第1節 エネルギー国際協力体制の拡大・深化

世界のエネルギー情勢が大きく変化する中、各国のエネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには一国での取組だけでなく、多国間及び二国間のエネルギー協力を戦略的に組み合わせつつ、国際的な協力を拡大することが重要となってきています。

そのため、2017年度においては、多国間の国際エネルギー枠組みを活用し、エネルギーの安定供給確保に向けた取組を進めるとともに、二国間の協力を通じて、アジア各国等との協力やエネルギー供給国との関係強化を行いました。

<具体的な主要施策>

1.多国間枠組みを通じた協力

(1)主要消費国における多国間協力

① 国際エネルギー機関(IEA)における協力

IEAは、1974年11月、第一次石油ショックを契機として、米国の提唱により石油消費国間の協力組織として設立されました。当初は、国際エネルギー計画(IEP)協定に基づく石油の90日備蓄義務及び緊急時対応を始めとするエネルギー問題解決のための国際協力が主な活動内容でしたが、現在では、①低炭素技術の開発促進・省エネ、低炭素技術の開発・普及のための政策提言、低炭素技術R&Dのための技術協力、②国際石油市場、世界エネルギー需給、エネルギー技術等の見通しの策定、公表、③中国やインドを含む新興国、産油国等との協力関係の構築、④国別エネルギー政策の審査、勧告の実施など幅広い活動を展開しています。現在の加盟国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルグ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国の計30か国です。

IEA設立時は、世界の石油需要の約7割は西側先進国が占めていたため、加盟国は西側先進国が中心でしたが、近年、非加盟の新興国が経済成長を遂げており、IEAはグローバルなエネルギー課題に取り組むためには、エネルギー需要が増加している中国等の新興国をIEAの体制に取り込んでいくことが重要と考え、2015年の閣僚理事会以降、加盟国とは別に「IEAアソシエーション国」という制度的枠組を設けました。現在、ブラジル、中国、インド、インドネシア、モロッコ、シンガポール、タイの7か国がアソシエーション国となっています。

隔年で閣僚理事会を開催しており、2017年11月のIEA閣僚理事会には、我が国から武藤経済産業副大臣及び中根外務副大臣が出席しました。同会合では、「持続可能な世界の成長のためのエネルギー安全保障の強化」をテーマに、世界のエネルギー安全保障や、クリーンエネルギーへの移行、エネルギー投資の促進、エネルギーのデジタル化への対応、さらに新興国との関係強化や石油以外のエネルギーに関する活動拡大を含めたIEAの現代化について議論しました。

また、IEAは、加盟国の緊急時対応政策を審査するため、IEA加盟国等によるレビューチームによるピアレビュー(ERR:緊急時対応審査)を5年に一度実施しており、我が国は2018年1月に審査を受けました。今回から、審査対象に電力関連政策が加わり、エネルギー政策全般、石油関連政策、ガス関連政策及び電力関連政策について審査が行われました。

(ア) 国際エネルギー機関分担金【2017年度当初:3.8億円】

同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。

(イ) 国際エネルギー機関拠出金【2017年度当初:4.1億円】

「世界エネルギー展望(WEO)」を始めとするエネルギー市場の分析、エネルギー技術ロードマップの策定等を支援すると同時に、IEAが知見を有するエネルギー安全保障にかかる緊急時対応審査(ERR)の実施や、これに関連するワークショップの開催等を支援するために、IEA加盟国として拠出を行いました。

② G7における協力

G7エネルギー大臣会合は先進主要7か国(日・米・加・独・仏・英・伊。2013年まではロシアを含めてG8)のエネルギー担当大臣による閣僚会合として、1998年から不定期にサミット議長国が開催しています。2017年4月にはイタリア(ローマ)において、G7エネルギー大臣会合が開催され、我が国からは高木経済産業副大臣及び滝沢外務大臣政務官が出席しました。議長国であるイタリアのイニシアチブの下、エネルギー安全保障の向上に向け議論し、①質の高いインフラ、上流投資、省エネへの投資の重要性、②LNG市場の柔軟性を高めるための取組の促進、③ベースロード電源、脱炭素エネルギーとしての原子力の意義等、我が国の関心の高い論点が確認されました。なお、2018年のG7議長国はカナダが務めます。

③ G20における協力

2017年7月に、ドイツ(ハンブルク)において、G20ハンブルク・サミットが開催され、安倍総理が出席しました。G20サミットでは、気候変動・エネルギー分野の成果として、「G20ハンブルグ気候・エネルギーに関する行動計画」 に合意し、エネルギー安全保障の確保に向け、引き続き、エネルギー商品及び技術のための、開放的かつ柔軟で透明性の高い市場の実現に向けて取り組むことを確認しました。同計画では、エネルギー分野について、再生可能エネルギー、原子力、天然ガスを含む持続可能で温室効果ガスの排出が少ないエネルギー源に依拠したエネルギー・システムの多様化、省エネやイノベーションの推進、エネルギーアクセスの確保等に向けた行動を記載しています。なお、G20議長国については、2018年はアルゼンチン、2019年は我が国が務めることになっています。

(2)アジア地域における多国間協力

① ASEAN+3・東アジア地域における協力

アジア地域におけるエネルギー需要の急増を踏まえ、アジア規模でのエネルギーの安全保障と持続可能性を確保するため、2004年より、ASEAN+3エネルギー大臣会合(ASEANと日中韓の13か国の代表が出席)、2007年から、東アジアサミット(EAS)エネルギー大臣会合(ASEAN、日中韓、オーストラリア、インド、ニュージーランド、米国、ロシアの18か国の代表が出席)が開催されています。

2017年9月、フィリピン(マニラ)において、第14回ASEAN+3エネルギー大臣会合及び第11回EASエネルギー大臣会合が開催され、我が国からは竹谷経済産業省資源エネルギー庁国際資源エネルギー戦略統括調整官が出席しました。今回の会合では、2016年に我が国から提案したアジアにおける天然ガス利用促進調査について、域内の天然ガス需要は2030年までに2倍以上に増加し、約800億ドルのLNGサプライチェーンへの投資が必要との調査結果を東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)が発表し、流動的、透明かつ安定したLNG市場の構築を進めていくため、LNG関連分野への投資促進や、天然ガス利用促進のための人材育成・法制度整備、LNGバンカリングやコジェネレーション等の需要開拓に向けて努力することに各国が合意しました。このほか、我が国が実施している、省エネルギー、原子力安全、高効率低排出石炭火力、石油セキュリティ構築の分野の人材育成事業が紹介され、参加国から感謝の意が表されました。

