

弘前大学
2022年5月21日(土)
弘前大学 教育学部の学生を対象に、資源エネルギー庁から「気候変動と日本のエネルギー政策の将来を考える」と題し、エネルギー政策に関する授業を実施した。
講義「気候変動と日本のエネルギー政策の将来を考える」(資源エネルギー庁 須山 照子氏)
日本は島国でありながら、非常にたくさんのエネルギーを消費しており、それらの電力を賄うべく、色々な発電方法を用いて電気を作っている。特に、青森県内は全国的に見ても様々なエネルギー関連施設があり、重要な拠点地域となっている。
特に原子力に関しては、国および電力事業者はこれまで30年に渡り、青森県や地元の方々のご理解とご協力の下、核燃料サイクル関連施設の建設を進めてきた。
核燃料サイクルには、
①高レベル放射性廃棄物の減容化、
②有害度の低減、
③資源の有効利用のメリットがあり、
今後も十分なご理解とご協力を得て政策を進めることが必要である。
近年、地球温暖化の影響により大型台風による被害が顕著になる中、2015年のパリ協定においては、産業革命前から気温上昇を2℃より十分下方に保持し、1.5℃に抑える努力を追求することを目的とし、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みが採択された。
我が国では野心的な目標として2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、2050年には100%の削減目標を掲げており、経済と環境の好循環を生み出し、力強い成長を作り出していくことが重要である。
これらの目標を実現するためにも、S+3Eのバランスを取りながら、
①徹底した省エネの深堀、
②非化石エネルギーの導入拡大
に取り組んでいく必要があるが、更なる再エネ導入には平地面積が少ない日本では適地の確保や立地制約などの課題があり、新たなイノベーションが必要である。
講義を受けた後、日本の2050年カーボンニュートラルを目指すエネルギーシステム(電源構成)について、12班のグループに分かれてグループディスカッションを行い、各班が発表を行った。そのうち、4班のグループ発表内容を紹介する。

タイトルを漢字一文字で表すと「省」。理由は、資源を大切にし、再生可能エネルギーを増やし、省エネルギーを目指していくことで選んだ。
電源構成の理由としては、火力は、カーボンニュートラルを達成するためには現在からかなり減らす必要があると考えた。再生可能エネルギーは現時点ではコストなどの問題はあるが、土地はあるはずと考えた。原子力発電は原発事故に対する危機意識が高まり、減少していくと考えた。その他として水素発電が現時点で最も開発が期待される発電方法と考え、このような構成とした。

タイトルを漢字一文字で表すと「核」。理由は、2050年の電源構成を考えた際、再生可能エネルギーの割合を増やすだけでは電力が足らず、原子力の技術力も上がり、国民理解もされ、再稼働も増え主力電源となると考えた。
電源構成の理由としては、再生可能エネルギーでは足らず、火力発電や原子力発電で調整すれば、現在と同等レベルになるのではと考えた。火力は木をたくさん植えるなどでカーボンリサイクルし、原子力発電は高コスパであり、今後は発電施設の割合も増えると考えた。その他として、水素発電に期待し、このような構成とした。

電源構成の理由としては、火力は化石エネルギーによるCO2の排出量を減らすために割合を大きく減らした。再生可能エネルギーは、風力発電では発電効率が良いが設置費用が高く、自然災害や動物の衝突による被害をもろに受け、太陽光発電は敷地を必要とせず、発電時に騒音など出さないことから割合を増やした。原子力は二酸化炭素を排出しない点、電力の安定供給や電力コストの引き下げにつながる一方で、放射性廃棄物の処理の問題や災害時の被害が甚大であることも考慮した。その他として、燃料電池をあげたが、設備の開発がまだ完璧には見込めず、電力の安定供給に完全には期待できないと考え、このような構成とした。

2050年の電源構成を考えた際、火力は出来るだけ減らす必要があるが、供給力の高さからある程度は必要と考えている。再生可能エネルギーは、特にバイオマス発電の効率や技術力が上がると想定した。同じく、原子力も安全を確保する技術力が発達していると考えた。その他として、水素発電も技術革新によりさらに成長していく余地があると感じ、このような構成とした。
学生の声
自分達で未来の電源構想を考えたので、さまざまな発電の仕組みについて理解できたし、メリットやデメリットについても理解が深まってよかった。
将来的に原子力発電を利用する動きが見られること。 日本は原子力発電の重大事故をおこし、今後は徐々に原子力は使わないと思っていたから。
2050年の発電について、自分1人ではなく、グループのみんなと考えることで、多様な視点からの考えを知ることが出来ていい時間になった。
青森県に絞って話してくれたことが多かった点で理由は身近でイメージしやすかった。
現在の日本の電源供給についての課題や、今後目指すべき形態について学ぶことが出来てよかった。 ウクライナ情勢と日本の電力供給について理解を深めることが出来た。 再生可能エネルギーについて、より現実的な発電方法を学ぶことが出来て良かった。
カーボンニュートラルを目指すには火力発電を減らす必要があることを知ることが出来た。原子力発電は二酸化炭素の排出が少ないことがわかった。