第2節 石油製品サプライチェーンの維持・強化

国内の人口減少や自動車等の燃料効率の大幅な改善といった構造的な石油需要減少を背景に、我が国の石油産業は、精製・元売・販売のそれぞれの部門とも厳しい経営環境に直面しており、国内の石油供給網(製油所・油槽所・SS)を支える石油産業全体の経営基盤強化が課題です。また、東日本大震災時に、電力や都市ガスの供給障害が発生した中、エネルギー供給の「最後の砦」としての石油の役割が再認識される一方、首都直下地震等の更なる大規模災害を想定した場合の供給網の脆弱性も明らかになりました。こうした観点から、平時からの事業基盤強化と、ハード・ソフト両面にわたる危機対応能力強化により、強靭な石油サプライチェーンを構築すべく、精製・元売部門から販売部門まで系列全体を包含する対策を進めました。

(1) 石油精製・元売部門

産油国から原油を輸入し、製油所において原油をガソリン等石油製品に精製し、SS等に卸売を行う石油精製・元売部門は、アジア新興国において輸出競争力の高い石油コンビナート・製油所が次々に新設される中、アジア市場における激しい国際競争に晒されています。将来的には、アジア地域全体でも供給過剰になる厳しい見通しがある中で、我が国製油所における精製装置の集約強化や、高付加価値型の基礎化学品生産体制の強化、コンビナート内における事業所間連携の強化による生産性向上を支援しました。

また、首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の大規模災害の発生を想定し、こうした事態に際して石油供給の早期回復を可能にするため、製油所における非常用発電機等の導入や耐震・液状化・津波対策等のハード対策を進めるとともに、精製・元売会社系列ごとの製油所から系列SSまでの系列供給網全体を包含するBCP(系列BCP)の策定、災害時石油供給連携計画の訓練、被災地への石油供給を円滑化するための関係省庁との連携強化等のソフト対策も進めました。石油の国家備蓄についても、災害時の被災地における石油供給の早期回復に資するよう、ガソリン等の石油製品の形態での国家備蓄の増強を進めました。

(2) 石油販売部門(SS)

消費者への石油製品の最終供給を担うSSを運営する石油販売部門には、危機発生時においても一定の供給機能を果たせるようにするための高い安全性・耐久性を持った設備を確保するための持続的な投資を求められることとなります。このため、平時・緊急時を問わずに安定供給のための中核機能を将来にわたって担っていく意識と高い意欲のあるSSに対する設備投資支援などを行い、経営基盤強化を支援しました。また、過疎地域や地理的に不利な条件にある離島における石油製品の安定供給の確保に取り組みました。

<具体的な主要施策>

1.国内における石油製品サプライチェーンの維持

(1) 石油精製・元売部門の強靱な経営基盤の構築

エネルギー供給構造高度化法(高度化法)による原油等の有効利用の促進【法律】

原油一単位あたりから精製されるガソリン等石油製品の得率を向上させ、余すところなく原油を利用する(原油の有効利用)体制を強化すべく、高度化法に基づく石油精製業者向け「判断基準」(2010年7月5日経済産業大臣告示)により、我が国製油所全体の「重質油分解装置の装備率(各石油精製業者が利用する重質油分解装置能力の、常圧蒸留装置(原油処理装置)に対する比率:重質油分解装置能力(分子)/原油処理装置能力(分母))」の向上を義務付けました。対象となる石油精製業者は、自社の装備率の向上に向け、常圧蒸留装置の削減(「分母」の減少)、重質油分解装置の新設・増設(「分子」の増加)、または、それらの組合せによる対応を進め、我が国製油所全体で重質油分解装置の装備率は10%程度(告示制定時)から13%程度(2013年度末)へと改善されました。

この判断基準の運用の結果、全ての石油精製業者が「常圧蒸留装置(分母)」の能力を削減したため、我が国の原油処理能力は、過去10年のピークである2008年4月初の能力(28製油所・約489万B/D)に比して、2014年4月初の能力(23製油所・約395万B/D)は約2割削減されました。

精製機能集約強化事業【2013年度当初:51.0億円】

今後、国内石油製品の需要減退が予想される中、石油の安定供給確保の基盤である我が国石油精製業者のなお一層の国際競争力確保に向け、精製機能の集約強化を行う際の製油所の機能転換に係る取組を支援しました。

