

龍谷大学
2022年9月30日(金)
龍谷大学の学生を対象に、資源エネルギー庁から「エネルギー情勢を巡る最近の動向」、近畿経済産業局から「関西のエネルギー事情」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。
講義「エネルギー情勢を巡る最近の動向」(資源エネルギー庁 須山照子氏)

日本のエネルギー情勢は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた温室効果ガスの削減や、世界的な電力需給のひっ迫に対する安定供給の確保、様々な資源や燃料価格の高騰や再エネ賦課金等のコスト低減に向けた対応、災害やテロを考慮したエネルギーインフラの安全対策強化など、現在起きているリスクへの対応と2050年を見据えた政策を同時に進めている。
また、ウクライナ情勢に伴い、主要各国はエネルギーの安定供給を確保すべく、原子力発電所の継続稼働や再生可能エネルギー導入の促進、火力発電所の運転緩和など政策を転換し対応している。日本も省エネを進めるとともに、再生可能エネルギー、原子力などを促進しつつエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用するとして、政策の方向性を確認している。
一つの鍵となる再生可能エネルギーの導入については、例えば太陽光発電では2030年までに現在のほぼ倍となる導入量が想定されるが、適地の確保や出力変動対策などの課題を克服しなければならない。また、調整力として期待される蓄電池については、バッテリーメタルの価格上昇傾向が継続しているなど、安定供給面における対応も必要となる。
脱炭素を目標とする中で、世界的には現在・将来的に原子力発電を利用しようと考えている国は多く、革新炉の開発をはじめ日本企業が持つ技術を継承していく必要がある。
万能なエネルギーは無く、様々な情勢や課題を踏まえていかに組み合わせるかが肝要となる。
講義「関西のエネルギー事情」(近畿経済産業局 長見 康弘氏)

関西は多様な産業が集積し、素材・部品加工から最先端製品製造まで、「つくれないものはない」と言われるほど川上から川下までをカバーする幅広いものづくり企業が集まっている。特にカーボンニュートラルに寄与する産業として、二次電池やエネルギー関連産業の一大開発・生産拠点となっており、リチウムイオン電池や水素・燃料電池関連企業が高いポテンシャルを有している。2025年の大阪・関西万博ではこのような未来社会を形成する先端技術の実証や実装にも注目して欲しい。近畿経済産業局では、成長産業への参入のためのビジネスマッチングや連携強化を促進する取組を行っている。
また、特に中小企業に対してはカーボンニュートラルへの取組を促すべく、取組イメージを分かりやすく伝える広報ツールの提供や、自治体との連携による支援などを行っている。
参加者の声
世界情勢がエネルギー問題と関わりがあることについて、印象に残った。
化石燃料に関してほぼ全て海外から輸入している状態であり、かつ、ロシアへの依存率がこれ程までに高いことに驚いた。自分の国のエネルギー分野に関してあまり知識がなかったことが確認できたため、エネルギーに関する理解を自主的に深めていきたい。
日本のエネルギー自給率がG7の各国と比べて非常に低かったことに驚いた。
エネルギー自給率が考えていたよりも低く、カーボンニュートラルに取り組む日本では、これからもっと再生可能エネルギー発電施設の設置を急がなければならないと感じた。世界的に見れば日本は再生可能エネルギーが導入されている方ではあるが、現状では土地の狭さや再生可能エネルギーのデメリットなどが更なる発展を阻害しているので、それらを克服できる技術の開発や利用法に期待したい。
原子力発電というリスクのある発電も、今後、世界がどうしていくのか、安全面をどうは配慮していくのか関心がある。
バイオマス発電のメリットに地産地消があることが、思っても見なかったことなので印象に残った。
近畿の企業がカーボンニュートラルに取り組むための支援策があることが印象に残った。そんな仕事があったとは知らなかった。
電気自動車の導入を進める事による、必要な電気量の増加に関して知りたいです。現在の状況でも電力がひっ迫しているのに、電気自動車の導入によってさらなる電力不足が考えられるからです。
昨今電気料金を含めた物価が上昇していくなかで、また化石エネルギーが枯渇する可能性を持つ現代社会において、いかにして電力コストを安定して供給することが大きな課題であると感じた。
環境や安全性についてはよくネットやテレビでも聞くが、エネルギーコストに関してはあまり聞いたことがなかった。エネルギー供給を考える上では、コスト面は絶対に外せないテーマの一つだと感じた。
持続可能な社会を実現させ、未来でも人間が安全・安定に住み続けることのできる地球であり続けるためには、環境のことを一番に考えて少しでも環境問題の改善に取り組んでいくことが重要。