どう考える?これからの日本のエネルギー

琉球大学

琉球大学講義の写真 2023年10月12日

琉球大学教育学部の学生を対象に、資源エネルギー庁から「脱炭素社会に向けたエネルギー政策」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。

講義「脱炭素社会に向けたエネルギー政策」(資源エネルギー庁 須山 照子 氏)

講義の様子

2015年に開催されたCOP21では、今世紀末の気温上昇を産業革命比で2℃未満、更に、努力目標として1.5℃未満が決まり、現在は、1.5℃が世界目標となっている。しかし、本年3月に入り、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、今世紀中の早い時期に1.5℃を超えてしまうと指摘し、2030年に世界の二酸化炭素(CO2)排出量を半減させる必要があるとする最新の報告書を公表した。報告書は今後10年の対策が、人類や地球に数千年にわたり影響を与えると強調し、世界各国に対策の加速を迫る内容となっている。国連のグテーレス事務総長は、「気候の時限爆弾の時計が刻々と進んでいる」と危機感をあらわにした。

我が国は、2030年度までに、2013年度比から46%削減し、2050年には実質ゼロを目指す目標を打ち出している。沖縄は、地理的、地形的、需要規模の制約により、電源構成の割合が、石炭、LNGなど化石エネルギーの割合が9割以上であり、CO2を排出しない電源は、太陽光、バイオマス、風力発電のみとなっている。今後は温室効果ガス排出削減に向けて、大型風力発電の設備導入が期待されるが、台風の多い地域であり、過酷な気象条件を克服できる技術開発や次世代太陽光発電の普及拡大と低コスト化、そして、火力発電についてもバイオマス混焼をはじめ、CO2を排出しない水素、アンモニア等の混焼による環境整備が求められている。

また、沖縄県と全国のCO2排出量構成を比較すると、全国と比べて製造業の割合が小さいことから産業部門の割合が低く、運輸部門や民生部門が高くなっている。沖縄県では、気候変動に対して官民一体となって取り組んでおり、令和3年3月に「沖縄県気候非常事態宣言」を行い、同宣言の達成に向けて、「気候変動に適応したライフスタイルの行動変容方針」を示した。その取組の一つとして、公用車を順次EVやPHVに転換し、一般市民向けに対しても次世代自動車の購入を促していく。公共交通機関の活用やワークライフバランスの推進、年間のエネルギー消費量の収支がゼロとなる新築建築物の普及もすすめていく。自然に恵まれている沖縄は、森林や海洋などのCO2吸収源としての機能も期待されている。県内の2030年度の中期目標として2013年度を基準年度とし2030年度には26%削減を、更に挑戦的目標として31%削減を目指す。そして、2050年に温室効果ガス実質排出量ゼロを目指す。地方も、我が国も、世界も脱炭素社会に向けて変革しているが、あわせて、エネルギーの安定供給体制を確立することも不可欠である。

全国及び沖縄県のCO2排出構成〈2020年度)の比較 ・全国と比較すると製造業の割合が小さいため産業部門の排出量が低い。 ・運輸部門、民生部門が全国と比較すると高い。 全国のCO2排出構成(2020年度)グラフ CO2総排出量1,044.2百万t 内訳:エネルギー転換部門7.5%、産業部門34.0%、運輸部門17.7%、民生家庭部門15.9%、民生業務部門17.4%、工業プロセス4.1%、廃棄物3.0%、その他(燃料からの漏出他)0.3% &出典>国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス 沖縄県のCO2排出構成(2020年度)グラフ CO2総排出量1,036.7万t 内訳:エネルギー転換部門5.9%、産業部門11.8%、運輸部門30.4%、民生家庭部門23.2%、民生業務部門23.9%、工業プロセス2.8%、廃棄物2% <出典>第2次沖縄県地球温暖化対策実行計画(沖縄県気候変動適応計画)改訂版より抜粋

参加した学生に、授業終了後に「今回の講義の内容を漢字一文字で表すと」との質問を行ったところ下記のような一文字が寄せられた。

脱炭素社会への変革、新たな技術への挑戦との思いから一文字

電源、資源から見る脱炭素、安全・安定供給へ期待する一文字

脱炭素社会に向けて自分事として捉えていく知識、関心、協力からへの一文字

参加者の声

世界の国と日本を比較しながら、脱炭素に向けた電力構成を動きを読み取ることができ、現在は再生可能エネルギーや原子力発電だけではなく、水素アンモニウムなどの新しい方法も進んでいることを新たに学びました。二酸化炭素の排出量が問題になっていることは知っていましたが、具体的に数字を見て、その原因や今後の目標、取り組みなどを詳しく学べたことが非常によかったなと感じました。

エネルギーの状況を世界の国と比較した事が面白かったです。また、沖縄がこれから取り組もうとしている、もしくは取り組んでいる発電について知ることができたのもよかったです。

電気代が高騰している理由について関心があった。
高校時代は私自身が電気代、ガソリン代を払っていた訳ではないが、現在はより身近な問題として捉えられるようになったから。

電気料金を安くするために私たちにできることはあるのか。私たちの実生活の中で何かできることを探していきたい。

現在の日本の燃料事情や、世界との差を比較している点が面白かった。また、実験によって分かりやすく水素の可能性を表している点も分かりやすかった。

合成燃料について 水素やアンモニアといった炭素由来ではない物質を使った燃料を詳しく知ることができた。

世界の国と日本を比較しながら、脱炭素に向けた電力構成を動きを読み取ることができ、現在は再生可能エネルギーや原子力発電だけではなく、水素アンモニアなどの新しい方法も進んでいることを新たに学びました。

電源構成について、2030年や2050年と変化していく中で安定したエネルギー供給ができているのか気になった。

原発の安全性についての研究が、東日本大震災後どれだけ進んでいるか聞いてみたい。

自治体単位でエネルギーの自給自足はできないのか、どのような問題点があり、なぜ解決が難しいのか、現在取り組んでいるところはあるか聞いてみたい。

2030年までに温室効果ガスを46%少なくしようとしていることを初めて知り驚きました。私たち国民が関心を持ち、より多くの人に知ってもらう必要があると思ったため印象に残っています。

私達の生活の中で、身近なことからできる取り組みがあったら聞いてみたい。自分で取り組めたり、子供たちなどにも伝えて実践することができると自分事として考えやすくなると思ったから。

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