第2節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に講じたエネルギーに関する主な施策

我が国は、東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後にエネルギーに関して生じた課題について、様々な対応を行ってきました。本節では、主に2013年4月から2014年3月末までに講じたエネルギーに関する主な施策についてまとめています。

1.安定的な資源確保のための総合的な施策

(1) 資源供給国との関係強化と上流進出の促進

世界的な資源獲得競争の激化や東日本大震災以降の化石燃料の調達コスト増大等、資源をめぐる内外の厳しい情勢を踏まえ、資源の安定的かつ安価な供給確保を図っていくことがより一層重要となっています。そのため、資源外交の積極的な展開による資源国との関係強化や、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じたリスクマネー供給等を通じて、我が国企業による権益獲得を支援する等、供給源の多角化に向けた総合的な政策を推進しています。

また、2012年は貿易赤字が6.9兆円に拡大するなど、燃料調達費の引下げが急務であったことを踏まえ、2013年4月に「燃料調達コスト引下げ戦略閣僚会議」を開催し、「燃料調達コスト引下げに向けた当面のアクションプラン」を取りまとめました。具体的には、①低廉なLNG確保に対する支援強化、②国内制度改革の推進、③エネルギー選択肢増強による交渉ポジションの強化、④戦略的かつ効果的な情報発信を当面のアクションプランとして定め、各種の取り組みが進めています。

〈LNG〉

東日本大震災以降、需要が急増しているLNGについては、シェールガスの生産拡大により、天然ガスの国内価格が低下している米国から新たにLNGを輸入することは、LNGの安定的な確保と輸入価格の引下げを両立する上で極めて重要な方策の一つです。一方、米国からのLNG輸出には米国政府の許可が必要となっていることから、2013年2月の日米首脳会談の際に、安倍総理からオバマ大統領に対してLNG輸出の早期承認を要請するとともに、茂木経済産業大臣からは2013年5月、7月の米国訪問時を含め、機会ある毎に早期承認を要請するなど積極的な働きかけを行ってきました。こうした一連の資源外交の結果、2014年2月には、現時点で日本企業が関与する4件全てのLNGプロジェクトについて輸出承認を獲得することができました。米国からのLNGは、2017年以降に供給される予定であり、最終的には日本の総輸入量の約2割に相当する約1,700万トンの調達が見込まれています。米国におけるLNGプロジェクトが順調に生産開始に至るよう、政府としても引き続き、支援していきます。

また、シェールガスの生産が拡大しているカナダにおいても、日本企業が参画するLNGプロジェクトが複数検討されています。2013年9月の日加首脳会談を踏まえ、同年10月には茂木経済産業大臣がカナダを訪問し連邦政府の天然資源大臣等と会談を行い、「石油・天然ガスに関する協力声明」等に署名しました。ブリティッシュ・コロンビア州政府との間では、インフラ整備等の課題を議論する政策協議をこれまで2回開催しており、引き続き、カナダからの低廉な資源供給に向けた取組を推進していきます。

北米以外にも、ロシアやモザンビークなど総理を筆頭とする資源外交を積極的に行うことにより、資源国との関係強化を行っており、日本企業の資源開発への参画支援を通じた資源権益の確保と、供給源の多角化を進めています。また、我が国のバーゲニングパワーの強化に向けて、消費国間の連携強化に取り組んでいます。2013年9月には、「第2回LNG産消会議」を東京で開催し、閣僚級、関係企業トップを含め、世界約50か国・地域から約1000人を超える関係者が参加しました。同会議では、LNG消費国間の連携の広がりや、日本における低廉な調達に向けた様々な取組を紹介しつつ、高いLNG価格からの脱却が喫緊の課題であることを世界に情報発信しました。

なお、2014年5月、イタリアで開催されたG7エネルギー大臣会合において、緊迫するウクライナ情勢等を踏まえ、エネルギー安全保障を強化する方策について議論がなされ、共同声明が採択されました。ガス市場については、売り手の同意なしに第三者や他地域への転売を禁止する当事者間の契約条項である仕向地条項の緩和や、生産者と消費者の対話等を通じた天然ガス市場の柔軟化を促していくことの重要性が共同声明で確認されました。

第2回LNG産消会議(2013年9月)

第2回LNG産消会議(2013年9月)の様子

〈石油〉

石油については、2013年時点でも中東依存度が約8割と地域偏在性が高く、中東諸国との関係維持・強化を図るとともに、供給源を多角化する取組を着実に進めることが重要です。2013年2月に茂木経済産業大臣が、サウジアラビア王国及びアラブ首長国連邦(UAE)を訪問し、特に、我が国が自主開発油田を保有するUAEでは、2018年に期限を迎える海上油田権益の更新に向けた働きかけや、医療・教育等を含む幅広い協力について意見交換を行いました。2013年5月には安倍総理がサウジアラビア王国、UAEを訪問し、サウジアラビアでは、アブドッラー国王、サルマン皇太子との会談を行い、日本への安定的な石油供給へのコミットメントを確認するとともに、二国間協力をあらゆる分野で発展させることで一致しました。UAEのアブダビでは、ムハンマド皇太子等と会談し、日UAE間の長期にわたる石油開発協力の重要性と、今後、政治、経済、文化・人的交流等の幅広い分野での包括的パートナーシップを構築していくことで一致しました。2014年1月には、茂木経済産業大臣が再度UAEを訪問し、ムハンマド皇太子と会談した際に、日本企業が開発に参画する上部ザクム油田の15年間の権益延長に関して二国間で支持していくことで合意しました。さらに、2014年2月にはサウジアラビアのサルマン皇太子、アブダビのムハンマド皇太子が相次いで来日し、我が国との石油の共同備蓄事業の拡大等を確認するなど関係強化に向けた意見交換が行われました。

また、供給源の多角化に向けて、2013年8月には茂木経済産業大臣が、資源フロンティアとして期待されるアフリカを訪問しました。日本の経済産業大臣として、初めてタンザニアとケニアを訪問し、ケニアのルト副大統領等との会談では、現在、JOGMECとケニア国営石油会社が実施中の地質調査について共同で推進していくこと等を確認しました。さらに2013年12月には、大規模な石油の埋蔵が期待されるデンマーク王国領グリーンランド島北東海域における石油・天然ガスの探鉱鉱区の優先入札において、日本企業が参画するコンソーシアムが2つの鉱区を落札しました。我が国は、グリーンランド周辺海域での地質構造調査の段階から、欧米資源メジャーと対等に積極的に関与してきた結果、優先入札権を獲得しており、今回の優先入札に至ったものです。引き続き、フロンティア地域における地質構造調査の実施を含め、石油の供給源の多角化に向けた取組をしっかりと進めていきます。

〈石炭〉

石炭については、我が国の供給源を多角化し、安定的な石炭供給を確保するため、要人外交、政策対話等を活用しつつ、人材育成、技術協力等を通じて資源国との関係を強化しています。2013年度には、8月にモンゴル国バトバヤル経済開発大臣との会談において茂木経済産業大臣よりタバン・トルゴイ炭田の石炭取引等について言及しました。また、9月にはモンゴル国アルタンホヤグ首相との首脳会談において、安倍総理よりモンゴルにおける鉱物資源開発に関し、日本企業の参画の促進を期待し、これに対し配慮することを要請しました。

また、2014年1月、モザンビーク共和国ゲーブーザ大統領との首脳会談においては、安倍総理より我が国企業が参画する石炭等プロジェクトの円滑な進捗は両国の成長にとって重要であるとして、長期安定的な操業への協力を要請するとともに、モザンビーク自身による資源開発と活用に向けた人材育成を含む取組として「日モザンビーク天然ガス・石炭発展イニシアティブ」を表明しました。

〈鉱物資源〉

鉱物資源において、2013年6月に開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)に先立ち、資源の安定供給確保のための取組として、同年5月に日本とアフリカのwin-winな関係構築に向けた資源開発の在り方について議論するため、初めての試みとなる「日アフリカ資源大臣会合」を開催しました。本会合では、茂木経済産業大臣と南アフリカ共和国のシャバング鉱物資源大臣が共同議長となり、15か国のアフリカ資源国が参加(うち11か国からは資源担当大臣が参加)し、アフリカにおける①資源投資促進とインフラ整備、②資源産業基盤の強化、人材育成、③環境・保安面で持続可能な資源開発、④地域社会との共生の4つの基本方針について議論されるとともに、茂木経済産業大臣から、資源探鉱や開発プロジェクトに対するリスクマネー供給支援(今後5年間でJOGMECを通じて20億ドル)や資源分野での人材育成(今後5年間で1,000名)が盛り込まれた「日アフリカ資源開発促進イニシアティブ」を説明し、参加国からの賛同を得ました。同大臣会合における結果は、TICAD Vに報告され、その内容は同会議における成果である「横浜行動計画」に盛り込まれました。

また、同大臣会合に合わせ、日アフリカ間の資源開発をテーマとした国際会議である「J-SUMIT(国際資源ビジネスサミット)」を初めて開催しました。同会議では、アフリカの資源担当大臣、資源メジャー、日本企業、政府関係機関等から80の講演等に加え、日本の資源探査衛星、水インフラ、自動車、鉱山技術の展示が行われ、①「最後のフロンティア」であるアフリカを中心とした海外での資源ビジネスの可能性、②日本の技術の活用による資源ビジネスの促進という二つの観点から、日本企業とアフリカ資源国、資源メジャー等との間で情報共有とビジネスマッチングが図られ、アフリカへの持続的な開発を後押しをするための良い「出発点」となりました(参加者約2,000名)。

また、2014年2月には、磯﨑経済産業大臣政務官が南アフリカ共和国で開催されたアフリカ鉱業投資会議「マイニング・インダバ」に参加し、南アフリカ共和国を始めとする6か国の鉱物資源担当大臣等と資源・エネルギー分野におけるさらなる関係強化に向けた意見交換を実施するとともに、アフリカ支援に係る日本側の基本方針等について講演を行いました。

こうした資源外交を通じた資源供給国との関係強化と並行して、鉱物資源の安定的な確保に向けた総合的な取組として、レアメタルの短期的な供給障害に備えることを目的としたレアメタル国家備蓄、使用済製品からの有用金属の回収・リサイクルを加速化させるための技術開発、希少金属を豊富に存在する資源で代替する技術の開発や希少金属の使用量を削減するための技術開発等の取組を進めています。

日アフリカ資源大臣会合(2013年5月)

日アフリカ資源大臣会合(2013年5月)の様子

〈リスクマネー供給〉

また、資源開発事業は、探鉱リスクやカントリーリスクなど、事業リスクが高く、巨額の資金を要することに加え、我が国企業は、資源メジャーと呼ばれる海外企業等に比して、資金力に差があることから、資源権益の獲得を推進するためには、資金面での支援も必要となっています。そのため、リスクマネー供給機能の強化の一環として、2012年にJOGMEC法を改正(同年9月15日施行)し、JOGMECを通じた出資や債務保証等のリスクマネー供給支援について産業投資資金の活用が可能になりました。2013年度には、産業投資資金や補正予算を含め1,319億円の予算を措置し、JOGMECを通じた出資や債務保証等のリスクマネー供給支援を行いました。

具体的には、石油・天然ガスについては、カナダにおけるシェールガス案件や、フロンティア地域である東アフリカ案件を含む出資4件を新たに採択し、金属鉱物資源については、オセアニアにおけるニッケル及び鉄鉱石の探鉱プロジェクトに対し、資金融資を行いました。我が国企業による資源権益の獲得を支援し、供給源の多角化を進めるべく、引き続き、こうしたリスクマネー供給支援や、資源外交等に積極的に取り組んでいくこととしています。

