
岩手大学、岩手県立大学でのエネルギー政策に関する講義
2024.12.2~3岩手大学、岩手県立大学
実施概要
岩手大学、岩手県立大学の学生を対象に、資源エネルギー庁からエネルギー政策に関する講義と、ワークショップを開催した。
講義「エネルギー政策を考える~現状と今後の方向性~」
(資源エネルギー庁 須山 照子)
岩手大学、岩手県立大学の学生に対して、資源エネルギー庁から日本のエネルギー政策に関する講義を実施。
日本の電源構成の7割以上が火力発電に依存している
現在、日本のエネルギー自給率(再エネ、原子力など)は約15%、電源構成にフォーカスをあてると約7割以上が海外に依存している化石エネルギーの火力発電。2022年、ロシアのウクライナ侵攻や緊迫化する中東情勢により、世界的に化石燃料が高騰しており、我が国の電気料金も上昇。あわせて、エネルギー安全保障上にも緊張感が高まっており、過度な火力発電から脱却が求められている。

電力消費量をめぐる国内の状況変化が・・・
日本は高度経済成長から右肩上がりで電力消費量は増えてきたが、2007年をピークとして、省エネ技術の向上、人口減少などにより電力需要が減ってきた。それが再び、データセンターや半導体工場の新増設等が急増していることにより右肩上がりに転じる可能性が出てきた。データセンター等の消費電力量の見通しは、省エネの度合いに応じて大きな幅があり不確実性があることも指摘されているが、今後、大幅な電力需要増が想定されている。
さらに、今後は脱炭素化にむけて脱炭素電源の供給力を強化し脱炭素時代における電力の安定供給が求められている。


脱炭素電源確保にむけて

脱炭素電源である、再生可能エネルギーは、現在、約22%の電源構成であり、2030年度に36~38%まで拡大していく。再エネの割合を更に増やしていくため、洋上風力の整備や日本発の技術であるペロブスカイト太陽発電の開発・社会実装に向けて取り組んでいく。岩手県は、再生可能エネルギーのポテンシャルが高く、風力発電や地熱発電の導入拡大に向けてゼロカーボン戦略を展開中。2013年度比で温室効果ガス排出を2030年度に57%削減を、再生可能エネルギーの電力自給率66%を目指す。
原子力発電は、安全性を大前提に既存の原子力発電の再稼働を目指す。次世代革新炉は、現在、革新軽水炉、SMR、高速炉、高温ガス炉、核融合などの選択肢があり、実現に向けては時間軸が異なるため、時間軸を意識した開発、議論が必要となってくる。CO2削減の観点では水素やCCSなども注目されており、環境整備が必要である。今年の通常国会において、水素社会推進法案とCCS事業法案が可決・成立された。資源を持たざる日本として、選択肢の多様性を持ちつつ、柔軟的な対応が求められている。

参加者の声
- 日本のエネルギー自給率が低く、外国の情勢に左右されやすい、不安定な国であることを改めて実感した。
- 日本は資源には恵まれていない国であるためそれを前提としてエネルギー源ごとの強みを最大限発揮し逆に弱みは補完し合うよう多層的なエネルギー供給の構造を目指すことが不可欠だと感じた。
- 今後AIの普及拡大に伴うデータセンターや半導体などの増加などにより、大幅な省エネ効果を見込んだとしても、将来の電力需要は増加する可能性が高いため、脱炭素電源を拡大して対応する必要があると分かった。
- 輸入資源に頼るしかない日本が脱炭素化を目指すには他国への協力を呼び掛ける必要があり、世界が脱炭素社会に向かうには国を超えた世界的な協力体制が求められると感じた。
- 東北地方における再生可能エネルギーの活用について、東北地方は活火山に恵まれているため地熱発電が可能であったり、広大な土地を利用して大規模な風力発電が可能であったりと、他の日本の地域と比べて再生可能エネルギーの活用がしやすい環境であるのではないだろうかと思った。
- 再生可能エネルギーや脱炭素化に向けた取り組みが進められていることは心強いが、洋上風力発電やペロブスカイト太陽電池など新技術に伴うコストやインフラ整備の課題についても考えるべきだと感じた。
- 講義内で初めて知ったエネルギー政策のS+3Eのスローガンに基づいて、再生可能エネルギー特に太陽光発電については世界的に見ても上位に入っていたり、その他新しいエネルギー供給の方法の開発についてもかなり進んでいると気づくことができました。
- 今回の講義を聞いて、原子力は安定して発電可能な発電手段であり、排出される二酸化炭素を減少させるため、また、増加が予想される電力需要に応えていくためには導入は必須なのではないかと思った。リスクの面だけでなく、将来まで見通して考える必要があるのだと気づくことができた。
- 私たちはどうしても原子力発電所に対してよくないイメ-ジを持ってしまうところがあると思います。しかし、技術の発展に合わせて私たちの考えもアップデートさせなければならないのだと感じました。何事も興味を持って調べなければ理解はできないので、固定観念にもう一度向き合う必要があるのではないかと感じました。
- 世界の各国がそれぞれの歴史に基づいて現在のエネルギー構成になっているという事を知り、どの国やどの発電方法が正解であるなどということはなく、その国に合った方法でS+3Eを達成する必要があるということが分かったので、その点が印象に残りました。
- ペロブスカイト太陽電池で材料であるヨウ素が日本は世界生産量第2位のため、自給率向上に近づくのではないかという話が印象に残った。
- 石油、天然ガスなどほとんど他国から輸入していたことは知っていましたが、ここまで輸入に頼り、自給率も低いとは思っていなかったので、衝撃が大きかったからです。
- 再生可能エネルギーの各国の利用状況について、国の地形や特色によって利用するエネルギーの種類に違いがあることが非常に面白いと思いました。