コンビナート連携石油安定供給対策事業【2013年度当初;29.0億円】

各地の石油コンビナートの特長を活かしつつ、製油所と石油化学等の異業種が連携し、電気・蒸気・冷却水等の用役設備の共用や事業所間の配管接続による原料や留分の相互融通等を行う取組を支援しました。

重質油等高度対応処理技術開発委託費【2013年度当初:7.0億円】

石油精製プロセスにおける反応装置等の最適化のため、分子レベルでの詳細組成構造解析を行い、その結果をもとに石油成分の反応や分離挙動等をコンピュータによりシミュレーションするペトロリオミクス技術開発を実施しました。

重質油等高度対応処理技術開発費補助金【2013年度当初:7.5億円】

重質原油からガソリン等の高付加価値の石油製品を最大限に生産する究極の石油高度利用を実現すべく、重質原油を分解するプロセスを分子レベルで制御する技術の開発を行いました。

石油利用低炭素化分析評価事業【2013年度当初:3.5億円】

精製過程で生じる残渣油から再生した石油製品について、環境面・安全面において自動車で安心して使用できるよう分析・評価を行うことを通じ、原油から得られる各留分を余すことなく使用する取組に対する支援を行いました。

(2) 石油販売部門(SS)の経営基盤強化

事業提携強化による効率性向上などの流通合理化や電気自動車の普及を見据えた新たなビジネスモデルの構築等を通じたSS経営基盤の強化に対する支援を行いました。

給油所次世代化対応支援事業【2013年度当初:6.8億円】

石油製品販売業の経営基盤を強化するため、電気自動車等の次世代自動車の普及等を見据えた新たなビジネスモデルを構築するとともに、新たなビジネスモデルを支える人材の育成を支援しました。

(3) 石油製品の品質確保

石油製品販売業が「石油のサプライチェーン」の最前線としての役割を担うことを可能とするため、品質や価格等に関する公正・透明な競争環境の整備を目指して、揮発油等の品質の確保等に関する法律等の適切な運用等を行いました。

石油製品品質確保事業費補助金【2013年度当初:16.0億円】

石油製品の適正な品質を確保するため、全国約4万給油所においてサンプル(ガソリン等)を試買・分析する事業に対し支援を実施しました。また、分析技術レベルの向上を図るため、分析技術の研究開発等に対する支援を実施しました。

(4) 「SS過疎地域」や離島等における安定供給の確保

石油製品流通網維持強化事業【2013年度当初:4.9億円】

「SS過疎地域」についての実態調査を行い、当該実態調査結果を踏まえた実証事業を実施しました。また、SSの災害対応能力強化のため、緊急時対応研修・訓練等を実施しました。

灯油配送合理化促進支援事業【2013年度補正:58.0億円】

過疎地域や豪雪地域において、地域における灯油の安定供給を図ることを目的として、灯油ローリーの大型化や共同所有による灯油配送の合理化の促進を支援しました。

離島ガソリン流通コスト支援事業【2013年度当初:30.5億円】

本土のSSに比べてガソリン調達にかかる輸送コストが割高となる離島のSSが、島民等にガソリンを販売する際に、実質的なガソリン小売価格が下がるよう輸送コストに対する支援措置を講じました。また、離島のSSが行うガソリン販売に関する検査や設備等の導入及び補修に対する補助を行いました。

離島石油製品流通合理化・安定供給支援事業【2013年度当初:0.7億円】

離島における地域の実情を踏まえた具体的な供給体制の在り方を検討するために、基礎自治体やSS事業者等を中心としたコンソーシアムによる協議会を設置し、協議会で行う離島の石油製品の流通合理化や安定供給対策の検討・策定に対して支援を行いました。

(5) SSにおける環境対策

地下タンクからの危険物漏えい未然防止対策や早期発見対策などのSSが地域社会と共生していくために不可欠となる環境対応等を支援しました。

環境対応型石油製品販売業支援事業【2013年度当初:5.0億円】

給油所周辺の土壌の環境保全、地球環境問題への対応を図る観点から、給油所における土壌汚染の未然防止・拡大防止対策等、揮発油販売業者が行う環境保全対策に対して、支援を実施しました。

