第2節 原子力被災者支援

東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、政府は2015年6月、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」を改訂し、国として取り組むべき方向性を提示しました。その後、福島の復興・再生に向けた取組は着実な進展を見せています。

一方で、復興の進捗にはいまだばらつきがあり、長期にわたる避難状態の継続に伴って、新たな課題も顕在化してきました。住民の方々が復興の進展を実感できるようにするためには、被災地域の実情を踏まえて、対策をさらに充実させていく必要があります。このような状況を踏まえ、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速していくため、2016年12月に「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」を閣議決定し、必要な対策の追加・拡充を行うこととしました。具体的には、早期帰還支援と新生活支援の両面の対策のより一層の深化、事業・なりわいや生活の再建・自立に向けた取組の拡充等を行うこととしています。また、帰還困難区域については、可能なところから着実かつ段階的に、政府一丸となって、一日も早い復興を目指して取り組んでいく方針を示し、特定復興再生拠点1の整備に向けた制度の構築を行うこととしました。

また、同指針を踏まえて、第193回国会に「福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案」が提出され、成立しました。同法案には、特定復興再生拠点区域の復興及び再生を推進するための計画制度の創設、福島相双復興官民合同チームの体制強化、「福島イノベーション・コースト構想」の推進、風評被害払拭への対応の4つの柱に加え、被災12市町村が帰還環境整備に取り組むまちづくり会社等を「帰還環境整備推進法人」に指定できる制度、子どもへのいじめ防止のための対策、地域住民の交通手段の確保についても、その後押しを行うため、法律に位置づけることとされました。さらに、本法律を踏まえ、2017年6月には「福島復興再生基本方針」を改訂しました。

そして、2019年3月に「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針の変更について」を閣議決定し、復興・創生期間における取組に加え、復興庁の後継組織の考え方について示すなど、復興・創生期間後における復興の基本的方向性を示しました。

さらには、2019年12月に「『復興・創生期間』後における東日本大震災からの復興の基本方針」を閣議決定し、原子力災害被災地域については、中長期的な対応が必要であり、引き続き国が前面に立って取り組むこと、当面10年間、本格的な復興・再生に向けて取り組むこと、従来の帰還環境整備に加え移住等の促進に取り組むこと、復興庁の設置期間を10年間延長すること等が示されました。特に、帰還困難区域を抱える地方公共団体の状況はそれぞれ大きく異なることから、避難指示解除区域や特定復興再生拠点区域への帰還・居住に向けた課題について、個別かつきめ細やかに町村と議論し、取組を推進することとしています。また、2020年3月に復興庁設置法等の一部を改正する法律案を閣議決定し、第201回国会に提出しました。

1.避難指示区域等

(1)避難指示解除区域等における取組

避難指示解除については、2020年3月までに、帰還困難区域を除いて、全ての避難指示解除準備区域と居住制限区域の避難指示の解除を行ってきました。帰還困難区域については、JR常磐線の全線開通に併せて、双葉町、大熊町、富岡町の帰還困難区域に設定されている特定復興再生拠点区域の一部区域の避難指示の解除を初めて行いました。解除後の本格的な復興のステージにおいても、政府一丸となって、市町村ごとの課題にきめ細かく対応するとともに、国・県・市町村が連携しながら、産業の再生や雇用創出、インフラ・生活環境の整備、避難者の生活再建支援2等、当該区域の復興及び再生をさらに進めていきます。

(2)帰還に向けた安全・安心対策

国としては、2016年12月の「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」において、以下のような総合的・重層的な防護措置を講じることとしています。

  • 住民の方々の放射線不安に対するきめ細かな対応
  • 避難生活の長期化等や放射線による健康不安への適切な対応
  • 関係省庁におけるリスクコミュニケーションの取組の強化
  • 生活支援相談員について、帰還後も支援を継続できるよう支援対象の明確化や関係省庁との連携促進

こうした取組を通じ、住民の方々が帰還し、生活する中で、個人が受ける追加被ばく線量を、長期目標として、年間1ミリシーベルト以下にすることを引き続き目指していくこととしています。また、線量水準に関する国際的・科学的な考え方を踏まえた我が国の対応について、住民の方々に丁寧に説明を行い、正確な理解の浸透に努めています。