(2) 国内資源開発の推進

我が国近海のエネルギー・鉱物資源は、国内資源に乏しい我が国にとって新たな供給源となり得る極めて重要な存在です。そのため、「海洋基本法」(2007年7月施行)及び「海洋基本計画」(2008年3月)に基づき策定した「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」(2009年3月)に従い、その開発を計画的に進めてきました。同開発計画は、2013年4月に策定された新たな「海洋基本計画」や、最近のエネルギー・鉱物資源を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、2013年12月には新たな「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」として策定されました。同計画において、鉱種毎に、新たな開発の目標と達成に至る筋道、必要となる技術開発を記すとともに、各省庁間の連携、国と民間の役割分担、さらには、横断的配慮事項として、人材育成、国際連携、海洋の環境保全、国民の理解促進に留意し、適切に進めることとしています。

メタンハイドレートに関して、主に太平洋側に確認されている砂層型メタンハイドレートについては、2013年3月に、海域において世界初となるガス生産実験を実施したところです。引き続き、長期間・安定的なガス生産に必要な技術開発や、生産コストの引下げなどが重要な課題であり、こうした課題に集中的に対応しつつ、2018年度を目途に商業化の実現に向けた技術の整備を行う予定です。また、2023年から2027年の間に、民間企業が主導する商業化プロジェクトが開始されるよう、国際情勢をにらみつつ、技術開発を実施します。主に日本海側に確認されている表層型メタンハイドレートについては、資源量把握が課題であり、2013年度から本格的な資源量調査を開始したところです。2013年度の調査では、上越沖と能登西方沖の調査海域において、表層型メタンハイドレートの存在の可能性がある構造(ガスチムニー構造)が、225か所存在し、多くは直径約200m~500m程度、大きなもので約900mの大規模構造であることが確認されました。今後、2013年度以降3年程度で年調査を集中的に実施するとともに、調査結果も踏まえつつ、有望地点では地質サンプルの取得等を行っていく予定です。

石油・天然ガスについては、我が国周辺海域の資源ポテンシャルを把握するため、三次元物理探査船「資源」を活用した基礎物理探査を毎年6,000km2実施し、2018年度までに概ね62,000km2の三次元基礎物理探査を実施します。その結果を踏まえ、有望海域を選定の上、基礎試錐を機動的に実施していきます。これらにより得られた地質データ等の成果については民間企業に引き継ぎ、探鉱活動の促進を図ります。

海底熱水鉱床については、2023年以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう、資源量評価や採鉱・揚鉱に係る機器の技術開発、環境影響評価手法の開発等を推進します。

コバルトリッチクラストについては、2013年7月、JOGMECを通じて国際海底機構から南鳥島沖公海域におけるコバルトリッチクラストの探査鉱区の承認を得るとともに、2014年1月、JOGMECと国際海底機構(ISA)との間で探査契約が締結されました。

今後、国際海底機構との探査契約に基づき、2014年から南鳥島沖鉱区の資源量評価や生産技術の確立等に取組み、2028年までに民間企業による商業化の可能性を追求します。

レアアースを含む海底堆積物については、2013年度から3年間程度で南鳥島周辺の排他的経済水域内において、分布状況の調査等を実施し、将来の資源としてのポテンシャルを総合的に評価します。

マンガン団塊については、国際海底機構と契約しているハワイ沖の探査鉱区について、引き続き、資源量の評価等を行い、他国の動向等も踏まえながら、商業化の可能性を見極めます。

【第122-1-1】新たな「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の概要

図表【第122-1-1】

2.徹底した省エネルギー社会の実現と、スマートで柔軟な消費活動の実現

(1) 省エネルギー対策

我が国は1970年代の石油危機以降、官民の努力によりエネルギー効率を約4割改善し、世界的にも大きくリードしています。例えば、石油危機を契機として1979年に制定されたエネルギーの使用の合理化に関する法律では、産業、業務、運輸の各部門の事業者に対し、毎年度、省エネルギー対策の取組状況やエネルギー消費効率の改善状況を政府に報告させることを義務付けており、省エネルギーの取組を自律的に促す枠組みを構築しています。また、業務・家庭部門においては、エネルギー消費機器を対象とするトップランナー制度が規定されており、各機器の製造事業者等に対してエネルギー消費効率の向上を促す体系を実現しています。こうした省エネルギーの取組を、部門ごとに効果的な方法によってさらに加速していくことで、より合理的なエネルギー需給構造の実現と、温室効果ガスの排出抑制を同時に進めていくことが重要です。そのため、部門ごとの省エネルギーの取組を一層加速すべく、目標となり得る指標を速やかに策定します。

また、エネルギーの使用の合理化に関する法律が改正され、2014年4月から需要サイドにおける電力需要のピーク対策に資する取組を評価する措置が講じられるようになったところであり、今後、電力需要のピークを抑制する事業者の取組を通じて、電力需要の平準化が進んでいくものと考えられます。さらに、電力消費の一層の効率化が期待される次世代パワーエレクトロニクス機器を始めとした技術革新の進展により、より効率的なエネルギー利用や、各エネルギー源の利用用途の拡大が可能となります。加えて、電力システム改革等の構造改革によって、供給量だけでなく需要量を管理することを含め、様々な主体がエネルギー需給構造に参入することで、今後、エネルギーの利用に関して多様な選択肢が需要家に対して示される環境が整っていくことになります。

多様な選択肢が提供される市場では、需要家が合理的な判断に基づいて自由に選択する消費活動を通じて、供給構造やエネルギー源の構成に変動を生じさせると考えられます。

こうした新たなエネルギー需給構造の構築を加速していくための取組を強化していくことが必要です。

(2) 各部門における省エネルギーの強化

業務・家庭部門における省エネルギーの強化

業務・家庭部門において高い省エネルギー効果が期待されるのは、建築物・住宅の省エネルギー化です。特に、熱の出入りが大きい開口部や壁等への高性能の窓や断熱材の導入は有効ですが、エネルギーを消費する機械器具を対象としたトップランナー制度においてはこれまで対象外でした。トップランナー制度は、1998年のエネルギーの使用の合理化に関する法律の改正により導入された制度で、家電や自動車等の製品を指定し、その時点で最も消費電力量や燃費水準等が優れた製品を参考に数値基準を定め、製造事業者・輸入業者に対し、販売する製品が目標年度までに当該基準を満たすことを求めるものです。

こうした省エネルギーの取組を建築物・住宅の分野でも推進すべく、住宅・ビルや他の機器等のエネルギーの消費効率の向上に資する製品を新たにトップランナー制度の対象に追加することとし、2013年、省エネ法を改正しました。これにより、建築材料がトップランナー制度の対象に加わり、今般、断熱材の基準が示されたところです。

また、エネルギー消費機器についても、引き続きトップランナー制度の対象を拡大しており、LED電球を対象に追加しています。

運輸部門における多様な省エネルギー対策の推進

運輸部門については、自動車に係るエネルギーの消費量がその大部分を占めており、その省エネルギー化が重要です。そのため、自動車単体の対策を進めるとともに、省エネルギーに資する環状道路等幹線道路ネットワークの整備や高度道路交通システム(ITS)の推進などの交通流対策等を含めた総合的取組を進めていきます。

産業部門等における省エネルギーの加速

1970年代の石油危機以降、エネルギー消費原単位を約4割改善し、既に高い省エネルギーを達成しています。近年においても、産業部門においては、こうした省エネルギーの取組を継続しているところです。このように既に高い省エネルギーを達成している産業部門において、省エネルギーをさらに進めるためには、省エネルギー効果の高い設備への更新を進める必要があります。

そのため、省エネルギー設備投資に対する支援に加え、製造プロセスの改善等を含む省エネルギー改修に対する支援など多様な施策を用意することで、企業自ら最善の省エネルギー対策を進めていく環境を整備します。

さらに、業種横断的に、大幅な省エネルギーを実現する革新的な技術の開発を促進していきます。加えて、スマートなエネルギー使用の取組を促していくため、BEMS(ビルエネルギー管理システム)などのエネルギーマネジメントシステム設備の導入を促すとともに、エネルギーマネジメントの手順を定めたISO50001の認証取得を促進し、省エネルギー対策の情報提供等を実施しています。

【第122-2-1】省エネ法の改正について

図表【第122-2-1】

(3) エネルギーマネジメント

電力需給ひっ迫を解消するためには、供給サイドの対応とともに、需要をスマートにコントロールする「エネルギーマネジメント」1の推進が重要です。これまでの日本のエネルギー政策は、需要を所与のものとして、電力会社の発電量を積み上げる議論が中心でした。一方、特に家庭・ビルのピーク需要を技術や料金体系でコントロールできれば、ピーク時の需要が抑えられ、その分半導体製造業など安定的に電気を必要とする産業に対して安定供給が図りやすくなります。また、非効率な火力発電の焚き増し等が不要となることで、中長期的には効率的な供給システムの構築につながります。経済産業省では、スマートコミュニティ4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)で、幅広い住民の参画による大規模なディマンドリスポンスの実証実験を行いました。北九州の実験(180世帯、50事業所が対象)では、一般家庭において通常料金(23円/kWh)を15円/kWh、夜間料金を6円/kWhにする代わりに、夏のピーク時間帯に、翌日の需要予測に応じて、電気料金を最大150円/kWhまで変動させる料金体系で実際に電力供給した結果、2012年度、2013年度の実証結果として、2割ものピークカットが継続的に実現可能であることを確認しました。これまでの実証実験で消費者のピーク需要を無理なく、技術やシステムでコントロールすることが可能であり、かつ、消費者にメリットがあることを実証しています。

また、効率的なエネルギーマネジメントにも資するコージェネレーションの導入促進にも取り組んでいます。具体的には、コージェネレーションの導入促進に向け、経済産業省は2012年8月に「熱電併給推進室」を設置しました。また、同年10月には、電気事業法における特定供給の許可基準を緩和し、それまでは、供給者の発電設備が需要の100%を満たすことを許可の要件としていたところ、需要の50%までは電力会社等からバックアップを受ける場合であっても許可を行うこととし、工場団地などでコージェネレーションなどの分散型電源を導入しやすい環境を整備しました。さらに、コージェネレーションの導入に必要なイニシャルコストの低減やキャッシュフロー改善のための支援を実施しています。

【第122-2-2】スマートコミュニティ4地域実証

図表【第122-2-2】

【第122-2-3】ディマンドリスポンスとは

図表【第122-2-3】

3.再生可能エネルギーの導入加速

近年、新興国を中心としたエネルギー需要の急増に伴う国際的な資源獲得競争の激化や、国内外における地球温暖化対策の強化が求められる状況の中、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源である再生可能エネルギーの果たす役割の重要性が高まってきています。

(1) 2013年度の状況

固定価格買取制度(FIT)は、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)によって発電された電気を、国が定める一定の期間にわたって、国が定める一定の価格で購入することを電気事業者に義務付ける制度であり、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(以下「再生可能エネルギー特措法」という。)に基づき2012年7月1日から開始されました。これにより、再生可能エネルギーの発電投資の費用回収の不確実性を低減させ、こうした投資を促すことで再生可能エネルギーの導入拡大の加速化を担っています。また、導入拡大が加速すれば、設備の量産化が進み、現時点では他のエネルギーに比して割高な再生可能エネルギーのコストダウンが進展することも期待されます。

本制度開始を受けて、再生可能エネルギーは順調に導入が進み、2013年度においては、2014年2月末までに、638.1万kWの設備が運転を開始しました。市場でも本制度の導入を機に、2013年度も引き続き、発電事業者が家庭の屋根を借りて太陽光発電を行う「屋根貸しモデル」のような、様々な事業プランが展開されています。また、これまで発電分野とは関わりの薄かった業種も含め、多くの事業者が再生可能エネルギー市場に参入しています。

この結果、全国各地の様々な地域で、長年遊休化していた工業団地等を活用し、太陽光パネルを設置するような例が出るなど、引き続き、かつてない発電事業への投資が行われています。

さらに、再生可能エネルギー発電事業が中長期的に投資回収を見込める事業になったことで、メガバンクによるプロジェクトファイナンスの組成や、地域金融機関や市民ファンドを巻き込んだ地域密着型の投資案件の組成など、金融面でも新たな動きが拡大しています。

