第1節 高効率石炭・LNG火力発電の有効利用の促進

省エネの推進や再エネの導入拡大とともに、エネルギーセキュリティの向上やエネルギーコスト削減の観点から、火力発電の高効率化は重要な課題です。そのため、高効率火力発電(石炭・LNG)について、環境に配慮しつつ導入を進めるとともに、技術開発を進めて発電効率のさらなる向上を目指しています。

1.世界最高水準の発電効率のさらなる向上

火力発電の発電効率を向上させる次世代技術である石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)、高効率ガスタービン等の技術開発・実証に取り組みました。

また、アジア等新興国において、引き続き火力発電の利用の拡大が見込まれる中、石炭やLNGをエネルギー源として選択する国に対しては、可能な限り高効率な火力発電を導入することが、実効的な気候変動対策になります。このため、我が国の最新鋭の高効率火力発電の普及を図りました。

<具体的な主要施策>

(1)次世代火力発電等技術開発【2016年度当初:120.0億円】

石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業(第1段階:IGCC16.6万kW)や要素技術開発(大容量燃料電池の開発等)、高効率ガスタービン技術の開発・実証事業など、石炭・LNG火力におけるさらなる高効率発電技術の開発を実施しました。また火力発電から発生するCO2の効率的な分離回収・有効利用技術等の開発を実施しました。

(2)クリーンコール技術開発【2016年度当初:8.0億円】

石炭の効率的利用、未利用資源の活用、石炭利用の環境対応を目的として、低品位炭利用や環境対策などに関する技術開発・調査を実施しました。

(3)気候変動対応クリーンコール技術国際協力事業【2016年度当初:4.5億円】

石炭利用の増加が見込まれるアジア諸国を中心に、石炭火力の高効率化や環境負荷を低減する石炭利用について、技術セミナーの開催や研修の開催等を実施し、日本のクリーンコールテクノロジー(CCT)の普及を図りました。

(4)クリーンコール技術海外普及展開等事業【2016年度当初:16.8億円】

我が国の技術に高い関心を示す外国政府等と連携した案件形成調査や、ウクライナでの老朽化した火力発電所のタービン改修事業を通じ、我が国のクリーンコールテクノロジー(CCT)の導入促進を図りました。

2.「 新しい火力電源入札制度の運用に関する指針」の改定

火力電源入札制度の在り方については、火力電源入札専門会合(座長:細田孝一 神奈川大学法学部教授)において2015年12月から2016年3月にかけて3度にわたって審議が行われ、パブリックコメントの実施後、電力・ガス取引監視等委員会による建議を受けて、2016年6月に改定されました。ガイドラインの改定の内容は、以下のとおりです。

(1)火力入札制度の位置付けの見直し

火力入札制度の位置付けを見直し、経過的な措置である特定小売供給約款の料金の適正性を確保するためのものとするとともに、みなし小売電気事業者が本指針に基づき入札を実施する主体である旨を規定しました。

また、一時的な措置である経過措置料金規制を理由とした制度となることから、本制度の廃止も含めた不断の見直しを行うことが適当である旨を規定しました。

(2)入札が必要となる場合の明確化

これまで、どのような場合に入札が必要か明確化されていなかった点を見直し、みなし小売電気事業者及びその子会社等が新設・増設・リプレースされる火力電源から供給を受けようとする場合は原則入札が必要としつつ、電源建設者の発意で建設される場合は入札を不要とする旨を規定しました。また、入札以外の方法により安価な調達が可能であることを火力電源入札専門会合で合理的に説明できる場合は入札不要とする旨を規定しました。

(3)離島電源の適用除外

離島電源を原則、火力入札の対象外とし、機器入札を適切に実施していない場合は、託送料金原価への算入を認めないことを前提に、燃料調達等については料金査定によって原価の適正性を個別に確認する旨を規定しました。

(4)上限価格の設定の柔軟化

電源の原価に基づき上限価格を算定するという規定を削除し、入札実施会社が定める上限価格が「適正な原価」としての合理性がある水準にとどまっていれば許容できることとする旨を規定しました(自社の発電部門及び子会社等の応札価格を上限価格とすることも認められます)。

(5)上限価格の審議時期の見直し

募集の開始前の段階で、上限価格の算定の考え方について、専門会合で審議する仕組みとする旨を規定しました。

(6)応札できる電源の限定の扱い

燃料の供給安定性の観点や高効率な火力発電からの調達の観点から求める性能を満たす電源に限定しての入札が問題とならないこと、エネルギーミックスとの乖離がある場合に燃料種を指定しての入札もあり得ることを規定しました。

(7) 系統増強費用(一般負担分)や振替供給費用の扱いの見直し

一般送配電事業者が負担する系統増強費用(一般負担分)や振替供給費用についてはこれまで入札結果を評価する際に考慮されてきましたが、一般送配電事業に係る費用であることから、みなし小売電気事業者が実施する入札結果の評価の際に考慮しないこととする旨を規定しました。

(8)その他

みなし小売電気事業者が他の小売電気事業者と共同で入札を実施することも可能な制度であることを規定しました。また、従来の指針では明確化されていなかった自社電源の一部分のみでの応札について、認められることを明記しました。

3.火力発電の環境負荷の低減に向けた取組

経済的・安定的な電力の供給を確保するとともに、環境負荷をより低減していくためには、新増設やリプレースによって最新鋭の高効率な火力発電所を導入することにより、老朽火力の代替や供給力の強化を進めていくことが重要です。このため、従来3年程度かかる環境アセスメントの手続期間を、リプレースの場合には1年強程度まで短縮し、新増設についても短縮して取り組むこととしています。

また、2015年7月に、主要な事業者が参加する電力業界の自主的枠組み及び低炭素社会実行計画(国のエネルギーミックス及びCO2削減目標とも整合する二酸化炭素排出係数0.37kg-CO2/kWhを目標)が発表されました。2016年2月には、電気事業低炭素社会協議会が発足し、個社の削減計画を策定し、業界全体を含めてPDCAを行う等の仕組みやルールが発表されたところです。

この自主的枠組みの目標達成に向けた取組を促すため、省エネ法・高度化法に基づく政策的対応を行うことにより、電力自由化の下で、電力業界全体の取組の実効性を確保していくこととしています。

また、2030年度の削減目標やエネルギーミックスと整合する2030年度に排出係数0.37kg-CO2/kWhという目標を確実に達成していくために、これらの取組が継続的に実効を上げているか、毎年度、その進捗状況を評価することとしています。これを受けて、2016年11月28日、政府としては産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会資源・エネルギーワーキンググループを開催し、電力業界の自主的枠組みの評価・検証を行いました。また、環境省は、2017年3月電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の平成28年度の評価結果を公表しました。

加えて、2030年以降を見据えて、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)について、「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」(2013年4月25日 経済産業省・環境省)やエネルギー基本計画等を踏まえて取り組みました。また、環境省は、2017年2月には「国内外のCCS Readyに関する取組状況等について」を公表しました。

また、国が整理・公表している最新鋭の発電技術の商用化及び開発状況(BATの参考表)については毎年度見直し、必要に応じ随時公表することとしており、2017年2月に更新しました。