VPP・DRの意義
VPP・DRにより、経済的な電力システムの構築や再生可能エネルギーの導入拡大、系統安定化コストの低減など、様々な効果が期待されています。
経済的な電力システムの構築
VPP・DRにより、ピーク時間帯の需要量を下げたり、別の時間帯に移したりすることで、電力需要の負荷を平準化することが可能となります。
電力需要のピーク時間帯は、年間でみるとほんのわずかな時間ですが、このピーク需要を満たせるように発電設備は維持・管理されています。そのため、ピーク時間帯の電力需要を抑制することができれば、維持費や設備投資を抑えることが可能です。また、ピーク時間帯においては、燃料費が高い電源の焚き増しにより必要な需要を満たしているケースが多くあります。ピーク需要を抑えることにより、この電源の焚き増しを抑えることも可能となります。こうした対応により発電コストの削減が図れるため、より経済的なエネルギー利用につながります。
図:電力需要の負荷平準化
再生可能エネルギーの導入拡大
太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、日射量や風の強弱などにより発電設備の出力が変動するため、他の電源の出力を調整することでこうした変動を吸収し、需給を一致させる必要があります。このため、これらの再生可能エネルギー発電設備の導入が進むと、例えば、一日の中でその発電量が需要量を上回る時間帯が生じます。このような場合、いわゆる出力制御により再生可能エネルギーを抑制することで需給バランスを維持する必要がありますが、VPP・DRにより需要を創出することができれば、発電した電力を有効に活用することが可能となります。具体的には、蓄電池などの需要家側のエネルギーリソースを制御し、当初の計画を上回る需要を創出することにより、需要と供給のバランスを保つことができます。こうした対応により、より多くの再生可能エネルギーの導入に貢献することが期待されます。
図:需要の創出による再生可能エネルギーの導入拡大(太陽光発電の例)
系統安定化コストの低減
従来、電気を安定的に供給(質の確保)する系統安定化対策として、火力発電や揚水発電などのピーク電源が活用されてきました。VPP・DRは本来別の目的を持った需要家側の設備(蓄電池の場合:昼夜間値差による電力料金軽減やFIT切れ再エネの自家消費等)を別の用途に活用するため、資本費を抑制することができ、低コストに系統安定化を図ることが期待されています。
特に、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、天候などの影響によって短い時間のなかで発電出力が急激に変動します。そのため、需給バランスを保てるように出力抑制を実施せざるを得なくなる恐れもあり、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、系統安定化対策の重要性は高まっています。
この他にも、CO2排出量の削減、エネルギー自給率の向上(化石燃料依存度低減)など、これらに付随した様々な効果が期待されています。
最終更新日:2023年8月16日