一方で、固定価格買取制度では、電気事業者が再生可能エネルギー由来の電気の買取りに要した費用について、賦課金として電気料金に上乗せする形で国民の皆様に御負担いただくことになっています。2013年度においては、賦課金の単価は1kWh当たり0.35円、合計約3,500億円となっていました。これに、これまで実施してきた太陽光の余剰電力買取制度の負担(全国平均で1kWh当たり0.05円)と併せて、2013年度では1kWh当たり0.40円(全国平均)の御負担をお願いすることになりました。これは、一か月に7,000円程度の電気料金をお支払いいただいているご家庭(一か月300kWh程度の電力使用量を想定)であれば、一か月約120円の負担となります。

このほか、固定価格買取制度の認定を受けた案件のうち、着工が遅れているものについて実態把握を行うため、2012年度中に認定を受けた運転開始前の400kW以上の太陽光発電設備(4,699件)を対象に、法に基づく報告徴収を実施し、①土地の取得、賃貸等により場所が決定しているか、②設備の発注等により設備の仕様が決定しているか、等について確認しました。これを受け、場所や設備の仕様が決定していないと認められる案件については、順次、行政手続法に基づく聴聞を実施し、聴聞においても場所や設備の仕様が未決定と認められた場合は、認定を取り消すこととしました。また、認定の運用の在り方についても、総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会買取制度運用ワーキンググループにおいて議論を行い、2014年度からは、50kW以上の太陽光発電設備については、認定から場所や設備の仕様の決定までに期限を設ける等の見直しを行いました。

【第122-3-1】2013年度における再生可能エネルギー発電設備の導入状況(2月末時点)

図表【第122-3-1】

各内訳ごとに、四捨五入しているため、合計において一致しない場合があります。

(2) 調達価格等算定委員会における、2014年度調達価格の検討経過と結論

再生可能エネルギー特措法においては、経済産業大臣は毎年度、当該年度の開始前に調達価格と調達期間(以下「調達価格等」という。)を決定することとされています。また、決定に当たり、国会の同意を得た上で任命される委員から構成される調達価格等算定委員会(以下「委員会」という。)の意見を尊重することとされています(2013年度の調達価格等については、第3部第3章第1節1.(1)参照)。

2014年度の新規参入者に適用される調達価格等の議論については、2014年1月10日から委員会において開始されました。

委員会では、本制度の適用を受けて運転開始した設備から法令に基づき義務的に提出されたコストデータに基づき、全4回にわたり議論が行われました。その上で、委員会は、「平成26年度調達価格及び調達期間に関する意見」を2014年3月7日に取りまとめ、この意見を尊重する形で、以下の内容で2014年度調達価格が決定されました。

(ア)

太陽光発電については、システム費用(太陽光パネル、パワコン、架台、工事費を含む価格)が市場の拡大等に伴い下落したこと等を反映し、年度調達価格を引き下げ。具体的には、非住宅用(10kW以上)は、2013年度調達価格が36円/kWh(税抜)のところ、4円の引下げとなり、32円/kWh(税抜)に、住宅用(10kW未満)は、2013年度調達価格が38円/kWhのところ、1円の引下げとなり、37円/kWhに設定。

(イ)

洋上風力発電については、陸上風力発電と比較して、高いコスト、固有のリスクを反映し、36円/kWh(税抜)として買取価格区分を新規設定。

(ウ)

中小水力発電については、電気設備と土木設備のライフサイクルの違いから構造的に投資時期が合致しない中小水力発電設備について、既存の土木設備を活用した投資を国民負担に配慮しつつ推進する観点から、既設導水路を活用した中小水力発電の価格区分を、200kW未満は25円/kWh(税抜)、200kW以上1,000kW未満は21円/kWh(税抜)、1,000kW以上30,000kW未満は14円/kWh(税抜)として、買取価格区分を新規設定。

(エ)

上記以外については、2013年度調達価格を据え置き。

【第122-3-2】調達価格等算定委員会名簿

図表【第122-3-2】

【第122-3-3】2014年度新規参入者への調達価格・調達期間

図表【第122-3-3】

「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」に基づく証明のないものについては、建築資材廃棄物として取り扱う。

【第122-3-4】再生可能エネルギー固定価格買取制度に基づく賦課金総額と一家庭当たり負担額

図表【第122-3-4】

(注)
1)2012年度、2013年度は余剰電力買取制度の賦課金負担も含む数字。
(注)
2)2014年度は余剰電力買取制度の賦課金負担が2014年9月の検針分まで別途発生。

(3) 再生可能エネルギーの導入加速~中長期的な自立化を目指して~

再生可能エネルギーについては、2013年から3年程度、導入を最大限加速し、その後も積極的に推進していきます。そのため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発などを着実に進めます。具体的な取組として、固定価格買取制度の適正な運用を基礎としつつ、環境アセスメントの期間短縮化等の規制緩和等を今後とも推進するとともに、高い発電コスト、出力の不安定性、立地制約、使用済設備の適正処理といった課題に対応すべく、低コスト化・高効率化のための技術開発、大型蓄電池の開発・実証や送配電網の整備などの取組を積極的に進めています。また、2013年臨時国会において成立した農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平成25年法律第81号)等の積極的な活用を図り、地域の活性化に資する再生可能エネルギーの導入を推し進めています。

また、政府の司令塔機能強化、関係省庁間の連携促進の観点から、2014年4月に「再生可能エネルギー等関係閣僚会議」を設置し、政府が一丸となって再生可能エネルギーの導入の最大限加速を実現していくことを確認しています。

COLUMN

地域内送電網の整備と系統用大型蓄電池の導入による再生可能エネルギー導入拡大に向けた取組(開発実証)

風力発電は、大規模に開発した場合、そのコストが火力発電や水力発電と比べても遜色ない水準であり、今後の再生可能エネルギーの大幅な導入拡大のためには風力発電の大規模開発が必要不可欠です。

他方、風況が良く大規模な風力発電の立地が可能な場所が北海道や東北の一部に偏っており、こうした適地は人口が少なくそもそも電力需要が低いことから送電網が十分に整備されていません。

このため、大規模な風力発電の開発を進めるために、追加的な送電網整備が不可欠であり、2013年度から地域内の送電網を整備するとともに送電網を制御するに当たって必要な技術課題を検証する実証事業を開始しています。

2013年度は北海道内において開発可能性調査に着手しており、調査対象エリアにおける風力発電のポテンシャル、送電網の基本ルートや容量等について検討を進めています。また、2014年度は東北地域においても事業が開始されます。

また、我が国は、世界最先端の大型蓄電池の技術を有しており、この技術を戦略的に活かせば、太陽光発電や風力発電の出力変動を吸収することができます。電力の系統規模の大きさに応じて再生可能エネルギーの接続量が設定されていますが、大型蓄電池の活用により電力系統の調整力を確保することでさらなる受入が可能となります。

このため、電力会社の基幹系統の変電所に、世界最大級の大型蓄電池を設置・活用することで、どこまで再生可能エネルギーの導入可能量を拡大できるか徹底検証を行う実証事業を2013年度から開始しました。これは、我が国初の取組であり、系統における具体的な活用に向け、必要な技術・ノウハウの習得を目指します。

具体的には、2013年7月に補助事業者の採択を行っています。本実証事業の成果を踏まえ、大型蓄電池を系統運用の現場にいち早く実践投入し、再生可能エネルギーの導入拡大に向け最大限取り組みます。

【第122-3-5】特定風力集中設備地区での地域内送電網整備・技術実証

図表【第122-3-5】

【第122-3-6】大型蓄電池の導入

図表【第122-3-6】

【採択事業者及び事業内容】

図表

COLUMN

浮体式洋上風力発電の技術及び安全性、信頼性、経済性の確立に向けた取組(開発実証)

我が国の陸上は風力発電の適地が限られており、更なる風力発電の導入拡大を実現するべく、風況の良い洋上における発電技術の開発を行ってきています。最近では、これまで主流であった着床式の風力発電のほか浮体式の発電技術の開発が行われるようになってきました。着床式は、その構造上、水深30m程度が限界とされており、遠浅の海が少ない我が国では制約がありましたが、浮体式は水深が深い海でも設置が可能であるため今後の活用が期待されています。現在、福島県の沖合において、浮体式洋上風力発電の実証研究事業が行われています。

この事業では、我が国特有の気象・海象条件に適した安全性・信頼性・経済性の高い浮体式洋上風力発電システムを確立するとともに、漁業との共生策を見出し、世界初の浮体式洋上ウィンドファームの実現を目指しています。

2013年11月には、第1期工事として、2MWダウンウィンド型浮体式洋上風力発電設備1基と浮体式洋上サブステーションの設置が完了し、実証海域(福島県沖約20km地点)において運転が開始されました。

今後は、第2期工事として世界最大級の7MW浮体式洋上風力発電設備等2基が実証海域に設置される予定です。

なお、着床式洋上風力発電については、2013年に千葉県銚子沖(3月)及び福岡県北九州沖(6月)において実証機の運転が開始されており、データ解析・検証が行われるとともに、超大型風力発電システム技術や洋上風況観測技術の開発が行われています。

福島県沖 浮体式洋上サブステーション(左)及び2MW 浮体式洋上風力発電設備(右)

(出典)
福島洋上風力コンソーシアム

COLUMN

屋外プールで培養された藻を用いたバイオマス燃料の開発(基礎研究~応用研究)

バイオマスについては、太陽光や風力等の再生可能エネルギーにはない、液体燃料として利用できる点に着目した技術開発が行われています。

特に近年は、食料生産と競合しない新たな原料として藻類の活用が注目されており、単位面積当たりの生産性が高く、二酸化炭素固定への寄与率が高いことから、将来的に工業生産されることが期待されています。

従来は、油分を大量に含む藻は研究室でのビーカー等の一定環境での培養しか実現していませんでしたが、神奈川県横浜市にあるIHI横浜事業所では、これまでの研究によって屋外プールで安定的に大量の藻を培養することに成功しています。

今後は、より少ないエネルギーと低廉なコストでの藻類由来燃料の大規模生産を行う実現することを目指し、太陽光のみでの大規模培養技術等が確立されることが必要です。

屋外培養プール

藻油の精製前(左)と精製後(右)

木質系バイオマス原料を用いたバイオマス燃料の開発(応用研究~開発実証)

また、木質系バイオマスを原料としたBTL(Biomass To Liquid)の技術開発も行われています。例えば、三菱重工業では富山大学と共同で、木質系バイオマス用に最適化されたガス化炉を開発するとともに、ジェット燃料合成に最も適した触媒について研究することにより、これまで国内で取り組まれていなかった実用化に向けた低コストなバイオジェット燃料の製造プロセスの構築の実現に向けて取り組んでいます。

BTL燃料製造装置

COLUMN

自治体や民間企業等の地域の各主体によるバイオディーゼル導入の取組 (開発実証~普及性能向上)

バイオディーゼルは、廃油やナタネなどの幅広い原料から製造が可能で、今後、地域における循環型エネルギーとして、利用の促進が期待されています。

このため、国は、バイオディーゼルの一体的・先進的な流通システムの技術的な課題に取り組む地域や事業者に対して支援を行っています。

北海道帯広市では、地域循環エネルギーとして広くバイオディーゼルの普及拡大を目指して市や民間企業等からなる「とかちバイオディーゼル燃料普及促進協議会」を発足し、帯広地方石油販売協同組合とも連携して、バイオディーゼル製造に関連する事業の強化と、原料(廃油)や製品(バイオディーゼル)の流通インフラの整備や流通経路を確保する取組を行っています。この取組は、バイオディーゼル混合軽油(B5軽油)の流通量目標として、2012年実績約800kLから、2015年までに5,000kL、2020年までにとかち地域の軽油消費量の20%となる20,000kLと段階的な目標を定め、これまでに、廃油等を回収する大型回収車両を導入することで原料収集コストの削減と運搬効率が大きく向上しています。また、市による町内会での度重なる説明会や学校訪問での子供達へのPR等による意識醸成、市が中心となって事業者間調整を行うことで、市内広域でスーパーやガソリンスタンド等に廃油の小口回収拠点の分散設置が実現し、住民参加・協力により、従来回収できなかった地域における廃油回収量が増加する等の効果を上げています。

