どう考える?これからの日本のエネルギー

中国地域エネルギー施設 見学会

中国地域エネルギー施設 見学会の写真 2024年2月8日

2024年2月8日に中国地域の大学生等20名を対象に、周南コンビナートにある出光興産(株)徳山事業所、(株)トクヤマ 徳山製造所の見学および、エネルギーに関する講義を開催した。

講義「エネルギー政策の動向」(資源エネルギー庁 須山 照子 氏)講義「2050年に向けた電源構成への視座」(資源エネルギー庁 須山 照子 氏)

エネルギー政策の動向に関する講義風景

エネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を大前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図るため、最大限の取組を行わなければならないが、ウクライナ危機以降、エネルギー価格の高騰や円安により、安定供給、経済性の面で非常に厳しい状況にある。化石燃料は、2020年と2022年の輸入量を比較すると変化は小さい一方で、輸入額は22.2兆円増額しており、国富の流出増加に繋がっている。
我が国は、島国で資源に恵まれない国である。そのため、エネルギーの自給率は約13%であり、資源価格が高騰すると、暮らしや産業に大きな影響が生じてしまう構造にある。また、我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルの目標にコミットしている。今後、エネルギー安定供給と脱炭素に向けた取組を両立させるべく、徹底した省エネに加え、再エネ、原子力や水素・アンモニアなどの脱炭素エネルギーの導入を拡大していくことが必要である。中国地域では、カーボンニュートラルに向けた動きとして、広島県大崎上島にある大崎クールジェン(株)では高効率の石炭火力発電とCO2分離回収し、回収されたCO2を使用したカーボンニュートラルの実証やバイオマスガスを混合させる実証を行っている。マツダ(株)では従来のエンジン車でカーボンニュートラルを実現するため、ミドリムシなどを原料としたバイオディーゼル燃料に取り組んでいる。本日の開催地である周南市では、周南コンビナート4社が、アンモニア供給拠点化に向けての検討を行っている。
一方、カーボンニュートラルの取組として世界に目を向けると、国際エネルギー機関(IEA)では再エネの発電量を足元と比べて約6倍にし、原子力発電の設備容量も倍増が必要になると分析している。また、昨年12月にドバイで開催されたCOP28のグローバル・ストックテイク(GST)の決定文書において、原子力が気候変動に対する解決策の1つとして正式に明記されたのは今回が初めてであり、日本を含む23ケ国が2050年までに2020年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にする旨の共同宣言の発表を行った。今後は既存技術だけでは解決できないところに対するイノベーションにいかに挑戦していくかが鍵となる。

講義「周南コンビナートの脱炭素化及び地域資源活用の取組」(周南市 吉村 渉 氏)

周南市からの講義風景

周南市の主要産業は重化学工業がメインで化学工業の製造品出荷額等は全国3位の規模を誇る。周南コンビナートの特徴は、水深が深い海に面していることから、大型貨物船が入港し、石炭、原塩、ナフサなど大量の原燃料の受入れができることである。国内最大規模の石炭自家発電の電力で原塩を電気分解し、苛性ソーダ、水素などを製造していることから、電解コンビナートとも呼ばれている。

古くより工場内で製造した水素の活用について検討しており、2007年に水素をパイプラインで一般家庭に供給して利用する実証事業を展開した。また、2015年からは市内公共施設で水素の発電利用やフォークリフト、船舶での利用実証を行った。船舶は世界初の実証として水素とディーゼルの混焼エンジン搭載旅客船を運行した。その他、水素燃料の半額補助や水素を利用した日本酒の開発支援など、水素関連産業拡大に向けて取り組んでいる。

また、一方で周南コンビナートではカーボンニュートラルへの対応として、木質バイオマス発電の新設や既存設備での混焼率向上が進んでおり、周南市では市域の約8割が森林である特徴を活かして、成長の早い早生樹を20年サイクルで伐採・再造林し、効率的なバイオマス燃料生産に向けた実証実験を進めている。

