CCSにおけるCO2地中貯留の原理と長期安定化のメカニズム
CCSとは:CO2削減のため、CO2を地中深くに貯留する技術
「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)」は、発電所や工場などから排出されたCO2を分離・回収し、地中深くに貯める技術です。回収したCO2をどうやって地下に閉じ込め、長期間にわたって安定して貯め続けるのかという具体的なメカニズムを解説します。
地中深くに埋める。地下1,000から3,000mの世界。そこには巨大な空洞はありません
「二酸化炭素(CO2)を地中に埋める」と聞くと、地下に巨大な空洞やタンクがあり、そこにガスを詰め込むようなイメージを持つかもしれません。しかし、実際にCO2を貯めるのは、地下約1,000mから3,000mの深さにある地層です。

この深さになると、地下の圧力によって、CO2は「超臨界状態」という、気体と液体の中間の性質を持つ状態になります。この状態では、地表での気体状態の約200~300分の1の体積にまで圧縮されるため、限られたスペースに大量のCO2を効率よく貯めることが可能になります。こうした特性を利用して、地下深部の強固で安定した地層がCCSの貯留場所として活用されています。
岩石のわずかな隙間にCO2を貯める「貯留層」
CO2を貯める役割を果たすのが「貯留層」と呼ばれる地層です。貯留層の代表例として「砂岩」という岩石があります。
貯留層の拡大イメージ

(日本CCS 調査株式会社HPより資源エネルギー庁作成)
砂岩を顕微鏡で見ると、砂の粒と粒の間に、目には見えないほど微細な隙間が無数に存在していることがわかります。この隙間はもともと地層水と呼ばれる塩水で満たされていますが、圧入井という専用の井戸を通じてCO2を送り込むことで、隙間にある水を押しのけるようにして、CO2が岩石の中に蓄えられていきます。このようにして、CO2は岩石の隙間にしっかりと押し留められるのです。
CO2を閉じ込める天然のフタ「遮へい層」
地層に貯められたCO2は、周囲の地層水よりも密度が低いため、浮力によって貯留層の中をゆっくりと上昇しようとします。この浮力による上昇により貯留層の外へ漏えいすることを防ぎ、長期的な貯留の安定性を確保するために不可欠なのが、貯留層のすぐ上にある「遮へい層」です。

遮へい層は主に「泥岩(でいがん)」などの緻密な岩石でできており、貯留層とは対照的に、CO2をほとんど通さない性質を持っています。この地層が「天然の頑丈なフタ」として機能することで、下にあるCO2が上昇してくるのを物理的にブロックし、長期間安定して貯留し続けることができます。
自然の力で進行する「4つのトラップ」と安定化
長期間にわたりCO2を地下に安定的に封じ込める自然の仕組みとして、4つのメカニズムが知られています。圧入直後より、フタとなる遮へい層の下に封じ込められる「構造性トラップ」や岩石の微細な隙間にCO2が入り込んで流動性を失う「残留ガストラップ」といった物理的な作用により封じ込めが進行します。また、圧入されたCO2の一部が地層水に溶け込んで封じ込められる「溶解トラップ」や、貯留岩の性状によっては、CO2が溶け込んだ地層水と岩石成分が長い年月をかけて化学反応を起こすことで岩石の一部として固定化される「鉱物化トラップ」といった化学的な作用による封じ込めも進みます。
一般に、時間の経過とともに、物理的な封じ込めから化学的な封じ込めへと移行していき、自然の力によってCO2はより安定した状態へと変化し、貯留の安全性が高まっていくのです。
- 構造性トラップ:遮へい層の下位にCO2が貯留
- 残留ガストラップ:CO2が移動する過程でバブル状となり流動性を失い岩石のすきまに貯留
- 溶解トラップ:圧入したCO2が深部貯留層内の地層水に溶解して貯留
- 鉱物化トラップ:CO2が溶解した地層水が岩石鉱物と化学反応を起こし岩石鉱物として固定化

(IEA, “CO2 Storage Resources and their Development: An IEA CCUS Handbook” (2022), より資源エネルギー庁作成)
圧入したCO2が貯留層に貯留されているイメージ

(M. Blunt, “Carbon dioxide storage,” Grantham Inst. Brief. Pap., vol. 4, pp. 1-12, 2010. より資源エネルギー庁作成)