第2節 ガス事業制度

1.ガス事業制度改革

これまでのガス事業制度改革について

ガス事業については、1995年、1999年、2004年及び2007年の四度にわたり大きな制度改革が行われました(第342-1-1)。

【第342-1-1】ガス事業の段階的自由化の経緯

【第342-1-1】ガス事業の段階的自由化の経緯

(出所)
資源エネルギー庁作成

(1)小売自由化範囲拡大等にかかる制度改革について

1995年の制度改革においては、これまでの一般ガス事業者による地域独占供給を見直し、大口需要家を対象としたガスの小売自由化等を実施しました。

この制度改革により、年間契約ガス使用量200万m3以上(46MJ換算)の大口需要家は、ガスの供給者を選ぶことが可能となり、料金やその他の供給条件も当事者間の自由な交渉によるものとなりました。

1999年の制度改革においては、小売自由化範囲の拡大(年間契約ガス使用量100万m3以上(46MJ換算)に拡大)、接続供給(託送)制度の法定化、料金規制の見直し(供給約款料金の引き下げについて認可制から届出制へ移行)等を実施しました。また、公正・有効な競争を確保するという観点から、2000年3月、「適正なガス取引についての指針」が制定されました。

2004年のガス事業制度改革では、川上から川下まで一貫した体制でガスを供給する体制を維持した上で、新たに、ガス導管事業をガス事業法上に位置付けるとともに、ガス導管の託送ルールを充実・強化し、ガス小売自由化範囲を年間契約ガス使用量50万m3以上まで拡大しました。

更に、託送供給の中立性・透明性の確保や、LNG基地の有効利用促進の観点から、2004年8月、「適正なガス取引についての指針」が一部改定されました。

2007年のガス事業制度改革では、2003年のガス事業制度改革に係る検討結果を踏まえ、自由化範囲の拡大にあたり、供給者選択の仕組みが実効的に機能するよう、自由化範囲の担保方法、託送供給制度の充実・強化、自由化領域の顧客に対する供給義務のあり方の仕組みの整備、新規の導管設置による利益阻害性判断基準等に係る対応について審議がなされ、同年4月より小売自由化の範囲を年間契約ガス使用量が10万m3以上の需要家まで拡大しました。

(2)ガス料金制度改革について

2008年10月、原料価格の急激かつ大幅な変動といった環境の変化を受け、ガス事業の健全な発達及び需要家利益の保護の観点から、原料費調整制度等の小売ガス料金に関する制度の見直しを行うため総合資源エネルギー調査会・都市熱エネルギー部会の下に「料金制度小委員会」が新たに設置され、原料費調整制度に関する課題と、これを含めたガス料金に関する制度の見直しが検討されることとなりました。

このうち、喫緊の課題であった原料費調整制度に関しては、同小委員会での集中的な検討を通じて、2009年1月の都市熱エネルギー部会に報告された「総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会中間とりまとめ(第一次)」により、原料価格変動を迅速に反映させるとともに、料金変動を平準化するために、以下のとおり制度を変更することが適当とされました(私営一般ガス事業者の例)。

当該制度の調整指標としている貿易統計における原料価格の公表月から料金反映までの期間を、従来の3ヶ月間から1ヶ月短縮し、2ヶ月間とする。

3ヶ月分の平均原料価格を毎月反映する仕組みとする。

当該制度について適切に移行措置を講ずることを適当とする。

また、原料費調整制度の調整指標として、「全日本CIF価格」(貿易統計)が一般的に用いられてきており、これについては、引き続き当該指標を基に基準平均原料価格を算定することが基本であることが確認されました。他方で、「全日本CIF価格」以外の調整指標(「購入実績値」)の変動と全日本CIF価格の変動との間の著しい乖離により、一般ガス事業者の事業の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合など一定の要件を満たす場合には、ガスの使用者の利益保護等の観点から、購入実績値を用いて原料費調整を行うことを認めることが適当とされました。

これらの原料費調整制度の制度変更に関する報告を受けて、国は、同年2月に一般ガス事業供給約款料金算定規則を改正しました。

その後、上述の2009年1月の都市熱エネルギー部会において、改めて「料金認可プロセスの合理化」「規制小売料金の妥当性の定期的評価」「推計値を用いた料金反映までの期間の更なる短縮」及び「新エネルギー関係費用の見える化」という検討課題・論点が整理されたため、これに関して、料金制度小委員会にて議論が行われ、2009年6月に「総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会中間とりまとめ(第二次)」として、部会に対し報告がなされました。

さらに、2011年2月に、総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会において取りまとめられた「購入実績値方式の見直し」及び「外生的・固定的なコスト要因の料金反映」について関係省令の改正を行いました。

購入実績値方式の見直しについて

原料費調整制度の調整指標として購入実績値を用いることができる場合の実績平均原料価格の算定期間を、通常の「3月間」ではなく、「1年以内における適切な期間」とするべく、一般ガス事業供給約款料金算定規則の改正を行いました。

