第1節 次世代エネルギー・社会システムの構築

震災を契機として、電力供給の制約が顕在化し、需要側においても地域単位で節電やピークカットに取り組むことの重要性が高まっています。また、大規模集中型のエネルギーシステムの脆弱性が明らかになり、災害にも強い分散型のエネルギーシステムが求められています。さらには再生可能エネルギーの大幅拡大に伴う出力変動をシステム全体で吸収することの必要性も今後高まっていきます。

こうした課題に対応するため、ITと蓄電池の技術を活用し、従来コントロールを行うことが困難であった需要サイドを含め、電力の需給管理を行う技術(スマートグリッド)を確立するとともに、電気にとどまらず熱も含めてこれらの取組を面的に広げ、地域単位でエネルギー管理を行う分散型エネルギーシステム(スマートコミュニティ)を構築し、様々なサービスの提供や、柔軟な電気料金メニューの導入等による大幅な省エネ・節電や、再生可能エネルギーの効率的な利用の実現を図り、こうした取組を国内・海外双方に普及させることが重要です。

(1) スマートコミュニティの構築に向けた取組

スマートコミュニティの構築を目指し、2011年度から横浜市、豊田市、けいはんな学研都市(京都府)、北九州市の4地域において、自治体、住民、企業等の参画のもと、季節別・時間帯別電力料金メニュー、需給に応じた電力料金設定及びポイントの与奪による、節電・ピークカットを始めとする需要家の行動変化(ディマンドリスポンス)に関する実証を開始しました。2012年の夏にディマンドリスポンス実証を行った豊田市、けいはんな学研都市、北九州市において、約2割のピークカット効果が確認されました。

また、震災からの復興・再建に向けて、これらの実証の成果を生かし、被災地へのスマートコミュニティ導入を進めるための支援を行っています。2012年12月には、被災3県(福島、宮城、岩手)の7地域において、地域エネルギー管理システムの導入を中心としたマスタープランが策定されました。

(2) スマートコミュニティ・アライアンスを中核とした国際展開戦略

「スマートコミュニティ」の取り組みが国際的に拡大する中で、我が国の優れた新エネ・省エネ技術やスマートグリッド関連技術の国際展開を促進することは、我が国としての新たな成長産業の育成にもつながります。このような背景から、海外展開や国際標準を業種横断的に官民が連携して推進していくため、2010年4月6日に民間協議会団体の「スマートコミュニティ・アライアンス」(事務局:NEDO)が設立されました。スマートコミュニティ・アライアンスでは、官民ミッションの派遣等を通じてスマートコミュニティのシステム導入側の相手国政府等と直接対話を行い、導入側のニーズに即した課題解決型の提案と交渉を積み重ねることにより、より上流の設計段階からの関与を行うことを目指して取組を進めました。

具体的取組としては、国際戦略や国際標準の観点からワーキンググループを設置し、国別や技術分野毎のアプローチによる国内外の普及・啓発や、スマートコミュニティ関連イベントでの出展・講演、GSGF(Global Smart Grid Federation)などの国際機関との連携を強化しました。

(3) まちづくりと一体となった熱エネルギーの有効利用の推進

我が国の最終エネルギー消費の推移を見ますと、業務・家庭といった民生部門は、産業部門や運輸部門と比して大幅に増加しており、民生部門におけるエネルギー対策を一層推進する必要があります。また、我が国では、これまで工場・事業場、住宅・建築物等のエネルギー対策を個別に推進してきましたが、エネルギー需要密度の高い地区においては、複数街区または地区レベルにおける複数の建築物の間の熱エネルギーの融通や、再生可能エネルギー熱や未利用熱等の熱エネルギーの有効利用を図ることによるエネルギー消費の削減の余地が大きいと考えられています。

こうした背景を踏まえ、2011年5月に、経済産業省が、国土交通省、環境省、自治体、事業者の参画の下開催した「まちづくりと一体となった熱エネルギーの有効利用に関する研究会」の提言をとりまとめました(2011年8月)。同提言を踏まえて2012年3月、国土交通省が河川水の熱利用のための水利使用許可手続における審査方法等に関する通達を改正しました。また、同提言及び「官民連携による下水道資源有効利用促進制度検討委員会」の提言(2011年8月)を踏まえ、2012年3月、国土交通省が、民間事業者による下水放流水熱利用の手続に関して、標準下水条例を改正するとともにガイドラインを策定し、2012年12月には、未処理下水も含めた下水熱利用に係る手続の明確化を図るため「民間事業者による下水熱利用手続ガイドライン」が策定されました。さらに、環境省では「地中熱利用にあたってのガイドライン」を取りまとめました(2012年3月)。また、高効率な熱利用の設備導入にあたって、参考にできる前例が増えれば、①当初期待した省エネ効果やコストメリットの見通しが明らかになり、②個別の制度上・手続き上の調整(例えば下水・河川等の使用に関する調整など)においても、その円滑化・迅速化が期待できる場合もあると考えられます。こうした観点にたって、先行事例を積み上げるための新たな枠組みを創設しました。具体的には、複数の再エネ熱源、蓄熱槽、下水・河川等の公共施設等を有機的・一体的に利用する複合システムの案件を調査し、システム導入を支援すると共に、実証事業を実施する「再生可能エネルギー熱利用高度複合システム実証事業」を2013年度より新たに開始します。

(4) スマートメーターの導入に向けた検討

スマートメーターは、電力使用量の見える化や、より柔軟な電気料金メニューの導入・多様化を可能とするための基盤であり、導入の加速化に向けて官民あげて取り組んでいるところです。我が国においては、2010年5月より「スマートメーター制度検討会」を開催し、スマートメーターの基本要件、導入に向けた課題及び今後の取組等について議論を行い、2011年2月に報告書を取りまとめるとともに、2012年2月には、官民合同で設置したスマートハウス標準化検討会において、スマートメーターと住宅用のエネルギー管理システム(HEMS)との情報連携に必要なインターフェースの標準化を行いました。これを踏まえ、2012年には、東京電力が、スマートメーターの調達にあたって、大規模なRFC(Request For Comment)を実施し、仕様の見直し等を行ったのをはじめ、関西電力、九州電力等の電力会社が、家庭部門へのスマートメーターの具体的な導入計画や、メーターの導入にあたっての一般競争入札の実施等を表明するなど、取り組みが進捗しています。

(5)HEMS等に係る標準化に関する検討

民生部門のエネルギーマネジメント等を普及拡大していくためには、発電所から家電機器までが一つのITネットワークで繋がり、相互に通信可能な環境が整うことが必要です。そのため、2012年2月には、「スマートハウス標準化検討会」において、HEMSと家電機器等の通信方法の標準化の検討を官民で実施し、通信プロトコル「ECHONET-Lite」を標準規格として推奨することを決定しました。さらに、2012年6月には、重点機器の下位層(伝送メディア)の特定・整備、重点機器の運用マニュアルの整備、他社機器との相互接続検証と機器認証、国際標準規格との融合・連携、ディマンドリスポンス手法の標準化などの検討を行うため、官民による「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会」を設置し、取組を進めています。