2.特定復興再生拠点の整備

帰還困難区域は、2011年12月に警戒区域と計画的避難区域の見直しを行った際、「将来にわたって居住を制限することを原則とした区域」として設定されました。一方、事故後5年が経過し、一部では放射線量が低下していることや、地元の強い要望を踏まえ、2016年8月31日に原子力災害対策本部・復興推進会議で「帰還困難区域の取り扱いに関する考え方」を決定し、帰還困難区域のうち、5年を目途に、線量の低下状況も踏まえて避難指示を解除し、居住を可能とすることを目指す特定復興再生拠点の整備等について、基本的な考え方を示しました。

こうした中、2017年9月以降、双葉町、大熊町、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村における特定復興再生拠点区域復興再生計画を内閣総理大臣が認定しました。また、2018年11月までにすべての特定復興再生拠点の整備が開始され、現在、国と自治体が連携してこれらの計画に基づく事業を進めています。

また、2018年12月の第47回原子力災害対策本部において特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けた取組とその進め方を決定しました。2020年3月には、双葉町、大熊町、富岡町の帰還困難区域に設定されている特定復興再生拠点区域の一部について初めて避難指示を解除しました。

引き続き、福島県や市町村の意向を踏まえながら、関係省庁と緊密に連携して、帰還環境の整備に全力で取り組んでいきます。

3.環境汚染への対処

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質による環境の汚染が生じており、これによる人の健康または生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することが喫緊の課題となりました。こうした状況を踏まえ、「平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成23年法律第110号)」(以下、「放射性物質汚染対処特措法」という。)が可決・成立し、2011年8月30日に公布されました。

放射性物質汚染対処特措法は、除染の対象として除染特別地域と汚染状況重点調査地域を定めています。除染特別地域は、警戒区域または計画的避難区域の指定を受けたことがある地域で、国が除染実施計画を策定し、除染事業を進めてきました。他方、汚染状況重点調査地域は、地域の空間放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域がある市町村について、当該市町村の意見を聴いた上で国が指定し、各市町村で除染を行ってきました。

除染特別地域(帰還困難区域を除く)については2017年3月に、汚染状況重点調査地域については2018年3月に除染実施計画に基づく面的除染が完了しました。

また、福島県内の除染に伴い発生した放射性物質を含む土壌や福島県内に保管されている10万ベクレル/kgを超える指定廃棄物等を最終処分するまでの間、安全に集中的に管理・保管する施設として中間貯蔵施設を整備しています。

中間貯蔵施設事業の実施に当たっては、福島県内に仮置きされている除去土壌等(帰還困難区域由来を除く)について、中間貯蔵施設への速やかな搬入を進め、2021年度までに搬入を概ね完了することを目指します。また、これに向け、身近な場所から仮置場をなくすことを目指しつつ、2020年度は、安全を第一に、前年度と同程度の量を輸送します。

中間貯蔵施設整備に必要な用地は約1,600haを予定しており、予定地内の登記記録人数は2,360人となっています(うち2020年1月末までに地権者の連絡先を把握した面積は約1,560ha、登記記録人数は約1,960人)。2020年3月末までの契約済み面積は約1,164ha(全体の約72.8%。民有地については、全体約1,270haに対し約88.3%に当たる約1,122ha)であり、1,759人(全体の約74.5%)の方と契約に至っています。

中間貯蔵施設の整備については、2016年11月から受入・分別施設と土壌貯蔵施設の整備を進めています。受入・分別施設では、福島県内各地にある仮置場等から中間貯蔵施設に搬入される除去土壌を受け入れ、搬入車両からの荷下ろし、容器の破袋、可燃物・不燃物等の分別作業を行います。土壌貯蔵施設では、受入・分別施設で分別された土壌を放射能濃度やその他の特性に応じて安全に貯蔵します。2017年6月に除去土壌等の分別処理を開始し、2017年10月には土壌貯蔵施設への分別した土壌の貯蔵を開始しました。また、2020年3月には双葉町減容化施設の稼働を開始し、同減容化施設で発生した灰の廃棄物貯蔵施設への貯蔵を開始しました。