今後は、こうした取組への支援を引き続き行うとともに、普及に向けて解決すべき課題の抽出・整理を行うことで更なるバイオディーゼルの製造・供給・流通の促進及び安定化を図っていきます。

原料(廃油)回収拠点(57か所)

バイオディーゼル(B5軽油)専用給油設備(市内1か所)

COLUMN

蓄電池の寿命劣化の原因究明や大容量化等に向けた取組(基礎研究)

現在、スマートフォンやタブレット、電気自動車等に用いられているリチウムイオン電池は耐久性や蓄電容量など性能限界があるため、今後の電気自動車の高性能化や再生可能エネルギー発電の導入拡大のために活用するには課題があります。このため、従来技術の延長線上にない新しい蓄電池技術による耐久性や蓄電容量等に優れた「革新型蓄電池」の実現が期待されています。

この革新型蓄電池の実現に向けて、現在、蓄電池の基礎的な反応原理の解明に取り組んでいます。具体的には、充放電中に蓄電池の内部で起きる電気化学反応の観察を行うため、世界最高性能の放射光施設である『SPring-8』と大強度陽子加速器施設である『J-PARC』において実験を行っています。その結果、リチウムイオン電池の充放電中に起こる基礎的な反応原理である電極材料の結晶構造変化の観察に世界で初めて成功しました。今後、これらの知見を生かし、2030年に向けて革新型蓄電池の実現を目指します。

蓄電池内部で起こる反応を調べるための世界最高性能の設備であり、世界で初めて電極材料の結晶構造変化の観察に成功しています。

SPring-8(放射光ビームライン)

J-PARC(中性子ビームライン)

COLUMN

「福島再生可能エネルギー研究所」について

2014年4月1日に福島県郡山市に開所した独立行政法人産業技術総合研究所の「福島再生可能エネルギー研究所」は、産業界、大学、地域等との幅広い連携を通じて、再生可能エネルギーに関する世界最先端の研究開発・実証研究を行う研究開発拠点です。

本研究所で創出される研究成果を通じて被災地域における新産業の育成や雇用創出等に貢献していきます。

研究本館

実験別棟

実証フィールド

太陽光

太陽光発電については、発電コストや安定供給等の面から、更なる技術開発が必要です。「福島再生可能エネルギー研究所」では、高効率・低コスト・高信頼性・軽量結晶シリコン太陽電池モジュールの開発や、福島大学や独立行政法人科学技術振興機構と連携した、極薄太陽電池や量子効果(ナノワイヤー)太陽電池の開発を行います。

産業技術総合研究所で試作した厚さ100μmのセル

(出典)
産業技術総合研究所

風力

経済効率性、環境調和性を踏まえた風力発電の導入拡大のため、高度な風況予測技術、騒音低減技術の開発及びそれらを利用した風車運転技術の開発により、発電電力量の向上と使用年数の向上を目指します。

風車騒音計測システム

(出典)
産業技術総合研究所

地熱

独立行政法人産業技術総合研究所が強みを有する地質計測・探査技術を駆使して、地熱の高度モニタリング技術を活用した地熱発電の開発コスト削減、地熱貯留層の適切な開発・管理を通じた環境調和型の地熱発電実現のための研究開発を行います。

開発した弾性波解析ソフトウェア(左)と地熱フィールドでの弾性波モニタリング(右)

(出典)
産業技術総合研究所

4.原子力政策の再構築

原子力発電は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源です。このため、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させる前提の下、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進めることとしています。

我が国では、原子力の安全確保のために必要な技術・人材の維持・発展、原子力利用に伴い発生する使用済燃料問題への対応と核燃料サイクルの推進、原子力に関する国民への丁寧な広聴・広報や原子力関係施設の立地自治体との信頼関係の構築、原子力利用における国際的協力等に取り組んでいます。2013年度は総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会の下に「放射性廃棄物ワーキンググループ」、「地層処分技術ワーキンググループ」、「原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ」を設置し、最終処分に向けた取組の見直しや、原子力産業界の自主的かつ継続的な安全性向上について検討しました。

※原子力政策の再構築の、その他の項目については本章第1節を参照。

(1) 高レベル放射性廃棄物の最終処分

放射性廃棄物ワーキンググループ及び地層処分技術ワーキンググループの設置

東京電力福島第一原子力発電所事故は、我が国における高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題に対する国民の関心を飛躍的に高めました。特に、原子力政策上の重要な課題としての認識が改めて深まり、地層処分の技術的・社会的信頼性に対する懸念や立地選定を進める上での合意形成の改善等の必要性が高まっています。

高レベル放射性廃棄物の処分については、2000年に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき、処分事業の実施主体として設立された原子力発電環境整備機構(NUMO)が、2002年より全国の市町村を対象に最終処分場の設置に向けた文献調査の公募を開始しましたが、現在に至るまで文献調査を実施するに至っていない状況でしたが、原子力委員会からの検討依頼を受けた日本学術会議が、東京電力福島第一原子力発電所事故後の2012年9月に「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組について(回答)」をとりまとめ、原子力委員会に対し回答しました。同回答においては、原子力政策についての社会的合意を得た上で最終処分地選定に向けた合意形成に取り組むべきであり、そのために最終処分政策を抜本的に見直すべきとした上で、以下を提言しました。

  • 地層処分の安全性につい専門家間の十分な合意がないため、自立性・独立性のある科学者集団による専門的な審議を尽くすべき。
  • そのための審議の期間を確保するとともに、科学的により優れた対処方策を取り入れることを可能とするよう、今後、数十年から数百年の間、廃棄物を暫定的に保管(暫定保管)すべき。
  • 高レベル放射性廃棄物が無制限に増大することを防ぐために、その発生総量の上限を予め決定すべき(総量管理)。
  • 科学的な知見の反映の優先等立地選定手続きの改善、多様なステークホルダーが参画する多段階合意形成の手続き等を行うべき。

    これを受け、原子力委員会では、2012年12月に、「今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組について(見解)」を取りまとめ、今後の政府が取り組むべき方向性を提示しました。同見解において、原子力委員会は、最終処分方法として地層処分は妥当な選択とした上で、以下を提言しました。

  • 地層処分の安全性について、独立した第三者組織の助言や評価を踏まえつつ、最新の科学的知見に基づき、定期的に確認すべき。
  • 最新の科学技術的知見に基づき、処分計画を柔軟に修正・変更することを可能にする可逆性・回収可能性を考慮した段階的アプローチについて、その改良改善を図っていくべき。
  • 原子力・核燃料サイクル政策に応じた放射性廃棄物の種類や処分場規模について、選択肢を示し、それらの得失について説明していくべき。
  • 立地自治体を始めとするステークホルダーと実施主体が協働する仕組みの整備など、国が前面に出る姿勢を明らかにするべき。

こうした日本学術会議や原子力委員会の提言も参考にしつつ、これまでの最終処分に向けた取組を抜本的に見直すため、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会の下に「放射性廃棄物ワーキンググループ」及び「地層処分技術ワーキンググループ」が設置されました。

放射性廃棄物ワーキンググループ

放射能廃棄物ワーキンググループにおいては、上記提言などを踏まえた高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた現世代の取組の在り方や処分地選定に向けた取組の改善策等について、2013年5月より、計13回にわたり多様な意見・専門性を有する有識者による審議が実施され、その間随時、国民の皆様からの意見を頂くとともに、パブリックコメントを経て、2014年5月に報告書の取りまとめが行われました。

この中では、将来世代の負担を最大限軽減するため、現世代の責任として、現時点の最良の技術を適用し長期的な人の手による管理に依らない最終処分を目指すべきであること。そして、現時点で最も有望である地層処分を前提に取組を進めつつ、一定期間廃棄物を取り出し可能な状態で維持し、今後の技術進展等を踏まえ将来世代が最良の処分方法を再選択できるようにする「可逆性・回収可能性」を担保することが有力な対処方策であるとされました。具体的には、今後の研究開発や処分地選定を進める中で明らかになる知見を活用し地層処分の技術的信頼性を定期的に評価するとともに、代替処分方法等の研究開発を並行的に進めていくことで、最終処分に対する社会的合意形成を段階的に進めていくことが重要とされました。また、その際、最終処分の問題が原子力利用における避けて通れない課題の1つであることを認識し、原子力政策の在り方と合わせて理解を得ていく必要性が示されました。

さらに、最終処分事業の進展に向け、国が前面に立って取り組む必要性が示され、広く全国を対象とした調査地域の公募では調査受入れの科学的妥当性の説明が困難であることから、国が科学的により適性が高いと考えられる地域(科学的有望地)を示す等を通じ、地域の地質環境特性を科学的見地から説明し、立地への理解を求めていくことや、受入れ地域の持続的発展に資する支援策を国と自治体が協力して検討していくことが必要とされました。さらに、国民・地域の信頼を得る上で、調査受入れを検討する自治体において多様な立場の住民が参画する地域の合意形成の仕組みや“行司役”的視点に立った第三者評価・説明が必要とされました。

これに合わせて、2013年12月には、最終処分の問題について国が前面に立って解決するべく、政府としての新たな取組方針を検討し、関係行政機関の緊密な連携の下、これを総合的かつ積極的に推進するため、内閣総理大臣の指示を受け、最終処分関係閣僚会議が設置・開催されました。同会議においても、①地層処分を前提に取組を進めつつ、将来世代が最良の処分方法を再選択できるよう可逆性・回収可能性を確保し、廃棄物の減容化・有害度の低減や直接処分も含めた代替処分方法の調査・研究を推進することや、②地域の理解の下、国が科学的により適性の高い地域を提示していくこと等の基本的な方向性が示されています。

【第122-4-1】高レベル放射性廃棄物の地層処分の概要

図表【第122-4-1】

地層処分技術ワーキンググループ

地層処分技術ワーキンググループにおいては、2000年以降研究開発が進展してきた地層処分の技術的信頼性について最新の科学的知見を用いて改めて確認・再評価等を行いました。特に、東京電力福島第一原子力発電所事故による地層処分に対する国民の懸念を払拭する観点から、関連学会からの推薦等による専門家の参画の下、中立・公正で自律的な検討が深められるよう運営がなされました。審議は2013年10月から計8回開催され、パブリックコメントを経て、2014年5月に報告書の取りまとめが行われました。

この中では、地層処分を行う場として、①ガラス固化体の溶解や緩衝材の変質を抑制する観点から地温が低いこと、②漏出した放射性物質の移動を抑制する観点から地下水の流れが緩慢であること、③金属容器の腐食、放射性物質の地下水への溶解を抑制する観点から酸化性の環境ではないこと等が好ましい地質環境特性として整理されるとともに、各々の好ましい特性を有する地質環境が我が国に十分存在すると考えられると評価されました。

また、これらの好ましい地質環境特性に著しい影響を及ぼすと考えられる火山活動、隆起・侵食、断層活動などの天然事象が整理され、これらの天然事象の偏在性やプレート運動の継続性を踏まえれば、段階的な処分地選定調査により、将来十万年程度の期間、好ましい地質環境が大きく変化する可能性が低い地域を選定できる見通しが得られたと評価されました。これにより、我が国における地層処分の技術的実現可能性があらためて確認されるとともに、技術的信頼性の向上に向けた今後の研究課題もあわせて提示されました。

今後は、この2つのワーキンググループ報告や最終処分関係閣僚会議での検討を踏まえ、東京電力福島第一原子力発電所の事故を機に国民の懸念が高まっている高レベル放射性廃棄物の処分事業の進展に向けて、国が前面に立って取組を促進していくこととしています。