東アジア経済統合研究協力拠出金【2017年度当初:5.8億円】

アジアにおける天然ガス利用促進調査や、運輸部門における燃料消費の抑制に向けた調査、石油備蓄を推進するにあたっての政策提言、バイオ燃料の品質管理手法に係る規格・基準の統一化に関する研究等を実施するためにERIAに拠出を行いました。

② アジア太平洋経済協力(APEC)における協力

1989年11月にオーストラリア(キャンベラ)で開催された第1回APEC閣僚会議において、エネルギー問題に対する域内協力の重要性と、これを専門に議論する場を設定することで一致しました。これを受けて、1990年にエネルギー作業部会(EWG)が設立され、さらに1996年には、よりハイレベルなエネルギー政策対話を行うため、シドニーにおいて第1回APECエネルギー大臣会合が開催され、以後ほぼ隔年で開催されています。

これまでのAPECエネルギー大臣会合において我が国が提案し、合意された事項に基づき、①APECメンバーのエネルギー効率向上に向けた取組状況をレビューする「エネルギー効率ピアレビュー」、②低炭素なエネルギー供給を促進するための「低炭素エネルギー供給政策ピアレビュー」、③急速な都市化に直面するAPEC地域において、都市レベルで低炭素技術を統合的に導入することを目指す「APEC低炭素モデルタウンプロジェクト」、④石油及びガスの供給途絶時における対応能力の強化を図るための「APEC石油・ガス・セキュリティエクササイズ」を着実に実施しました。

また、2017年11月、ベトナム(ダナン)において、APEC閣僚会議が開催され、我が国からは、世耕経済産業大臣及び河野外務大臣が出席しました。「2017年APEC閣僚共同声明」においては、エネルギーアクセス、エネルギー強靭性及びエネルギー安全保障が長期的な繁栄と共通の将来にとって重要であることが認識されるとともに、温室効果ガスの削減に貢献しうる、クリーンで効率的なエネルギー及び再生可能エネルギーの開発、多様でフレキシブルな天然ガス市場の形成にむけた努力、低炭素モデルタウンの推進に向けた努力などが歓迎されました。

更に、同月、ベトナム(ダナン)において、APEC首脳会議が開催され、我が国からは安倍総理が出席しました。APEC首脳宣言においても、APEC地域における経済成長を維持するためにエネルギー安全保障を強化することの決意が示されるとともに、エネルギー関連の貿易と投資の促進、手頃で強靭なエネルギーへのアクセスの強化、温室効果ガスの削減に貢献しうる持続的で効率的なクリーンエネルギーの促進が奨励されました。

(ア) アジア太平洋経済協力拠出金【2017年度当初:1.1億円】

アジア太平洋地域におけるエネルギー効率の向上やエネルギー源の多様化、低炭素技術の普及に向けた、域内の新興国・途上国を対象とした低炭素化促進プロジェクト(低炭素モデルタウンプロジェクト等)を支援するために、APEC事務局に拠出を行いました。

(イ) アジア太平洋エネルギー研究センター(APERC)拠出金【2017年度当初:6.7億円】

電力インフラの質の確保に資するためのAPEC質の高い電力インフラガイドラインの普及やAPECに加盟する国・地域の省エネルギー・低炭素化政策の相互審査(ピアレビュー)の実施、「APEC長期エネルギー需給見通し」の作成、アジア太平洋地域のエネルギー統計整備のための研修生受入・専門家派遣、「LNG産消会議」の開催、石油及びガスの供給途絶時におけるAPEC各エコノミーの対応能力強化に向けたエクササイズ開催のために、アジア太平洋エネルギー研究センターに拠出を行いました。

(3)その他の多国間協力(生産国と消費国の対話等)

① 国際エネルギーフォーラム(IEF)における対話

IEFは、世界72か国の石油・ガス等の産出国と消費国のエネルギー担当大臣及びIEA、OPECを始めとする国際機関の代表が一堂に会する重要な「産消対話」の場です。産消対話を行うことにより、産消国双方が相互に理解を深め、健全な世界経済の発展や供給と需要の安定確保のために安定的かつ透明性のあるエネルギー市場を促進することを目的として、1991年に第1回会合をパリで開催し、以降1~2年ごとに開催されています。

また、IEFではエネルギー関連の7つの国際機関(APEC、EU、IEA/OECD、IEF、OLADE(中南米エネルギー機関)、OPEC、国連)で協力をし、石油と天然ガスの統計を整備する国際機関共同データイニシアチブ(JODI)を進めており、2005年にJODIOil(石油の統計データベース)、2014年にJODIGas(天然ガスの統計データベース)が開始されています。

国際機関が協力して情報共有を進め、エネルギー需給の動向についての正確かつタイムリーな情報が市場に提供されることで、市場の透明性が増し、過度の価格乱高下を抑制できると考えられており、現在、世界の石油・ガス需給の9割以上を網羅しています。我が国は、資金・人材の両面でJODIの発展に寄与しています。

(ア) 国際エネルギーフォーラム(IEF)分担金【2017年度当初:0.2億円】 

同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。

(イ) 国際エネルギーフォーラム(IEF)拠出金【2017年度当初:0.1億円】

EF閣僚会合の開催支援を行うとともに、国際機関共同データイニシアチブ(JODI)事業への貢献のために、IEF事務局に拠出を行いました。

② アジア産油国・消費国閣僚会合

アジア産油国・消費国閣僚会合(アジア産消国閣僚会合)は、アジアの主要な資源国と消費国が一堂に会し、国際的なエネルギー問題、アジア地域のエネルギー安全保障の課題等に焦点を当て率直な議論を行うことを目的として、IEFの主催により、2005年以降、隔年で開催されています。

