2022年度開催報告 どう考える?これからの日本のエネルギー

山口東京理科大学

2022年10月11日(火)
山口東京理科大学講義の写真

山口東京理科大学 工学部 電気工学科の学生を対象に、資源エネルギー庁から「エネルギー政策の動向について」、中国経済産業局から「中国地域のカーボンニュートラルに向けた動き」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。

講義「エネルギー政策の動向について」 (資源エネルギー庁 須山 照子 氏)

我が国は、2020年10月にカーボンニュートラルを表明し、脱炭素化に向けて大きく舵をきった。一方で、電力需給ひっ迫やウクライナ情勢によるエネルギー価格高騰への対応、資源確保など足元の危機を施策の総動員で克服していかなければならない。その対策の1つとして、中長期的な脱炭素化に向けても家庭・産業・業務・運輸の各分野における需要サイドの省エネの大胆な取り組みが求められている。民生部門では、2025年度までに住宅を含む全ての新築建築物に省エネ基準の適合が義務化されることになる。運輸部門でも、2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%という目標を掲げている。自動車産業は、製造業出荷額の約2割、関連産業を含め約550万人の雇用を支える基幹産業であり、大きな転換期を迎えることになる。

供給面では、再エネの導入拡大に向けて系統整備、定置型蓄電池の導入、洋上風力等の推進を、原子力については安全性の確保を大前提とした、運転期間の延長など既設原子炉の活用、次世代革新炉等の研究、開発の検討を行う。脱炭素化やエネルギー危機を踏まえ、小型原子炉をはじめ、高温ガス炉、ナトリウム冷却高速炉など、主要各国で革新炉の研究開発支援の動きがある。

今後、持続可能な社会を目指す上で、様々な長所を最大化しつつ、短所を最小化する組合せが重要である。そして、脱炭素化による経済社会構造の大変革を早期に実現し、我が国の国際競争力を高めていくためにも、特定の技術に限定することなく、多様な道筋を目指していくことになる。

講義「中国地域のカーボンニュートラルに向けた動き」(中国経済産業局 岡田 健 氏)

中国地域のCO2排出状況に関する解説の様子

中国地域のエネルギー消費量は全国比で13.7%となっており、この消費量は、中国地域の人口や経済規模の割に多く、消費量の8割は製造業が占めている。CO2の排出量は電力消費量と比例して排出していること、またGRP(域内総生産)あたりのCO2の排出量について、鉄鋼や化学等の産業部門からの排出量が多いことからも、中国地域のCO2の排出量削減には製造業での取り組みが重要となっている。

また中国地域の電力事情の特徴として、製造業において工場内で自家発電する割合が高くなっている。宇部地域では日本有数の自家発電所があるが、そのほとんどが石炭・石油火力であり、どのようにCO2削減に取り組むか課題となってきている。

次に具体的な中国地域のカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、まず政策的には現在、42市町村で『ゼロカーボンシティ宣言』実現に向けて取り組んでいるとともに、カーボンニュートラルに向けた具体的計画を立案し、環境省から指定された『脱炭素先行地域』についても現在4市町村が指定されており、カーボンニュートラルに向けて取り組んでいる。

また、企業の取り組みとして、燃焼しても窒素と水になり、CO2を排出しないアンモニア混合燃焼プロジェクトが山口県周南地域のコンビナートで全国に先駆けて行われている。また、自動車産業としては国策として2035年までに電動車100%を目指している中、自動車関連企業が多い岡山、広島、山口地域での雇用維持への対策が課題となっている。現在、エンジン部品から電動車部品製造への業態転換への取り組みに支援を行ったり、バイオディーゼル車の開発などが進められている。

その他、広島県大崎上島町にてCO2回収・カーボンリサイクルの実証事業として石炭ガス化燃料電池複合発電プロジェクトが進められている。この発電では、石炭を燃焼して発電するのではなく、石炭をガス化し、そのガスでガスタービンを回して発電を行うことで発電効率を高め、CO2の排出量を減らす。さらに燃焼時のCO2を分離回収する際に得られる水素を活用して燃料電池で発電を行うことでさらに発電効率を高めるものである。また、回収したCO2は化学製品等にリサイクルする研究も隣接施設で進められている。

このようにカーボンニュートラルの取り組みが地域産業、生活に大きく影響を与える状況であることを知っていただきたい。

学生の声

日本は再生可能エネルギーについて遅れを取っていると思っていたがそうではないと知り、今まで以上に再生可能エネルギーや温室効果ガスについて興味が湧いた。

他の国に比べ面積も狭く出来ることが限られている中でエネルギーを安定的に供給できることが日本の課題であると思う。広大な面積を利用してエネルギー供給できないため少ない土地で効率よくエネルギー供給できれば良いと思う。

現在、円安のためコストに関してとても敏感になっている。そのためコストを重視した方が良いかと感じた。

課題に対して、具体的に様々な案が練られていることが分かった。特に、水素、アンモニアについては興味が持てた。

地球温暖化削減に向けての取り組みに興味があったため、中国地域でのカーボンニュートラルに向けた取り組みの話が印象に残った。

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