【第122-4-2】地層処分の安全確保の考え方

図表【第122-4-2】

「地層処分の技術的信頼性」【第2次とりまとめ】(1999年 核燃料サイクル開発機構)を基に作成。

(2) 原子力の自主的安全性向上

原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループの設置

東京電力福島第一原子力発電所事故は、我が国の原子力平和利用におけるリスクガバナンスの在り方に大きな疑問を投げかけることとなりました。原子力安全については、2012年、原子力規制委員会が設置され、安全の確保を最優先に世界において最も厳しい水準の規制を追求することとされています。他方、当然、規制水準を満たすこと自体が安全を保証するものではありません。原子力事業者が規制水準を満たすだけの対応に終始することは、安全に対する原子力事業者の慢心を呼び、新たな「安全神話」に陥ることに繋がります。

原子力の安全性については、国際原子力機関(IAEA)安全基本原則の第一の原則として掲げられているとおり、一義的には原子力事業者が責任を負っています。このため、原子力事業者が自主的かつ継続的に安全性を向上させていく意思と力を備えることが必要であり、また、これを備えた存在として認識されなければ、国民の原子力事業への信頼も回復しません。東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国は、規制水準さえ満たせば原発のリスクがないとする「安全神話」と決別し、産業界の自主的かつ継続的な安全性向上により、世界最高水準の安全性を不断に追求していくという新たな高みを目指すことが求められています。

こうした問題意識の下、原子力の自主的かつ継続的な安全性向上について議論するため、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会の下に「原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ」が設置されました。本ワーキンググループにおいては、大学、研究機関等を中心とする有識者を委員とし、原子力事業者、メーカー、産業界団体などからの代表をオブザーバーとして、2013年7月17日から2014年3月25日まで12回にわたる活発な議論が行われました。原子力の自主的安全性向上については、積極的に海外に学ぶことが重要であるとの観点から、本ワーキンググループでは、海外有識者をオブザーバーやプレゼンターとして迎えるとともに、同時通訳と資料の英訳等により多様な議論参加の慫慂と情報発信を行ってきました。

(プレゼンテーションを実施した海外有識者:Rick Grantom(C.R.Grantom P.E. & Assoc.LLC)、Tony R. Pietrangelo(Nuclear Energy Institute SVP & CNO)、Neil M. Wilmshurst(Electric Power Research Institute VP & CNO)、Roger Spinnato(Institute of Nuclear Power Operations Director Internasional Division)

ワーキンググループの提言

原子力の自主的な安全性向上に向けた取組は、政府も含めた原子力事業に関わる者の自発的な行動により具体化され、実践されていくべきものです。本ワーキンググループでは、これらの主体の自主的かつ継続的な行動を期待しつつ、今後必要とされる取組の在り方と然るべきロードマップの骨格について提言案を提示し、広く国民の皆様から御意見を頂くべくパブリックコメントに付しました。

ワーキンググループの提言案では、自主的かつ継続的な安全性向上の取組を実現していくためには、まず、「①適切なリスクガバナンスの枠組みの下でのリスクマネジメントの実践」の重要性が述べられています。社会に甚大な被害を与え得る原子力事業は、原子力のリスクと向き合い、経営トップのコミットメントの下で、質の高いリスクマネジメントを行うことが事業を継続する大前提です。このため、原子力事業者は、立地地域の住民等の多様な外部ステークホルダーの関与や世界の新知見の取り込みを通じて、原子力のリスクに関する問題枠組みを設定し、リスク管理目標の下で適切なリスク評価とリスク判断を行い、必要な安全対策を実施する、という常に安全性向上の更なる高みを目指す「リスクガバナンス枠組み」を構築し、その枠組みの下で各原子力事業者が適切なリスクマネジメントを実施することが求められます。

また、提言案では、リスクマネジメントを実践していく中、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を出発点に実践が求められる取組として、「①低頻度の事象を見逃さない網羅的なリスク評価の実施」、「②深層防護の充実を通じた残余のリスクの低減」、「③外部事象に着目した事故シークエンス及びクリフエッジの特定と、レジリエンスの向上」、「④軽水炉の安全性向上研究の再構築とコーディネーション機能の強化」の必要性が示されました。

まず、自主的かつ継続的な安全性向上の取組を実現していくためには、各原子力事業者の経営トップのコミットメントの下で、リスク分析、リスク評価、必要な対応策の実施、コミュニケーション等の内容・手順まで考慮した質の高いリスクマネジメントが行われることの重要性が確認されました。社会に甚大な被害を与え得る原子力事業において、事故リスクの把握と必要な対応策の実施は経営のトップイシューでなければならず、これを実現するリスクマネジメントの確立は原子力事業の大前提となるべきであると、提言案にまとめています。

特に、事故に繋がる事象の網羅的な評価、脆弱点抽出、対策の効果の定量化などの効果を持つ確率論的リスク評価(PRA)は、効果的なリスクマネジメントを実施する上での出発点となる重要なツールであり、諸外国では積極的に活用されています。他方、我が国においては、PRAは、とりわけ外的事象に関してこれまで必ずしも積極的に活用されてこなかった状況にあります。東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓としても得られていますが、可能性は低いものの、仮に事態が進展すると社会に甚大な影響を与えてしまう事象に対する緊急時対応能力を向上させるために、PRAを通じた網羅的なリスク評価は、不可欠かつ優先して整備すべきリスクマネジメント・ツールと考えられています。

原子力事業者の自主的安全性向上の取組は、各原子力事業者のコミットメントに基づくものでなければなりません。加えて、海外の事例を参考にしつつ、こうした取組を根付かせるための原子力分野全体としての仕組みを構築していくことも必要であると提言案にまとめています。本提言に基づき、原子力に関わる各主体が自主的かつ継続的な安全性向上に取り組んで追求していく中で、「東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験と教訓を活かし世界の原子力安全の向上を主導する立場を獲得する」という目標が共有され、自律的な安全性向上を実現する枠組みが確立することが期待されています。

【第122-4-3】米国産業界による自主的かつ継続的な安全性向上に向けた仕組み

図表【第122-4-3】

その他、規制当局、産業界を含めた原子力業界は、学会や規制情報会議(RIC)等のオープンな場で、規制、被規制の立場を超えて、専門家としての議論を行っている。

5.化石燃料の効率的・安定的な利用のための環境の整備

省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入拡大とともに、エネルギーセキュリティの向上やエネルギーコスト削減の観点から、高効率火力発電の活用も重要な課題です。そのため、高効率火力発電(石炭・LNG)について、環境に配慮しつつ導入を進めるとともに、技術開発を進めて発電効率の更なる向上を目指しています。

(1) 世界最高水準の発電効率の更なる向上

先進超々臨界圧火力発電技術(A-USC)や、石炭ガス化複合発電(IGCC)及び石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)、高効率ガスタービン実用化技術開発のための実証に取り組みました。

(2) 電源の新増設・リプレースの原則入札・火力電源入札ワーキンググループ

経済産業省では、「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」において取りまとめられた報告書に基づき、一般電気事業者による電源調達に競争原理を導入し、卸供給事業者(IPP事業者)を始めとする新規参入者による卸供給を拡大することによって、電力の安定供給と電気料金の一層の適正な原価の形成を促すことを目的とした、「新しい火力電源入札の運用に係る指針」(以下「火力電源入札GL」という。)を取りまとめ、2012年9月18日に公表しました。これに基づき、一般電気事業者が1,000kW以上の火力電源を自社で新増設・リプレースしようとする場合は原則入札とし、効率性・透明性を高めます。

火力電源入札GLを踏まえ、2012年11月に総合資源エネルギー調査会総合部会電気料金審査専門委員会の下に「火力電源入札ワーキンググループ」を設置しました。2013年度は4回にわたり審議を行い、東京電力株式会社の火力入札案件に関し、落札者決定のための評価報告書案を了承するとともに、同社が福島県に石炭ガス化複合発電(IGCC)を建設するに当たり、本発電所の建設が火力電源入札GLに記載されている火力入札の対象外とするケースに該当することを了承しました。また、審議の過程において、発電事業者が保有する電源の余力活用を行う場合に入札実施会社が発電事業者に支払うべき料金の割り戻しを求めることは適当ではないとの意見が出され、2013年5月に火力電源入札GLを改訂しました。さらに、入札実施会社が自社応札しない場合に事前に上限価格を公表するか否かを入札実施会社が選択できるようにすべきとの意見が出され、2014年2月に電気事業法施行規則の改正及び火力電源入札GLの改訂を行いました。

(3) 環境アセスメントの迅速化・明確化

経済的・安定的な電力の供給を確保するとともに、環境負荷をより低減していくためには、新増設やリプレースによって最新鋭の高効率な火力発電所を導入することにより、老朽火力の代替や供給力の強化を進めて行くことが重要です。このため、従来3年程度かかる環境アセスメントの手続期間を、リプレースの場合には1年強程度まで短縮し、新増設についても短縮に取り組むという方針に基づいて、適切かつ迅速に火力発電所の環境アセスメントの審査に取り組みました。

また、電力業界全体でCO2排出量を管理・抑制する枠組の構築を促すことや、環境アセスメント手続において事業者が利用可能な最良の技術(Best Available Technology:BAT)を採用しているか、国の目標・計画との整合性を持っているかについて、必要かつ合理的な範囲で国が審査するという方針を明確化しました。

6.供給構造改革の推進

(1) 電力システム改革

電力システム改革小委員会 制度設計ワーキンググループ

2013年2月の総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会報告書、同年4月に閣議決定された電力システムに関する改革方針、同年11月に成立した電気事業法の一部を改正する法律(平成25年法律第74号)等において、遅くとも2020年までに実現すべき電力システム改革の工程、手順の基本的な方向性が示されました。これを受け、電力システム改革を着実に進めていく上での実務的な課題への対応も含めた具体的な制度設計に関する検討・審議を行うため、2013年7月に、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力システム改革小委員会の下に制度設計ワーキンググループを設置し、5回にわたる精力的な議論を行いました。

【第122-6-1】電力システム改革小委員会 制度設計ワーキンググループ 各開催回の議題

図表【第122-6-1】

電気事業法の一部を改正する法律(第1段階)の成立

電力システムに関する改革方針(2013年4月閣議決定)を受け、改革の第1段階である広域的運営推進機関の創設や、電力システム改革の段階的実施に関するプログラム規定の整備を行うため、電気事業法の一部を改正する法律案の検討を行いました。同法案は、2013年4月12日の閣議決定後、第183回通常国会に提出され、衆議院において可決されたものの、参議院においては採決に至らず、廃案となりました。その後、2013年10月15日に再度閣議決定を行い、第185回臨時国会に再提出され、2013年11月13日に成立しました。

〈第1段階の法律改正の内容〉

①広域的運営の推進

電力需給のひっ迫時に区域(エリア)を越えて広域的な電力融通の指示等を行う「広域的運営推進機関」を創設する。

経済産業大臣による供給命令の発動要件を災害等非常時以外にも拡充するとともに、卸供給事業者に対する供給命令制度等を新たに整備する。

②自己託送制度の見直し

自家発設置者が、別の場所にある自社の工場等に電気を供給する場合に、一般電気事業者に対してその送配電網を利用させる義務を課す。

③電気の使用制限命令に係る制度の見直し

「罰則付きの命令」のみが規定されている電気の使用制限措置について、より緩やかな措置として、経済産業大臣による勧告制度を創設する。

④電力システム改革の段階的な実施に関するプログラム規定の整備(附則)

電力システムに関する改革方針を踏まえ、電力システム改革の第2段階と第3段階について、法案提出時期と実施時期を規定する。さらに、資金調達に支障を生じないようにするための措置、安定供給確保の方策等についての留意事項等を規定する。

電気事業法等の一部を改正する法律案(第2段階)の閣議決定・通常国会への提出

電力システムに関する改革方針(2013年4月閣議決定)や、電気事業法の一部を改正する法律(平成25年法律第74号)の附則に定めた改革スケジュールに基づき、改革の第2段階である「電気の小売業への参入の全面自由化」を実施するために必要な措置等を定めた電気事業法等の一部を改正する法律案の検討を行いました。同法案は、2014年2月28日に閣議決定がなされ、通常国会に提出されました。