2017年11月、タイ(バンコク)において第7回アジア産消国閣僚会合が開催され、我が国からは竹谷経済産業省資源エネルギー庁国際資源エネルギー戦略統括調整官が出席しました。同会議では、アジア諸国が今後世界のエネルギー需要をけん引し、環境面での制約を認識しつつアジア地域の持続的な成長を実現することが重要との認識のもと、アジア・中東地域のエネルギー生産国及び消費国が、①石油市場、②天然ガス市場、③革新的技術の3点を議論する形で議論が行われました。各国とも、再エネや省エネといった低炭素化に向けた取組を強化する一方で、アジアのエネルギー需要増が見込まれる状況を背景に、石油や天然ガスといった化石燃料の議論にも生産者・消費者の双方から高い関心が示されました。我が国からは、石油市場の安定や長期的なエネルギーセキュリティという観点が重要である旨と、LNGについては、同年10月のLNG産消会議で表明したファイナンス及び人材育成支援のほか、仕向地条項緩和をはじめとする柔軟な市場の発展、LNGの新たな活用方法の創出、対話を通じた関係者の理解促進に我が国としても取り組む旨を説明しました。

③ 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における協力

IRENAは、再生可能エネルギーの普及・利用促進を目的として設立された国際機関であり、我が国は、2010年7月から正式に加盟しました。事務局はUAEのアブダビに設置されています。IRENAの主な活動は、①加盟国の政策、制度、技術、成功事例の分析・体系化、②他の政府・非政府機関等との協力、③政策助言、④技術移転、⑤人材育成、⑥資金に関する助言、⑦研究ネットワークの展開、⑧国際的技術基準の作成等です。

我が国はIRENA設立以来4期連続で理事国を務め、また第二位の分担金拠出国でもあり、様々な側面でIRENAを支援しており、2018年1月の第8回IRENA総会(アラブ首長国連邦アブダビ)には河野外務大臣が出席し演説を行いました。アドナン・アミンIRENA事務局長との会談では日IRENA関係の更なる強化で一致し、また太平洋島嶼国首席代表(クック諸島、フィジー、トンガ、キリバス)との間で再生可能エネルギー分野での協力について意見交換しました。また、IRENAの活動への日本からの人的貢献を強化すべく、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣に関する協力覚書への署名式を、河野外務大臣立会の下、実施しました。

日本政府は、再エネの普及促進において地方都市が果たす役割の重要性という観点から、ワールド・フューチャー・エナジー・サミット(2018年1月、アラブ首長国連邦アブダビ)にて開催されたIRENAの国際ワークショップに協力し、「福島新エネ社会構想」について発表しました。

経済産業省は、IRENAとの共催により、東アフリカにおける地熱の潜在力の発揮に向けて、東アフリカ諸国の政府関係者を対象として、国際ワークショップ(2018年1月、ケニア国ナイロビ)を実施しました。

農林水産省は、アフリカに適用可能なバイオエネルギーに関する優良事例・情報の共有を目的とし、IRENA、国際アグロフォレストリー研究センター(ICRAF)、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)の共催による、アフリカ諸国の行政担当者、NGO、研究者、民間企業関係者等を対象とした国際ワークショップ(2018年1月、ケニア国ナイロビ)の実施を支援しました。

環境省は、島嶼国における再生可能エネルギー普及の観点から、人材育成とプロジェクト形成支援を目的とし、IRENA等との共催により、アジア太平洋地域の島嶼国等の行政官等を対象として、訪日研修(2017年10月、東京、神戸及び淡路島)及び国際ワークショップ(2017年12月、フィジー国スバ)を実施しました。

(ア) 国際再生可能エネルギー機関分担金【2017年度当初:2.8億円】

IRENAを通じ、我が国単独では十分な成果が見込めない大規模な調査や普及活動を実施することにより、再生可能エネルギーを国際的に普及させるため、同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき、外務省、農林水産省、経済産業省、環境省の4省共同で分担しました。

(イ) 国際再生可能エネルギー機関拠出金【2017年度当初:0.6億円】

経済産業省からは、我が国に強みのある再生可能エネルギー関連技術に関する調査の実施のため、また農林水産省からは、食料供給と両立する「日本型バイオマス利活用システム」をアフリカへ普及するための調査分析やワークショップ等の実施のため、分担金に加え同機関の活動費用の拠出を行いました。

④ 国際省エネルギー協力パートナーシップ (IPEEC)における協力

IPEECは、我が国のイニシアチブにより2009年に設立された、参加各国の省エネルギー対策の自主的な取組を支援するための国際協力枠組みです。現在の加盟国は、日本、米国、カナダ、ドイツ、フランス、英国、イタリア、ロシア、中国、韓国、ブラジル、メキシコ、インド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン、EU、トルコ(加盟手続中)であり、IEAに加盟していない中国やインドといった新興国も加盟していることが特徴です。我が国は、省エネルギー制度や先進的なエネルギー管理事例の情報提供を通じて各国との協力関係を築くとともに、特に、産業分野のエネルギー管理を推進するタスクグループである「エネルギー管理行動ネットワーク(EMAK)」を中国と協力して進めています。

⑤ クリーンエネルギー大臣会合

クリーンエネルギー大臣会合(CEM)は、世界の主要25か国及び地域から構成される、クリーンエネルギーの普及促進を目的とした国際会合です。

2017年6月に、中国(北京)において第8回CEMが開催され、我が国からは大串経済産業大臣政務官が出席しました。本会合では、EVや変動再エネ対策に関する新規キャンペーンの立ち上げが宣言されました。日本としてもそれらに賛同し、積極的に貢献していくことを表明しました。

⑥ エネルギー憲章条約 

エネルギー憲章条約 (ECT:Energy Charter Treaty)は、エネルギー貿易の自由化を促進し、投資保護の枠組みを有する条約であり、2018年3月現在、世界で48か国及び1国際機関が条約を締結しています。2015年5月には、新興国の台頭及びそれに伴う世界のエネルギー需給構造の変化、気候変動問題への危機感の高まり等を踏まえ、条約の基礎となった1991年の政治宣言「欧州エネルギー憲章」を近代化した「国際エネルギー憲章 (International Energy Charter)」が採択されました。その署名には、既存の条約締約国のみならず、中国、韓国、カンボジア、チリ、コロンビア、タンザニア、ニジェール等、まだ条約を批准していない新しい国が20か国以上も参加し、これまでの旧ソ連及び東欧諸国、EU諸国中心のものから、地理的な広がりを持ちつつあります。

2017年11月には、トルクメニスタン(アシガバット)において、エネルギー憲章会議第28回会合が開催され、我が国からは堀井学外務大臣政務官が出席しました。会合においては、「持続可能なエネルギーの将来と多様な輸送ルートのための投資の動員」というテーマの下、エネルギー憲章条約の近代化や国際エネルギー市場におけるエネルギー源などについて議論が行われました。また、同会合の成果文書として、「アシガバット・エネルギー憲章宣言」が発出され、投資促進及び投資関連紛争の防止と管理、ECTのメンバーシップの継続的拡大と深化、エネルギー憲章プロセスの近代化などについて確認されました。

