広島県大崎上島町で行われている、高効率化を目指した「石炭ガス化燃料電池複合発電実証プロジェクト」の写真です。

高効率化を目指した「石炭ガス化燃料電池複合発電実証プロジェクト」(広島県大崎上島町)(提供:大崎クールジェン株式会社)

「あらためて考える、世界と日本における『石炭』の役割」で見たように、石炭は安定供給や経済効率性の面で優れたエネルギー源です。その一方で、デメリットもあります。そのもっとも大きな問題は、CO2発生量が、他の化石燃料にくらべて多いことです。このため、できるだけCO2の排出量を減らし、「脱炭素社会」を目指そうとしている今、石炭を使った火力発電はできるだけ減らすべきだという声もあり、国によっては、石炭の利用を低下させつつあるところもあります。今回は、世界各国における石炭の利用や技術開発の現状を見てみましょう。

国・地域によって異なる「脱石炭」の背景

イギリスは2025年までに、フランスは2021年までに石炭火力発電を廃止すると表明しています。両国で現在稼働している石炭火力発電設備は、1980年以前に運転を開始し老朽化した設備や低効率の設備がほとんどであるため、耐用年数が過ぎたものなどを順次廃止していくことになります。

また、ドイツも石炭火力発電を段階的に廃止する方針を打ち出しています。しかし、同国は年間1.8億トンもの石炭を生産している産炭国でもあることから、廃止の年限については、現時点では決められていません。2018年6月に、石炭火力発電の段階的廃止について年限も含めたロードマップを12月までに作成するための委員会を設置することが発表されました。今後は、国内炭鉱の閉山対策なども含め、議論が行われていくこととなります。

米国でも石炭火力発電の稼働率は低下しています。これは、同国の石炭火力発電設備には老朽化したものが多いため、経済性が低いことと、「シェール革命」(「2018年5月、『シェール革命』が産んだ天然ガスが日本にも到来」参照)により米国内の天然ガスの価格が低下したことに伴い、市場メカニズムによりガス火力発電の稼働率がアップしていることが一因と考えられます。

中国やインドなどの新興国でも、石炭の新設を鈍化する動きがあります。これらの国々では、現状の電源構成に占める石炭の割合が非常に高く、大気汚染対策の観点からも、石炭依存の状況を改善する取り組みが行われています。

電源別電力構成(2016年)
各国の電源別の電力をパーセンテージで示したグラフです。

(出典)IEA/Energy Balances of OECD/NON-OECD 2017

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新興国を中心に石炭火力発電の需要は拡大

このように石炭の利用を抑制していこうとする動きがある一方で、今後人口の増加や一人当たりの電力消費量の増加に伴い、新興国を中心として世界全体の電力需要の増加が見込まれる中、石炭火力発電の需要も増えていくことが予想されています。

IEAが発行している「World Energy Outlook 2017」によると、IEAが中心的なシナリオとして位置づけている「新政策シナリオ」(実施済みの政策と、今後実施がアナウンスされている政策の影響も考慮したシナリオ)では、2040年には世界の発電電力量は2016年の1.6倍程度になると予測しています。その中で石炭火力による発電量も、伸び率は他の電源よりも低いものの、2016年の9,282TWh(1TWhは10億kWh)から2040年には10,086TWhに増加することが予想されています。特に、中国、インド、東南アジアなどで拡大していくとされています。これは、新興国では、ほかの化石燃料に比べて経済性に優れている、供給安定性に優れているといった石炭の特性から、石炭に頼らざるを得ない国がまだ多く存在すると見込まれていることによります。

世界の発電電力量(新政策シナリオ)
新政策シナリオの場合の世界の発電電力量を2040年まで示したグラフです。

(出典)IEA World Energy Outlook 2017 新政策シナリオ

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主要地域における石炭及びガス火力発電容量の増減見通し(2016-2040)
世界各国の石炭火力発電およびガス火力発電の容量増減を予想したグラフです。

(出典)IEA World Energy Outlook 2017 新政策シナリオ

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求められる石炭火力発電の進化

エネルギー安全保障や経済性の観点などから、石炭をエネルギー源のひとつとして選択せざるを得ない国がある中で、石炭のメリットを活かしつつ、デメリットである環境負荷を抑制していくためには、石炭火力発電の技術を磨き、CO2排出量や大気汚染物質を抑制していくことが重要です。

日本は、世界の中でも非常に優れた石炭火力発電の高効率化技術を持っています。石油火力発電やLNG火力発電よりはCO2排出量が多いものの、世界の石炭火力発電の平均より少なく、「超々臨界圧発電(USC)」や「石炭ガス化複合発電(IGCC)」などの最新技術を用いれば、さらに削減が可能です。