給油所地下タンク漏えい防止緊急対策事業【2013年度補正:87.4億円】

地下タンクからの危険物漏えい未然防止対策や早期発見対策といったSSの環境保全対策に係る支援を実施しました。

(6) 石油産業の設備等を活用した水素の供給インフラ整備

高効率水素製造等技術開発費補助金【2013年度当初:7.5億円】

製油所内の既存装置から製造される水素を効率的に活用し、その純度を燃料電池自動車に必要な高純度(99.99%)にまで高める製造プロセス及び製造した高純度水素を効率的に出荷するための設備の開発・実証を支援しました。

(7) LPガス流通合理化の推進

LPガス流通合理化対策調査【2013年度当初:1.7億円】

LPガスの流通実態・販売事業者の経営実態等を調査し、LPガス産業全体の流通機構の適正化、合理化策を検討するとともに、消費者等に対しLPガスに関する取引・価格等の情報を提供し、消費者意識の向上を図り、市場原理の一層の活性化を図るための調査等を実施しました。

LPガス販売事業者構造改善支援事業【2013年度当初7.3億円】

小規模事業者が大多数を占めるLPガス販売事業者の構造改善を促進し、LPガス販売業の体制強化を図るため、販売事業者団体が行う消費者相談事業の実施や販売事業者等が行う構造改善推進事業に係る費用に対し補助を行いました。

国際交流事業【2013年度当初:0.2億円】

LPガスの産ガス国や消費国との協調と対話の促進を図るため、国内外のLPガス有識者を招聘し、LPガス国際セミナーを開催しました。

LPガス配送合理化推進事業【2013年度当初:1.3億円】

充填所の稼働率を高めるとともに、LPガスの交錯輸送を解消するため、充填所の統廃合に伴う設備の新設及び増設等に対し補助を行いました。

2.緊急時対応の充実・強化

(1) 災害による緊急時供給体制のネットワーク構築

製油所における石油供給インフラの強靭化

(ア) 石油製品出荷機能強化事業(非常用電源等の強化)【2013年度当初:51.0億円】

首都直下地震・南海トラフ巨大地震等の大規模災害が発生、被災地域の製油所で石油精製機能が相当期間停止した場合であっても、救助・復旧活動等に不可欠なガソリン・灯油等の石油製品を出荷するための能力を維持することが必要です。このため、製油所での「非常用3点セット」(非常用発電機、非常用情報通信システム(衛星通信等)、ドラム缶石油充填出荷設備)の導入を支援しました。

(イ) 石油供給インフラ強靭化事業(石油コンビナート・インフラの強靭化)【2013年度補正:125.0億円】

巨大地震発生時には、被災地の製油所の石油精製設備は相当期間停止せざるを得ないことを前提に、石油製品の供給の早期回復を確保すべく、①設備の安全停止を確実にした上で、②製油所内の石油製品在庫や国家備蓄を迅速に出荷し、③被災地外や海外の製油所等からタンカーで転送されてくる石油製品を入荷し、次々にタンクローリー等で出荷する機能を守ることが必要です。

こうした機能を7年程度かけて抜本的に向上させるべく、耐性総点検の結果も踏まえた第一弾の対策として、耐震・液状化・津波対策、設備の安全停止対策、入出荷バックアップ能力増強策を支援する石油供給インフラ強靱化事業を措置しました。

石油精製元売会社のBCP強化・関係省庁による支援体制強化

大規模災害発生時に石油精製元売会社が連携して石油供給を行うために事前に策定する「災害時石油供給連携計画」の届出制度を、石油備蓄法改正(2012年度)により導入しました。2013年度には、各社から届け出られた災害時石油供給連携計画の実効性を確保すべく、初めての訓練を、資源エネルギー庁、内閣府、和歌山県、石油業界が連携して実施しました。

また、資源エネルギー庁から石油業界に対して、首都直下地震等を念頭において、系列石油サプライチェーン全体の石油供給機能を早期回復させるべく、「系列BCP」(業務継続計画:Business Continuity Plan)の策定を要請し、各石油精製・元売会社は2013年度中に「系列BCP」の策定を完了しました。資源エネルギー庁は、策定した各社の系列BCPのレベルアップを助ける仕組みとして、外部有識者で構成される「系列BCP格付け審査委員会」を組織し、格付け評価に取りかかりました。