エネルギー憲章条約分担金【2017年度当初:1.0億円】

エネルギー分野における投資促進、エネルギー貿易及び通過の自由化に関する各種活動(報告書作成、ワークショップの開催等)、締約国会議であるエネルギー憲章会議の開催のため、エネルギー憲章条約の補助機関である事務局に拠出を行いました。

⑦ 多国間枠組を通じた人材育成等 

2016年10月に中東欧地域環境センター(REC)との共催で、ハンガリーにおいて「低炭素技術セミナー」を開催し、中東欧地域における低炭素技術普及に関する見通しや課題を共有すると共に、我が国からは低炭素技術普及に向けた国際協力、都市間連携による取組、民間企業の技術、等を紹介しました。

⑧ 証券監督者国際機構(IOSCO)との連携

経済産業省は、商品取引所及び取引所外取引における相場操縦行為等の不公正取引の監視強化や透明性向上のために、証券監督者国際機構(IOSCO)の活動に積極的に参画しています。一例として、IOSCOは、規制された取引所での現物受渡デリバティブ商品の価格形成プロセスについて調査を実施し、結果を「商品デリバティブ市場価格への倉庫及び受渡施設の影響に関する報告書」として2016年5月に公表し、現在はこの報告結果に則り、適正な行為規範の策定に取り組んでいます。

⑨ 商品先物市場監督当局間の協力

経済産業省は、各国の先物監督当局間で行われる会合に定期的に参加するなどして、積極的に情報交換、協力を行っています。また、IOSCOの包括的な協議・協力及び情報交換に関する多国間覚書の枠組みに参加し、これに基づいて、市場監視のために各国の当局との情報交換を実施する体制を整えています。

2.二国間協力の推進

(1)先進諸国との協力

① 日米協力

2017年4月、ペンス米国副大統領が訪日し、麻生副総理との間で実施された日米経済対話初回会合において、麻生副総理より、エネルギーを含む分野別協力を通じ、日米経済関係を多面的に深化させていきたい旨を述べました。

2017年6月、ペリー米国エネルギー長官が訪日し、世耕経済産業大臣と会談を行いました。会談では、これまでの幅広いエネルギー協力関係を確認するとともに、今後、LNG、原子力を始めとして日米のエネルギー協力関係の一層の深化に向けて検討を行っていくことで一致しました。

2017年10月に行われた麻生副総理とペンス米国副大統領による日米経済対話第2回会合では、エネルギー連携について、日米両国は、LNG、高効率石炭、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)、民生用原子力、エネルギーインフラを含む様々なエネルギー案件に係る具体的な成果が近い将来に発表されることを期待することで一致しました。

また、同月行われたLNG産消会議において、世耕経済産業大臣はブルイエット米国エネルギー副長官と会談し、本会議に先立って署名された、原子力協力に関する意図表明(SOI:Statement of Intent)及び二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)に関する協力覚書(MOC)の更新を歓迎するなど、幅広いエネルギー協力に関する意見交換を行いました。

2017年11月には、トランプ米国大統領が訪日し、安倍総理と会談を行いました。会談において、日米両国の首脳は、日米間のエネルギー協力を強化するため、「日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)」を、日米経済対話の枠組みの中で進めていくことで一致しました。さらに、日下部資源エネルギー庁長官とハーディ米国貿易開発庁代表代行との間で、第三国におけるエネルギーインフラ開発支援、インフラ調達制度の構築支援及び情報交換等に関する協力覚書に署名しました。

石油分野については、米国におけるシェールオイルの生産が拡大する中で、2015年には約40年ぶりに米国からの原油輸出が解禁され、それ以降、日本への原油輸出量は拡大しています。また、天然ガス分野については、2014年に我が国企業が関与するすべてのLNGプロジェクトについて米国政府から輸出承認を獲得し、2017年1月にはシェールガス由来のLNGが初めて日本に輸入されました。今後米国からの石油・天然ガスの輸入が拡大することは、供給源の多角化によるエネルギーの安定供給に資するだけでなく、仕向地が自由な米国産LNGにより、柔軟かつ透明性の高い国際LNG市場の構築にも寄与することが期待されます。また、2014年11月独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と米国国立エネルギー技術研究所(NETL)との間で署名されたメタンハイドレートの日米共同研究に関する覚書に基づき、日米両国ではアラスカ州でのメタンハイドレートの生産試験の実施に向け、試掘の検討等の技術協力が着実に進んでいます。

② 日加協力 

2017年4月、高木経済産業副大臣がイタリア共和国に出張し、その際、カー・カナダ天然資源大臣と会談を行いました。会談では、LNG分野を中心とした両国の関係強化策について議論を行いました。2017年6月、大串経済産業大臣政務官が中華人民共和国に出張し、カー・カナダ天然資源大臣と会談を行った際には、エネルギー分野を中心に、二国間の協力関係について意見交換を実施し、マルチ・バイで連携していくことで一致しました。

③ 日仏協力

日仏両国は、石油・天然ガスの多くを輸入に依存する点、今後のエネルギー源の多様化を追求する点等、エネルギー需給構造、エネルギー政策に多くの共通点が存在します。

2017年11月、武藤経済産業副大臣がフランス共和国に出張し、ポワルソン・フランス連帯・エコロジー転換省大臣付担当長官と会談を行った際には、次世代自動車の普及等について意見交換を行いました。

原子力分野においては、2011年10月の東京での日仏首脳会談における両国首脳の主導により設置された原子力エネルギーに関する日仏委員会の第7回会合を2017年11月に東京にて開催し、両国の原子力エネルギー及び核燃料サイクルに係る政策、高速炉協力、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・除染等に係る協力、原子炉の第三国展開に係る産業協力、原子力安全規制に係る二国間の協力等につき、意見交換を行いました。

④ 日英協力 

英国は、安定的でクリーン、かつ適正な価格のエネルギー供給の確保等の観点から、1990年代に電力市場の自由化を先行して実施し、世界最大の洋上風力発電容量を含む再エネや、省エネ、原子力発電を推進しています。

2017年4月、高木経済産業副大臣がイタリア共和国に出張し、その際、ハード英国気候変動・産業戦略担当閣外大臣と会談を行いました。会談では、LNGの流動性拡大やイノベーション分野における協力強化策について意見交換を行いました。

