

琉球大学
2022年10月13日(木)
琉球大学 教育学部の学生を対象に、資源エネルギー庁から「エネルギー政策の動向について」と題し、エネルギー変換や水素の実験と合わせて、エネルギー政策に関する授業を実施した。
講義「エネルギー政策の動向について」 (資源エネルギー庁 須山 照子 氏)
我々の生活は、エネルギー資源を活用し、熱や光、電気など、様々なエネルギーに変換し生活している。エネルギー資源は化石エネルギーと非化石エネルギーに分かれるが、化石エネルギーは燃焼時にCO2を排出するため、脱炭素化を進めていくには、化石エネルギーの使用量を減らしていく必要がある。
沖縄県は島々で構成されており、小規模独立系統のため、原子力や水力の開発が難しく、火力発電が主力電源となっている。現在の電源構成は、石炭火力が中心で、石油、LNG、再エネなどで構成されている。1985年度時点は、石油火力の割合が100%であったが、オイルショック以降、石炭火力の割合が増え、2012年には、吉の浦LNG火力が稼働し、LNG火力の割合が徐々に増えてきている。近年は固定価格買取制度導入後、太陽光を中心とした再エネも増えている。脱炭素化に向けて、今後、化石エネルギー依存率を下げ、非化石エネルギーの割合を増やしていくことが鍵となる。一方で、太陽光発電は時間と天気により、風力発電は風の強さにより発電量が大きく変わるため、調整力として火力発電に依存することになる。今後は、調整力の脱炭素化を進めるためにも、蓄電池なども活用していくことが必要となる。
沖縄県は、2050年に向けてカーボンニュートラルに向け検討を行っている。例えば、次世代太陽光発電や陸上・洋上風力の普及拡大、県内再エネ由来の水素供給拡大、自動車の全電動化、石炭火力・ガス火力を脱炭素化していく意味でのCCUSや水素、アンモニアの導入など、多岐にわたって議論が進められている。
日本全体でも、2050年までに、温室効果ガス排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを目指すことを宣言している。一方で、我が国は、今日、電力需給ひっ迫、エネルギー価格の高騰などエネルギー安全保障の面でも、困難に直面しており、足元の危機の克服を最優先としつつも、脱炭素化に向けた動きを遅滞なく進め、国際競争力を高めていくことが重要となっている。
講義後のレポートにて参加者に対し、「今回の講義内容を漢字一文字で表すとなに?」いう質問に対し、「革」「難」「脱」「変」という回答が多く、現状への危機感や課題解決の難しさを感じつつも、脱外国依存、脱炭素化を進めるための変革の必要性を感じるレポートが多くあった。中には「考」「道」「繋」「知」という回答もあり、今回の講義をきっかけに更にエネルギーに関する知見を広げ、現状の課題を自分事ととらえ、一人一人の力を繋げれば国レベルの力となりうることについて意見する回答もあった。
学生の声
いずれも一見、難解な内容に思えて、調べたり、自分で考えたりすることに抵抗があったが、今回の講義を受け、自分ごとに置き換えて考えることの重要性について、しっかり理解することができた。
実験で水素のもつ力というものが可視化され、水素による発電の未来というものに対して、強く興味を持てた。また、エネルギー資源が少ない日本という国において他国の影響を受けやすいのが経済面であることがわかった。
未来の世界はどうなるのか、バイオマスエネルギーなど新しいエネルギーの研究段階や現状について聞いてみたい。
経済性についてはあまり重視していなかったが、経済の問題は私たちの生活に直結していること、また、その背景には色々な世界の情勢が反映されていると知って興味がわいた。
私たちの世代だけを考えれば、経済性(低コスト)や安定供給を求めてしまうけれど、私たりより下の世代のことを考えれば、温室効果ガス排出を抑えることも重要な視点だと思う。地球はみんなのものだから、人間中心ではなく、皆に優しく、地球に優しいエネルギーを今後の日本は選択・利用して欲しい。
現在ではエネルギーの安定供給を行うためには、どうしても温室効果ガスを発生させる化石燃料に頼るしかない状況だと思うので、安定供給と環境適合性の両立を目指すことが必要になる。
イノベーションによって改善される点は、原子力のような安全性だけでなく、自給率、コスト、環境適応性など多岐に渡るため、それぞれの分野でどのように改革されるのか、気になった。
私たちに身近なことで、エネルギーや地球環境のために何ができるのか、また、全国の大学生がどのような取り組みをしているのか知りたいと思った。