対して、政府は、国民生活に支障が起きないように少なくとも60年以上の時間をかけて漸進的に進める政策だと説明しています。

ちょうど建設中であった新古里(シンゴリ)5・6号機については、建設を継続するかどうかを判断するため、一般市民による「参与団」が構成され、大規模な合宿も含めた討論型世論調査を実施しました。その結果、「参与団」の多数が建設再開を支持し、政府は建設再開を決定しました。

新古里原発建設再開に関する討論型世論調査の結果(市民の意見の推移)

(出典)韓国 新古里5・6号機公論化委員会 報道資料

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4.それぞれの国に応じた原発政策のありかた

さまざまな要素で決定されるエネルギー政策

ここまで見てきたように、世界においては、エネルギー政策全体の中で、それぞれの国の事情も踏まえながら原発の利用が位置づけられています。

エネルギーの安定供給、経済性、地球温暖化対策、大気環境悪化への対応などのさまざまな要素が絡み合う中で、世界における原子力の利用が今後どのようになっていくのか、引き続きよく目を向けることが重要です。

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