2022年度開催報告 どう考える?これからの日本のエネルギー

北海道大学

2022年5月19日(木)
北海道大学講義の写真

北海道大学 公共政策大学院の学生を対象に、資源エネルギー庁から「最近のエネルギーを巡る状況と第6次エネルギー基本計画について」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。

講義「最近のエネルギーを巡る状況と第6次エネルギー基本計画について」(資源エネルギー庁 須山 照子氏)

最近のエネルギーをめぐる状況として、ロシア・ウクライナ情勢は、北海道は地理的にも間近にロシアがあり、エネルギー供給の脆弱性を抱える我が国において、日本にも多大な影響を及ぼしている。ロシアへのエネルギー依存状態からの脱却を図る中、世界的な原油価格の高騰も相まって、1978年に国家備蓄制度が始まって以来、初めて国家備蓄を放出されることとなった。

講義の風景
参加者との質疑応答の風景

また、2022年度の電力需給見通しであるが、北海道管内は夏季・冬季共に一定の予備率を確保しているが、夏季は、東北・東京・中部エリアにおいて厳しい見通しであり、冬季は、東京から中部までの計7エリアで予備率3%を下回るなど過去10年間で最も厳しい見通しとなっている。景気回復による更なる需要増を考慮すると、さらに厳しくなることも見込まれている。

このような現状の中、2021年10月に第6次エネルギー基本計画が策定され、2050年カーボンニュートラル・2030年度削減目標に向けたエネルギー政策は、安全性を前提に、安定供給を第一とし、経済効率と環境適合の両立(S+3E)を図ることが要諦である。世界に目を向けても、2050年カーボンニュートラルに向けて取り組む国・地域は144にのぼり、2050年以降の達成目標を表明する国もあり、今後もカーボンニュートラルに向けた動きは拡大していく。

日本においても、当面は2030年度削減目標に向け、2030年度の電源構成は、再エネは36~38%、原子力は20~22%、水素・アンモニア1%の導入量を目指し、火力発電は全体で41%程度に削減を目指していくなど、野心的な目標となっている。
参加者からは、原子力の必要性は理解できる一方で、高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題等が懸念されるなどの声もあった。原子力の利用については、福島第一原子力発電所の事故の反省と教訓を肝に銘じて、安全性の確保を大前提に、国民からのより一層高い信頼確保に努め、必要な規模を持続的に活用していく必要がある。高レベル放射性廃棄物については、2020年11月より北海道の寿都町、神恵内町においても文献調査が開始されているが、次世代に積み残すことなく、国として一人でも多くの方々に関心をもって頂けるよう、全国での対話活動にも取り組んでいく。

学生の声

2016年の高速増殖原型炉もんじゅ廃炉決定や原子力に対する世論の影響から、政府としては核燃料サイクルの実現ではなく地層処分を主軸に最終処分のあり方を考え、核燃料サイクルについては半ば諦めていると個人的に思っていました。ただ、資料中に「核燃料サイクルには廃棄物減容化・有害度低減・資源有効利用などのメリットがあり、その実現のために将来的に高速炉サイクルを目指している」との記載があったので、エネルギー安全保障の観点に加えて、核燃料サイクルのあり方を含めた原子力政策に関する議論が今後活発になれば、日本にとって良いかたちで原子力を活用できるのではないかと感じました。

太陽光、風力など、出力変動に対する調整力として蓄電池があがっています。蓄電池の生産に必要なレアメタルなどの原材料は特定の国・地域から輸入せざるを得ず、新たな依存状況をうんでしまう恐れがあります。この点に関して、国はエネルギー安全保障・経済安全保障の観点からどのように考え、対応していくのか気になる。

ロシア・ウクライナ情勢とエネルギー供給の問題について、日本から見た状況を詳しく説明いただき理解が深まりました。特に、ロシアに対するエネルギー依存度の国際比較についてはあまり考えたことがなかったので、日本の状況だけでなく、各国の状況も踏まえた国際的な視点を持つことが重要だと感じました。

洋上風力の公募の話、基準の透明化に関心がある。

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