2017年11月、武藤経済産業副大臣がフランス共和国に出張し、ハリントン英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省政務次官と会談を行った際には、日英間のエネルギー協力の方向性について意見交換を行いました。

2017年12月、経済産業省と英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省は、日英間の産業協力の深化・発展を目的とした「日英産業政策対話」を開催しました。大串経済産業大臣政務官とチズム英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省長官が出席し、エネルギー・気候変動分野における日英の政策について、意見交換を行いました。

原子力分野については、2012 年4 月に発出された日英両国首相による共同声明に基づき、日英原子力年次対話を設置しています。2017年10月にロンドンで開催した第6 回日英原子力年次対話では、両国の原子力政策、廃炉及び除染等の東京電力福島第一原子力発電所事故対応、原子力研究開発、広報の在り方、両国の規制の仕組み等について、意見交換を行いました。

⑤ 日独協力

ドイツ政府は長期的に大部分のエネルギー供給源を再生可能エネルギーとし、建物・機器を中心に省エネルギーを強化する方針の下、導入コストに配慮した再生可能エネルギー増大とそれに対応した送電網の整備など、大幅にエネルギー政策を転換しています。また、電力小売市場全面自由化から20年以上経ており、電力システム改革について知見・経験を有しています。

2017年11月に大串経済産業大臣政務官がドイツ連邦共和国を訪問した際には、水素先進国であるドイツ政府のノルバート・バルトレ連邦食糧・農業省政務次官(交通・デジタルインフラ政務次官を兼任)と会談を行い、水素社会実現に向けた取組や次世代自動車、自動運転技術等について意見交換を行いました。

⑥ 欧州委員会との協力 

2017年7月、安倍総理がベルギー王国(ブリュッセル)を訪問した際、トゥスク欧州理事会議長及びジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長と第24回日EU定期首脳協議を行い、エネルギー分野での連携を深めることで一致しました。

同月に世耕経済産業大臣がベルギー王国(ブリュッセル)を訪問した際には、カニェーテ欧州委員(気候変動対策・エネルギー担当)と会談を行いました。その際、カニェーテ欧州委員との間において、日EU間でのLNGに関する協力覚書に署名を行い、今後流動性の高い国際LNG市場の構築に向け連携していくこと、気候変動に関してCOP23に向けて協力していくことを確認しました。

さらに、日EU間でのLNGに関する協力覚書に基づき、2017年11月には、日EU LNGワークショップ第1回を開催しました。ワークショップでは、グローバルLNG市場の進展状況に対する認識を共有し、仕向地制限の緩和・撤廃をはじめとした、LNG取引の柔軟化の鍵に関する現状や課題について議論を行うとともに、近年のLNGビジネスモデルの進化状況に関して議論を行いました。

また、2007年1月に行われた安倍総理とバローゾ欧州委員会委員長との会談の際に、日EUエネルギー協力の強化の必要性が認識されたことを受け、日EUエネルギー政策対話を開催しています。2007年4月にブラッセルで初めて開催されて以降、これまで6回開催されてきており、2017年6月の第6回日EUエネルギー政策対話では、エネルギー政策全般、ガス市場およびLNGを中心としたエネルギー安全保障、電力市場改革、再生可能エネルギー・省エネルギー政策といった幅広い協力について議論を行いました。

⑦ 日豪協力

日豪両国は、石炭、LNG、水素等の資源・エネルギーの分野において重要なパートナーであり、1985年以来、国際エネルギー情勢や両国のエネルギー政策等を議論する二国間対話の場として、日豪エネルギー高級事務レベル協議(HLG)を開催しています。2017年12月には、第36回HLGを実施し、LNG、石炭、鉱物資源、水素サプライチェーン、再生可能エネルギー、エネルギー市場等の課題や協力に向けて議論を行いました。

水素分野については、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証事業として、豪州の未利用エネルギーである褐炭を用いて水素を製造し、貯蔵・輸送・利用までが一体となった国際水素サプライチェーンの構築を目指すプロジェクトを実施しています。

また、2018年1月、ターンブル首相が来日し、安倍総理と会談を行いました。会談では、日本企業が取り組んでいる豪州褐炭水素プロジェクトや、LNGプロジェクトを含む、エネルギー協力の進展を確認しました。

(2)アジアとの協力

① 日インド協力

エネルギー需要が増加するインドのエネルギー資源安定供給確保とエネルギー効率向上は、日本のエネルギー安全保障上重要であり、両国の経済発展にも直結する重要な政策課題になっています。

こうした背景を踏まえ、エネルギー分野における両国の協力拡大を図る観点から、2007年の首脳合意を受けて、閣僚級の枠組みである「日印エネルギー対話」を立ち上げ、両国閣僚の相互訪問により、2007年以降、計9回の対話を実施しています。2017年8月には、インドのエネルギー分野における主要な課題となっている石炭火力発電による大気汚染対策、再生可能エネルギーの大量導入に伴う系統安定化、省エネルギー対策の協力を強化するため、日印クリーンエネルギー・省エネルギー協力プランをとりまとめました。

また、我が国とインドのLNG輸入量は、合わせて世界の約4割を占めます。インドのガス需要は、今後10年で2倍以上になると見込まれており、世界最大のLNG輸入国たる我が国と今後の世界のLNG需要拡大をけん引すると見込まれているインドが協力を強化することで、柔軟で流動性の高いグローバルLNG市場の構築が促進されることが期待されます。こうした背景を踏まえ、2017年10月にプラダン・インド石油・天然ガス大臣が訪日した際には、世耕経済産業大臣との間で、流動性の高い柔軟なグローバルLNG市場確立に関する協力覚書に署名しました。

また、両国間の原子力の平和的利用分野における協力を実現する上で必要となる法的枠組みを定めるものである日印原子力協定について、2010年から交渉が行われていましたが、2017年7月に発効されました。

② 日インドネシア協力  

インドネシアは、日本にとって有数の石油・天然ガス及び石炭の輸入相手国であり、複数の日本企業が多くの上流開発プロジェクトやLNGプロジェクトに参画しています。また、インドネシア政府は2015年から35GWの電源整備計画を推進しており、日本企業が多くのプロジェクトに参画しています。

