
愛媛大学

愛媛大学 教育学部の学生を対象に、資源エネルギー庁から「最近のエネルギー情勢」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。
講義「最近のエネルギー情勢」(資源エネルギー庁 須山 照子 氏)

5月19日から21日にかけて広島においてG7サミットが開催された。その中でも、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクを一体的に捉え、各国の実情に応じ、あらゆる技術やエネルギー源を活用する多様な道筋の下で、温室効果ガスを実質ゼロという共通のゴールを目指すことの重要性の確認ができた。
足元の日本は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰や電力需給ひっ迫などエネルギー安全保障上の足元の危機を克服していくことが重要である。OECD諸国38カ国中、日本のエネルギー自給率は第37位であり、多くの資源を諸外国に依存している。あわせて、最近の為替の動向をみていくと、1ドルあたり2021年度平均111円91銭から2022年度の平均は135円05銭と大幅な円安水準となった。その結果、四国電力を含む電力会社7社が、6月から規制料金の値上げが実施される。日本として歩むべき道は、エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保をいかに進めていきつつ、脱炭素の取組を加速化させていくかである。化石燃料への過度な依存から脱却し、危機にも強いエネルギー需給構造の構築が重要である。

そのためにも、海外に依存しない再生可能エネルギーや安全性を大前提に準国産エネルギーである原子力エネルギーの活用が必要となる。2050年に向けて温室効果ガス実質ゼロを目指す上で、革新的なイノベーションも期待されている。まさしく、技術的自給率の向上も必要となってくる。設置が困難な場所にも設置が可能となる軽量・フレキシブル型のペロブスカイト太陽電池、海に囲まれている地の利をいかした洋上風力、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代に向けた革新的原子力開発、水素、アンモニア、合成燃料、メタネーション、CCUS、水素還元製鉄等様々な課題を克服し商業ベースまでもっていくことが求められている。
また、アジアの一員である日本は、アジアのエネルギー実情や経済成長に伴うエネルギー需要の急速な拡大などアジア地域も視野に入れた革新的な技術開発も重要となってくる。今後10年間に150兆円を超える脱炭素化に向けた投資を官民協調で実現していくため、新たにGX経済移行債が創設された。我が国の脱炭素技術の強みをいかし、将来の経済成長や雇用・所得の拡大につなげていきたい。
講義後に「今後聞いてみたいテーマは?」との質問に、学生からは、「世界のエネルギー問題解決にあたっての最新の取り組み」、「世界各国の再生可能エネルギーに関する取り組み」、「世界で最も脱炭素政策が進む国について。その国を参考にして日本でも脱炭素に対するアプローチを練っていけるのでは」、「水素・アンモニアというエネルギーがあるのを初めて知ったのでもっと詳しく聞いてみたい」、「今後、2050年までの日本のプランの具体例を聞いてみたい」、「四国で出来る発電方法」、「イノベーションとエネルギー問題の深掘り」など、様々な視点からの関心あるテーマが寄せられた。
参加者の声
S+3E、全てバランスよく整っていることが大切だと思った。
日本のエネルギー自給率がOECD加盟国に比べ低いこと。
ウクライナ情勢の中で安定供給という面は非常に大事になってくると考えた。
日本が太陽エネルギー利用の先進国であるということが印象的であった。日本は再生可能エネルギーに関して劣っていると思っていたのでギャップがありました。
ペロブスカイト太陽電池が印象に残った。太陽電池は重くてとても大きいものだと思っていたが、小型のものや柔軟性のある太陽電池があると知って、興味が深かった。
二酸化炭素の再利用の方法が開発されている話は、初めて耳にしたので印象に残った。
SAFについて、今までにない原料でジェット機を動かすのは面白い思った。
原子力発電は危ないものだと思っていたので、これから世の中から少なくなっていくと思っていたが、現在技術も進んでおりCO2削減のため注目されているということに驚いた。
脱炭素に向けて今世界は一丸となって取り組んでいるとは言えない気がした。発展途上国と先進国の間で環境に対する考え方が異なると思ったからだ。
脱炭素社会に向けて、再生可能エネルギーを増やす取り組みがなされるが、天候やコスト、設置場所などデメリットもあり、安定供給を高めることが必要だと思った。2050年までに脱炭素社会を実現するには、環境や経済、科学技術など様々な面で進歩する必要があり、日本だけではなく、世界の国で取り組まないといけない。