2022年度開催報告 どう考える?これからの日本のエネルギー

信州大学

2022年11月14日(月)
信州大学講義の写真

信州大学の学生を対象に、資源エネルギー庁から「エネルギーの現状と2050年へのエネルギー戦略」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。

講義「エネルギーの現状と2050年へのエネルギー戦略」(資源エネルギー庁 須山照子氏)

講義を受けている学生の様子

日本経済の成長と脱炭素化を両立させるためには、「グリーントランスフォーメーション(GX)」(以下「GX」という。)の実現が不可欠である。化石燃料中心の経済・社会・産業構造からクリーンエネルギーへ移行させ、GXを実行するべく、内閣総理大臣を議長としてGX実行会議が開催されている。
電力需給ひっ迫やウクライナ情勢などによるエネルギー価格の高騰や安定供給の懸念など、足元の危機を克服するため、原子力にフォーカスをあてると、今年の冬場にむけ再稼働済の10基のうち最大9基の稼働確保のため、工事短縮や定期検査スケジュールなどの調整を行っている。また、来夏以降の安定供給に向けては、設置変更許可済の7基の再稼働に向け、国が前面に立った対応をするとしている。原子力17基の稼働により、約1.6兆円分のエネルギー調達費の海外流出が回避できることになる。

中長期的には、再稼働に向けた関係者の総力の結集や、安全確保を大前提とした運転期間の延長などの既設原子力発電の最大限の活用、次世代革新炉の開発・建設、バックエンド対策等の検討を行い、方向性を示していく。原子力以外にも、将来にわたり電力需給構造の多様化、強靱化を図りGXを実現するため、あらゆる選択肢を追求することが必要となる。省エネ技術、太陽光発電、風力発電、それを補完する蓄電技術、石炭火力・ガス火力を脱炭素化していく上でのCCUS、水素やアンモニアの技術開発、直流送電技術など使える技術は全て使い、未来の技術を世界に先駆けて発信していくことが重要となる。

参加者の声

私たち大学生の持っているイメージと現実との乖離をデータを持って示して貰えたため、認識の違いを受け入れやすく、印象に残った。また、現代の情勢によってどのような政策転換が起きたのか、生活レベルにおいての影響も詳しく説明いただいたため、自分に引き寄せて考えることが出来た。

日本が他国に依存している燃料のうちロシアが占める割合やOPECの価格動向により、最近の燃料費の高騰についておおまかなメカニズムを知ることが出来た。

ウクライナ情勢等による化石燃料の価格の高騰から、表面上よくわからなくても実際には大変不安定な状況であり、資源に乏しくエネルギーを得る上で制約の多い日本が、こういった有事の際でも国際競争力が持てるように、安定して効率よく電力を生み出す方法を模索するべきだと感じた。

再生可能エネルギーの課題について、やはり再生可能エネルギーは夢があるが問題も多く、完全に火力を無くすことはできずエネルギーミックスをするのが大切だと感じた。

日本の再生可能エネルギーの導入量が多いことに、今までの認識が改まった。

原子力発電は、エネルギー安全保障やカーボンニュートラルの問題を考えると重要なポジションを占めるのは理解できる一方で、使用済み燃料が排出されることを考えると、SDGsのつくる責任、つかう責任などの観点からも、いつまでも主力電源で使い続けるべきではないと思う。短期、中期、長期ビジョンでエネルギー政策はどう議論されているか知りたい。

国内外の原発の災害時の安全機能や装置について関心をもった。また、東日本大震災クラスの地震が来たときに原発事故が起こらないようにするための設備について知りたい。

世界的なガソリン車の新車販売を禁止する流れや、電気自動車の普及について、経済的観点から見て、どういった政策がとられるのか気になった。

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