2017年5月には、世耕経済産業大臣は来日したジョナンエネルギー鉱物資源大臣と会談し、資源・エネルギー分野での協力関係の強化について協議しました。

また、2017年10月には、世耕経済産業大臣とジョナンエネルギー鉱物資源大臣が、LNG産消会議の際に会談を行い、LNGの利用拡大が見込まれるインドネシアでの協力について意見交換を行いました。

2017年11月には、ASEAN関連首脳会議に出席するためフィリピンを訪問した安倍総理とジョコ・ウィドド大統領が首脳会談を行いました。会談では、エネルギー分野での協力等について協議が行われました。また、2018年には国交樹立60周年となることを念頭にインフラ協力を進めていくことを確認しました。

2017年12月には、ルフット海洋担当調整大臣が来日し、安倍総理と会談を行いました。会談では、エネルギー分野等の案件の推進について協議しました。

加えて、2018年3月に東京で第5回日インドネシアエネルギーフォーラムを開催しました。同フォーラムでは、電力、天然ガス、再生可能エネルギーなどの分野における政策、今後の計画や協力事業等について、情報共有と意見交換を行いました。

③ 日ベトナム協力 

ベトナムは、石炭、石油・天然ガス、鉱物資源を豊富に保有する資源国であり、日本にとって重要な良質な無煙炭の供給国です。

2017年6月には、世耕経済産業大臣及びアイン・ベトナム商工大臣を共同議長として、第2回「日ベトナム産業・貿易・エネルギー協力委員会」を開催しました。同委員会において、エネルギー分野の戦略的関係を深めていくことが確認されました。

また、2017年6月に、安倍総理がフック首相と首脳会談を行い、石炭火力及びLNGを柱とするエネルギー協力等について確認しました。

2017年11月には、世耕経済産業大臣がAPEC閣僚会合のためベトナムを訪問し、アイン商工大臣と会談を行いました。この会談で、両大臣により「エネルギー分野の協力覚書」が署名され、経済産業省とベトナム商工省の間で、エネルギー政策、統計データ、石炭、液化天然ガス(LNG)、送電網、再生可能エネルギー、省エネルギーなどを含むエネルギー分野の協力について協議する場として、エネルギーワーキンググループを設置することに合意しました。

④ 日タイ協力

2017年10月には、世耕経済産業大臣とアナンタポーン・エネルギー大臣との間で会談が行われ、アジアで拡大するLNG利用について議論が交わされました。

2018年3月の第3回日タイ・エネルギー政策対話では、両国の石炭やLNGにおける政策や、再生可能エネルギー・省エネルギー分野の取組、電気自動車に関する取組について議論を行いました。

⑤ 日ミャンマー協力

ミャンマーにおいては経済成長に伴い電力需要が増大しており、今後の安定的な経済発展のためには、エネルギーインフラの整備が喫緊の課題となっています。現在、ミャンマー政府は電力不足の解決策としてガス火力発電を拡大する意向ですが、国内ガスの産出量は当面減衰する傾向であることからLNGの導入を目指し検討をしているところです。LNGの導入にあたっては、関連法制度の整備が必要なことから、2018年1月にミャンマー政府関係者に対してLNG輸入から発電、電力供給に至る事業について、事業体制や法制度にかかるワークショップを開催しました。

⑥ 日中協力

中国は世界最大のエネルギー消費国であり、中国のエネルギー効率の向上は日本のエネルギー安全保障にとって重要な課題です。また、中国においては、近年、石炭火力発電や自動車等を由来とした大気汚染が大きな問題となっており、その解決策の一つとして、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入に取り組んでいるところです。

こうした状況の中、2017年12月、日中の官民による省エネルギー・環境協力のプラットフォームである「第11回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が東京で開催されました。日本側からは世耕経済産業大臣、中川環境大臣、平木経済産業大臣政務官、中国側からは張勇国家発展改革委員会副主任、高燕商務部副部長を始めとして、両国合わせて約860名の官民関係者が参加し、23件の協力プロジェクト文書が交換されました。

さらに、今次フォーラムでは、「第三国市場協力分科会」や「省エネルギー分科会」等の6つの分科会を開催し、日中双方の実務者レベルの意見交換を行いました。「第三国市場協力分科会」では、これまでの第三国における日中協力案件を紹介の上、更なる協力に向け、日中両国の政府・民間企業間で数多くの具体的かつ前向きな議論がなされました。

(3)エネルギー供給国等との関係強化

① 日サウジアラビア協力

サウジアラビアは、世界有数の産油国であるとともに、我が国にとって第1位の原油輸入相手国です。また、産油国の中でも特に主要な位置付けにあり、大きな余剰生産能力を持つことから、国際原油市場の安定に大きな影響力を有しています。こうしたことから、石油の大部分を輸入に頼る我が国にとって、同国との関係強化は重要な課題であり、2007年に立ち上げた日サ産業協力タスクフォースを通じ、投資促進、人材育成、中小企業支援等、エネルギー分野にとどまらない幅広い協力・関係強化を官民一体となって推進してきました。

日サウジ両国は、2017年3月の安倍総理とサルマン・サウジアラビア国王との首脳会談において、二国間協力の基本的な方向性と具体的なプロジェクトをまとめた「日・サウジ・ビジョン2030」に合意し、新たな戦略的パートナーシップの羅針盤として協力を進めています。2017年9月には、2010年から継続している同国との共同石油備蓄事業について、30万KL分のタンク容量拡大を完了しました。

2017年6月には、安倍総理は、ムハンマド・サウジアラビア王国皇太子兼副首相との間で電話会談を行いました。安倍総理からムハンマド皇太子に対し、皇太子兼副首相への就任に対する祝意を表しつつ、中東の平和と繁栄の鍵となり、日本のエネルギー安全保障の柱であるサウジアラビアとの関係は極めて重要であり、昨年3月のサルマン・サウジアラビア王国国王訪日時に合意した「日・サウジ・ビジョン2030」の実現に官民あげて全力で取り組んでいる旨述べたところ、ムハンマド皇太子から、謝意を表しつつ、日本はサウジアラビアの中で特別な地位を占めており、関係を重視している旨、自分とサルマン国王の訪日を通じて様々な協力が進展していることは喜ばしく、このような関係をさらに強化していきたい旨の発言がありました。

