講義風景の写真1
大学での講座・ワークショップ

山口大学教育学部での
エネルギー政策に関する
講義

2024.12.24山口大学

実施概要

山口大学の学生を対象に、資源エネルギー庁からエネルギー政策に関する講義と、次世代のエネルギー教育に関わるワークショップを開催した。当日は、教育学部理科教育講座の2~4年生、計17名が参加した。

講義「エネルギー政策を考える ~現状と今後の方向性~」
(資源エネルギー庁 須山 照子)

山口大学の学生に対して、資源エネルギー庁から日本のエネルギー政策に関する講義を実施。

2040年度を見据えたエネルギー政策

今年は、日本の2040年度を見据えたエネルギー政策の指針である第7次エネルギー基本計画の策定に向けて議論が進められている。あわせて、NDC(Nationally Determined Contribution)、いわゆる2040年度のCO2排出削減目標についても検討されており、2050年のネットゼロの実現に向け、排出削減と経済成長の同時実現に向け検討が進められている。前回の第6次エネ基から3年が立ち、その間において、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の悪化、円安などの影響で化石燃料の輸入額が増加し、2022年には20.3兆円となる過去最大の貿易赤字となった。資源に乏しい日本は、化石燃料の割合を減らし、脱炭素エネルギーへシフトしていく必要に迫られている。

電力需要の更なる増大と、脱炭素電源の重要性

講義風景の写真1

急速に脱炭素化が求められていく状況のなか、世界的に電力需要は更に増加していくと予想されている。その要因となるのが、世界で急速に進むデジタル化だ。特に、デジタル化の基盤となるデータセンターや半導体工場の新増設が行われ、これに伴う消費電力の増加が加速度的に増加すると予想されている。これに対応すべく、米国ではGoogleやAmazonが地熱発電所・原子力発電所に直結したデータセンターの買収などにより脱炭素電源の確保を進めている。日本においても同様にデジタル化により電力需要が増加していくことも想定した戦略を構築する必要がある。高度経済成長以降、右肩上がりで電力消費量は増えてきたが、2007年をピークとして省エネ技術が導入されるなかで需要が少しずつ減ってきたが、再び、右肩上がりに転じる可能性がある中、脱炭素化に向けて、脱炭素電源の新技術開発や設備拡大に対し、大規模な投資が求められるだろう。

カーボンニュートラル社会の実現に向け、次世代のエネルギー供給を考える

講義風景の写真1

現在、エネルギー政策では、電力需要の拡大に応えるとともに、カーボンニュートラル社会を見据えた取り組みにも力を注ぐ。
ビル壁面等にも設置できる「ペロブスカイト太陽光電池」や、排他的経済水域での「浮体式洋上風力発電施設」、新たな安全メカニズムを持つ原子力「革新炉」など、次世代の電源を担う新技術の開発も進む。加えて、発電量が変動する再生可能エネルギーに対応したインフラの整備や、脱炭素エネルギーである水素・アンモニアの利用、化石火力にはCO2を回収・利用・貯留する技術(CCUS)を導入し、カーボンニュートラルの実現をめざす。
エネルギーは、日々の生活に密接に関わるものであり、エネルギー政策について、私たち一人一人が当事者意識を持つことが何よりも重要となるのではないか。

参加者の声

  • 日本の今の立ち位置を、世界の国々と比較して考えられたことが印象に残っている。
  • 今後のエネルギーの移り変わりがどのようになっていくか、水素やアンモニアなどの脱炭素エネルギーを強化して脱炭素にむけた活動が行われているかなど、自分たちの生活が豊かになっていくための取り組みがなされていることを知れてよかった。
  • 外国に頼っているという印象が強かったので、日本は世界的に見ても再生可能エネルギーの導入容量が多いということが分かった。
  • 日本が再生可能エネルギー先進国というイメージがなかったので、考えを改めるべきだなと感じた。

ワークショップ
「エネルギー紙芝居」

13枚の紙芝居用イラストの中から7枚を選び、紙芝居を制作。「エネルギーとは何か」というテーマで、子どもたちに読み聞かせをする紙芝居を作り、発表を行った。

ワークショップの写真1
ワークショップの写真2

グループ1

対象層:幼児・小学校低学年

現代では、飛行機や車など生活のあらゆるところで使われているエネルギーがどのようなものなのか、どのような発展を遂げてきたのかを解説。過去へタイムスリップして、初めて火を得た原始時代から、蒸気機関の発明、電気や内燃機関の発達、そして世界中がエネルギーで灯されている現代までを順を追って伝えた。対象層である子どもが演目により入り込めるよう、質問者と回答者という2名の語りによって進行。常に対象者の目線にたち、幼児・小学校低学年生にも分かりやすい言葉選び、質問の投げかけが行われていた。

グループ1の紙芝居画像

グループ2

対象層:幼児・小学校低学年

未来のまちを前にパンちゃんとあきおくんが、当たり前に使われているエネルギーのことについて考えるという情景でストーリーが展開。時代と共にエネルギー技術が発展し、現在では生活のあらゆるところで電気や化石燃料が使われていることを、歴史を追って説明。更に、日本・世界中で使われているエネルギーも、使いすぎると地球の環境を破壊し、人間が住みづらくなることを訴え、美しく発展した未来をめざすためにはエネルギーを上手に使うことが大切だと子供たちにも分かりやすく発表した。

グループ2の紙芝居画像

グループ3

対象層:幼児・小学校低学年

登場人物2名と語り1名をそれぞれの学生が担当し、対象者を楽しませて飽きさせない演劇風の発表となっていた。エネルギーは生活のあらゆる場面を便利で快適にし、宇宙から見ると世界中の場所で使われていることが分かる。だが、エネルギーを使いすぎると、環境が破壊され地球温暖化も悪化してしまう。自然と社会が共存し発展していく未来の実現の大切さを伝える発表だった。

グループ3の紙芝居画像

グループ4

対象層:幼児・小学校低学年

対象者である子どもの目線に立ち、質問者の問いかけに対し、ナレーターが解説をしていくという発表スタイルだった。地球の灯りが全て電気であるというところからスタートし、エネルギーとは何かということを身近な暮らしの中にある具体例から説明。エネルギーは生活を豊かにするためには欠かせないものではあるが、使いすぎることにより地球温暖化や異常気象につながる。だからこそエネルギーを上手に使うこと、また使いすぎないことが空飛ぶ車のある未来の実現には大切だと伝えた。優しい語り口調と言葉選びだが正確にエネルギーを取り巻く状況を説明したプレゼンだった。

グループ4の紙芝居画像
ワークショップの写真3
ワークショップの写真4

参加者の声

  • 楽しくエネルギーについて考えることができた。教育学部であるからか、全力で楽しむことができ、良かった。
  • グループでそれぞれ重きを置くところが違った点が面白かった。
  • 話の構成や設定はすべて自由で、複数の絵から選択しなければならない、また役割も分担しなければならないという条件が難しかった。しかし、どこに焦点を当てて伝えたいかを考えて話を作ることでより理解が深まると思った。
  • 誰に向けて紙芝居するかで、使う言葉や説明の仕方を考えないといけない点が学びになった。

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