グループワークの様子1
大学での講座・ワークショップ

山口大学でのエネルギー政策に関するワークショップ

2025.12.23山口大学

実施概要

山口大学教育学部理科教育講座の学生を対象に、資源エネルギー庁からエネルギー政策に関する講義と、CO2排出量削減をテーマとしたボードゲーム「ブルー・ファウンダーズ」にて次世代のエネルギー教育に関わるワークショップを開催した。

講義

「次世代につなぐ脱炭素社会への挑戦」

(資源エネルギー庁 須山 照子)

カーボンニュートラルへの宣言

日本は、2020年10月に2050年にカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量をとにかく削減し、排出せざるを得なかったぶんについては、吸収または除去することで、差し引きゼロにすることである。
温室効果ガスとは、大気中の熱を吸収する性質のあるガスのことであり、CO2の他にメタン、一酸化二窒素、フロンガス等がある。日本で排出される温室効果ガスの9割以上がCO2であり、いかにCO2排出量を削減するかが鍵となる。

講義の様子1

なぜ、今、カーボンニュートラルを目指すのか

人類は、石炭や石油などの化石燃料を大量に使用することにより、生活の利便性と向上が得られ、一方で、CO2排出量を増やす要因となり、地球温暖化が急激に進み、その結果、異常気象など気候変動による自然環境や生活にも大きな影響が出ている。気候変動を防ぐために、世界でも、140を超える国・地域がカーボンニュートラルをコミットしており、カーボンニュートラルを達成していく長期戦略が検討されている。

次世代に向けてカーボンニュートラルへの挑戦

日本のCO2は、2013年度をピークに減少傾向に推移しており、2023年度は2013年度から約25%削減しているが、カーボンニュートラルへの達成に向けての道のりはまだ遠い。電力、産業、運輸部門が日本の温室効果ガスの総排出量の約8割以上であり、当該分野での削減に向けた対応が求められている。電力は、デジタル化に向けて電力需要が増える中、脱炭素電源の供給力の強化と確保である。再生可能エネルギー、原子力の脱炭素電源を最大限に活用しつつ、特定の電源や燃料源に過度に依存しないバランスのとれた電源構成を目指す。我が国は、資源を持たざる国であり国土面積や地理的特性から資源の安定供給や再エネの適地制限が課題となっている。2050年に向けて、ペロブスカイトなどの次世代太陽電池、地の利をいかした浮体式洋上風力、世界第3位の地熱ポテンシャルをいかし次世代型地熱発電、安全メカニズムの向上と多様性が期待できる次世代革新炉など、革新的な技術力が期待される。2050年に向けて火力発電は、水素・アンモニア※1・CCS等を活用した火力の脱炭素化を進める。「CCS」とは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれ、発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというもの。その他にCCUS、こちらは、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留したCO2を資源として捉え、CO2とH2を反応させ燃料等に再利用する技術、いわゆるカーボンリサイクルだ。合成燃料や都市ガスの原料となる合成メタンなど製造する。こちらは、既存のインフラ等の利用が可能となり投資コストの抑制に寄与する。また、非化石が難しい分野、例えば、高温熱が必要な鉄鋼、化学産業などにおいて有効な選択となる。
一方で、どの次世代技術にも、課題はある。安全面、コスト面、安定した一定の量の確保、インフラ整備、サプライチェーン、人材確保、社会受容性の向上など、それぞれの次世代技術ごとに一つ一つ課題を克服していかなければならない。カーボンニュートラルの実現は、エネルギー・産業部門のダイナミックな構造転換、大胆な投資により革新的なイノベーションを創出し、環境保護と中長期的な経済成長を両立し、持続可能な社会を目指していく。
本年は、愛知万博から20年ぶりに4月13日から10月13日の会期で大阪・関西万博が開催された。大阪・関西万博では、「未来社会の実験場」というコンセプトで開催され、未来のエネルギー技術が集結し、多くの方々が未来社会を思い描いていたのではないか。今後は、次世代技術を早期に実用化していくことがカーボンニュートラルの達成に向けた近道になるのではないか。

※1 水素、アンモニアは燃焼してもCO2を出さない。
水素が燃焼すると    2H2+O2 →2H2O
アンモニアが燃焼すると 4NH3+3O2 →2N2 +6H2O 

グループワーク

学生は3グループに分かれ、ボードゲーム「ブルー・ファウンダーズ」を行った。
プレイヤーは投資家として、チームメイトと相談しながら「火力発電」「太陽光・風力発電」などに投資を行う。開始時に資金が2~3ずつ配られ、各プレイヤーが技術に投資を行う。投資額に応じて技術開発が進み、技術レベルが上がる。レベルの向上に伴って様々なイベントが発生し、そのイベントの結果によって資金やCO2排出量が増減するようになっている。イベントの内容は技術レベルが進まないと開示されず、一つの技術に投資を続けるだけでは付随する課題をクリアすることができない。
ラウンドは相談フェーズ、投資フェーズに分かれており、投資フェーズに入るとグループ内の相談が禁止される。学生たちは相談フェーズで戦略を固め、各自の判断で投資先を決めた。
4ラウンド終了時点で「投資資金がマイナスになっていない」、「50個あるCO2カウンターを0にする」という2つの条件を達成することでゲームクリアとなる。

チーム 「革新」

戦略・方針

「水素・アンモニア」、「蓄電地技術」、「太陽光・風力発電」、「水力・地熱・バイオマス発電」などの得意分野を中心に投資を行い、それと同時に各イノベーションと相性の良い関連技術にも投資を行うことによって1つの分野に集中せず、広い範囲の分野で投資を行った。

結果

CO2削減量39/50

グループワークの様子2
チーム 「革新」の結果

チーム 「CN」

戦略・方針

「原子力発電」、「水力・地熱・バイオマス発電」、「蓄電池技術」、「デジタル技術」、「産業省エネン技術」の得意分野カードには必ず投資を行い、マイナスのイベントを回避しながら投資を行った。

結果

CO2削減量39/50

グループワークの様子3
チーム 「CN」の結果

チーム 「未来」

戦略・方針

環境に優しく、これから脱炭素社会に貢献される発電には、積極的に投資した。あわせて、マイナスイベントを回避するための投資を行いながらダメージを最小限にとどめた。
得意分野カードは、「火力発電」、「蓄電池技術」、「民生省エネ技術」、「原子力発電」、「太陽光・風力発電」。

結果

CO2削減量41/50

グループワークの様子4
チーム 「未来」の結果
得意分野カード

参加者の声

  • 印象に残ったのは、エネルギーは、社会の情勢などにとても大きく影響を受けるため、予測するのが難しいということ。
  • 日本の現状と、目指している未来を具体的に知ることができよかった。
  • 今後、電力は増えていくことは何となく思っていたが、その原因がAIであることを初めて知った。
  • ボードゲームでは、未来に期待ができそうな発電方法や技術を開発すればするほど資金が集まり、CO2が減っていく様子が楽しみながら感じられた。
  • 実際にボードゲームで投資活動を行うことで、理解を深めることができた。

「広報・教育」TOPに戻る