また、中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送については、2019年度までに累計で約668万m3(輸送対象物量約1,400万m3(2019年10月時点)のうち約48%)の輸送を実施しました。また、より安全な輸送を目的に、大熊インターチェンジ・常磐双葉インターチェンジからの工事用道路や待避所、高速道路の休憩施設、輸送車両待機場所の整備といった道路交通対策に加え、運転者研修等の交通安全対策、輸送出発時間の調整など特定の時期・時間帯への車両の集中防止・平準化を実施しています。

福島県内の除去土壌等については、中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずることとされています。除去土壌等の福島県外最終処分に向けては、最終処分量の低減を図ることが重要です。このため、県外最終処分に向けた当面の減容処理技術の開発や除去土壌等の再生利用等に関する中長期的な方針として、2016年4月に「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」を取りまとめ、2019年3月に見直しを行いました。また、2016年6月には、除去土壌等の再生利用を段階的に進めるための指針として、「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」を取りまとめました。現在、これらに沿って、福島県南相馬市及び飯舘村の実証事業を通じて、再生利用の安全性等の確認を進めています。これまでに実証事業で得られた結果からは、事業開始時から空間線量率等に大きな変動はなく、盛土を通過した浸透水の放射能濃度はすべて検出下限値未満となっています。実証事業等の結果を踏まえ、再生資材を安全に取り扱う上での技術的な留意事項を示した「福島県内における除染等の措置に伴い生じた土壌の再生利用の手引き(案)」を2019年12月に示しました。

4.原子力災害の被災事業者等のための自立支援策、風評被害対策

住民の方々が帰還して故郷での生活を再開するために、また、外部から新たな住民を呼び込むために、働く場所、買い物をする場所、医療・介護施設、行政サービス機能といった、まちとして備えるべき機能が整備されている必要があります。避難指示が解除された多くの市町村において学校が再開し、また、第二次救急医療機関が開院し、消防署が再開するなど、生活環境の整備は進展していますが、まちの様々な機能を担っていた事業者の多くは、住民の避難に伴う顧客の減少、長期にわたる事業休止に伴う取引先や従業員の喪失、風評被害による売上減少といった苦難に直面しており、こうした状況を克服するためには、生活、産業、行政の三位一体となった政策を進めていく必要があります。

こうした状況を踏まえ、2015年8月24日に、国(原子力災害対策本部)、福島県、民間からなる官民合同チームが創設されました。その主な活動内容は、避難指示等の対象となった12市町村の被災事業者を個別に訪問し、事業再開等に関する要望や意向を把握するとともに、その結果を踏まえ、事業再建計画の策定支援、支援策の紹介、生活再建への支援などを実施していくことです。国、県、民間が一体となって腰を据えた支援を行うため、「福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律(2017年5月19日公布・施行)」に、官民合同チームの中核である公益社団法人福島相双復興推進機構へ国の職員の派遣を可能とするなどの措置を盛り込み、2017年7月から経済産業省及び農林水産省の職員を派遣するなど、体制強化を図りました。チームは総勢286名の体制(2020年3月31日時点)で、県内(福島市、いわき市、南相馬市等)と都内の計6拠点に常駐しており、地元商工会議所、商工会及び東京電力等の協力を得ながら、個別訪問等を実施しています。

商工業分野において、チーム発足翌日から事業者訪問を開始し、これまでの約4年7か月の間に、約5,400者に訪問し、そのうち約1,300の事業者に、専門家によるコンサルティングを実施しています(2020年3月31日時点)。また、被災事業者の自立等に対する支援や新規創業等へ向けた支援に取り組むべく、引き続き、官民合同チームと連携しつつ、きめ細かな支援を実施していきます。

農業分野についても、2016年7月から国と県により認定農業者への個別訪問を約500者実施しましたが、2017年4月から官民合同チームによる認定農業者以外の農業者の個別訪問を開始し、2020年3月31日までに約1,900者の訪問を実施しました。また、速やかな営農再開に向けて、官民合同チームが被災市町村等を訪問し、集落座談会における営農再開支援策の説明等を行うとともに、地域農業の将来像の策定やその実現に向けた農業者の取組を支援しています。今後も官民合同チームによる個別訪問等を通じて課題を把握し、支援の充実を図っていきます。2017年9月以降は、分野横断・広域的な観点から、商業施設やまちづくり会社の創設・運営、企業誘致にかかる戦略策定など、12市町村のまちづくり専門家支援も進めています。

