どう考える?これからの日本のエネルギー

関西地域エネルギー施設見学会
・ワークショップ

もんじゅの外観写真 2023年8月7日

8月7日に関西地域の大学生等14名を対象に、高速増殖原型炉「もんじゅ」の見学および、エネルギーに関する講義・ワークショップを開催した。

講義「GX実現に向けたエネルギー政策」(資源エネルギー庁 須山 照子 氏)

資源エネルギー庁からのエネルギー政策に関する講義風景

2021 年秋からの資源価格高騰や、2022 年2月からのロシアによるウクライナ侵略等により、我が国を取り巻くエネルギー情勢は一変した。エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立に向けて、原子力を含むあらゆる選択肢を追求していく。その中で原子力は、原子力発電所の安全性の確保が大前提であるが、既設原子力発電所の活用や廃止措置の円滑化、原子力の安全性向上を目指し新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設を進めていく。その開発を進めるための人材や研究基盤も重要となり、原子力発電事業を安定的に行えるような事業環境の整備も進めていく。

通常国会では、「GX脱炭素電源法」が成立し、原子力関係では、①安全確保を大前提とした原子力の活用、②高経年化した原子炉に対する規制の厳格化、③原子力発電の運転期間に関する規律の整備、④円滑かつ着実な廃炉の推進について整備された。また、米英加を初めとした先進国では小型炉、革新炉に活路を見出し、2030年前後の商用化を目指して大規模政府予算を投入して研究開発を加速している。こうした海外動向を踏まえ、我が国は、国内の研究機関や企業が国際連携し革新炉の研究開発や人材育成をすすめていくことが中長期的に重要となる。

革新炉の種類、各事業者によるコンセプト革新軽水炉として、三菱重工業が開発する「SRZ-1200」があり、半地下化・コアキャッチャー・ガス捕集の特徴がある。SMR(小型モジュール炉)として、NuScale社の開発する「VOYGR」があり、小さい炉心・事故も小規模になる特徴がある。高速炉として、JAEAの実験炉「常陽」やTerraPower社の実証炉「Natrium」が開発されている。冷却材にナトリウムを使用し、廃棄物減容・有害度低減の特徴がある。高温ガス炉として、JAEAの実験炉HTTRがある。冷却材はヘリウムガスを使用し、950度の高温で水素製造が可能な特徴がある。核融合として、ITER機構の実験炉「ITER」があり、国際連携して開発されており、廃棄物が少ない特徴がある。

ボードゲーム「ブルー・ファウンダーズ」

参加学生は3グループに分かれ、2050年カーボンニュートラルを達成するためにはどのようなイノベーションが必要か体験的に理解するためのボードゲーム「ブルー・ファウンダーズ~青色の地球を目指して~」を行った。ゲームは、4ラウンドを行い、4ラウンド終了時にCO2マーカーを50個全て取り除く、つまりCO2排出量を100%削減出来れば、ゲームクリアとなる。各ラウンドで投資額によって様々なイベントが発生し、投資する「資金」や「CO2排出量」が増減する。

ボードゲームの各班の取り組みの様子。取り除けたCO2マーカーの個数はA班24個、B班40個、C班25個となった

ボードゲーム終了後の学生の声として、「二酸化炭素を減らすために、どんなものに投資をする必要があるのかを知ることができたことがとても印象に残った」、「エネルギーごとの関連性を考えてコマを進めて行く事が面白かった」、「話し合いの時間がもう少し長く欲しかった」などの感想が寄せられ、二酸化炭素排出量削減のためには、様々な関連技術への投資が必要であることを改めて認識する機会となった。

高速増殖原型炉「もんじゅ」見学

福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅを見学した。日本は、原子力発電所で使用した燃料から核分裂していないウランや新たに生まれたプルトニウムなどを回収して再び燃料として使用することで、資源を有効利用し、高レベル放射性廃棄物の量を減らし放射能レベルを低くすることに役立てる「核燃料サイクル」の推進を基本的方針としている。使用済燃料から取り出したウランとプルトニウムを用いて作られた「MOX燃料」を「高速炉」と呼ばれる原子炉で燃やして発電に利用する方法は「高速炉サイクル」と呼ばれるが、そのサイクルの研究開発の中核として位置づけられていたのが「もんじゅ」である。「もんじゅ」は高速実験炉「常陽」に続き、日本で2番目の高速増殖炉であり、1994年に運転を開始し、さまざまな知見や技術的成果が得られた。しかし、1995年12月のナトリウム漏えいトラブルにより運転を停止し、2010年に運転再開を果たしたものの、2011年の東日本大震災の発生を受け、新規性基準への対応に係る費用対効果やこれまでに得られた成果等を総合的に勘案した結果、2016年に廃止が決定した。現在、廃止措置計画に基づき、安全・着実に、廃止措置が進められている。

高速増殖原型炉「もんじゅ」での見学で、VRにより設備の説明を受ける様子。
高速増殖原型炉「もんじゅ」での見学で、大型模型により設備の説明を受ける様子。
高速増殖原型炉もんじゅの冷却材に使われていたナトリウムの性質について、固体のナトリウムをカットし断面にすぐに酸化被膜が形成されるのを確かめる様子。
カットした固体ナトリウムを高温で加熱し、融け方、燃焼のしかたを確かめる様子。

「もんじゅ」の見学後の感想としては、「VRでの説明が臨場感もあり面白かった」、「模型の展示が多く、施設全体の構成が良く分かった」、「あそこまで大きな原子炉だとは思わなかったので、昔に作られたものでもかなり凄い技術が使われていることに少し驚きました。また、ナトリウムの温度計の形状がよくなかっただけで温度計が折れ、もんじゅの研究が止まってしまうのだと驚き、些細なミスでも大事になるということがよくわかりました」、「原子力発電には危険というイメージが自分の中ではどうしても拭えなかったが、数十年の長期的な計画によって安全に解体を行っていることが分かった」などの感想が寄せられた。

参加者の声

日本の自給率が世界に比べてとても低いことが印象に残りました。特に自分の国ということもあり、これからどうすべきなのかを考えさせられました。

国ごとで使用されている発電方法、国ごとの明確な違いを例に挙げた説明がわかりやすかった。ドイツの原子力撤廃を目指す動き等に関心を持った。

ワークショップは、子どもでも楽しくわかりやすくエネルギー問題について考えることのできるものだと思いました。講義では、知らなかったことも多かったので今後の学習に役立てたいと思います。

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