はじめに
2014年11月、石油輸出国機構(OPEC)は年次レポート「World Oil Outlook」を発表し、米国で生産されるシェール由来の原油の増加を主な理由として、2013年の北米(米国・カナダ)の原油生産量(天然ガス液<NGL:Natural Gas Liquid>含む)を、前年のレポートに比べ30万バレル/日上方修正しました。
2020年の北米の原油生産量見通しについても、前年のレポートに比べ250万バレル/日も上方修正し、そのうち220万バレル/日をシェール由来の原油によるものとしました。
また、従来は北米に限定されていたシェール由来の原油生産国に、ロシアとアルゼンチンを加えました。両国の2040年のシェール由来の原油生産量見通しの合計は、約70万バレル/日とされています。
同月に開催されたOPEC総会では、既に原油価格(ブレント)が6月の110ドル/バレル台から一時80ドル/バレルを割り込むまで落ち込んでいたにも関わらず、原油生産量の維持が決定され、その後の原油価格が40ドル/バレル台(2015年1月)まで急落する原因となりました。
原油価格が下落する中でOPECが減産を見送った背景には、サウジアラビアをはじめとする加盟国が、米国のシェールオイル・シェールガスという新たな供給力に対し、既存の石油供給国の国際市場における役割を低下させないようにする意図もあったと考えられています。
こうした動きは、10年ほど前から米国で始まったシェールオイル・シェールガスの開発・増産-いわゆる「シェール革命」-が、従来の産油国にとって無視できない存在となったことを示しています。
また、この「シェール革命」は、日本のエネルギー安全保障にも大きな影響を与え、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故後の電力供給体制の確保に貢献するものでした。
これまでもエネルギー白書において、「シェール革命」に関して記載してきましたが、世界のエネルギー供給構造への影響がいよいよ大きくなる中、本年はこれを第1部の中心テーマに据え、「シェール革命」のこれまでの動きをまとめていきます。また、「シェール革命」の時代を迎え、世界のエネルギー事情にはどのような変化が起きているかについて、詳しく分析していきます。
また、一次エネルギーの供給を維持するため、その9割以上を海外からのエネルギーに依存し、その中心となっている原油の大半を中東からの輸入に頼っている我が国も、この動きに無関係ではいられません。「シェール革命」の前後で、日本を含めた主要国のエネルギー事情がどのように変化したかを、「エネルギー安全保障」の観点から確認し、今後の動向と課題についても浮き彫りにしていきます。