2017年10月には、安倍総理は、サルマン国王と電話会談を行い、安倍総理から、経済、外交、安全保障、人的交流等の様々な分野での両国関係の発展を嬉しく思う旨述べた上で、今後とも両国の協力強化の羅針盤である「日・サウジ・ビジョン2030」実現に向け、協力していきたい旨述べました。これに対し、サルマン国王陛下から、安倍総理と手を携えて両国関係をさらに強化し、様々な分野で協力したい旨の発言がありました

2018年1月には、世耕経済産業大臣は、サウジアラビア王国において、サルマン国王陛下、アル=ファーレフ エネルギー・産業・鉱物資源大臣、アル=カサビ商業投資大臣との会談を行いました。サルマン国王陛下との会談において、世耕経済産業大臣から、サウジアラビアが進める経済社会改革について、日本が真剣に支援する姿勢がいささかも変わらないことを伝え、日・サウジ・ビジョン2030の協力が重要で戦略的なものであるとの認識を共有しました。アル=ファーレフ エネルギー・産業・鉱物資源大臣との会談では、今後日サ協力を主導する同大臣と、これまでの取組の進捗を踏まえながら、引き続きモメンタムとスピードを一層高めて連携していくことや、次回の閣僚級の「日・サウジ・ビジョン2030共同グループ」を早期に日本で開催すべく調整することで一致しました。加えて、産業多角化やエネルギー協力についても議論しました。アル=カサビ商業投資大臣との会談においては、世耕大臣から、ビジネスフォーラムの成功について謝意を伝えました。また、サウジが重視する中小企業分野について、支援施策に係る協力を進めていくことで一致しました。

② 日UAE協力

アラブ首長国連邦(UAE)は、日本の第2位の原油輸入相手国であり、特にアブダビ首長国における海上油田には我が国の自主開発原油の約4割が存在するなど、我が国にとって極めて重要な資源国です。我が国との間では、要人の往来が活発に行われており、様々な分野での協力を推進してきました。

2017年7月に高木経済産業副大臣、10月に世耕経済産業大臣、11月に西銘経済産業副大臣、そして2018年1月に再び世耕経済産業大臣がUAEを訪問し、ムハンマド・アブダビ皇太子、アブダッラー外務大臣、ハルドゥーン・アブダビ執行関係庁長官、ジャーベル国務大臣兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEOを含む政府要人等と会談しました。会談では、海上油田の権益を日本企業が引き続き確保できるよう働きかけるとともに、経済関係を始めとした二国間関係の拡大に向けた意見交換を行い、エネルギー、産業多角化、人的交流等を含む幅広い分野での協力をさらに深めていくことで合意しました。

こうした取組の結果、2018年2月、下部ザクム油田等のアブダビ海上油田について、日本企業が権益を獲得し、引き続き油田の開発・操業等に参画することが、アブダビ政府及びADNOCとの間で合意に至りました。特に、下部ザクム油田の権益獲得は、今後40年間にわたり日本企業がアブダビ首長国の最大級の油田の第一のパートナーなることを意味するものであり、我が国の石油の安定供給に大きく貢献することが期待されることから、資源外交の大きな成果といえます。

③ 日カタール協力 

カタールは、世界第3位の天然ガス埋蔵量を有する資源国であるとともに、日本にとって原油、天然ガスともに第3位の輸入相手国です。カタールとは、2006年11月に第1回日・カタール合同経済委員会を開催し、その後おおむね毎年、委員会を開催し、二国間経済関係をさらに幅広く包括的なものにしていくために協議を重ねてきました。

2017年6月、安倍総理は、タミーム首長と電話会談を行い、安倍総理からタミーム首長に対し、我が国は地域の安定を重視しており、カタールを巡る情勢につき友好的な対話を通じて問題が解決され、この問題が平和裏に決着することを期待している旨述べたところ、タミーム首長から、日本との関係は重要であり、このような状況下においてもエネルギーを日本に安定的に供給する方針は変わらない旨の発言がありました。また、安倍総理から、カタールは我が国にとって重要であり、エネルギー分野に留まらず、政治・経済・安全保障を含めた包括的パートナーシップを一層強化していく旨を伝えたところ、先方から同感であるとの発言がありました。

2017年10月には、経済産業省主催の第6回目となるLNG産消会議2017出席のため、アル・サダ・エネルギー工業大臣が来日し、LNG市場の発展に向けた議論が行われました。また、第11回日・カタール合同経済委員会が併せて開催され、日本側は、安定的なLNG供給に感謝の意を示しつつ、我が国のアジアを中心とするLNG市場の拡大に向けた取組を紹介し、仕向地制限の緩和等契約の柔軟化について働きかけとともに、カタール側のLNG増産計画(2024年までに7,700万トンから1億トンに拡大予定)に関連し、上流開発などエネルギー分野での両国間の協力について働きかけを行いました。カタール側からは、今後も引き続きLNGを始めとするエネルギーの安定供給国であり続け、需要国である日本との友好的なパートナーシップを継続すること、日本のLNGの需要拡大に向けた取組をカタール側も最大級の供給国としてサポートすること、カタールのLNGビジネスへの日本企業の参画を歓迎することへの言及がありました。

④ 日イラン協力 

イランは世界有数の原油及びガスの埋蔵量を持つ資源国であり、日本にとって第6位の原油輸入相手国です。

2017年9月には、安倍総理がローハニ大統領と首脳会談を行いました。会談では、ローハニ大統領から、最近の日イラン関係の発展に歓迎が示され、石油・ガスを中心とするエネルギー分野での日本の投資促進に対する期待が示されました。また、環境分野等における日本の支援に対して評価が示され、高度技術分野や観光分野も含めた協力の今後の進展について期待が表明されました。これに対し、安倍総理から、両国の経済関係の拡大に向けて企業の活動を支援していく旨、また、医療分野、環境分野、文化、観光など幅広い分野での協力を推進したい旨を述べました。

⑤ 日トルコ協力

近年、我が国とトルコの間では、インフラ案件を始め、様々な分野での協力を推進しています。

2017年7月、安倍総理はエルドアン大統領と首脳会談を行いました。会談では、安倍総理から、様々なレベルで両国民間の交流を深めていきたい旨述べたほか、日本企業のトルコへの関心の高さに言及しつつ、更なる貿易・投資拡大に向けEPAや社会保障協定の交渉を進めたい旨、宇宙分野における協力促進を含め、今後もトルコにおけるインフラ事業への日本企業の参画を期待する旨を述べたのに対し、エルドアン大統領からは、日本との協力を重視しており、さらなる両国間の経済関係の発展のためにもトルコへの日本人観光客を増やしたい旨の発言がありました。

