
香川大学

香川大学で開講されている教養科目「身の回りの環境問題B」(担当:古川尚幸 経済学部教授)の受講生を対象に、資源エネルギー庁から「2050年に向けてのエネルギー政策」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。
講義「2050年に向けてのエネルギー政策」(資源エネルギー庁 須山 照子 氏)

北海道、東北、東京、北陸、中国、四国、沖縄電力の電力大手7社が、化石燃料価格の高騰と歴史的な円安を背景に、6月1日から家庭向け規制料金の値上げが行われた。2021年度の日本の電源構成は、天然ガス34.4%、石炭31%、石油7.4%と化石エネルギーの割合が7割以上占めている。天然ガスは、ロシアのウクライナ侵攻以前の2021年の秋頃から、欧州において、再エネを補完する資源として需要が伸び、価格が高騰していた。そこに、昨年2月からのウクライナ危機により更に価格が高騰。石炭(一般炭)も、2020年度と比較して約6倍も急騰した。そして、最近の為替動向をみていくと、2021年の平均109円75銭から2022年は平均131円49銭であり、2022年の化石燃料輸入額は、33.5兆円となり、貿易収支全体で1979年以降、最も厳しい約20兆円の赤字となった。電気料金は、燃料費調整制度に基づいて料金に転嫁できるしくみとなっているが、全ての大手電力会社において、規制料金における調整が可能である上限に到達している。そのような状況の中で、大手電力各社の2022年度の業績も、10社中9社が大幅な赤字となり経営は大変厳しい状況となっていた。同様にガス料金も、家庭用も工業向け料金も上昇しており、私たちの暮らしに大きな影響がでている。そこで、政府は、電気・ガス価格激変緩和に向けた支援を行い、今年1月から9月使用分※までの電気、都市ガス料金の値引き原資の補助を行っている。これは、前例のない対策でもある。このように、ロシアのウクライナ侵略等の影響によりエネルギー価格を中心にインフレーションが発生している。足元の危機を克服するためにも、海外から調達している化石エネルギーの依存率を下げていくとともに、脱炭素社会に向けて、化石エネルギーから非化石エネルギーへのシフトが求められている。
※9月使用分の値引水準は半額。

多くの学生からは、電気料金の高騰の実態、ペロブスカイトや今後の脱炭素に向けての技術力への期待、日本のエネルギーの自給率の低さからみるエネルギー安全保障への懸念など多くの感想が寄せられた。
参加者の声
印象に残った点として、GX7内の各国の自給率やロシアへの依存度を比べてみると、ここまで違うのかと思った。
エネルギー政策において問題となっていることが、環境問題だけでなく、政治的な問題や経済の問題なども含んでいることがわかった。
電気料金の値上げは、最近の身近な問題で、どのような理由で値上げしているのかを理解することが出来た。
ウクライナショックと円安がどれだけ私たちに影響を及ぼしているかはある程度知っていたが、更に、自分の中で情報を整理したい。
エネルギーの供給と需要のバランスが崩れた時、エネルギーの値段が高騰しインフレが起こることが印象に残った。
水素やアンモニアが二酸化炭素を出さないエネルギーとして注目されていることを初めて知った。
地球温暖化の最大の原因である二酸化炭素を回収しカーボンリサイクル燃料などに再利用できれば、カーボンニュートラルにより近づくと考える。
日本の脱炭素化の取り組みには課題はあるものの、日本の技術が1歩1歩進化していき、カーボンニュートラルの社会に向けて取り組まれていることを理解しました。
成長志向型カーボンプライシング構想について印象に残った。将来的にCO2の排出に伴い費用負担が発生することとなるため、削減対策への投資を促すという考え方に感銘を受けたから。
今後少子高齢化で納税額が少なくなると予想される中、世界各国との技術力競争で負けないようにはこの資金源問題をどうすれば解決できるかがこれから社会に出る若者として気になります。
中国やインドのような大国の国々が、発展しながらもクリーンな取り組みをしていくためにはどうしていくのかについて知りたい。発展しながら脱炭素というのは難しいことではないかと疑問に思ったので、気になりました。