
北海道大学

北海道大学 公共政策大学院の学生を対象に、資源エネルギー庁から「エネルギーの現状と2050年へのエネルギー戦略」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。
講義「エネルギーの現状と2050年へのエネルギー戦略」(資源エネルギー庁 須山 照子 氏)

4月15日、16日に開催されたG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合で採択された内容は、「包括的かつ社会・環境面で持続可能な経済成長と開発、及びエネルギー安全保障を確保しながらグリーントランスフォーメーションを世界的に推進及び促進」するという文言が盛り込まれた。また、「遅くとも2050年までに温室効果ガス排出のネット・ゼロを達成するために我々の経済を変革すること」等を目指して各国が協働することとされている。このネット・ゼロに向けて協働する中で、日本としてもGX(グリーントランスフォーメーション)に向けた取り組みを加速させていかなければならない。
本年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」の具体化に向けて、現在、GX推進法及びGX脱炭素電源法が国会で審議されている。GX推進法では、世界的に脱炭素実現に向けた投資競争が加速する中で、我が国でも2050年カーボンニュートラル等の国際公約と産業競争力・経済成長を同時に実現していくための環境整備を行う。今後10年間で150兆円超のGX関連投資を実現するべく、政府として10年間で20兆円規模の先行支援投資を行う。
GX脱炭素電源法では、ロシアのウクライナ侵略に起因するエネルギー安全保障への課題や電力需給ひっ迫等への対応に加え、GXが求められる中で脱炭素電源の利用促進を図りつつ、電気の安定供給を確保するための制度整備を行う。
北海道内においても、GXにむけて様々な取り組みが行われており、その一つとして、北海道は風況が良く、陸上・洋上風力とも潜在量が期待されている。また、再生可能エネルギーの大量導入とレジリエンスの強化に向けて、本州間との電力融通を円滑化する系統整備を進めていくことが重要である。そのため、系統整備計画(マスタープラン)に基づき、海底直流送電線の整備を行っていくが、巨額な資金が必要となるため資金調達に向けての支援を講じていく。

また、CO2を排出しない電源として、原子力発電がある。現在、三菱重工業は、電力会社と共同で、従来のPWR(加圧水型原子炉)よりも更に安全性向上が図られる革新軽水炉の開発を進めている。
一方で、資源が乏しく、周囲を海で囲まれた我が国において、多様なエネルギー源をバランスよく活用することが重要となる。脱炭素化に向けて非効率な火力発電はフェードアウトに取り組みつつ、CCUS(CO2を分離・回収し、貯留又は有効活用する技術)も追求していく。特に、産業革命以降、累積したCO2の量を減少させるためにも、克服すべき技術となる。苫小牧市では、日本初の大規模CCS実証試験を実施し、2019年11月に目標としていた30万トンの圧入を達成した。現在、関係事業者でCCUSの実施に向け共同検討を開始している。
2050年のカーボンニュートラルに向けて、道筋は多様でありつつも、脱炭素、エネルギー安定供給、そして経済成長の3つを同時に実現していくことが求められている。
学生の声
先日、開催されたG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合でも、日本は、化石エネルギーの廃止に向けて消極的だったと報じられているが今後の取り組みとは。
再生可能エネルギーの中でベース電源となる地熱発電の普及に向けての取り組みは。
将来的にFITの制度がなくなった際、再生可能エネルギーの普及拡大に影響がでるのではないか。
電気自動車など次世代自動車が普及していく中で、インフラ整備は進められているのか。
原子力発電が武力攻撃された場合の対応とは。
CCUによって地質に与える影響は、また、安全性に問題ないのか。