どう考える?これからの日本のエネルギー

名古屋大学

名古屋大学講義の写真 2024年1月17日

名古屋大学の学生を対象に、資源エネルギー庁から「エネルギー・原子力政策の動向」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。

講義「エネルギー政策の動向」(資源エネルギー庁 須山 照子 氏)

講義の様子

昨年は、第一次オイルショックから半世紀がたった。第一次オイルショックのきっかけは、第4次中東戦争であった。エジプトとシリアがイスラエル軍を先制攻撃し、イスラエルが反撃に転じると、アラブ諸国は石油供給制限と輸出価格の大幅な引き上げを行った。日本は、一次エネルギーの供給に占める4分の3の割合まで輸入原油に依存し、その大半が中東から調達していたこともあり、燃料価格の高騰、狂乱物価とも呼ばれたインフレも発生し、日本の高度経済成長はこの石油危機で終焉を迎えた。それ以降、エネルギーの安定供給やコスト的視点から石油依存度を下げLNG、原子力、石炭などエネルギーの転換を進めてきた。一方で、資源を持たざる我が国は、依然として石油の中東依存度が下がっておらず、昨年は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化やイスラエルとパレスチナ紛争の激化など中東地域の政情の不透明性により、あらためて、エネルギーの安全保障の重要性を再認識した一年となった。50年前のオイルショック時と異なる点は、脱炭素社会に向けて具体的なスケジュールが明確化されていることである。今後、エネルギー安定供給と脱炭素に向けた取組を両立させるために必要な政策を具体化させていく必要がある。その一つとして、脱炭素電源である原子力の今後である。将来にわたって、日本として、エネルギーの安定供給を構築していくためには、あらゆる選択肢を確保していくことが極めて重要である。このため、原子力についても、安全性の確保は大前提とした上で、既設原子力発電の運転期間のあり方や次世代に向けての開発・建設、核燃料サイクルの推進、原子力発電の廃炉の円滑化、最終処分の実現に向けての課題や対応策が整理された。

国際エネルギー機関(IEA)では、将来に向けて原子力発電の重要性が拡大し、2050年カーボンニュートラル実現には世界の原子力発電の設備容量を約2倍に増やし、原子力の長期運転により、他の低炭素技術と比べても大幅なコスト削減が見込まれると分析している。
世界の原子力市場(軽水炉)では、建設・計画中の約6割をロシア・中国が占めており、革新炉の分野においても、英米仏に先駆けて開発・実証を推進している。
昨年12月にドバイで開催されたCOP28に合わせ、日本を含む23カ国が「2050年までに、2020年比で世界全体の原子力発電容量を3倍」にする旨の共同宣言発表されており、安全性を追求しつつ、世界の動向も注視していくことが重要である。
次世代革新炉の他にも、ペロブスカイト、浮体式洋上風力、次世代電力ネットワーク、水素・アンモニア、カーボンリサイクル、CCSなど新技術の社会導入に向けての動きを加速化させていく。

「ネット排出ゼロシナリオ」における原子力発電の設備容量見通しについてのグラフ
                    1990年から2050年にかけて、G7加盟国・その他先進国・中国・その他新興国の区分で、世界の原子力発電の設備容量の推移と予測を示す。2022年は世界で413GWの容量があり、2050年には815GWまで増加すると予測しており、特に中国およびその他新興国が大きく増加するとしている。
                    出所:IEA「Nuclear Power and Secure Energy Transitions:From Today’s Challenges to Tomorrow’s Clean Energy System」(2022)

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参加者の声

省エネを進めるための政策としてZEHが印象に残りました。家に対して省エネを進めると、今後の電気料金も少なくすることができるので、節約にもつながると思いました。

電気価格の高騰がニュースになっていたが、さまざまな原因が組み合わさって生じている問題だと知れた。

最近車を乗る機会が増え、ガソリンをいれることが多いため、ガソリン代を国が負担しているという事実に衝撃を受けた。

直近に大きな地震があったため安全性の話にとても興味をもちました。また電力コストの高騰は身近な話なのでこちらにも興味をもちました。

自給率を高めようとするとコストが上がりやすくなるので、その二つをどうバランスをとりながら改善していくのかに興味がある。

日本の再生可能エネルギーが思っていたより進んでいて驚いた。特に太陽光発電は単位面積あたりの設備容量が1位で今後はペロブスカイトにも注目していきたいと思った。

再エネにフォーカスした話も聞いてみたい。ペロブスカイトの事は初めて知ったので、もっと詳しい話を聞きたいと思った。

地熱や水力などの今回聞くことができなかった発電方法についてのお話しを聞きたいと思った。

原子力発電の安全性と事故対策、補償の法整備について、特に万が一の事故に対してきちんと補償がなされるのかは重要なポイントだと考える。

原子力の安全性の観点について、テロ対策の観点は自身の考えに欠けていたポイントだったので印象に残った。

核融合の実証化についての環境的課題や技術的課題について聞いてみたい。核融合があったら今ある多くの問題を解決できると思う。

今後、導入される可能性のある核融合についてコストや安全性について知りたいと感じました。

今後のエネルギー方針について知れて良かったです。特に水素やアンモニアの燃料が大規模発電として使われることです。自分は水素やアンモニアを燃料として使うことに高校の時に興味を持ちました。ポテンシャルがあるようであればそちらの方向に将来すすんで見ようと思います。

火力発電を減らし、再エネを増やしたとしても、変動電源という役割としての火力発電は無くせないと思うので、そことどう向き合うのかが大事だと考えた。水素・アンモニア発電で賄おうとしても、それらにもまた課題はあるので、当分の間はLNGから離れれないだろうと思います。

僕はエネルギーの変換効率を上げるような研究がしたいと思っているので、エネルギー自給率やコストを下げる内容や現状を聞いてより研究したいと思いました。

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