あらためて考える、日本における「石炭」の役割

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「【日本のエネルギー、150年の歴史①】日本の近代エネルギー産業は、文明開化と共に産声を上げた」でもご紹介したように、日本で古くから使われてきたエネルギー資源、石炭。最近は環境負荷の高さに注目が集まりがちですが、今も世界各国ではエネルギー政策の観点から重要な資源であり続けています。今回は、石炭が現在の日本のエネルギー政策の中で果たしている重要な役割をご紹介します。

エネルギー政策のあり方と日本のエネルギー事情

エネルギー政策において重要なポイントは、「3E(エネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境への適合)+S(安全性)」であり、これらを同時に満たすことです。とはいっても、ひとつのエネルギー源で「3E+S」を完全に満たすことは難しいため、各国はさまざまなエネルギー源を組み合わせて、戦略的にエネルギー政策を決定しています。

注意すべき点は、エネルギー政策は、その国が保有する資源や自給率といった側面や、地理的な条件などを踏まえて考えていく必要があるということです。そのため、エネルギー政策は国によって異なってきます。そうした中で、石炭の持つ役割やその役割の大きさも、国によって異なってくることとなります。

日本のエネルギー事情①資源に乏しくエネルギー自給率が低い

ここで、日本のエネルギーの現状をおさらいしてみましょう。

日本ではこれまで、再エネを普及させるためのさまざまな取り組みをおこなってきましたが、日本のエネルギー自給率は8%と、諸外国と比較して非常に低く、中でも石油などの化石燃料は特に乏しいという状況にあります。下記の表を見ても分かるとおり、「国産資源」と呼べる化石燃料による一次エネルギーが日本にはほとんどなく、エネルギー資源の大部分は諸外国からの輸入にたよっています。

世界各国のエネルギー自給率の比較
世界各国のエネルギー自給率を比較した表です。

(出典)第2回エネルギー情勢懇談会参考資料(⼀次エネルギー。IEA Energy Balances 2017 ※⽇本の⾃給率は資源エネルギー庁推計)

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日本のエネルギー事情②島国特有のエネルギー事情

もう1つの大きな特徴は、島国であるため、地理的にガスパイプラインや国際送電線により、他の国と連結することが難しいということです。ヨーロッパのように地続きの国々は、天然ガスのパイプラインや送電線を国際的に連結し、需給のバランスに応じて互いにエネルギーの売買を行っています。そのため、国内で必要とされる電力をすべて自国でまかなうだけの設備容量を持つ必要は必ずしもありません。しかし島国である日本では、現状では、常時必要となる設備容量のすべてを国内で備える必要があるのです。

各国の国際的エネルギー連結の状況
世界各国の国際的なエネルギー連結の有無を比較した表です。

(出典)エネルギー情勢懇談会資料より作成

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日本のエネルギー政策を考えるうえでは、こういった特殊な状況に合わせたポートフォリオを考えていくことが必要です。このような状況にある日本では、石炭をどのように活用していくべきなのでしょうか。

石炭の持つエネルギー政策上のメリット~安定して、長く使える

石炭がエネルギー政策上で持つメリットとはどのようなものでしょう。まず、石炭は、ほかの化石燃料に比べて賦存地域(天然資源が理論上は存在していると算定されている地域)が欧州・ユーラシア、北米、アジア大洋州など地理的にバランスよく分散しており、供給の安定性が高いということがあげられます。石油や天然ガスと比べて、地域による偏在が少なく、地政学的リスクの高い中東に依存する必要がないことから、エネルギーセキュリティを向上させることが可能です。

石炭の可採年数と、地域別資源埋蔵量を表したグラフです。

(出典)BP統計

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さらに、ほかの化石燃料に比べて経済的に採掘できる年数(可採年数)が長いという特徴を持ちます。

他の化石燃料と比較した場合の石炭のメリット

次に、価格が低めで安定していることがあげられます。熱量あたりで比較すると、価格は原油やLNGに比べ1/2~1/3であり、価格の変動も少ないため、発電コストの低いエネルギー源として活用することができます。

燃料価格の推移
石炭、LNG、燃油の価格の推移を示したグラフです。

(出典)一般財団法人日本エネルギー経済研究所

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また、石炭は常温で固体であり、LNGのように揮発しないこと、他の燃料と比較して爆発の危険性も低いことから、保管が容易であるというメリットも持っています。このため、日本国内には約1ヵ月分の在庫が存在しています。

在庫水準の比較(2017年3月末)
石油、LPG、石炭、電力用LNG、都市ガス用LNGの在庫水準を比較した表です。

算定方法:3月末在庫/3月の日あたり消費量  (出典)電力調査統計、ガス事業生産動態統計調査

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多様な燃料をバランスよく使うことが、エネルギーの安定供給に貢献

前述したように、1つの燃料で「3E+S」を完全に満たすことは難しいというのが現実です。しかし、さまざまな輸送ルートで輸入した多様な燃料を使い分けることができれば、リスクを分散させ、エネルギー供給の安定性を向上させることにつながります。

日本の化石燃料の輸入先と中東依存度(ホルムズ依存度)
原油、石炭、LNGの輸入先と中東依存度を示したグラフです。

(出典)貿易統計

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その中で、高い安定供給性、経済性を持つ石炭は、前述したようにエネルギー自給率の低い日本にとって、とても重要なエネルギー資源だといえるでしょう。ただし、石炭にはCO2の排出量が多いというデメリットがあり、環境に配慮しながら使用する必要があります。次回は、そうしたCO2排出というデメリットをできるだけ低減し、なおかつ貴重な資源である石炭を有効に活用していくために進められている技術開発の現状についてもご紹介します。

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