第3章 パリ協定を踏まえたエネルギー政策の変革
気候変動問題は地球規模の課題であり、その解決のためには全ての国が参加する公平かつ実効性のある新たな国際枠組が不可欠です。我が国は、各国と協調し、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、このような国際枠組の構築に貢献し、パリ協定の採択に至りました。
このパリ協定は主要排出国を含む全ての国が参加する合意であり、世界共通の長期目標として平均気温の上昇を2°Cより十分下方に抑えること(2°C目標)の設定や、各国が5年ごとに削減目標を提出・更新し、また、5年ごとに世界全体の実施状況を検討すること等が規定されました。我が国は、COP21に先立ち、国際的にも遜色ない野心的な、2030年度までに2013年度比マイナス26.0%(2005年度比マイナス25.4%)の水準とすることを内容とする約束草案を、国連気候変動枠組条約事務局に提出しております。これは、GDP当たり排出量だと先進国最高水準にある我が国が、これから更に4割程度の改善(0.16kg-CO2 /米ドル)を見込む挑戦となります。
我が国は、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故によりエネルギーを巡る環境の大きな変化に直面し、エネルギー起源CO2が急増しました。そのような中、エネルギー戦略を白紙から見直し再構築するための出発点として2014年4月に新たなエネルギー基本計画を決定し、同計画を踏まえた長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)を2015年7月に策定しました。我が国の約束草案は、エネルギーミックスと整合的なものとなるよう策定されており、削減目標の達成に向けては、エネルギーミックスの実現が強く求められています。
エネルギーミックスの実現に向けては、電力小売全面自由化などにより競争が進む中でも、政府として総合的な政策措置をバランス良く講じていくため、省エネルギー、再生可能エネルギーをはじめとする関連制度を一体的に整備する「エネルギー革新戦略」を、2016年4月に経済産業省が策定しました。エネルギー革新戦略は、省エネルギーや再生可能エネルギー分野において、エネルギー関連投資を拡大し、効率の改善を促すことで、アベノミクスのGDP600兆円実現への貢献とCO2 排出抑制を両立させることを狙いとしています。また、特に電力分野においては、産業界の自主的取組を尊重しつつ、市場任せとしないために、政府が制度整備を進めているところです。
本章では、パリ協定を踏まえたエネルギー政策の変革の動きとして、エネルギーミックス実現による 2030年までにマイナス26.0%達成に向け、GDP当たり排出量では先進国最高水準である我が国がこれから更に4割程度の改善を見込む挑戦の背景や、エネルギー革新戦略の実行といった挑戦の具体的内容について紹介します。