はじめに 3-3

再生可能エネルギー(以下、「再エネ」という。)は、温室効果ガスを排出しない脱炭素エネルギー源であるとともに、国内で生産可能なことからエネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で重要な国産エネルギー源です。世界的には、再エネの導入拡大に伴い発電コストが急速に低減し、他の電源と比べてもコスト競争力のある電源となってきており、それが更なる導入につながる好循環が実現しています。日本においても、2012年7月に固定価格買取制度(以下「FIT制度」という。)が導入されて以降、再エネの導入量が制度開始前と比べて約4倍になるな等、導入が急速に拡大してきました。2021年3月末時点で、FIT制度開始後に新たに運転を開始した設備は約6,136万kW、FIT制度の認定を受けた設備は約9,824万kWとなっています。

2020年10月に菅総理が2050年にカーボンニュートラルを目指す宣言を発表したことを受けて、2021年3月から総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(以下「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会合同小委」という。)において再エネの2050年も見据えた2030年の導入目標の策定にあたり、関係省庁、業界団体、事業者、シンクタンクへのヒアリングを複数実施し、集中的な議論・検討を行いました。

その結果、2021年10月に閣議決定された第六次「エネルギー基本計画」において、再エネについては、2050年カーボンニュートラル及び2030年度の温室効果ガス排出削減目標の実現を目指し、再エネ最優先の原則を踏まえ、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促していくものと位置付けています。具体的には、コスト低減・市場への統合、地域と共生する形での適地確保や事業実施、系統制約の克服等を着実に進め、導入拡大を図っていきます。日本の再エネの発電コストは着実に低減してきているものの、現在、国際水準と比較して依然高い水準にあり、FIT制度に伴う国民負担の増大をもたらしています。エネルギーミックスにおいては、2030年度の導入水準(再エネ比率36〜38%程度)を達成する場合のFIT制度における買取費用総額を5.8〜6兆円程度と見込んでいますが、2021年度の買取費用総額は既に3.8兆円程度に達する等、国民負担の抑制が待ったなしの状況となっています。こうした状況を踏まえると、再エネの発電コスト低減を加速化させていくことが不可欠です。

また、再エネの市場統合への段階的な措置である市場連動型のFIP制度が含まれる「エネルギー供給強靱化法」が2020年6月に成立しました。本法案ではFIP制度の他、系統増強費用への賦課金投入、太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度の導入等によりFIT制度の抜本的な見直しが行われました。本法案の改正内容は2022年4月から施行される予定です。

太陽光発電を中心に、再エネの導入が拡大したことに伴い、安全面や防災面、景観や環境への影響、将来の設備廃棄等に対する地域の懸念や、FIT調達期間終了後の事業継続や再投資が行われないことによる持続的な再エネの導入・拡大の停滞への懸念が高まっています。再エネが主力電源となるためには、再エネが地域と共生する形で定着し、長期にわたる事業継続や再投資により、責任ある電源としての長期安定的な事業運営が確保されることが重要です。

2050年カーボンニュートラルの実現のためには、洋上風力発電も重要です。2019年4月には洋上風力発電の導入を進めていくため、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号)」(以下「再エネ海域利用法」という。)が施行されました。再エネ海域利用法の施行等の状況については、既に促進区域に指定された長崎県、秋田県、千葉県の4区域に加えて、2021年9月に秋田県八峰町・能代市沖を含む5区域を指定しており、そのうち、秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖並びに千葉県銚子市沖の3区域については、2021年12月に事業者を選定しました。引き続き、再エネ海域利用法に基づき、事業環境整備を進めつつ、コスト効率的な案件の導入を促進していきます。

さらに、従来の系統運用の下での系統制約も顕在化しています。系統制約の克服に向けては、全国の送電ネットワークを、再エネ電源の大量導入等に対応しつつ、レジリエンスを抜本的に強化した次世代型ネットワークに転換していくことが重要となります。これまで転換に当たっての諸課題を整理しながら、電力ネットワークの次世代化に取り組んでいました。こうした取組について2021年9月に開催された再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会合同小委において電力ネットワークの次世代化に向けた中間取りまとめを行いました。

第六次「エネルギー基本計画」における再エネ政策の基本的方針を踏まえ、これらの各論や個別施策の中間整理を行い、36〜38%という野心的な目標達成のための関係省庁の施策について、進捗が把握できるような形で定期的なフォローアップを行う等のアクションプランを策定しています。引き続き、FIT・FIP制度をはじめ、現行制度の運用も含めたあらゆる政策を総動員し、再エネ最大限の導入を実現していきます。