世界における火力発電のCO2排出量の比較
世界の火力発電のCO2排出量を比較したグラフです。

(出典)電⼒中央研究所報告書(2016)や各研究事業の開発目標をもとに推計 ※国内USCについては、最新鋭の発電技術の商用化及び開発状況(BATの参考表)をもとに算出 ※海外については、「CO2 Emissions from Fuel Combustion 2016」をもとに算出

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また、前述したように、イギリスやフランスなどのEU域内では老朽化した火力発電所が残っているため、EEA(欧州環境庁:European Environment Agency)のレポートによると、EU域内にある発電所のうち、約4割はEUにおける環境基準を満たしておらず、特に石炭火力発電所については、約6割の設備が環境基準未達の状態となっているとのデータもあります。一方、日本では、自治体との公害防止協定などをクリアするため、世界トップクラスの環境対応を実現しています。

各国石炭火力発電所の環境対応状況
世界化国の石炭火力発電所の環境対応をくらべた表です。

(出典)排出量/OECD.StatExtract、発電電力量/IEA ENERGY BALANCES OF COUNTRIES 2016 EDITION

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日本の石炭火力技術により、世界のCO2排出抑制に貢献

こうした日本の高効率かつ環境対応能力の高い石炭火力発電技術が諸外国で採用されれば、結果的に地球全体の温暖化対策や地域の大気汚染防止など、環境負荷低減につながります。たとえば、仮に、中国、インド、アメリカの石炭火力に、日本で現在もっとも効率の高い技術(USC/超々臨界圧発電方式)を適用した場合、1年間のCO2削減効果は、日本が年間に排出するCO2と同等の12億トンにのぼると試算されています。

石炭火力発電からのCO2排出量実績(2014年)と日本の最高効率適用ケース
石炭火力発電のCO2排出量の実績と、日本の再興効率を適用した場合を示したグラフです。

(出典)IEA World Energy Outlook 2016等から作成

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さらなる石炭火力発電の低炭素化を目指して

このように、日本の石炭火力技術は現在でも世界トップクラスの水準ではありますが、国内におけるCO2排出量の2割強が石炭火力発電に由来していることからも、今後もより一層の高効率化、環境対応性能の向上に取り組む必要があります。

日本の石炭火力発電の効率が1%向上すれば、年間で約660万トンのCO2を削減できます。こうした観点からも、石炭火力の高効率化に関する技術開発は喫緊の課題です。

日本全体に占める火力発電のCO2排出量(2015年度実績値)
日本全体のCO2排出量のうち火力発電が占める割合を示したグラフです。

(出典)環境省2014年度の温室効果ガス排出量(確報値)

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石炭火力発電の効率向上におけるCO2削減ポテンシャル
石炭火力発電の効率向上をおこなった場合のCO2削減ポテンシャルを示したグラフです。

(出典)環境省2014年度の温室効果ガス排出量(確報値)

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経済産業省では、産官学の有識者からなる協議会で「次世代火力発電に係る技術ロードマップ」を取りまとめ、次世代火力発電の開発目標・方向性などの道筋を明らかにしています。現在、このロードマップに基づき、高効率化、低炭素化の技術開発を進めており、現在の最新鋭の石炭火力発電よりも3割のCO2削減を目指した「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)」と呼ばれる新技術の開発を行っています。

次世代火力発電に関わる技術ロードマップ
次世代の火力発電の発電効率などを示した技術ロードマップです。

(出典)2016年6月「次世代火力発電に係る技術ロードマップ技術参考資料集」

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さらに将来的な技術として、「褐炭」と呼ばれる、水分を含み品質が低いために利用されていない石炭を、次世代エネルギーの1つと言われる水素の原材料として活用する方法も考えられています。そのために石炭をガス化する技術の研究が進められており、これに水素の輸送技術や、発生したCO2を回収して地中に埋めるCCS技術(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」 参照)などを組み合わせ、製造した水素を日本へと輸送する「褐炭水素プロジェクト」が進められています。このプロジェクトについては、また別の記事でご紹介する予定です。

国内資源に乏しく、資源を海外に依存する日本にとって、エネルギーの安定供給は最重要事項です。また一方で、エネルギーの環境適合性を追求することは世界的な課題であり、日本も脱炭素社会の実現に向けて努力しなくてはなりません。その両立を図るためにも、石炭火力発電の高効率化やCO2分離回収・有効利用・貯留などの脱炭素化に向けた取り組みを進めていくことが必要とされています。

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資源・燃料部 石炭課

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長官官房 総務課 調査広報室

※(2018/6/22 追記)褐炭水素プロジェクトに関する記載について、正確性の観点から、修正しております。