わたしたちのくらしとエネルギー

技術・家庭科 技術分野 4 ( 3 )電気の安定供給

技術分野

  • エネルギー変換に関する技術(エネルギーの変換と利用)

その他の教科

  • 家庭分野…わたしたちの消費生活と環境
  • 理科3年…科学技術と人間(いろいろなエネルギー)
学習のねらい
  • くらしや社会に不可欠な電気を送るための送電・配電技術について理解する。
  • 電力需給のバランスをコントロールする中央給電指令所のはたらきを理解する。
  • 電気は貯められないので需要に応じて発電量を調整しなければならないことを理解する。
  • 発電効率、発電単価、設備利用率、環境負荷など複数面で優れた電源はないことを理解し、それぞれをどのように利用していくのがよいか考える。
指導上のポイント
  • 超高圧で送り出された電気は、需要地で必要に応じた電圧に下げられて供給されている。
  • 電力は大量に貯めておくことができないので、常に需要に合わせて発電がコントロールされている。
  • 電源の組み合わせは、それぞれの発電方式の特徴や長所、短所を考慮し、バランスのとれた構成になるよう考えられている。

中央給電指令所の役割

 電気は大量に貯蔵しておくことができず(近年は大容量の蓄電池が研究/開発されつつある)、生産と消費が同時に行われるため(電気の速さは光速とほぼ同じ)、需要量を上回るように発電量をコントロールしなければならない。その指揮を執るのが「中央給電指令所」である。

 中央給電指令所では、時々刻々変化し続ける電気の使用量を予測しながら、発電所の発電量を調整する指令を出し、周波数を一定に調整している。また、送電線の流れを管理し、変電所や送電線などの送電設備に異常や故障が起きた際の対応も、中央給電指令所の重要な業務である。


送電のしくみと送電ロス

 発電所で発電された電気は、交流で需要地に送られている。電流には直流と交流があるが、発電された電気を交流にする理由は変電が容易なためである。

 電気が届けられる過程で、その一部は送電線の抵抗などのために、途中で熱となって大気中へ逃げてしまう。これを「送電ロス」といい、送電ロスは電圧が低いほど、送るまでの距離が長いほど大きくなる。日本の送電網の場合、発電量に対して約5%程度を損失している。

 電気を高圧で送るのは、こうした送電ロスを減らすためである。近年は、電力需要の増加と電源の大容量化・遠隔化・安定供給に対応するため、送電線の高圧化が図られており、50万~27万5,000Vという超高圧で送電されている。そのため、需要地に近づくにつれて変電を繰り返して徐々に電圧を下げている。


電力の品質と再生可能エネルギー

 電力の需要と供給のバランスが崩れると、周波数や電圧に乱れが生じる。一般の家庭で使用している電気製品は、インバータを利用したものが多くなっているため大きな影響を受けることはないが、工場などで使用しているモーターは、周波数が乱れると回転数が変動してしまい、製品の品質悪化につながる場合がある。例えば繊維工場で使われている織機のモーター回転数に乱れが発生すると、仕上がった生地に織りムラができるなどの不具合が生じてしまう。そのため電力会社では、常に一定の周波数、電圧で電気を供給できるよう品質の安定に努めている。

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入されて以降、太陽光発電を中心に設備導入が増大しているが、太陽光発電や風力発電は、天候によって発電量が大幅に変動する。

 電力の品質を保つためには、火力発電などの出力調整が可能な電源をバックアップとして準備するほか、発電した電気を大規模な蓄電池に蓄えるなどの対策が必要となる。


揚水式水力発電

 揚水式水力発電とは発電所の上部と下部に水を蓄えるための調整池をつくり、昼間のピーク時間帯は上部調整池(上池)から下部調整池(下池)に水を流下させて発電し、使用した水量を電力需要の少ない夜間の電気で水車を逆回転させて上部調整池に揚水し、昼間の発電に再び使うしくみである。

 揚水式水力発電は電気を水のかたちで蓄えておく蓄電池の働きをしている。起動・停止が短時間でできるため、電気が不足したときに、緊急に発電することも重要な役目となっている。ただし、発電量に対し、水をくみ上げるために消費される電力量の方が多い点に留意が必要である。

太陽光発電と風力発電の発電モデル



学習のねらい
  • 直流と交流の違いを理解する。
  • 東日本と西日本では周波数が異なっていることを知り、相互融通には限度があることを理解する。
指導上のポイント
  • 周波数を変換するためには、一度、直流に変えてから別の周波数に変えている。
  • 東西間の周波数変換は静岡県と長野県の3か所でおこなわれている。

東日本と西日本の周波数のちがい

 日本は、静岡県の富士川と新潟県の糸魚川辺りを境にし、東日本は50Hz、西日本は60Hzの電気が送られている。

 東西地域の周波数を50Hz、60Hzに分化させるきっかけは、明治時代に東京電灯浅草発電所がドイツ製50Hz発電機を、大阪電灯幸町発電所がアメリカ製60Hz発電機を導入したことである。大正時代初頭から第2次世界大戦直後までに4回の周波数統一の動きがあったが、いずれも莫大なコストと時間がかかり、設備の改造過程で供給力不足を招くことから実現されず、現在も2つの周波数が使用されている。

 東西で電力を融通する場合、同じ周波数に変換しなければならない。現在は、佐久間周波数変換所(静岡県)、新信濃周波数変換所(長野県)、東清水周波数変換所(静岡県)の3か所で、電力融通がおこなわれている。変換設備の合計容量は120万kWだが、従来の運用では事故などに備え、実際に使える能力はわずか40万~55万kW程度である。

 今後は、東日本大震災後に全国で電力の供給力が大幅に不足した経験から、周波数変電能力を90万kW増強し、合計210万kWにする計画が進んでいる。