〈第2段階の法律改正案の内容〉

1.電気事業法の一部改正

①小売参入の全面自由化の実施

○現在、一般電気事業者にしか認められていない家庭等への電気の供給を自由化する(小売参入の全面自由化)

○自由化に伴い、電気事業の類型を見直し、発電(届出)・送配電(許可)・小売(登録)の事業区分に応じた規制体系へ移行する

②電気の安定供給を確保するための措置

○一般送配電事業者(一般電気事業者の送配電部門)に対して、需給バランス維持、送配電網の建設・保守、最終保障サービス(需要家が誰からも電気の供給を受けられなくなることのないよう、セーフティネットとして最終的な電気の供給)、離島のユニバーサルサービス(離島の需要家に対する、他の地域と遜色ない料金水準での電気の供給(需要家全体の負担により費用を平準化))を義務付けるとともに、これらを着実に実施できるよう、地域独占と総括原価方式の託送料金規制(認可制)を措置する

○小売電気事業者に対して、需要を賄うために必要な供給力を確保することを義務付ける

○広域的運営推進機関に対して、将来的な供給力不足が見込まれる場合に備えたセーフティネットとして、広域的運営推進機関が発電所の建設者を公募する仕組みを創設する

③需要家保護を図るための措置

○現在の一般電気事業者に対し、一定期間、経過措置として料金規制を継続する

○小売電気事業者に対し、需要家保護のための規制(契約条件の説明義務等)を課す

④その他

○現在の一般電気事業者が、引き続き一般担保付社債を発行できるようにする(改革の第3段階での法的分離の実施に際して改めて検討を行い、必要な措置を講じる)

○電気の卸売に係る規制の撤廃、卸電力取引所における取引の適正性確保(取引所の法定化)、保安規制の合理化を行う

2.電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の一部改正

○電気事業法の事業類型の見直しに伴い、再生可能エネルギー電気の買取義務者を一般電気事業者等から小売電気事業者等に変更する

3.商品先物取引法の一部改正

○電力先物取引を可能にするため、商品先物取引法における先物取引の対象に「電力」を追加する

【第122-6-2】電力システム改革の工程と電気事業法改正スケジュール

図表【第122-6-2】

(2) ガスシステム改革

電力システム改革とあいまって、ガスが低廉・安全かつ安定的に供給され、消費者に新たなサービスなど多様な選択肢が示されるガスシステムの構築のため、2013年11月に、総合エネルギー調査会基本政策分科会の下に「ガスシステム改革小委員会」が設置されました。

同小委員会は、2014年3月までに6回開催され、小売りの自由化範囲の拡大、供給インフラのアクセス向上と整備促進等の論点について、ガス事業者から意見聴取を行いました。

【第122-6-3】ガスシステム改革小委員会 各開催回の議題

図表【第122-6-3】

7.国内エネルギー供給網の強靱化

(1) 石油・LPガスの災害対応能力強化に向けた取組

2011年3月に発生した東日本大震災においては、地震や津波等により、東北・関東地方にある製油所やサービスステーション(SS)を始めとする多くの石油供給拠点が被災したため、被災地等への石油製品やLPガスの安定供給に大きな支障を来しました。この教訓を踏まえ、大規模災害が発生した場合においても、その被害を最小化し、石油・LPガスの供給を早期に回復させることを目的としたハード・ソフト両面の対策に取り組みました。

ハード面の強化に関する取組としては、石油供給拠点の災害対応能力強化に対する支援や、国家石油製品備蓄の増強を行いました。具体的には、製油所等における非常用発電機等の導入や石油製品の入出荷設備の耐震強化・津波対策、タンクローリーの出荷設備、桟橋などの入出荷設備の増強に対する支援、SSにおける、地下タンクの入換え・大型化や自家発電機の設置等への支援、災害時に緊急車両への優先給油を行う中核SSにおける製品在庫の確保について、国と自治体の連携による支援を行いました。LPガスについては、輸入基地や二次基地への移動式電源車の配備、災害時に地域のLPガス供給を図るための中核充填所の整備や、避難所となり得る需要家への燃料備蓄の支援等を実施しました。

また、2012年度より拡充を進めていた国家石油製品備蓄については、ガソリン、灯油、軽油、A重油の備蓄を国内消費量の約4日分にまで増強しました。

ソフト面の取組としては、「石油備蓄法」に基づいて石油会社が策定した「災害時石油供給連携計画」の訓練を2013年6月に内閣府や石油業界、和歌山県と共同で実施するとともに、石油会社に対して、製油所からSSに至る系列供給網全体のBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)を策定するよう要請しました。

2014年度以降も引き続き、石油・LPガスのサプライチェーンの災害対応能力強化や、災害時石油供給連携計画に基づく訓練に取り組むとともに、災害時の協力体制等について、石油業界・関係省庁と検討していくこととしています。

(2) 東西の周波数変換設備や地域間連系線の強化

2011年3月に発生した東日本大震災により、大規模電源が被災する中、東西の周波数変換設備や地域間連系線の容量に制約があり、また、広域的な系統運用が十分にできなかったことなどから、不足する電力供給を手当てすることができず、国民生活に大きな影響を与えました。

このようなことを踏まえ、総合資源エネルギー調査会電力システム改革専門委員会が2013年2月に取りまとめた報告書においては、①東西の周波数変換設備については、まずは2020年度を目標に、現在の120万kWから210万kWまで増強し、それ以降できるだけ早期に300万kWまで増強すること、②北本連系設備については、現在の60万kWから90万kWまでの増強を早期に実現することが提言されました。現在、これらの実現に向けて、検討・準備を進めているところです。

また、今後は、2013年11月に成立した改正電気事業法に基づき創設予定の広域的運営推進機関が中心となって、東西の周波数変換設備や地域間連系線等の送電インフラの増強を進めることとしています。

8.その他

(1) 電気料金制度の見直し等

電気料金制度をめぐる動き

東日本大震災発生以降、電力需給のひっ迫や原子力損害賠償、燃料コスト増による電力コスト上昇懸念など、電気事業を取り巻く状況は大きく変化しました。こうした中、経済産業省においては、「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」を2011年11月に開催し、広範な論点について現行制度下において実施すべきものを中心に検討を行い、報告書(2012年3月)をまとめました。同報告書を踏まえ、「一般電気事業供給約款料金審査要領(以下「審査要領」という。)」を2012年3月に改正するなどの措置を講じました。

また、経済産業省においては、東京電力からの電気料金値上げ申請が行われるに当たり、電気料金認可プロセスに外部専門家の知見を取り入れ、専門的かつ中立的・客観的な観点から料金査定方針等の検討を行うために、「総合資源エネルギー調査会総合部会電気料金審査専門委員会」(以下「委員会」という。)を設置しました(委員長:安念潤司 中央大学法科大学院教授、委員長代理:山内弘隆 一橋大学大学院商学研究科 教授)。(2013年7月1日の審議会の見直しに伴い、委員会名が「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電気料金審査専門小委員会」に変更されましたが、委員長、委員の構成に変更はなく、引き続き料金審査が行われました。※以下、「電気料金審査専門委員会」「電気料金審査専門小委員会」をあわせて「委員会」としますが、委員会の具体的な回を特定する必要がある場合には、前者を「第○回委員会」、後者を「第○回小委員会」と略称する。)

以降、委員会は、東京電力、関西電力、九州電力、東北電力、四国電力、北海道電力及び中部電力の電気料金値上げに係る認可申請について、査定方針案を中立的・客観的かつ専門的な見地から検討しました。

審査に当たっては、審議の透明性を高める観点から、委員会の審議は、議事内容、配付資料を含め全て公開形式で開催しました。加えて、オブザーバー(消費者団体、中小企業団体、消費者庁)の参加を得て、活発に御議論を頂くとともに、自治体、消費者団体、中小企業団体関係者を招き、意見を聴取しました。

なお、委員会は、電気事業法及び同法に基づく規則、審査要領、「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議報告書」等の予め定められたルールに則って、査定方針案を中立的・客観的かつ専門的な見地から検討しました。

東北電力株式会社、四国電力株式会社及び北海道電力株式会社の電気料金値上げに係る認可申請について

2013年2月14日付で東北電力及び20日付で四国電力、4月24日付で北海道電力から、電気事業法第19条第1項の規定に基づき、電気料金を規制部門でそれぞれ平均11.41%(東北電力)、10.94%(四国電力)、10.20%(北海道電力)引き上げること等を内容とする料金変更認可申請が提出されました。同年3月5日から7月24日まで、東北電力及び四国電力から経済産業省に提出された料金変更認可申請について、委員会を10回開催し審議しました。また、同年4月25日から7月26日まで、北海道電力から経済産業省に提出された料金変更認可申請についても審議を行い、委員会を8回開催しました。同年5月9日には東北電力の値上げに係る公聴会を仙台にて、5月14日には四国電力の値上げに係る公聴会を高松にて、6月20日には北海道電力の値上げに係る公聴会を札幌にて開催しました。

委員会で取りまとめられた査定方針案をもって経済産業省は消費者庁と協議を行い、2013年8月1日に協議が整いました。これを受け、経済産業省としての査定方針を策定し、翌2日に物価問題に関する関係閣僚会議の了承を得ました。なお、査定方針のポイントは以下のとおりです。

①火力燃料費について、原価算定期間中に価格改定されるLNGの長期契約について、2013年度、2014年度は電力会社中最も安価なもの(トップランナー価格)、2015年度は天然ガス価格リンクを一部反映した価格を原価とする。

②人件費のうち、従業員の給与水準は、一般的な企業の平均値と、類似の公益企業の水準を平均とする(東北642万円 → 596万円、四国645万円 → 615万円、北海道643万円 → 624万円)。

③資材調達における経営効率化等は、東京電力の例を勘案し、コスト削減額が原則10%に満たない場合には、未達分を原価からカットし、子会社・関係会社取引はさらに一般管理費を10%カット等とする(四国電力はいずれも10.5%)。

④卸電力取引所の活用について、四国電力、北海道電力は、安定供給に必要な予備力を確保した上でもなお、総体的に見て高い水準の供給予備率であり、更なる卸電力取引所の活用が可能であるため、売り入札に係る利益額を想定して料金原価から減額する。

2013年8月2日に東北電力及び四国電力、8月6日に北海道電力から提出された申請内容の修正が、査定方針通りであることが確認できたため、電気事業法第19条に基づき経済産業大臣が認可を行い、最終的な規制部門の電気料金値上げ幅は、東北電力で平均8.94%、四国電力で平均7.80%、北海道電力で平均7.73%となりました。

消費者への十分な周知を図るために、東北電力、四国電力及び北海道電力の規制部門の電気料金値上げの実施時期を2013年9月1日としました。

中部電力株式会社の電気料金値上げに係る認可申請について

2013年10月27日付で、中部電力から、電気事業法第19条第1項の規定に基づき、電気料金を規制部門で平均4.95%引き上げる等の料金変更認可申請が提出されました。

同年11月7日から2014年3月14日まで、委員会は、中部電力から経済産業省に提出された料金変更認可申請について9回開催し、審議を行いました。2013年12月26日には中部電力の値上げに係る公聴会が名古屋にて、開催されました。

委員会で取りまとめられた査定方針案をもって経済産業省は消費者庁と協議を行い、2014年4月10日に協議が整いました。これを受け、経済産業省としての査定方針を策定し、同月15日に物価問題に関する関係閣僚会議の了承を得ました。なお、査定方針のポイントは以下のとおりです。

①燃料費について、原価算定期間中に価格改定される契約で最も安価なものと北米の天然ガス価格にリンクした価格を併用する。また、水力の発電電力量の算定方法を見直し、火力発電所が稼働減となることによる燃料費の抑制を反映する。

