はじめに

日本のエネルギー政策全体の転換点となった東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から9年が経過しました。

2020年3月に、双葉町、大熊町、富岡町の一部地域の避難指示が解除され、帰還困難区域とされてきた地域の避難指示が震災以降、初めて解除されました。帰還困難区域以外の地域はすべて、避難指示が解除され、まだ解除がなされていない帰還困難区域についても、特定復興再生拠点区域の整備に向けて取り組んでおり、福島の復興・再生は一歩一歩着実な進展を見せています。
また、2019年12月には、復興・創生期間後も見据えた浜通り地域等の自立的・持続的な産業発展の姿と具体的な取組を示すため、「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」が策定されるなど、帰還環境整備、産業・なりわいの再生に向けた取組が着実に進められています。引き続き、被災地の実態を十分に踏まえ、地元との対話を重視しつつ、施策の具体化を進め、復興に向けた道筋をこれまで以上に明確にしていきます。

本章では第1節で、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関する取組等として、予防的かつ重層的な汚染水対策の取組の状況や、調査ロボットの投入など徐々に進展しつつある炉内調査をはじめとする廃炉に向けた取組等について記載します。

次に、第2節で原子力被災者への支援について、避難指示解除の状況や、特定復興再生拠点区域の整備、除染の実施状況、福島イノベーション・コースト構想の推進に向けた施策、被災事業者の事業・なりわい再建支援の取組等についてまとめます。

加えて、第3節で福島を再生可能エネルギーや未来の水素社会を切り拓く「先駆けの地」として、新たなエネルギー社会を先取りするモデルの創出拠点とする「福島新エネ社会構想」を紹介します。

そして、第4節では、原子力損害賠償について、この9年間での実績・進展等を確認します。