災害時に、石油精製・元売会社が被災地に向けて石油を円滑に供給するためには、①製油所・油槽所に通じる航路・道路の早期啓開(がれき処理・復旧等)、②タンクローリーの緊急通行車両確認や長大・水底トンネル通行許可特例、③給油困難地域へのドラム缶詰め石油の輸送協力等、関係省庁による協力が不可欠です。資源エネルギー庁では、内閣府、総務省消防庁、国土交通省、防衛省、警察庁等との間で、災害時の石油供給を円滑化するため、「国土強靱化政策大綱(2013年12月国土強靱化推進本部決定)」のプログラム等に基づく協力枠組みの確立に向け、関係省庁との検討を開始しました。

SSの災害対応能力強化

東日本大震災の教訓を生かし、災害時においても石油製品の安定供給を維持できるよう、2012年度改正石油備蓄法に基づき、地域における災害時石油供給の拠点となる「中核SS」を全国各地に整備し、加えて「中核SS」にガソリン等石油製品の備蓄の確保を進めることにより、地域における災害時に石油供給体制の強化を進めました。

(ア) 地域エネルギー供給拠点整備事業【2013年度当初:42.0億円】

SSの閉鎖時に地下タンク等が放置されることを防止するとともに、地域の個々のSSの災害対応能力を強化するため、SSが有する地下タンク等の入替え・大型化に係る費用について支援しました。

(イ) 災害時給油所地下タンク製品備蓄促進事業【2013年度補正:15.0億円】

東日本大震災ではSSにおいて地下タンクの燃料が在庫切れになったことを背景に、被災地域で燃料供給に支障が生じました。このため、本事業を通じて地域における供給の拠点となる「中核SS」における一定量の在庫の備蓄を図りました。

(2) 国家備蓄・産油国共同備蓄の維持・増強

国家石油備蓄と産油国共同備蓄の増強【2013年度当初:995.5億円】

約5,000万klの国家備蓄石油及び国内10か所の国家備蓄基地について、国から委託を受けたJOGMECが一元的に管理を行い、緊急時における国家備蓄原油の機動的な放出を可能にすべく、緊急放出訓練等も実施しました。それとともに、東日本大震災の反省を踏まえて石油製品(ガソリン・灯油・軽油・A重油)の形態での国家備蓄の増強を進め、国内需要の4日分に相当する国家備蓄石油製品を全国各地に分散して増強し、災害時の被災地における即応体制を強化しました。

また、国家備蓄のほか、我が国は、主要な原油輸入先であるアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社とサウジアラビアのサウジアラムコ社に対し、国内の原油タンクを貸与し、両国営石油会社が所有する原油を蔵置しています(2009年12月から、鹿児島県のJX喜入(きいれ)基地にて、アブダビ国営石油会社との事業を開始(開始当時約60万kl)、2011年2月から、沖縄県の沖縄石油基地(OCC)にて、サウジアラムコ社との事業を開始(開始当時約60万kl))。これらの原油は、平時には、両国営石油会社の東アジア向けの供給・備蓄拠点として、当該タンクとタンク内の原油は商業的に活用される一方、危機時には、タンク内の原油を我が国石油会社が優先購入できることになっています。

本プロジェクトは、産油国との関係を強化することや、沖縄等の地域が産油国にとっての東アジア向け原油供給拠点になること等の様々な副次的な意義も有するプロジェクトであることに鑑み、サウジアラムコ社との間で、2013年6月に事業の延長に合意し、同年12月に貸与タンク容量を拡大し、100万klの原油タンクを貸与する体制となりました。アブダビ国営石油会社との間でも、2014年2月に貸与タンク容量を拡大し、100万klの原油タンクを貸与することに合意しました。

国家石油ガス備蓄【2013年度当初:134.6億円】

石油ガスの安定供給確保の観点から150万トンの国家備蓄を達成すべく、国家備蓄基地の建設等を行いました。国家備蓄基地は、茨城県神栖市、石川県七尾市、岡山県倉敷市、愛媛県今治市、長崎県松浦市の国内5か所において整備を進めており、このうちの地上3基地が2005年中に完成し、地下2基地が2013年に完成しました。

(3) 民間備蓄の維持推進

備蓄石油・石油ガス購入資金に係る利子補給【2013年度当初:20.8億円】

備蓄法に基づき、石油精製業者、石油販売業者、石油輸入業者、石油ガス輸入業者に対して備蓄義務(石油:70日、石油ガス:50日)を課していますが、当該備蓄義務はこれらの民間企業に対して膨大なコスト負担を強いるものであることから、JOGMECが備蓄石油・石油ガス購入資金の低利融資を行っており、所要の貸付規模を維持するとともに、借入金にかかる利子負担の軽減を図るべく、貸付を受けた企業に対して国が利子補給を行いました。

