今夏やるべき節電

 財団法人省エネルギーセンター特任講師 三角治洋さんに教わる これからの「スマート&快適な節電」のために必要なこと 2015年。この夏すべき節電を、財団法人省エネルギーセンター特任講師 三角治洋さんがお伝えします。

  • 1.今、求められている節電とは?
  • 2.今日からできる節電対策のポイント
  • 3.節電への取り組みがビジネスチャンスへ

2. 今日からできる節電対策のポイント

 スマートで快適な節電。それを実現するために、今日からできる具体的なポイントを考えてみましょう。

使う人ひとりひとりに向けた電力の「見える化」

 これからの節電対策でも重要な役割を果たすのが、常に変化する電力値(kW)の「見える化」です。
 工場やオフィスビル、病院、公共施設などでは、消費電力をモニターする「電力デマンド監視装置」が普及。リアルタイムの消費電力を把握するために利用されています。しかし、これらの情報を知っているのはビル管理者など専門のスタッフのみということがほとんどで、実際に電気を使っている個人個人にはリアルな情報(電力の現在値)は届いていませんでした。
 そこで今後は、モニター装置を使用者全員が見られるようにすることで、消費電力を共有することが大切です。実際、数値として電力の使用量状況を知ることで使い手の個人の意識が大きく変化、着実に節電効果を上げているという事例は数多く聞かれています。
 また、エネルギー消費密度の高い厨房や人の命を預かる病院など、今までなかなか節電対策が進みにくかった場所にも、「見える化」は有効な手段。働く人たちの意識が変わることで、節電への新たな取り組みが進むと期待されています。

必要なときに必要な場所へ、
エネルギーの「ジャストインタイム」

 節電の基本は「カット」「シフト」「チェンジ」の3つです。2013年度版改正省エネルギー法のポイントも、これらを重視した点にあります。
 「カット」とは、これまで述べてきたように設備や技術の導入、運用の仕方によって、消費電力量そのものを減らすこと。
 「シフト」とは、電力を消費する時間帯をずらすピークシフトという考え方です。電力は貯めておくことができないエネルギーなので、常に需要と供給のバランスが重要になります。夏の日中のピーク時、供給電力の約4割を占めるオフィスなどの業務用消費電力の一部分でも別の時間帯にシフトできれば、電力の安定供給や効率化に役立ちます(図1)。蓄熱や蓄電も、ピークシフトを実現するために取り入れたい手段です。
 最後の「チェンジ」が示すのは、変化そのもの。ガスや石油など別のエネルギーへの代替え、設備の見直し、働き方のスタイルそのものを変える、などが挙げられます。

夏期最大電力使用日の需要

 これらの3つを組み合わせながら、必要なときに必要な場所で合理的に電力を使うのが「エネルギーのジャストインタイム」。それによってさらに効果的な節電が実現できます。

業態に合わせた節電アクションを

 業態によって、1日の中で電力消費の高い時間帯やその内訳には違いがあります。まずは、それぞれの業態に合わせた節電アクションやメンテナンスを洗い出し、実行してください。従業員や関係者、施設利用者への情報提供や啓発なども、大切なポイントです。

 例えばオフィスビルでは、空調、照明、OA機器で電力消費量の約88%を占めています (図2)。さらにオフィスの専有部分だけに注目してみると、パソコンやOA機器など、コンセントを通して消費する電力は3割以上(図3)。空調、照明、そして待機電力の見直しが大きな節電のポイントになるということがわかります。
 いつ、どこで、どれだけ電力が使われているか、電力消費を具体的に計測していくことは、今後の取り組みに欠かせません。

一般的なオフィスビルにおける用途別電力消費比率

部門別エネルギー消費割合

 業務用事業所では、照明と空調が節電の定番項目です。まずは照明の適正基準をもう一度チェックしてみましょう。場所によっても細かく明るさの基準値は異なりますが、日本のJIS照度基準によるオフィスの明るさは750ルクス(※4)が中心です。しかし、実際には900~1,000ルクスもある、明るいオフィスを多く目にします。
 もし基準に照らして、照明が明るすぎるようでしたら、まず、蛍光灯の間引きができないか考えてみてください。細かい作業をするときに明るさが足りなければデスクライトを上手に利用するといいでしょう。照明の数を減らすことは、消費電力そのものを減らすだけでなく、照明の発熱で室温が上がるのを抑える効果や冷房負荷を減らすことにもなります。さらに、照明を節電効果の高いLEDに切り替えるという方法もおすすめです。

※4)JIS Z9110(照度基準)より

 空調については一元管理を見直し、場所ごとにきめ細やかな管理を取り入れる方法もあります。工場などでは「クールスポット」といって、一区画だけ涼しい部屋を作り、従業員が涼をとれるように設計してある場合があります。一方で、一律で空調を管理しているケースがよく見られます。例えば、病院なら、エントランス、外来、病棟、厨房、管理部門など、場所ごとに室温設定を変えることで節電効果が期待できそうです。

 照明と同じように、オフィスビル内の空気環境についても基準があり、CO₂濃度は「建築物環境衛生管理基準」で1,000ppm以下と決まっています(※5)。CO₂濃度は電気を使って調整されています。過剰な換気は控え、基準値を目安にCO₂濃度を見直してみることも有効な対策といえるでしょう。
 「不快指数冷房の導入」もおすすめです。湿度は下げずに、温度を下げることによって、節電と不快指数の低い環境が両立できます。
 設定温度だけに目を向けるのでなく、湿度と温度の組み合わせを考えて、快適さを維持する“スマート”な節電を実現しましょう。
 節電は、場所の性質や役割によって対策を変えていく必要があります。きめ細かな運用で、無駄な電力消費を解消するようにしてください。

※5)「建築物環境衛生管理基準」(厚生労働省資料)より

無料診断や法制度を賢く活用する

 より効率的な節電を実現するための、公的サポートもおすすめです。省エネルギーセンターでは、中小企業等の省エネ・節電の推進をサポートするため、「省エネ診断」・「節電診断」・ 「講師派遣(省エネ・節電説明会)」の無料サービス(http://www.eccj.or.jp/shindan/)を実施。申込書をダウンロードし、必要事項を記入して申し込むだけなので、手軽に利用できます。
 また、東京都では「中小テナントビル改修効果見える化プロジェクト」(http://www.tokyo-co2down.jp/subsidy/visuralize/)という全国の自治体に先駆けた取り組みも行われています。これは、都内に中小テナントビルを所有する事業者を対象にした助成事業。LED照明などの高効率な省エネルギー設備を導入することで指標の評価が上昇すれば、費用の一部が助成されます。
 もっと手軽にできることとして、「節電.go.jp」から夏季の節電メニューパンフレット「節電行動計画の標準フォーマット」(http://setsuden.go.jp/logodl/)をダウンロードしてみてください。業態に合わせた節電項目の目標や実績を記録することで、節電効果がアップするでしょう。
 このようにさまざまなサポートやサービスが用意されているので、それらを有効活用し、より効率的な節電に取り組んでください。

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