⑥ 日露協力

ロシアは世界第3位の産油国であるとともに、世界第2位の産ガス国でもあります。

日露間では、安倍総理とプーチン大統領のイニシアチブの下、エネルギーを含む8分野について、2016年5月の日露首脳会談で安倍総理からプーチン大統領に提案した8項目の「協力プラン」の下、幅広い分野の経済協力を進めています。

エネルギー協力を進めるため、世耕経済産業大臣とノヴァク・ロシアエネルギー大臣が議長となる「日露エネルギー・イニシアティブ協議会」を設立し、炭化水素・原子力・省エネ再エネの各分野における協力プロジェクトを推進しています。

2017年4月、ノヴァク・ロシアエネルギー大臣が来日し、世耕経済産業大臣と日露エネルギー・イニシアティブ協議会第3回会合を開催しました。協力ごとのスケジュールや解決すべき課題を記載した作業計画が取りまとめられたことを高く評価するとともに、作業計画に基づいた取組を加速させることで一致しました。

同年5月、世耕経済産業大臣がAPEC貿易大臣会合等に出席するため、ベトナム(ハノイ)を訪問した際、オレシュキン・ロシア経済発展大臣と会談し、同年9月の首脳会談に向け、8項目の「協力プラン」の更なる具体化のため、緊密に協力していくことで一致しました。

同年2017年6月、世耕経済産業大臣は、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムに我が国の閣僚として初めて参加し、日露ラウンドテーブルへ出席したほか、オレシュキン・ロシア経済発展大臣と会談を行いました。両大臣は、8項目の協力プランが順調に進展していることを確認するとともに、同年9月の首脳会談に向けて、個別案件の進め方等について意見交換を行いました。

同年7月、世耕経済産業大臣はロシア(エカテリンブルグ)を訪問し、我が国がパートナー国を務める総合産業博覧会イノプロムに参加し、各種イベントへ出席するとともに、日本パビリオンにプーチン大統領を案内し、我が国企業を紹介・説明しました。また、オレシュキン・ロシア経済発展大臣と会談を行い、8項目の協力プランが順調に進展していることを確認するとともに、同年9月の首脳会談の際に具体的な成果を得るため、個別案件の進め方等について詳細に踏み込んだ協議を行いました。同年9月、世耕経済産業大臣はロシア連邦(ウラジオストク)を訪問し、日露首脳会談及び日露ビジネスラウンドテーブルに出席したほか、シュヴァロフ・ロシア第一副首相、オレシュキン・ロシア経済発展大臣と会談を行い、さらに、ノヴァク・ロシアエネルギー大臣と日露エネルギー・イニシアティブ協議会第4回会合を開催しました。シュヴァロフ・ロシア第一副首相との会談では、「協力プラン」を含む日露経済関係をさらに発展をさせるための取組を継続していくことで一致しました。オレシュキン・ロシア経済発展大臣との会談では、「協力プラン」が順調に進展していることを確認し、個別プロジェクトが直面する課題等について、詳細かつ踏み込んだ協議を行いました。ノヴァク・エネルギー大臣とともに開催した、日ロエネルギー・イニシアティブ協議会第4回会合では、炭化水素、原子力、再生可能エネルギー・省エネルギーの各分野での具体的な協力案件の確認、今後のさらなる推進に向けた協議を行いました。

同年10月、世耕経済産業大臣はドヴォルコヴィッチ・ロシア連邦副首相と会談を行い、8項目の「協力プラン」の下で政府間・民間機関間の協力が拡大しており、先日のウラジオストクにおける首脳会談の際には、合計56件の文書への署名が行われる等、日露経済関係が発展していることを確認しました。

同年11月、世耕経済産業大臣はベトナムでAPEC閣僚会議に出席するとともに、日露首脳会談にも出席しました。オレシュキン・ロシア経済発展大臣との会談も行い、8項目の「協力プラン」に関し、これまで署名された民間文書は100件を超えるなど大きな成果を挙げていることを確認しました。

同年12月、世耕経済産業大臣はロシア連邦(ウラジオストク)を訪問し、トルトネフ・ロシア副首相の主催で初めて開催された「日本投資家デー」に出席しました。また、トルトネフ・ロシア副首相と会談を行い、2018年5月に予定されている安倍総理訪露、同年9月の東方経済フォーラムに向け、極東地域における日露協力をさらに発展させていくことで一致しました。

⑦ 日カザフスタン協力 

カザフスタンは、世界第2位のウラン資源埋蔵量を有する資源国です。カザフスタンとの間では、ウラン鉱山開発や原子力産業・技術の高度化等広範囲な分野への協力関係拡大を目指しているほか、同国は原油埋蔵量が350億バレルを有する世界有数のカシャガン油田の開発を進めており、日本企業がその開発に参画し、石油ガス分野での協力も行われています。

2017年アスタナ国際博覧会(通称「アスタナ万博」)が、カザフスタン共和国の首都アスタナにおいて、2017年6月から9月にわたり開催されました。アスタナ万博では、「未来のエネルギー(Future Energy)」がメインテーマとして掲げられ、その下に3つのサブテーマ(CO2排出削減、省エネルギーの活用、すべての人類のためのエネルギー)が設けられました。日本館の展示では、省エネルギーのための創意工夫やエネルギーミックスへの挑戦等、これまでの日本の経験や努力、そして先進的な技術の一端を世界に示しました。また、7月22日に開催されたジャパンデーにおいては、世耕経済産業大臣が挨拶を行い、日本のエネルギーに関する取組を紹介しました。

⑧ 日モザンビーク協力

モザンビークは、良質な原料炭、天然ガス、レアメタル等の天然資源が豊富に埋蔵されており、日本への新たな供給源として期待され、我が国企業もモザンビークにおけるLNGプロジェクトに参画しています。

2017年10月、世耕経済産業大臣は、訪日したモザンビークのクレメンス・エネルギー鉱物資源大臣と会談を行い、ナカラ回廊は、我が国のアフリカ開発における重点地域のひとつであり、政府全体で開発に取り組んでいく旨を伝え、今後の新たなLNG輸出国となる同国と、引き続き連携を図っていきたい旨を述べたのに対し、先方からは、日本は同国にとって重要であり、日本企業と協力して行っているプロジェクトに大きな関心を有しており、固い決意を持って協力を進め、ウィンウィンの関係を構築したい旨の発言がありました。