さらに、官民合同チームでは、交流人口増加に繋がる情報発信支援や、外部からの人材呼び込み・創業支援に取り組むことで、域外から人・投資などを呼び込み、地域経済に新たな波及効果をもたらすことを目指しています。

こうした取組もあり、事業・なりわいの再建は徐々に進みつつありますが、地域によって復興の状況は異なります。今後とも、官民合同チームは、事業者の帰還、事業・なりわいの再建を進め、まちの復興を後押しすべく、個々の実情を踏まえたきめ細かな対応を粘り強く続けていきます。

このように、事業者の方々による取組をサポートする体制が整いつつある一方で、事故発生後未だに継続している風評被害の存在は、農林水産業をはじめとして、福島の産業・なりわいの復興の大きな妨げとなっています。放射線に関する正しい知識、福島の復興の現状や農林水産物をはじめとする県産品の安全性や質の高さを国内外に正しく発信し、風評を払拭していくことが大きな課題です。各種の国際会議等を含めて、あらゆる機会を活用し、風評対策を強力に推進していきます。特に農林水産物については、生産段階における第三者認証取得や安全性検査への支援、流通・販売段階における販路開拓への支援等、あらゆる段階で風評払拭に必要な支援を行うことにより、安全性についての消費者の正しい理解を促進し、県産品のブランド力の回復を後押ししていきます。

こうした取組をより実効的なものとしていくために、「福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号)」(以下、「福島特措法」という。)に基づき、2017年度から毎年度、流通段階における販売不振の実態や要因の調査を行い、その結果に基づき復興庁、農林水産省、経済産業省の連名で、小売業者等への指導等、生産者への助言に関する通知を発出しています。また、国、福島県、農業関係団体等が参画する「福島県産農林水産物の風評払拭対策協議会」により、風評被害の実態や施策の効果を継続的に検証する体制を構築しています。

さらに、テレビ、インターネット、SNSやラジオ等あらゆる媒体を活用した、正確で分かりやすい効果的な情報発信や、在京大使館への働きかけ及び海外メディアによる被災地の訪問取材などを進め、日本産食品への輸入規制措置を講じた54か国・地域のうち、34か国・地域が撤廃し、18か国・地域が緩和しています(2020年3月31日時点)。引き続き2017年12月に策定された「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」に基づき、関係府省庁が連携して風評払拭に向けて、工夫を凝らした情報発信等に取り組んでいきます。

【第112-4-1】福島相双復興推進機構(官民合同チーム)の概要

出典:
経済産業省

5.福島イノベーション・コースト構想

福島イノベーション・コースト構想については、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催時に、世界中の人々が、浜通りの力強い再生の姿に瞠目する地域再生を目指して検討が始まり、特に震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業・雇用を回復するため、当該地域の新たな産業基盤の構築を目指して、2016年6月に、福島国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想研究会において取りまとめられました。

福島イノベーション・コースト構想の実現に向けて、多岐にわたる課題を政府全体で解決していくため、2017年5月に福島特措法を改正し、同法に福島イノベーション・コースト構想を位置づけました。この改正福島特措法に基づき福島県が策定した重点推進計画について、2018年4月25日に内閣総理大臣の認定を行うとともに、同日に開催した第2回福島イノベーション・コースト構想関係閣僚会議において、「福島イノベーション・コースト構想の今後の方向性」を一部改正しました。また、復興・創生期間後も見据えた浜通り地域等の自立的・持続的な産業発展の姿と具体的な取組を示すため、2019年12月に「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」を復興庁・経済産業省・福島県の3者で策定し、青写真を踏まえた重点推進計画の改定について2020年5月1日に内閣総理大臣の認定を行いました。

加えて、福島県は、2017年7月に、福島イノベーション・コースト構想を推進する中核的な組織として、一般財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構を設立しました。同機構は、2018年4月より体制を順次強化し、2019年1月1日には公益財団法人に移行しました。