②卸電力取引所の活用について、卸電力取引所での売買による、発電余力の活用、安価な電気の調達によって生じる利益を想定して料金原価から減額する。

③修繕費について、配電設備の取替えの着手が遅れたために原価算定期間における料金原価が増加したものについては、料金原価から減額する。

2014年4月18日に中部電力から提出された申請内容の修正が査定方針通りであることが確認できたため、電気事業法第19条に基づき経済産業大臣が認可を行い、最終的な規制部門の電気料金値上げ幅は、平均3.77%となりました。

なお、電気料金値上げの実施時期を2014年5月1日といたしました。

(2) ガス料金制度の見直し

現行のガス料金制度の問題点と見直しに至る経緯

2011年3月の東日本大震災以降、電力、ガスなどエネルギーの低廉かつ安定的な供給の重要性が格段に高まり、料金制度についてもその在り方が問い直されました。こうした中、まず電気料金制度については、2012年3月に「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」の報告書が取りまとめられ、現行制度の下での値上げ認可時における原価の厳格な査定や情報公開の拡大等の考え方が示されました。

ガス料金についても、現行の総括原価方式の下で実施すべき料金制度の見直しを行うこととして、2013年7月に総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会の下に「ガス料金制度小委員会」を設置し、同年10月に報告書が取りまとめられました。

ガス料金制度の見直し内容

報告書では、ガス料金制度・運用の見直しに当たって、見直し後の電気料金制度・運用、消費者庁等による公共料金に関する提言を参考として、現行法の趣旨に立ち返り、「値上げ認可時においては原価の厳格な査定を行う一方、値下げ届出時や事後評価においては一般ガス事業者による説明と行政による事後チェックを的確に行うこと」を徹底すること、また、総括原価方式の本来の目的である、「事業に要する費用すべての回収を認めるのではなく、あるべき適正な費用のみの回収を認めること」を徹底することが適当であるとされました。その際、一般ガス事業の特性も踏まえながら、手続の実施に係る費用と得られる便益を比較し、より効率的かつ効果的な手法を選択することにも留意すべきであるとされました。

以上の基本的考え方に基づき、2013年度中に、一般ガス事業供給約款料金算定規則、一般ガス事業供給約款料金審査要領等について所要の改正を行いました。

〈報告書の概要〉

(ⅰ)原価の適正性の確保

ガス事業法は、一般ガス事業者に対して、規制部門での地域独占を認めて供給義務を課すことでガスの安定供給を確保する一方、供給者を選択できない需要家の利益を保護する観点からガス料金の適正性を行政が担保する料金規制を行うこととしている。したがって、「ガス事業の運営に要する費用をすべて原価として認める」のではなく、料金規制を行う趣旨は、「あるべき適正な費用に限定して料金原価での回収を認める」ことにあり、とりわけ、需要家に負担を求めるガス料金の値上げ認可を行う場合には、ガスの供給により優先度の高い費用に重点化することが求められる。具体的には、値上げ認可時における広告宣伝費、寄付金、団体費について、基本的には、原価への算入を認めるべきではない。その他、規制料金として回収することが不適切なもの(交際費、政治献金、書画骨董等)についても、原価への算入を認めるべきではない。

ガス事業法が求める「能率的な経営の下における適正な原価」を値上げ認可に当たって確保するため、各費用の性格に応じて、適切な経営効率化努力を織り込んだ原価査定を行う必要がある。具体的には、原料費について共同調達の実施や調達先の多様化等により、個別に可能な限り効率化努力を評価すること、人件費についてメルクマール等により査定を行うこと、設備関係費等について入札等を行うことを原則とすることがそれぞれ適当である。

認可時における原価算定期間については、事業者の十分な経営効率化努力を織り込む観点から、3年を原則とすることが適当である。

原価算定期間の複数年化に伴い、料金設定当初に想定した原料構成が国産天然ガスの枯渇等により大きく変動した場合、予め適正な原価として認可を経ていることを条件に、総原価を洗い替えることなく、当該部分の将来の原価の変動のみを料金に反映させる料金改定を認めることが適当である。

(ⅱ)事後評価及び情報公開

料金設定時におけるガス料金の適正性については、値上げ時においては行政による認可プロセスにおいて確保することとなるが、値下げ時においては届出による改定が可能であるため、事後評価による適正性の確保が求められる。具体的には、値上げ認可時には原価への算入が認められない広告宣伝費、寄付金、団体費について、値下げ届出時の原価に算入する場合には、一般ガス事業者による説明責任が重要であることから、対外的な説明をわかりやすくするため、こうした費用を値下げ届出時の法定書類上、明確にすることが適当である。また、料金の適正性を確保するため、消費者に対してこれまで以上の情報公開を行うこととして、行政及び事業者は、値上げ認可申請時又は値下げ届出時の法定書類を公表することが適当である。

部門別収支については、規制部門の利益によって自由化部門の赤字を補填することを防ぐ観点から、これまで大口需要部門に当期純損失金額が生じた場合のみ事業者名及び当該純損失金額を行政が公表することとしていたが、評価の透明性の観点から、部門別収支計算書の全体を常に公表することが適当である。

原価・原資算定期間終了後に料金改定を行わない事業者は、現行料金を維持した場合における収支見通し等について説明すること等により、引き続き現行料金を採用する妥当性を評価することが適当である。また、行政は、上記の事業者による評価を評価し、経営状況に照らして必要以上の内部留保の積み増しや株主配当が確認され、需要家利益を阻害するおそれがあると認められる場合、又は、今後の収支見通しが悪化し、現行の料金水準を維持することで、ガスの安定供給に支障が生ずるおそれがあるような場合には、必要に応じてガス事業法第18条の規定に基づく供給約款変更認可申請命令の発動の要否について検討することが適当である。

(ⅲ)値上げ認可時の審査プロセス

値上げ認可時の審査に当たっては、料金査定を行う上での技術的な手法の検討や原価の妥当性を評価するための前提となる調査など外部専門家による知見を活用することが適当である。その対象事業者の範囲については、値上げの影響を受ける需要家数等を勘案すべきである。認可時に行う公聴会について、より多くの消費者等が参加できるよう早期の開催案内、周知方法の工夫等を行うべきである。

(3) 電力需給対策

2013年度夏季の電力需給対策

(ア) 電力需給見通し

2013年度夏季の需給見通しについては、総合資源エネルギー調査会総合部会の下に設置された電力需給検証小委員会において、2013年3月末から4月下旬にわたり、検証を行いました。

検証の結果、「いずれの電力管内でも、電力の安定供給に最低限必要とされる予備率 3%以上を確保できる見通しであるが、大規模な電源脱落等によって電力需給がひっ迫する可能性もあり、引き続き予断を許さない状況であること」が明らかになりました。

これを受けて2013年4月26日に開催された電力需給に関する検討会合において、「2013年度夏季の電力需給対策」を取りまとめました。

【第122-8-1】2013年度夏季の需給見通し(8月)

図表【第122-8-1】

(イ) 電力需給対策
(ⅰ)節電要請

沖縄電力を除く9電力管内について、数値目標を伴わない一般的な節電要請を行いました。節電要請期間は2013年7月1日~9月30日の平日(同年8月13日~15日を除く)9時~20時としました。なお、節電要請に当たっては、被災地、高齢者や乳幼児等の弱者、熱中症等の健康被害に対して、配慮を行うこととしました。

(ⅱ)その他の電力需給対策

大規模な電源脱落等により、万が一、電力需給がひっ迫する場合への備えとして、①火力発電所等の計画外停止のリスクを最小化するため、発電設備等の保守・保全を強化すること、②電力需給のひっ迫が予想される場合に、自家発事業者からの追加的な電力購入を行えるよう準備すること、③自家発電の活用を図るため、設備の増強や余剰電力の電力会社への売電を行う事業者に対して、設備や燃料費の補助による支援を行うこと、④卸電力取引所において、幅広い供給者が取引所に参加することで広域的かつ機動的な電力調達が可能となるような新たな仕組みを整備すること及び⑤随時調整契約等の積み増し、アグリゲーターやネガワット取引の活用その他のディマンドリスポンス等、需要面での取組の促進を図ることなど、需給両面での対策を講じることとしました。

2013年度夏季の結果

2013年度夏季は、全国各地で記録的な猛暑に見舞われ、猛暑となった中部電力及び九州電力管内では、電力需給検証小委員会の想定を超える最大需要を記録しました。また、供給面では、一部の火力発電所の計画外停止の期間が長期化したこと等により、各電力管内の最大需要日の供給力(実績)の合計が電力需給検証小委員会の想定を下回りました。8月22日には、関西電力管内で、最大需要と2013年度夏季のうち3番目に大きい電源トラブルとが重なり、電力需給がひっ迫する可能性があったため、関西電力は、日本卸電力取引所からの電力の追加調達、他電力から電力の緊急融通を行うことで、電力の安定供給を図りました。

結果的に、2013年度夏季において、電力の安定供給に最低限必要な予備率は確保されましたが、2013年度冬季に向けて、電力需給は予断を許さない状況であることを再認識せざるを得ない状況でした。

【第122-8-2】2013年度夏季の需給実績(8月)

図表【第122-8-2】

2013年度冬季の電力需要対策

(ア) 電力需給見通し

2013年度冬季の電力需給見通しについては、審議会の組織見直しを踏まえ、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下に設置された電力需給検証小委員会において、2013年10月に検証を行いました。

検証の結果、「いずれの電力管内でも電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3%以上を確保できる見通しであるが、火力発電所等の計画外停止が発生するリスクがあり、予断を許さない状況であること」、「北海道電力管内については、他電力からの電力融通に制約があること、発電所一機のトラブル停止が予備率に与える影響が大きいこと、厳寒であるため、万一の電力需給のひっ迫が、国民の生命、安全を脅かす可能性があること等の特殊性があること」が明らかになりました。

これを受けて2013年11月1日に開催された電力需給に関する検討会合において2013年度冬季の電力需給対策を取りまとめました。

【第122-8-3】2013年度冬季の需給見通し(2月)

図表【第122-8-3】

(イ) 電力需給対策
(ⅰ)節電要請

沖縄電力を除く9電力管内について、数値目標を伴わない一般的な節電要請を行いました。節電要請期間は、2013年12月2日~2014年3月31日の平日(12月30日及び31日並びに1月2日及び3日を除く)9時~21時(北海道電力及び九州電力管内については8時~21時)としました。

また、冬季の北海道の特殊性を踏まえ、北海道電力管内には2010年度比でマイナス6%以上の数値目標付きの節電要請を行いました。節電要請期間は、2013年12月9日~2014年3月7日の平日(12月30日及び31日並びに1月2日及び3日を除く)16時~21時としました。

なお、節電要請に当たっては、高齢者や乳幼児等の弱者に対して、無理な節電を要請することがないよう、配慮を行うこととしました。

(ⅱ)その他の電力需給対策

火力発電所等の計画外停止のリスクを最小化するため、①発電設備等の保守・保全を強化すること、②電力需給のひっ迫が予想される場合に、広域的な電力融通、卸電力取引市場の活用、自家発事業者からの追加的な電力購入等を行えるよう準備すること、及び③随時調整契約等の積み増し、アグリゲーターやネガワット取引の活用その他のディマンドリスポンス等、需要面での取組の促進を図ることにより、需給両面での対策を講じることとしました。

また、北海道電力管内については、冬季の北海道の特殊性を踏まえ、過去最大級の電源脱落に備え、計画停電を含む停電を回避するため、数値目標付きの節電要請に加え、北海道電力は計画停電回避緊急調整プログラムを準備し、大規模な電源脱落等による需給ひっ迫時にこれを発動することとしました。過去最大級を上回る電源脱落の発生に備え、北海道電力は、計画停電回避緊急調整プログラムでは対応できない大規模な電源脱落時に電力需要を削減するため、緊急時ネガワット入札等の仕組みを整備することとしました。