COLUMN

石油産業の変遷

1.石油政策の変遷(1951年~2002年)

(1)石油業法、緊急時二法等の制定(1951年〜1985年)

第二次世界大戦の終了後、1951年から民間企業による石油輸入が再開されたものの、当時の我が国の外貨資金は極めて限られていたため、原油及び石油製品の輸入も他の物資の輸入と同様に「外貨割当制度」の下に行われていました。その後、日本経済の急速な発展に伴い、自由貿易を基調とする国際経済社会において応分の責任を果たすことが求められ、我が国においても世界の大勢である貿易自由化の体制を早急に確立することが緊急の課題になりました。日本政府は、1960年6月に「貿易・為替自由化計画大綱」を決定し、これに伴い1962年10月には石油輸入の大部分を占める原油の輸入自由化を行いました。石油輸入の自由化は、外貨の割当てを通じて原油及び石油製品の輸入の調整ができなくなることを意味するため、日本経済における石油の重要性に鑑み、1962年に石油業法(原油輸入の自由化に対応した石油産業の基本法)を制定しました。石油業法は、石油精製業等の事業活動を調整することによって石油の安定的かつ低廉な供給の確保を図ることを目的とするもので、石油供給計画の策定や石油精製業の許可、届出等について定めました。

その後、1970年代における二度のオイルショックは我が国の社会経済や国民生活に大きな打撃を与えた出来事であり、1973年12月に、このような危機を未然に防止し、また危機的な状況に対処するための緊急時二法(石油等の重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定めた「国民生活安定緊急措置法」と、石油の大幅な供給不足が生じた際の石油の適正な供給確保と石油使用の節減のための措置について定めた「石油需給適正化法」)を制定しました。また、前述のとおり、石油の備蓄を確保することにより、石油の供給が不足する事態が生じた場合でも石油の安定供給を確保するため、1975年12月に「石油備蓄法(現:「石油の備蓄の確保等に関する法律」(以下「備蓄法」という。))」を公布し、石油の備蓄目標を定めるとともに、石油業者に石油の備蓄を義務付けました。

これらに続き、ガソリンの安定供給と品質確保の徹底等を目的としてサービスステーション(SS)の登録や品質確保義務等について定めた「揮発油販売業法」(1976年11月公布)、一定の秩序の下でガソリン・灯油・軽油の輸入を促進することを目的にガソリン、灯油、軽油の三油種の輸入を精製業者に限定した「特定石油製品輸入暫定措置法(以下「特石法」という。)」(1985年12月公布)が定められました。

(2)規制緩和の推進(1987年〜2002年)

1987年以降、石油産業の国際競争力の確保、経営や流通の自由度の確保に基づく経済の活性化を図るための石油産業に対する規制緩和措置を進めており、その施策は1993年以前の第一次規制緩和と1996年以降の第二次規制緩和に整理されます。

①第一次規制緩和(1987年~1993年)

第二次オイルショック以降、市場メカニズムを通じて民間の活力を極力尊重し、経済の活性化を図ることを目的に、石油産業の生産・販売活動に対する規制の緩和を順次以下のように進めました。

○1987年7月 二次精製設備許可の弾力化

○1989年3月 ガソリン生産枠指導(PQ)の廃止

○1989年9月 灯油の在庫指導の廃止

○1990年2月 SS建設指導と転籍ルールの廃止

○1991年9月 一次精製設備許可の弾力化

○1992年3月 原油処理枠指導の廃止

○1993年3月 重油関税割当(TQ)制度の廃止

この第一次規制緩和のプロセスにおいては、石油業法、揮発油販売業法の運用上、平常時において石油産業の生産・販売活動を競争制限的に規制していた点を見直し、国内石油市場を一定の枠組みの中で競争的市場に再構築することを念頭に置いたものでした。

②第二次規制緩和(1996年~2002年)

第一次規制緩和の段階では、生産、販売の一部に競争がもたらされましたが、輸入に関する規制は依然として残っていました。特に、ガソリン、灯油及び軽油の輸入は、特石法によって、事実上、精製業者以外の事業者が行うことは認められませんでした。生産、販売に限らず、輸入分野にまで規制が緩和されたのが第二次規制緩和に当たります。

