第1節 高効率石炭・LNG 火力発電の有効利用の促進 

省エネの推進や再エネの導入拡大とともに、エネルギーセキュリティの向上やエネルギーコスト削減の観点から、火力発電の高効率化は重要な課題です。そのため、高効率火力発電(石炭・LNG)について、環境に配慮しつつ導入を進めるとともに、技術開発を進めて発電効率のさらなる向上を目指しています。

1. 世界最高水準の発電効率のさらなる向上

脱炭素化に貢献するため、火力発電の発電効率を向上させる次世代技術である石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)、高効率ガスタービン等の技術開発・実証に取り組みました。具体的には、CO2の大気への排出抑制を図るため、広島県大崎上島において、IGFCの基幹技術である酸素吹きIGCC(石炭ガス化複合発電)からのCO2分離回収技術の実証試験等を実施しました。今後は、IGCCに燃料電池設備を追設して、CO2分離回収型IGFCとしてのプロセスの最適化等についての実証試験を実施することとしています。また、回収したCO2を資源として再利用するカーボンリサイクルの実証研究拠点として大崎上島を整備し、カーボンリサイクルに係る研究開発を進めていきます。

また、アジア等新興国において、エネルギー安全保障及び経済性の観点から、引き続き火力発電の利用の拡大が見込まれる中、石炭やLNGをエネルギー源として選択する国に対しては、可能な限り高効率な火力発電を導入することが、実効的な気候変動対策になります。エネルギー基本計画に基づき、故障率の低さや効率低下が起こりにくいなどの技術的な強みも活かしつつ、我が国の最新鋭の高効率火力発電の普及を図っています。

<具体的な主要施策>

(1)次世代火力発電等技術開発【2019年度当初:111.0億円】

火力発電から排出されるCO2を抜本的に削減するためCO2分離回収型IGFCに係る実証試験を実施するとともに、回収したCO2の有効利用に向け、CO2からメタンを合成するメタネーション等のカーボンリサイクル技術の研究開発を実施しました。2020年度以降は、カーボンリサイクル技術ロードマップに基づき、化学品化、燃料化、炭酸塩化等のカーボンリサイクル技術の研究開発を実施するとともに大崎上島におけるカーボンリサイクル研究の実証研究拠点整備も進めていきます。

(2) 先進的な火力発電技術等の海外展開推進事業【2019年度当初:6.5億円】

石炭利用の増加が見込まれるアジア諸国を中心に、石炭火力の高効率化や環境負荷を低減する石炭利用について、技術セミナーの開催や研修の開催等を実施し、日本のクリーンコールテクノロジーの普及を図りました。

2. 火力発電の環境負荷の低減に向けた取組

経済的・安定的な電力供給を確保するとともに、環境負荷をより低減していくためには、新増設やリプレースによって最新鋭の高効率な火力発電所を導入する一方で、低効率の火力発電の休廃止・稼働抑制を進めていくことが重要です。このため、従来3年程度かかる環境アセスメントの手続期間を、リプレースの場合には1年強程度まで短縮します。

また、2015年7月に、主要な事業者が参加する電力業界の自主的枠組み及び低炭素社会実行計画(国のエネルギーミックス及びCO2削減目標とも整合する二酸化炭素排出係数0.37kg-CO2/kWhを目標)が発表され、2016年2月には、電気事業低炭素社会協議会が発足し、個社の削減計画を策定した上で、業界全体を含めてPDCAを行う等の仕組みやルールが発表されました。

そして、この自主的枠組みの目標達成に向けた取組を促すため、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(昭和54年法律第49号)」(以下、「省エネ法」という。)・「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年法律第72号)」(以下、「高度化法」という。)に基づく政策的対応を行うことにより、電力自由化の下で、電力業界全体の取組の実効性を確保していくこととしています。

また、2030年度の削減目標やエネルギーミックスと整合する2030年度に排出係数0.37kg-CO2/kWhという目標を確実に達成していくために、これらの取組が継続的に実効を上げているか、毎年度、その進捗状況を評価することとしています。これを受けて、2019年11月29日には、政府として産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会資源・エネルギーワーキンググループを開催し、電力業界の自主的枠組みの評価・検証を行いました。また、環境省は、毎年度の電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況を評価しています。

加えて、2030年以降を見据えて、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)について、「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」(2013年4月25日 経済産業省・環境省)やエネルギー基本計画等を踏まえて取り組みました。

また、国が整理・公表している最新鋭の発電技術の商用化及び開発状況(BATの参考表)については毎年度見直し、必要に応じ随時公表することとしており、2020年1月に更新しました。