2013年度冬季の結果

2013年度冬季は、東日本を中心に記録的な寒波に見舞われ、東北電力、東京電力及び中部電力管内では、電力需給検証小委員会の想定を超える最大需要を記録しました。また、供給面では、発電所の計画外停止の影響等により、各電力管内の最大需要日の供給力(実績)の合計は電力需給検証小委員会の想定を下回りました。北海道電力管内では、2013年12月17日から2014年1月13日まで、火力最大機である苫東厚真4号機(70万kW)の計画外停止が発生し、1月10日には、寒波の影響により電力需要が増加したことで、2013年度冬季の最小予備率を記録しました。更なる火力発電機や北本連系設備の計画外停止が発生した場合には、電力需給がひっ迫する可能性がありました。

結果的に、2013年度冬季において、電力の安定供給に必要な予備力は確保されましたが、原子力発電所の稼働停止が続く中、2014年度夏季に向けて、電力需給は引き続き予断を許さない状況でした。

【第122-8-4】2013年度冬季の需給実績(2月)

図表【第122-8-4】

(4)“水素社会”の実現に向けた取組の加速

水素は、利便性やエネルギー効率が高く、利用段階で温室効果ガスの排出がないエネルギー源です。一方、取扱い時の安全性の確保が必要であり、技術面、コスト面、制度面、インフラ面で多くの課題が存在しています。このような水素を本格的に利活用するためには、現在の電力供給体制や石油製品供給体制に相当する、社会構造の変化を伴うような大規模な体制準備が必要となります。

このため、水素の製造から輸送・貯蔵、利用に関わる様々な要素を包含している全体を俯瞰したロードマップを策定すべく、2013年12月に産学官からなる「水素・燃料電池戦略協議会」を設置し検討を進めています。

COLUMN

定置用燃料電池の導入拡大

定置用燃料電池は、都市ガスやLPガスから取り出した水素と、空気中の酸素を化学反応させることで発電を行います。エネルギーを化学反応により直接電気に変換させるため、エネルギーロスが少なく、窒素酸化物(NOx)等の有害物質をほとんど排出しない上、騒音もありません。

さらに、発電した際に発生する熱を給湯や暖房に活用することで、さらにエネルギー効率を向上させることが可能であり、優れた省エネ・省CO2性能を誇ります。>

また、定置用燃料電池は、東日本大震災以降注目を浴びている分散型エネルギーシステムの一つでもあり、家庭や地域におけるレジリエンスへの貢献も可能です。

燃料電池の仕組み

(出典)
日本電機工業会

■家庭用燃料電池(エネファーム)(普及性能向上)

家庭向けの定置用燃料電池である家庭用燃料電池(エネファーム)は、長年にわたる燃料電池に関する技術開発の成果を活かして2009年に世界に先駆けて市場投入され、2014年4月現在では7.6万台が普及しています。

エネファームは電気と熱を効率的に用いることで、90%以上のエネルギー効率を持つ製品もあり、エネルギー使用量の増大が懸念される家庭分野における有望な省エネ機器として今後の普及が期待されます。

エネファームは、2030年に全世帯の約1割に当たる530万台普及させることを目標にしており、エネファームの低コスト化・小型化に向けた技術開発や、集合住宅向けのエネファームの販売など、普及に向けて様々な取組が進められています。

さらに、2014年4月には、我が国の家庭用燃料電池メーカーがドイツのボイラーメーカーと共同開発した家庭用燃料電池を発売するなど、日本発の省エネ機器として海外での展開も期待されます。

(出典)
燃料電池普及促進協会

■業務・産業用燃料電池(開発実証)

事業所などで使用する大型の燃料電池については、海外製の業務用燃料電池が日本に参入するなど注目が集まっています。

我が国においては、発電効率の高い固体酸化物形燃料電池を用いた業務・産業用燃料電池の実用化に向けた実証が進められており、数年以内の市場投入が見込まれています。

250kW級ハイブリッドシステム

(出典)
三菱日立パワーシステムズ

COLUMN

燃料電池自動車の“世界最速の普及”に向けた取組

■燃料電池自動車(FCV)(開発実証~普及性能向上)

燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle: FCV)は、燃料となる水素と空気中の酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーを用いてモーターを回して走る自動車です。

航続距離が500km以上と長く、燃料の充填時間も3分程度と短いなど、既存のガソリン車と同程度の性能を持つことに加え、燃料となる水素は多様なエネルギー源から製造可能であり、走行時には地球温暖化の原因となるCO2を排出しないなど、エネルギーセキュリティの向上や環境負荷低減にも資する、有力な次世代自動車です。

燃料電池自動車の基本的な仕組み

また、長年にわたる技術開発で蓄積した高度な燃料電池技術や、燃料となる水素を貯蔵する圧縮水素タンクに用いられる炭素繊維など、燃料電池自動車に用いられる技術は我が国企業が強みを持つ分野も多く、今後成長が期待される市場でも我が国企業が競争力を持つと考えられます。

我が国では、自動車メーカーが2015年に燃料電池自動車の量産車を市場投入することを目標に掲げており、各社がコンセプトカーを披露するなど、市場投入に向けた準備が加速化しています。さらに、「日本再興戦略」(2013年6月閣議決定)に掲げた燃料電池自動車の“世界最速の普及”を目指して、官民を挙げた取組が進められています。

日本の自動車メーカー各社が発表しているコンセプトカー
(左からトヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車)

■水素ステーション(開発実証~普及性能向上)

燃料電池自動車の普及に向けては、燃料となる水素を供給するための水素ステーションが不可欠のインフラとなります。

我が国では、これまで、水素・燃料電池実証(Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project: JHFC)等で、商用水素ステーションの整備に向けた実証事業を実施してきました。さらに2013年度からは、燃料電池自動車の市場投入に先駆けて、4大都市圏(首都圏、中部、関西、北部九州)を中心に商用水素ステーションの先行整備が開始されました。

政府としても、民間事業者等の水素ステーション整備に対して補助を行うとともに、水素ステーションに係る規制の見直しや、部素材の低コスト化に向けた技術開発を行うなど、水素ステーションの整備を後押しする取組を行っており、引き続き官民の適切な役割分担の下、水素ステーションの整備を拡大していくことで、燃料電池自動車が日常生活でも利用できる環境を実現していきます。

海老名中央水素ステーション

(出典)
JX日鉱日石エネルギー

■用途の広がり(燃料電池バス、燃料電池フォークリフト等)(開発実証)

燃料電池を中心とする燃料電池自動車に用いられる技術を、バスやタクシー、フォークリフトなど、乗用車以外の車両に活用しようとする取組も進められています。2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、大会運用の輸送手段として燃料電池自動車や燃料電池バスを活用することも期待され、世界に新たなエネルギー源である水素の可能性を発信する好機となるため、それも見据えつつ着実に取組を進めていきます。

燃料電池フォークリフト

(出典)
豊田自動織機

燃料電池バス

(出典)
日野自動車

また、燃料電池自動車は発電した電力を外部に供給することも可能であり(V2H(Vehicle to Home)/V2B(Vehicle to Building))、災害等の非常時における避難所などへの電力供給や、電力需給ひっ迫時の電力供給によるピークカットへの活用などが期待され、このための実証事業も行われています。

燃料電池バスによる避難所(体育館)への給電イメージ(V2B)

(出典)
トヨタ自動車

COLUMN

“水素社会”の実現に向けた新たな取組

水素エネルギーの需要については、2009年に世界に先駆けて市場投入された家庭用燃料電池や、2015年に市場投入予定の燃料電池自動車にとどまらず、水素発電にまで拡がっていくことが期待されています。

このうち、水素発電については、将来的に安定的かつ大規模な水素需要を生み出す可能性があると期待されています。現在、燃料の一部を水素で代替する混焼発電については、既存のガスタービンでも一定程度の水素割合であれば技術的に活用できると考えられており、さらにNOx排出量を低減しつつ水素の混合割合や発電効率の向上等を図るべく技術開発等の取組が進められています。

一方、水素エネルギーの供給については、当面は、副生水素の活用、天然ガスやナフサ等の化石燃料改質等によって対応することになりますが、水素の本格的な利活用のためには、水素をより安価で大量に調達することが必要になります。このため、海外の未利用の褐炭や原油随伴ガスを水素化し、国内に輸送するための様々な技術が検討されています。

デュアル水噴射型水素ガスタービン

(出典)
川崎重工業

■有機ハイドライド法(応用研究~開発実証)

有機ハイドライド法とは、水素をトルエンと反応させ、メチルシクロヘキサンとすることで常温・常圧の液体状態で貯蔵・輸送を行い、水素を取り出して利用する方法です。本方法は、世界に先駆けて我が国で実用化された水素の大量貯蔵・長距離輸送技術であり、水素サプライチェーンの早期の構築が検討されています。

水素貯蔵・輸送システムのデモプラント

(出典)
千代田化工建設

■液化水素法(応用研究~開発実証)

液化水素法とは、水素を−253℃の極低温で液化させ、液体状態で貯蔵・輸送を行い、水素を利用する方法です。本方法は、LNGに比べて貨物の保温等について高度の技術が要求されることから更なる技術開発は必要ですが、より高い輸送効率を達成するものとして、LNG輸送で培った我が国の世界的に高度な保温技術等をもとに対応すべく検討が進められています。

これらの取組によって、将来的に水素発電が導入されて安定的かつ大規模な水素需要が生じ、これに対応するための大規模な水素サプライチェーンが構築されれば、水素コストが低減し、燃料電池自動車などの他の水素利活用分野への波及効果が期待されています。

商用水素輸送船のイメージ

(出典)
川崎重工業

9.エネルギー基本計画

(1) 総合資源エネルギー調査会における審議

総合資源エネルギー調査会総合部会(部会長 三村新日鐵住金(株)取締役相談役(注:当時))における議論は、2013年3月15日の第1回部会から始まり、同年6月下旬までに計4回の部会が開催されました。同年7月に経済産業省の審議会組織見直しが行われましたが、総合部会のメンバーと議論は、新たに設置された基本政策分科会(分科会長 三村新日鐵住金(株)相談役名誉会長)へそのまま引き継がれ、同年12月13日に開催された第13回分科会まで、総合部会から通算して計17回の議論が行われました。

これらの審議においては、エネルギーの生産・調達、流通、消費の各段階における主要論点や、エネルギー政策の基本的視点(3E+S)に関する最近の状況、再生可能エネルギーの状況、中長期的な資源確保戦略、石油・LPガスや天然ガスのサプライチェーンの構築、新たなエネルギー産業構造の展望、「消費面」・「需要面」から見たエネルギー政策の在り方、原子力政策、長期技術開発戦略、国民各層とのコミュニケーションの在り方など、様々な視点・論点・課題に関する議論が行われたほか、エネルギー需要家及びエネルギー供給者並びに関係府省からのヒアリングや海外のエネルギー関係有識者との意見交換も行われました。

審議の結果は、総合エネルギー調査会基本政策分科会による「エネルギー基本計画に対する意見」として、同年12月16日に三村分科会長によって取りまとめられました。

【第122-9-1】総合資源エネルギー調査会 総合部会 各開催回の議題

図表【第122-9-1】

【第122-9-2】総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 各開催回の議題

図表【第122-9-2】

【第122-9-3】総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 委員一覧(2013年12月13日時点)

図表【第122-9-3】

(2) 政府部内での取りまとめ

総合資源エネルギー調査会の「意見」を受け、同年12月17日、第1回原子力関係閣僚会議において、エネルギー基本計画の原子力関連部分に盛り込むべき内容について関係閣僚が議論をしました。また、2013年12月6日から翌2014年1月6日にかけて、新しい「エネルギー基本計画」策定に向けたパブリックコメントを実施し、約1万9千件の御意見が寄せられました。これらの結果も参考に、「政府の原案」を取りまとめ、その原子力関連部分については2014年2月25日に開催された第2回原子力関係閣僚会議において、関係閣僚で了承されました。

その後、政府与党内での議論も踏まえて、エネルギー基本計画の最終案が作成され、2014年4月11日に閣議決定され、国会に報告されました。

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エネルギーマネジメント:HEMS(ホーム)、BEMS(ビル)、MEMS(マンション)、CEMS(コミュニティ)、供給側の状況に応じて電力需要を変化させる「ディマンドリスポンス」