バブル経済の崩壊、円高方向への推移等の経済情勢の変化に伴い、第一次規制緩和から一歩踏み込んで、公正な競争原理を確保しつつ、安定供給と効率的供給のバランスのとれた石油製品の供給を実現するために、国際的な競争も視野に入れ、国内市場の新たな枠組み作りを目指し、1995年4月、特石法の廃止を含む「石油製品の安定的かつ効率的な供給の確保のための関係法律の整備に関する法律」(石油関連整備法)を公布、揮発油販売業法を「揮発油等の品質の確保等に関する法律」(以下「品確法」という。)として改正するに至りました。この改正は石油製品の輸入の自由化に伴う国内市場の石油製品の品質多様化に対応し、ガソリンのみならず、灯油、軽油についても、品質の確保を図ることを目的とするもので、揮発油販売業者の登録制度、規格に適合しない燃料油の販売規制について定めています。

1997年6月に、石油審議会において、石油流通の一層の効率化、透明化、公正化に向けた報告書が取りまとめられ、その指針を受け、次のような制度的な措置を実施しました。

1997年7月 石油製品輸出承認制度見直し(包括承認制の導入・輸出の自由化)

1997年12月 サービスステーション(SS)の供給元証明制度の廃止

また、セルフ給油方式の導入について、消防庁の「給油取扱所の安全性等に関する調査検討委員会」において安全・保安面から検討した結果、消防法関係法令の所要の改正を行い、1998年4月から、監視員が常駐する有人給油方式のセルフ給油を解禁としました。

さらに、1998年6月の石油審議会石油部会基本政策小委員会報告書(答申)においては、昨今の環境変化を踏まえた今後の石油政策の基本的な考え方として、危機の予防・回避のため、国際石油市場の機能を評価しつつも、一方で、市場が機能しない場合に備えた政策展開の重要性が指摘されました。また、石油精製業を巡る制度に関しては、平時における需給調整規制の廃止等が提言されました。これを踏まえ、2002年に石油業法が廃止され、石油産業での自由化が完成しました。

③規制緩和の効果

最近の規制緩和により、石油製品の輸入への新規参入の促進、ガソリン価格を中心とする石油製品価格の低下等の効果がもたらされました。

新規参入等については、特石法の廃止による輸入自由化等の規制緩和措置を受け、従来の精製・元売会社に加え、総合商社等が新たに石油製品の輸入を開始しました。さらに、大手流通業者等異業種、外資系企業もサービスステーション(SS)に参入しています。また、セルフサービスステーション(SS)も2012年度末で8,862か所となり、依然増加しています。一方、1994年の特石法廃止の検討開始を契機とした価格競争の激化の結果、サービスステーション(SS)数及び事業者は1994年をピーク(60,421か所(登録業者数31,599))に減少傾向にあり、2012年度末には36,349か所(登録事業者数18,269)まで減少しました。

ガソリン価格等の低下については、特石法廃止の検討が開始された1994年以降2000年にかけて、自由化を先取りした競争の激化等の影響により、ガソリンを中心に石油製品価格が大幅に低下しました。こうした中で、例えば、2000年1月に公表された経済企画庁(当時)の試算によれば、規制緩和によるガソリン価格低下により、約1兆4,000億円もの利用者へのメリットが発生しているとされました。

2.環境保全に向けた取組(1968年~2014年)

我が国においては、大気環境を保全するため、1968年に大気汚染防止法(以下「大防法」という。)が制定されました。この法律は大気汚染に関して国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的としています。同法では固定発生源(工場や事業場)等から排出される大気汚染物質について、物質の種類ごと、排出施設の種類・規模ごとに排出基準等が定められています。大防法制定以来、硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物(NOx)の排出量の着実な削減が行われました。1960年代から1970年代には、排煙脱硫装置の設置が急激に進み、二酸化硫黄に係る環境基準の早期達成に貢献しました。また、NOxについても、低窒素酸化物燃焼技術の開発や排煙脱硝装置の設置が進みました。SOx及びNOxについては、施設単位の排出規制に加えて、国が指定する地域において、都道府県知事が策定する総量削減計画に基づき工場単位の総量規制が行われています。