廃炉やロボット等の分野における技術開発・拠点整備等のプロジェクトは、現在着々と具体化が進められています。

例えば、福島ロボットテストフィールドは、物流、インフラ点検、災害対応で活躍するロボット・ドローンの研究開発や、実証試験と性能評価が一カ所で実施可能な、世界に類を見ない研究開発拠点です。2018年7月に通信塔が完成し、一部開所して以降、完成した施設から随時供用を開始し、2020年3月末には全面開所しました。既に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や内閣府の研究開発プロジェクトにおいて活用されているほか、民間企業の利用も進んでおり、「空飛ぶクルマ」の試験飛行の場所としても期待されています。なお、世界中のロボット関係者が一堂に集まり、ロボットの社会実装と研究開発を加速させることを目的とした競演会「World Robot Summit2020」の一部の競技を、2020年8月に福島ロボットテストフィールドで開催予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年の開催を延期しました。現在、2021年度の開催に向けて調整中です。

さらに、福島県は「福島浜通りロボット実証区域」として、各市町村や関係機関等と事業者等の仲介を行い、ロボットやドローンの実証試験や操縦訓練の場を提供しており、これまで延べ280件以上の実証試験が実施されています。2018年10月には、日本郵便株式会社が、「航空法(昭和27年法律第231号)」に基づく承認を受け、南相馬市と浪江町の区間において、無人航空機の目視外補助者無し飛行の第一号案件として、無人航空機による郵便局間の荷物配送を実施しています。

廃炉関連分野では、2016年4月から、遠隔操作機器・装置の開発・実証施設(「楢葉遠隔技術開発センター」(福島県双葉郡楢葉町)モックアップ施設)の本格的な運用が開始されています。

また、2017年4月には、廃炉に向けて国内外の英知を結集する拠点である廃炉国際共同研究センター国際共同研究棟(福島県双葉郡富岡町)の運用が開始されました。さらに、2018年3月には、放射性物質分析・研究施設(「大熊分析・研究センター」(福島県双葉郡大熊町))の一部施設の運用が開始されました。人材育成については、2018年10月に、廃炉事業に必要な技術者を養成するため、放射線防護教育など基礎・基盤的な技能を身につけるための研修施設として「福島廃炉技術者研修センター」(東京電力福島第一原子力発電所内)が設置されました。

原子力災害を中心とした複合災害の記録と記憶を後世に継承し、世界と共有する「東日本大震災・原子力災害伝承館」については、福島県において2016年8月に同拠点の双葉町への立地を決定、2017年3月にアーカイブ拠点施設基本構想を策定し、2017年度より施設整備に着手しています。2019年2月には安全祈願祭・起工式が開催され、2020年夏の開所に向けた準備が着実に進められています。

環境・リサイクル分野では、2015年以降、福島県が環境・リサイクル産業の集積を図るため立ち上げた「ふくしま環境・リサイクル関連産業研究会」の会員によって、小型家電、太陽光パネル、石炭灰のリサイクルや浜通りにおける廃棄物処理システム構築などのテーマについて、事業化に向けた検討が進められています。

エネルギー分野では、福島イノベーション・コースト構想の取組を加速し、その成果も活用しつつ、福島全県を未来の新エネ社会を先取りするモデル創出拠点とする「福島新エネ社会構想」(2016年9月7日)を推進していきます。(福島新エネ社会構想については、第3節参照。)

福島イノベーション・コースト構想の実現に向けた道筋は、拠点の整備や主要プロジェクトの具体化にとどまりません。

これらの拠点やプロジェクト等も活用しながら、地元企業と浜通り地域の外から進出してくる企業とが一体となって、重点分野における実用化技術開発を進めていくことが必要であり、民間企業が主体となって行う実用化開発等を支援しています。また、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構が公益社団法人福島相双復興推進機構とも連携しながら、地元企業と進出企業の連携による新たなビジネス機会の創出に向け、「ふくしまみらいビジネス交流会」等を開催し、地元企業の参画を含めた自立的・持続的な産業発展を実現していきます。さらには、拠点の強みを活かした交流人口の拡大や、生活環境の整備、高等教育機関等における研究活動の促進、初等中等教育機関と大学、企業等とが連携した構想を支える人材の育成等を推進しています。

1
帰還困難区域のうち、5年を目途に、線量の低下状況も踏まえて避難指示を解除し、居住を可能とすることを目指す復興拠点を指します。
2
2018年7月に避難指示区域等における被災者の生活再建に向けた関係府省庁会議(第3回)において「避難指示区域等における被災者の生活再建に向けた対応強化策」をとりまとめました。