外生的・固定的なコスト要因の料金反映について

電気事業と同様に外生的・固定的なコスト要因としての性質を有する、石油石炭税、消費税の税制の変更に伴うコストの変動を、簡便かつ機動的な手続により料金に反映する仕組みを設けるべく、事前届出により改定できるよう一般ガス事業供給約款料金算定規則等の改正を行いました。

(3)託送供給制度改革について

大口供給に係る制度改革と相俟って、1995年の託送取扱要領の整備により託送供給制度が導入されて以来、大口需要家によるガス供給者の選択機会を拡大していくため、また独自の導管を持たずに大口供給に新規に参入しようとする事業者が一般ガス事業者と公正かつ有効に競争することができる環境を整備するために、1999年に接続供給制度を法定化し、さらに託送制度の透明化・公平性を確保する観点から、2004年に託送供給約款の作成・届出・公表の義務化、2007年には、新規導管の敷設を妨げないため、ガス導管事業者における託送料金の設定ルールの柔軟化と、段階的に制度の拡充が進められてきました。

また、さらなる制度の改正として、2008年4月に取りまとめられた「制度改革評価小委員会報告書」において指摘された諸課題のうち、簡易な同時同量制度及び託送料金制度(「気化・圧送コストの取扱い」、「超過利潤の取扱い」、「託送料金の改定方法」)並びにバイオガス導入費用の託送料金原価への算入について、2010年11月より都市熱エネルギー部会制度改革検討小委員会・料金制度小委員会合同会議にて審議を行い、2011年2月に都市熱エネルギー部会において取りまとめられた以下について、2012年3月に関係省令の改正を行いました。

簡易な同時同量制度の見直しについて

簡易な同時同量制度について、更なる競争促進の観点から、ネットワークの運用に支障のない範囲でその対象範囲を一定程度拡大することとし、その範囲については、小売自由化の拡大範囲を指標として、年間契約供給量の上限を「50万m3未満」から「100万m3未満」としました。

気化・圧送コストの取扱い

気化・圧送コストの取扱いについて、現行の「LNG気化圧送原価」を、導管網全体の圧力維持に貢献している費用を整理する「LNG圧送原価」と、導管網全体の圧力維持のためのものであるとは言い難い費用を整理する「LNG気化原価」に分離し、託送供給原価上、前者は算入し、後者は算入しないこととるため、一般ガス事業供給約款料金算定規則等の改正を行いました。(第342-2-1)

なお、今回の制度の変更に伴う託送供給料金の引下げについては、託送供給実施者の経営に急激な影響を及ぼすものであることを勘案し、段階的移行措置等の経過措置を講ずるべきとの観点から、2018年3月31日までの間は従前の例によることができることとしております。

超過利潤の取扱い

超過利潤の取扱い(乖離額の具体的な算定方法、変更命令発動基準等)について、ガス事業託送収支計算規則等の改正を行いました。

届出上限値による託送供給料金改定の機動性向上について

届出上限値方式による託送供給料金改定について、直近の(総括的に見直した)料金改定時の配分率等を用いることにより機能別展開し、部門別原価に配分する手法を設けるべく、ガス事業託送供給約款料金算定規則等の改正を行いました。

(4)ガス事業制度改革の成果

以上のようなガス小売の部分自由化の結果、電気、石油等の他のエネルギー関係事業者の新規参入者が増加し、競争が活発化したことに加え、ガス事業者間における競争も進展しました。

その結果、2011年度において、ガス事業者の総ガス供給量に占める、大口需要家(自由化対象)へのガス供給量の割合は約6割となりました。このうち、従前の一般ガス事業者以外による新規参入は、33社273件(2012年3月末現在。国産天然ガス事業者、電力会社、商社等)となっていて、大口需要家への供給量に占める割合は約17%(2011年度実績)となりました。

経営面では1995年以降、販売量当たりの事業費用をみるとLNG輸入価格の上昇傾向等を受けて原材料費が上昇しているものの、労務費等の削減努力により、全体として販売量当たりの事業費用は低減してきており、都市ガスの平均販売単価は低下傾向にありました。

2.2012(平成24)年度においてガス事業に関して講じた施策

天然ガスは、東日本大震災以降、原子力発電所の稼働停止に伴う火力発電用の燃料として需要が増大しています。また、化石燃料の中で最もクリーンであり、かつ世界に広く賦存し、シェールガス等の新たな供給源への期待も高まっており、今後天然ガスが果たす役割は一層重要なものとなることが予想されます。

このような背景を踏まえ、ガス事業における制度的対応を支える上での、ガス市場の基盤となる天然ガスパイプライン網の整備に向けた専門的検討を行いました。検討に当たっては、総合資源エネルギー調査会総合部会の下に天然ガスシフト基盤整備専門委員会を平成24年1月に立ち上げ、全6回の審議の後、我が国における全体最適的な天然ガス供給基盤の「整備基本方針」を国が策定し、民間事業者の活力を最大限活用していくこと等を内容とする報告書を取りまとめました。