一方、1970年代から1980年代には、深刻化した光化学スモッグ対策として、ガソリン自動車に対する排出ガス規制が本格化し、1975年2月からガソリンの無鉛化が実施されました。

また、我が国においては、深刻化する大都市地域の大気汚染に対応するため、ディーゼル自動車等の排出ガス規制強化に加え、「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(自動車NOx・PM法)に基づき、NOx及び粒子状物質(PM)の総量削減対策を実施しており、2007年5月には、局地における大気汚染防止対策の強化を図るため、その一部が改正され、2008年1月には、改正自動車NOx・PM法が施行されました。

さらに、建設機械、農業機械、産業車両等の特殊自動車から排出されるNOx・粒子状物質等による大気汚染の防止を図るため、2005年5月に「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律」(オフロード法)を制定し、これまで未規制であった公道を走行しない特殊自動車に対する排出ガス規制が2006年10月から実施されました。2011年よりPMの基準値強化等が行われましたが、2014年1月には、同年10月から順次適用される基準(NOxの基準値強化等)の改正が行われました。

自動車排出ガスの更なる低減と燃費の更なる向上を図るため、軽油・ガソリン中の硫黄分を10ppmまで低減した、いわゆる「サルファーフリー燃料」の早期導入・普及(軽油は2007年、ガソリンは2008年)が必要との審議会の答申を受けて、大防法及び品確法によって、軽油・ガソリン中の硫黄分を10ppm以下と定めました。また、石油業界では強制規格化に先駆けて、2005年1月から自主的にサルファーフリー軽油・ガソリンの全国(沖縄・離島を除く。)供給を開始しました。

一方、国は、この規制に先駆けてサルファーフリー燃料を供給する事業者に対し、新たに必要なコストの一部をその供給量に応じて補助する制度を2004年度から2006年度にわたって実施し、品確法の改正により、サルファーフリー軽油の強制規格化(2007年1月)及びサルファーフリーガソリンの強制規格化(2008年1月)を行いました(第322-2-1)。

【第322-2-1】ガソリン及び軽油における硫黄分低減への取組

【第322-2-1】ガソリン及び軽油における硫黄分低減への取組

COLUMN

石油等備蓄制度について

1.国際的備蓄システムの潮流

1973年に発生した第一次オイルショックに対応し、国は緊急石油対策推進本部(後に、国民生活安定緊急対策本部に改組)を設けるとともに「石油緊急対策要綱」を閣議決定し、全国民的な消費節約運動の展開、石油・電力の使用節減に関する行政指導等を行い、事態の収拾に努めました。さらに、これと並行して緊急時における石油の安定供給等に関する立法作業が進められ、同年12月には、いわゆる「緊急時二法」と呼ばれる「石油需給適正化法」と「国民生活安定緊急措置法」が制定されました。

また、国際的には、1974年にアメリカの呼びかけにより我が国を含む主要石油消費国の間で「エネルギー調整グループ(ECG)」が結成されました。同年、同グループにより「国際エネルギー計画(IEP)」協定が採択され、「国際エネルギー機関(IEA)」が経済協力開発機構(OECD)の下部機関として設置されました。

IEPは、加盟国の緊急時におけるエネルギーの自給力確立のため、前暦年の平均純輸入量の90日分の備蓄義務と、消費削減措置付きの緊急時石油融通制度を規定しています。この規定に基づき、1970年代の二度のオイルショックに対応して、IEA加盟国を中心に石油備蓄の増強が図られました。特に、国家備蓄(日本他)、協会備蓄(ドイツ、フランス他)等公的な石油備蓄の増強が1980年代に図られました。これらにより、IEA加盟国では、2013年末時点で、加盟国(純輸入国に限る)平均157日の石油備蓄を保有していました。

2. 我が国の石油備蓄の拡大整備と緊急時の石油供給体制等の整備強化

前述のように、IEPは、加盟国の緊急時におけるエネルギーの自給力確立のため、前暦年の純輸入量の90日分の備蓄を義務付けています。我が国においても、1975年に備蓄法を制定し、民間石油会社に石油の備蓄を義務付けるとともに「90日備蓄増強計画」を策定し、1981年度末には石油会社は90日分の備蓄目標を達成しました。さらに1978年には国家備蓄も法制化し石油公団による国家備蓄を開始。以降、国家備蓄を拡充し、1998年には国家備蓄目標である5,000万kl体制となりました(第322-2-2)。なお、2004年に国家備蓄事業を国直轄化し、国家備蓄石油と国家備蓄基地施設を保有する国が、それらの管理をJOGMECに委託し、基地の具体的な操業は、JOGMECが一般競争入札により、民間の操業サービス会社に委託しています。