現状では木の先端・根部分など建材等の資材として利用価値の低い部分をバイオマス燃料として活用しているが、実証事業では、木全体をバイオマス燃料として活用することを前提に、間伐等の作業を省略することで育成コストの削減を図っている。現在、成長が早いとされているコウヨウザンの植林を続けており、今後の加速的な成長とともに、伐採後の切り株から新たに芽が生長する特徴を活かした再造林コスト削減も期待される。将来イメージとしては、現状はバイオマス燃料を輸入していて資金が海外流出しているが、一定量を地域から供給することで地域における経済循環の創出を目指している。

2022年には、企業・化学工学会・周南市で構成された周南コンビナート脱炭素推進協議会を立ち上げ、2050年のカーボンニュートラル達成、地域活性化・次世代産業創出を図るため、原料のCN化、製品のCN化、CO2の固定化・活用、エネルギーの脱炭素化に取り組んでいる。現在はアンモニアサプライチェーン構築に必要な共用インフラの整備など、テーマ毎にチーム編成し、取組の具体化に向けて課題の精査、新技術導入等検討を進めている。

施設見学 出光興産(株) 徳山事業所

出光興産(株)大浦地区より参加者の集合写真

出光興産(株)徳山事業所は、1957年に出光初の製油所として操業を開始し、ナフサ、LPガスを原料に、エチレン、プロピレンをはじめ、パラキシレン、スチレンモノマーなど各種石油化学製品を生産しており、コンビナート各社に原材料を供給する拠点となっている。徳山事業所を起点としてコンビナートを横断する全長9kmのパイプラインを通じて、エチレン、プロピレンなどを周南コンビナート各社に供給を行っている。

見学では、事業所構内にナフサ水素化脱硫装置をはじめ、エチレン製造装置や接触改質装置、自家発電設備など様々な施設の解説があった。また大浦地区ではナフサタンクやLPGタンク、シーバースなどの見学も行った。

2050年カーボンニュートラル実現に向け、CO2フリーアンモニアサプライチェーンの構築や、バイオマス発電所の運用等、「カーボンニュートラルトランスフォーメーション(CNX)センター」化が進んでいる。

参加者からは「自家発電の燃料を現在の石炭からバイオマス燃料に移行していくのか」「CO2の発生は自家発電によるものが多いのか、化学製造過程によるものが多いのか」などの質問があった。

施設見学 (株)トクヤマ 徳山製造所

(株)トクヤマによる概要説明風景

(株)トクヤマは、1918年にソーダ灰(炭酸ナトリウム)の国産化を目指し設立され、100年あまりの歴史の中で、環境の変化や時代の流れに挑みながら、経済の発展とともに成長し、現在では電子先端材料、ライフサイエンス、環境事業、化成品、セメントなど、様々な分野に進出している。特に半導体の微細化を支える高純度材料分野や放熱材料分野ではトップシェアであり、眼・歯・診断領域ではニッチトップを獲得している。徳山製造所は191 万㎡もの敷地面積があり、主要製品としてはセメント、無機化学製品、有機化学製品、多結晶シリコン、乾式シリカ、塩化ビニルなどを製造している。

見学では、セメント製造プラントをはじめ、苛性ソーダプラントや中央発電所などを見学しながら解説を頂き、大規模な石炭置場や苛性ソーダの原料となる原塩の置場の見学を行った。

参加者からは「水素や、アンモニア混焼についてどのように進めているのか」「現在の水素の利用状況はどのようになっているのか」「パイプラインのハイプの経年劣化は、どれくらいでどのようになっているのか」「バイオマス発電分野での企業間連携などはあるのか」の質問があった。

参加者の声

石炭や塩、コンクリートの管などを見られたのが良かった。徳山市のこれからの取り組みはチャレンジングなものであることが分かった。

コンビナートに関わる企業が連携して脱炭素に取り組んでいるのだということが強く印象に残った。また特にトクヤマでの見学で、実際に脱炭素の目標を達成することの至難さを感じた。これらのことが印象的だったのは、苦境の中でも諦めずに炭素削減を推し進めている現場の方々の熱意や本音を聞くことができたからである。またその話と、ニュースや講義でしか聞いたことのなかった最新の発電設備がリンクしていたためでもある。

周南市、各企業の状況(実情)を理解することができました。

周南市の特徴に合わせて発電事業を考えていることがよくわかった。

地元山口・周南の話は非常に興味深かったですし、中国電力以外でも発電していることを始めて知る大学生もいたことと思いますので、教育的にも良い内容でした。

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