【第322-2-2】日本の石油備蓄の整備拡大と石油備蓄日数の推移

【第322-2-2】日本の石油備蓄の整備拡大と石油備蓄日数の推移

(注)
石油備蓄量は年度末実績。民間備蓄、国家備蓄とも製品換算後ベース。
(出典)
資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」(2014年5月時点)を基に作成

これまで、我が国は、湾岸戦争(1991年)、ハリケーン「カトリーナ」によるアメリカ国内の石油施設等の被害の発生(2005年)、リビア情勢等による世界的な石油供給の混乱(2011年)といった事態に際し、IEA加盟国と協調して備蓄を放出し、国際的な石油供給不足に対応してきました。緊急時に機動的に備蓄石油を放出できるよう、放出訓練の実施や国家備蓄石油の放出能力の増強等を行っています。

2012年には、東日本大震災の教訓を踏まえ、迅速に被災地等に石油製品を供給できるよう、石油備蓄法を改正しました。具体的には、海外からの石油輸入が不足する場合のみならず、国内の災害による石油の供給不足の場合にも、経済産業大臣の判断で備蓄石油を放出できることとしました。また、我が国の国家備蓄石油は、それまでほとんどが「原油」であったため、ガソリン、灯油、軽油、A重油といった石油製品を国家備蓄として積み増すこととし、その管理方法の最適化を図るため、国が直接、その管理を石油会社に委託できる環境の整備を図りました。さらに、災害時に被災地等への石油供給を石油会社が一致協力して行うことができるよう、石油会社に対して、共同で、地域ごとに、共同作業体制の構築、設備の共同利用、石油の輸送に関する協力事項等を定めた災害対応に関する計画(災害時石油供給連携計画)を予め作成し、災害時に実行するよう義務付けました。

このほか、2009年から開始した産油国共同備蓄事業(我が国の危機対応能力向上のため、国内の民間原油タンクを政府支援の下でUAEやサウジアラビアの国営石油会社に貸与し、我が国への原油供給が不足する際には、当該原油タンクの在庫を我が国向けに優先供給する)について、事業の延長合意や貸与タンクの増量など、事業の拡充を図りました。

3.LPガスの備蓄

LPガスは、我が国の最終エネルギー消費の約5%を占める国民生活に密着した重要なエネルギーですが、供給面では、供給の約81%を輸入に依存し、輸入の約83%を中東に依存するという供給構造となっているため、安定供給の確保が課題となっています。

1970年代後半、サウジアラビアのアブカイクのプラント事故による2か月にわたる輸入量の激減、第二次オイルショックへの対応等を経て、LPガスの輸入が一定の期間でも途絶または大幅に減少した場合、国民生活及び国民経済に与える影響が大きいとの認識が深まりました。

このため、国は1981年度に石油備蓄法を改正し、LPガス輸入会社に年間輸入量の50日分に相当する備蓄を義務付け、1988年度末に目標の50日備蓄を達成しました。

2013年度末時点で、我が国では約62日分の民間備蓄LPガスを保有していました。また、民間備蓄に加え、国家備蓄についても150万トンを達成することを目標として、全国5か所で備蓄基地の整備を進めて、2013年3月に2つの地下基地(倉敷・波方)が完成、同年8月末には波方基地に、米国からシェールガス由来のLPガスを積んだ第一船が入港しました。今後も着実に国家備蓄LPガスの購入・蔵置を進めていきます。2013年度末現在約27日分の国家備蓄LPガスを保有していました(第322-2-3)。

なお、現在、国家備蓄石油ガスと国家備蓄基地施設を保有する国が、それらの管理をJOGMECに委託し、JOGMECが国家備蓄基地の隣接会社に基地操業等を委託し、統合管理しています。

【第322-2-3】LPガスの国家備蓄と民間備蓄日数の推移

【第322-2-3】LPガスの国家備蓄と民間備蓄日数の推移

(出典)
資源エネルギー庁「LPガス備蓄の現況」(2014年5月時点)を基に作成